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OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
サークルオーナー: tomtommama | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 335 | 開設:2006.11.13 | ランキング:30(12728)| 訪問者:3841970/4685596
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mirage
創作mirage-儚い夢- 2006.6より with BYJにて連載中
No 140 HIT数 5014
日付 2010/10/28 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル mirage-儚い夢- 1.出逢い②
本文



    

               Thema music select &collage by tomtommama

                       story by kurumi







       



   

「逃げたりしないよ・・・待ってて・・・」

僕はつい彼女にそう言っていた。≪何を馬鹿なことを言ったんだろう・・・≫
この僕があの子に付き合う義理が何処にあるというんだ。

僕は自動販売機の前でジーンズのポケットの中から出したコインを指で弄びながら、
いっそこのまま黙って帰ってしまおうかと考えていた。

それなのに僕は結局、温かいコーヒーを二本買ってしまった。
そして、素手で持つには少し熱過ぎる缶をジャンパーの両のポケットにひとつずつ
入れて、僕は今来た道を足早に引き返していた。

僕が三階までの階段を三段飛ばしで駆け上がると、彼女が見えた。
彼女はドアの外に出て僕を待っていたようで視線の先に僕を見つけるとまるで
迷子の子供が探していた親をやっと見つけたかのように瞳を輝かせ僕に向かって
走って来た。

そしておもむろに僕に抱きついた。

「どうしたの?」 

その時僕も、自分の意思とは考えにくい行動を取っていた。
僕は彼女の背中に自分の腕を回し、彼女をしっかりと抱き止めていた。
そしてそれを不思議なことだとは思わなかった。

『帰って来てくれないかと思った・・・』 彼女は僕の腕の中でそう言った。

≪また・・・ハングルになってるよ≫ 僕は心の中でそう思いながら
「逃げないって・・言ったでしょ・・さあ、中に入ろう・・」
彼女を優しく宥めていた。

中に入って彼女は椅子の上からブランケットを手に取り胸に抱えると
僕に向かって初めての笑顔を向けた。

「ロッカーの中にあったの・・・一枚だけだけど・・・」
ものすごい宝物でも見つけて来たかのように、嬉しそうに微笑む彼女が
一瞬愛しく思えて、僕は思わず首を振った。

「あの・・」 彼女が僕の様子に、ブランケットを抱えたまま戸惑っていた。

「良かったね・・・寒いから掛けるといい・・・」 
僕はそう言いながら、そのブランケットを肩に掛けてあげようとした。

「いいえ・・・あなたに・・・」 彼女はそう言ってブランケットを僕に押し返した。

「僕に?・・僕はいいよ・・・君こそ、寒いでしょ?」

「私は大丈夫です」 僕は思わず声を立てて笑ってしまった。

いくら寒いからといって、女の子を放って自分だけ暖かい思いをしろと?
「可笑しいですか?」
「あ、いや・・・そうだ。」
僕は彼女からブランケットを受け取ると自分の肩にそれを掛けて、一人掛けのような
小さなソファーに隣に少しスペースを空けて腰を下ろした。

そして僕は自分の右側に無言でブランケットで空洞を作り、彼女に入るように目で
合図した。

彼女は最初躊躇っていたものの、にっこりと笑ってごく自然に僕の腕の中へ、
いや・・暖かそうなブランケットの中に入って来た。

僕はブランケットを二人の前で重ねるように合わせると、その中でさっき買って来た
コーヒー缶をポケットから取り出し彼女の手に握らせた。

「暖かい・・・」 彼女は本当に温かそうにそう言った。

「君・・・おかしな人だね・・・」

「・・・・・?」 彼女は「ん?」というように僕を見上げた。

「僕が君を・・・さっきの男達みたいに襲うとは思わないの?」

「思いません。」 彼女は自信有りげにそう言った。

「どうして・・・そんなに・・」≪初めて会った僕を・・・≫
「信じることができるの?」

「どうして?・・う~ん・・目・・・あなたの・・・」
彼女は少し顔を持ち上げて天井を見上げると考えるしぐさをしてからそう言った。

「目?・・僕の?」

「ええ、あなたの目はとても澄んでいて・・・とても綺麗だから・・・」 
またも彼女は自信たっぷりにそう言った。

「そんなこと・・・言われたことないや・・・」

「そうですか?」

「一度もね」

「でも・・・私の勘、当たるんですよ」

僕はまた声を立てて笑った。
彼女は首をかしげて、「どうして笑うの?」と僕を可愛く睨んだ。

さっきからどうしてここにいなければいけないのかと悶々としていた僕が
この数時間の間にいつしか彼女とこうしていることに疑問を持たなくなっていた。

≪それは・・・何故だろう・・・≫

それは・・・
僕の横で寒さに少し体を硬くしてうつむいた彼女の長いまつげが・・・
あまりに美しかったからかもしれない。

「そんなに信用されたら・・・何も出来ないね・・・」 
僕はそんな冗談を言いながら、自分の心の変化を面白がっていた。

「えっ?」

「いや・・・何でもない・・・」 僕は彼女から視線を逸らした。
一瞬、さっきの自分の言葉が、決して冗談ではなかったことに、
僕自身が気づいてしまった。
       
僕と彼女との突然の出逢いはこうして始まった・・・

この時僕達はまだ・・・互いに名前すら・・・


        ・・・知らなかった・・・




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