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OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
サークルオーナー: tomtommama | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 335 | 開設:2006.11.13 | ランキング:30(12728)| 訪問者:3854292/4697918
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mirage
創作mirage-儚い夢- 2006.6より with BYJにて連載中
No 16 HIT数 6784
日付 2007/01/27 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル mirage-儚い夢- 16.存在の理由
本文



     









寮の前でジョルジュが待っていた

       「オッパ・・・」

数日前の気まずさが二人の互いへのまなざしに残っていた

       「どうした?・・・眼が赤いぞ・・」

       「・・・・・・」

       「あいつと何か・・あったのか・・・」


       「何でも無いわ・・・何でも・・・無い・・・」

私は思わず目を伏せてジョルジュの疑いの視線を避けた

       「ジニョン・・・お前・・・相変わらず嘘が下手だな」

       「・・・・・・」

       「お前は世の中のこと何にもわかっちゃない・・・
        ほんとに・・・ガキだ」

       「・・・三つしか違わないくせに・・・」

二人の間に少しばかりの笑みがこぼれた

       「ジニョン・・・話がある・・・」

       「・・・?」

       「・・・・・・国へ・・・帰らないか・・・」

ジョルジュの突然の言葉に私は驚き、声を詰まらせた

  
       「・・・・・・」

       「おじさんが心配してる・・・学校は辞めさせる・・・
        そう言ってた・・・」

       「どうして?・・・そんな急に・・・いつ・・そんなこと・・・
        私は聞いてない・・・それにまだ学校始まったばかりだわ」

       「昨日、おじさんと話した・・・
        学校は韓国で行けばいい・・・俺も・・・家に戻ることにした」

       「・・・・・・父に・・・話したのね・・・彼のこと・・・」

       「おじさんは俺たちの結婚を望んでる・・・」

       「・・・・・オッパ!ごまかさないで」

       「少し早いけど、進めてもらうよう話した・・・わかってるな?
        おじさんの意見は絶対だ!」

       「どうして?」

       「どうして?・・・決まってるだろ!お前を愛してるからだ・・・
        それに・・・いつかはそうなることだった・・・」

ジョルジュは強い決意をみなぎらせて私の目をしっかりと
見つめて言った


       「私の気持ち知ってるのに?・・・・・・」

       「関係ない!」

       「関係ない?それが一番大事なことだとは思ってくれないの?」

       「・・・言ったはずだ・・・俺は・・・
        お前を取り戻すためなら、どんなことでもする!」

       「そんなの・・卑怯よ!」

       「何とでも言え!」

       
「私は・・・帰らないわ」

       「俺がお前を連れて帰らなければ、おじさんが連れに来る」

       「・・・・・・」

       「そんな目で見るな・・・・卑怯だと思うならそれでもいい
        だが・・・何としてもお前をあいつに渡すわけにはいかない

        おじさんに・・お前が!男にだまされてる・・・そう言った        
        親父に泣きを入れて頭を下げた・・・
        家に戻らせて欲しい・・・そう・・・言った
        それがお前との結婚の早道・・・そう思ったからだ
        
        恨むのなら恨め!お前を取り戻すためなら・・・
        今まで親父に楯突いた男のプライドなんていくらでも捨てる
        俺は絶対に後悔しない・・・」

