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OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
サークルオーナー: tomtommama | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 335 | 開設:2006.11.13 | ランキング:30(12728)| 訪問者:3853218/4696844
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mirage
創作mirage-儚い夢- 2006.6より with BYJにて連載中
No 10 HIT数 6442
日付 2007/01/05 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル mirage-儚い夢- 10.待ってなどいない
本文



       

Thema music select &collage by tomtommama




 
金曜日
マサチューセッツからいつもより早く出発した僕は、自分でも気づかぬ内に
NYへとアクセルを強く噴かせていた。
今まで味わったことの無い胸のざわめきの中で、自らスウィッチを入れたBGMさえ
実のところ耳に届いてはいなかった。


   何を・・・そんなに急いでいる?

先刻帰り支度を急いでいた時、目下の所僕を一番買ってくれているジョンソン教授が
「久しぶりに食事でも」と研究室を訪ねてくれたものの、あろうことかそれを無下に
断ってしまった。

とにかく僕は一時も早く発ちたかった。
正直この二日間は、気持ちばかりが焦り、時間が倍にも感じるほど心がここに無かった。


   何がそんなに・・・気になる?



いつもの5時間の長距離ドライブを1時間も縮めてNYに到着した時には、
自分でも思わず首を傾げ苦笑した。

アパートに着いてからも足早にエレベーターホールへ向かい、押した昇降階の数字を、
逸る思いで目で追っていた。
そして到着の合図音が鳴るや否や僕はドアをこじ開けるように外へ出た。しかし・・・

   フロアには誰もいなかった・・・

   彼女は・・・いなかった・・・


   今日は遅い・・・僕がそう言ったんだった・・・

   “来るな”・・・僕が・・・そう言ったんだった・・・ 


僕は拍子抜けしている自分を心の中で否定しながら、さっきまでの焦りと裏腹に、
のらりくらりとポケットから鍵を出し、明かりのない部屋へと入った。

部屋は二日前と何ら変わらない。いや、一週間前とは大きく変わっていた。
彼女が変えてしまった僕の部屋は、誰かがいないと妙に静か過ぎた。

僕は荷物を床に無造作に放り投げて、ベッドに体を投げ出すと、天空を仰いだ。
これは彼女がこの部屋に入って真っ先にすることだ。

既に瑠璃色に広がった夜空には星のひとつも光ってはいなかった。

「何を・・期待・・した?」
僕はそう声に出した後、自分でもわかるような大きなため息を天に向かって吐いた。



 

翌日も、その翌日も、彼女は現れなかった。

考えてみれば、僕は彼女の何も知らない。
学校が何処なのかも、住んでいるところが何処なのかさえ、何ひとつ聞いていない。

知っているのは彼女の名前が“ジニョン”ということと、ジョルジュという
お目付け役がいること。

   それくらいなもんだ

   だから?・・・それがどうしたというんだ・・・

   僕が彼女のことを知らないことに、何の問題がある?

それなのに気がつくと僕は、彼女のことを考えていた。

   あんなにも一生懸命僕を見てた・・・

   僕は?・・・

   僕も?・・・

   彼女の笑顔が・・・

   彼女の子供のような無邪気な顔が・・・

   そして彼女の寂しそうな憂い顔が・・・

   僕の中でめくるめく蘇る・・・  

僕は彼女のいくつもの表情を残さず覚えていた自分にひどく驚いていた。


   具合でも悪くなったんだろうか・・・

   怪我でもしたんだろうか・・・

   それとも・・・あれはただの気まぐれだった?

   自己中心的な・・・子供の・・・

   彼女の気まぐれにいつの間にかこの僕が振り回されていた?


   そうなのか?・・・

   この僕が・・・たかが子供の・・女の・・行動に・・・

   そんなはずはない・・・

   この僕がそんなものに・・・   

   惑わされるはずなど・・・決してない



僕はマサチューセッツから帰ってからというもの、ずっと、彼女のことが頭から
離れてくれないことにひどく困惑していた。

自分自身の感情が急に可笑しくなって、わざと声を出して自分を笑ってみた。
そんな自分の声が次第に情けない溜息交じりの笑い声に変わっていったのが
更に可笑しさを増した。

それでも・・・

   何かぽっかりと穴の空いたようなこの気持ちを・・・

   知らず知らず確認している自分がいた

実際自分自身にも説明ができなかった。

   胸が閊えたような・・・息苦しい、妙な想い・・・

   これは何なんだろうか・・・




『ボス・・・依頼されてた例の件・・調べはついたぞ』
そんな中でも、レオと組んだ僕の仕事は時を休むことはなかった。

「ああ・・・今、こっちに届いた・・・確認してる」
レオに依頼した仕事は、僕の想像よりも遥かに早く、遥かに完成度が高い形で
僕の手元に届けられた。

『どうだ?』

「OKだ・・・この後も言った通りにやってくれ」

『しかし・・ボス・・・ひとつ質問してもいいか』

「何だ」

『こんな小さな会社潰して・・・心が痛むことはないのか』

「レオ・・・狩人は・・・鹿の目を見ては引き金は引けない
 情けを掛けて容赦しようものなら・・・今度はこっちが反対にやられる・・・ 
 僕は、この世界で生きていくためなら・・・どんなことでもやってみせる
 泣く奴がいたとして・・・それがどうした。
 そんな涙に絆されるな・・・いいか。鹿の目は見るんじゃない。」

『お前には・・・情というものは存在しないらしいな・・・
  まだ若いのに・・・どうしたらそんなにも冷徹になれる?』

「情?そんなものが何の役に立つ?・・・人間なんて所詮、自分のことだけだ。
 迷うな・・・やれ。」 僕はレオに向かって静かに言った。


仕事は至って順調に運んでいた。
予定通りに小さな会社の買収を繰り返し、資産運用のためのマーケットを広げていた。
その中にはやっとの思いで手に入れた会社をとられてしまう事業家もいた。
しかし僕のやり方にレオの言う通り、情け容赦は微塵も無かった。

僕は“弱肉強食”・・・まさにその真髄を突き進んだ。

時に怯むレオにすら、文句は言わせなかった。

   そうだ・・フランク・・・今はそんな時じゃない
 
   何を無駄なことに心を囚われている?

   お前にはやらなければならないことが山ほどあるじゃないか

なのに・・・
レイダースの刃を研ぐその傍らで、
彼女の顔を見なくなって既に一週間が経ったことを
僕の頭はしっかりと刻んでいた。
そればかりか、僕は仕事に掛ける時間以外の殆どをベッドの上に寝転んで、
ただ上空を仰ぐだけに費やすようになっていた。

「明日からまた・・・いないんだぞ・・・僕は。 」 僕は天窓に向かって呟いていた。

   誰に・・・言ってるんだ?

   とうとう・・・可笑しくなってしまったか?・・・フランク・・・

僕は自分のその呟きに苦笑して、ブランケットを頭からかぶった。

その時だった。
玄関のチャイムが鳴って、僕は勢い、ブランケットを顔から外した。
その音に僕の頭と心臓が瞬時に反応していた。

僕は慌ててベッドから起き上がると玄関に走り、訪問者が誰かも確認せずに
ドアノブを回した。

彼女だった・・・

   やっと・・・彼女だった・・・

「フランク!凄いのよ!フランク!
 この前、あなたがくれた問題ね・・試験問題・・殆ど的中よ
 先生がこんな難しい問題、できるなんて凄いって褒められちゃって・・
 今まで、君は何してたんだって・・こんな力があったのかって・・
 そうなるとね・・勉強面白くなっちゃって・・
 ほら・・あなたに、学生の本分は・・なんて言われたし・・
 試験期間・・ちょっと頑張って勉強しちゃっ・・・た・・・・・・」

嬉々として機関銃のように話ながら部屋に入ってきた彼女を僕は自分の意思に反して、
ふいに抱きしめていた。

いや・・・自分の心のままに・・愛しさのままに・・彼女を抱きしめていた。


「フ・・ラン・・ク・・?」 
僕に抱きすくめられて、息苦しさを堪えるようにジニョンは僕の名前を呼んだ。

「どうして・・・」≪僕は今・・何を言おうとしている?≫

「えっ?・・・」

「どうして・・・来なかった?・・・」≪どうして僕に逢いに来なかった?≫

「えっ?・・あ・・し・・試験・・・が・・・」

「・・・来れないなら・・電話くらい・・・」≪どんなに心配したと思ってるんだ?≫

「・・・電話・・番号・・・知らないわ・・教えて・・・くれなかったくせに・・・」

「フッ・・・そうだったっけ・・・」

「・・・私を・・・待ってて・・くれた・・の?・・・」

「いいや・・・」

「だって・・・」

「待ってない・・・」 ≪嘘をつけ・・≫

「だって・・・」

「待ってない!」
次第に僕は彼女を抱きしめたその腕に渾身の力を込めていた。
 

「フランク・・・苦・・しい・・・」

「黙れ・・・」 

「・・・苦しく・・・ない・・・」

       
僕はかなり長いこと、玄関ドアの前でその顔
を見ないまま、無言で彼女を抱きしめていた。

彼女は最初僕の行動に驚いたように、少しじたばたしたけれど、いつの間にか、
僕の背中に両手を回して僕にしがみついていた。

   初めての・・・彼女の華奢な腕が僕を抱く感触が・・・

   僕の服を握って作った彼女の拳の感触が・・・愛おしかった・・・

 

 

   いったい・・・どれくらい、そうしていただろうか・・・

抱きしめた手を少しだけ緩めて、僕はやっと彼女の顔を覗いた。

そして彼女の乱れた髪を指で梳きながら、その黒い瞳を真直ぐに見つめていた。

今度は・・・
いつまでも僕に熱く見つめられて
彼女の頬が次第に薄紅に染まっていく

それでも僕は・・・彼女から目を逸らさなかった

彼女もやがて・・・照れたような幼い表情から僕を恋う女の顔になった

そして・・・
互いに引き寄せられるように、僕たちは・・・熱く唇を合わせた

 

   ああ・・・そうだよ・・・きっと、そうだ・・・

   僕は君を・・・


   ソ・ジニョンという・・・女を・・・

   待っていた・・・

 
      ・・・認めるよ・・・















































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