       「ジョルジュ!どうかしてる!」


       「 ああ!どうかしてる!だがそれはお前もだ!
        あいつのことは忘れろ!あいつはお前には相応しくない!」

       「どうして、そんなことわかるの?勝手なこと言わないで!」

       「あいつにそうして泣かされてもか・・・
        俺はお前を絶対に泣かせたりはしない・・・な!帰ろう・・・」

       「いや!帰らない!」

       「おやじさんの援助なしでどうやってアメリカで暮らす?」

       「オッパ・・・ひどい・・・」

       「お前は!・・・俺と韓国へ戻る!・・・それが結論だ!」

幼い頃から今まで私に対して、決して自我を出すことなく
受け入れる優しさだけを見せてくれていたジョルジュが
フランクと対峙して変貌したように思えた

       「・・・・・・」

私の言葉など聞き入れない、彼はそう決意したかのように
厳しいまなざしを決して私から逸らさなかった







ソフィアは窓辺に寄りかかって静かに外を眺めていた
僕はベッドに腰掛けて自分の足先だけを見つめていた

静かな沈黙の時間がソフィアと僕に冷静を取り戻させていった

もっと早くに彼女と話をしなければならなかった・・・
そう思いながら僕もまた彼女から逃げていたのかもしれない

先に口を開いたのは僕だった・・・
僕はそのままの姿勢で言葉だけを彼女に向けた

       「何を考えてる?・・・」

       「・・・あなたは?・・・」

       「・・・思い出してた・・・」

       「・・・何を?・・・」

       「四年前のこと・・・」

       「・・・・・・」

       「覚えてる?・・・」

       「・・・・・・」

       「四年前のあの日・・・僕がまだ18の時だ・・・
        バイト先で強盗に出くわした日・・・」

       「ええ・・覚えてるわ・・・あの頃私たちは近くでバイトしていて
        よく一緒に帰ってた・・・あの日先に仕事が終えた私は・・・
        いつものようにあなたを迎えに行った・・・

        そのとき、周りの物々しさに驚いて慌ててあなたを探したわ・・・
        すると目の前に現れたのは・・・
        あろうことか・・自分の頭に銃を突きつけて
        今にも引き金を引きそうな勢いのあなただった・・・」

       「・・・・・あの時・・・あなたが現れなかったら・・・
        本当に引いてたよ・・・きっと・・・」

僕は両手を枕にしてベッドに寝転がると上空を仰いだ
        
       「・・・・・・」

       「昔・・・あなたに話したことあったっけ?・・・僕の身の上話・・・」

       「いいえ・・・一度も・・・」

       「そうだった?・・・・あなたは知ってるみたいだったけど」

       「・・・・あなたを羨む輩から・・・あることないこと・・・声が聞こえてたわ」

       「あることないこと?・・・噂はほとんど事実だったよ・・・」

       「だからって・・・あなたが恥じることは何もない」

       「そうかな・・・大きな弱みだと思うけど・・・」

       「弱み?」

       「ああ・・・僕の最大の弱み・・・
        10歳で親に見捨てられて・・・何もわからないまま
        この遠い国に連れてこられた・・・

        その頃の僕の気持ちをどう表現していいかわからない・・・
        突然・・・僕の周りの人間が・・・話す言葉すら違うんだ・・・

        結局養父母にもその生活にも馴染むことができなかった・・・
        とにかく・・・その家を出たかった・・・
        早くから全寮制の学校を望んだのも・・・そのためだ・・・

        最初はね・・・ひとりで十分生きられる・・・そう思ったんだ・・・
        誰に気兼ねすることもなく・・自分の思うように生きる・・・
        その方が僕の性に合ってる・・・そう思ってた・・・

        無心になって勉強したのも、コンプレックスの裏返し
        どんな些細なことにも、誰にも負けない・・・
        そう自分に言い聞かせて生きてた

        辛いことが遭った時はいいんだ・・・
        それは自分ひとりで十分解決できた・・・

        でも・・・嬉しいことが遭った時・・・
        喜びを誰かに伝えたい・・・そう思った時・・・
        本当にひとりきりなんだと思い知らされる・・・」


       「不思議ね・・・どれだけの人間があなたを羨んだかしれないのに・・・」


       「フッ・・・確かに・・・学校では誰もが僕に注目してた・・・
        最年少で奨学金を得られるほどの抜きん出た成績・・・
        大学はハーバードへ・・・
        何人もの教授が僕の未来に期待し、褒め称えた・・・
        褒められて・・・凄く心が弾んで寮に帰る・・・
        でも、その弾んだ心が次第にしぼんでいくんだ・・・

        何処を振り向いても
        喜んでくれる人が誰もいない・・・
        電話で知らせる親も・・兄弟もいない・・・

        気がつくと・・・鏡の中の自分に向かって話してた・・・

        それがね・・・笑えるんだ・・・
        自分に向かって、楽しげに話しかける
        それなのに・・・次第に・・・
        目の前の僕の顔が歪んでいく・・・それで初めて・・・
        泣いている自分に気がついてた・・・

        今なら・・・そんなことどうってこと無い・・・
        でも子供だったんだ・・・あの頃・・・たかがそんなことで
        簡単に心がしょげ返ってた・・・

        いつの間にか・・・僕は・・・
        嬉しいことを嬉しいと感じなくなってた・・・

        物事を全て冷めた目で見るようになって・・・
        人との交わりもわずらわしく思うようになった

        何もかもが嫌になってた・・・

        僕は何のためにこの世に生まれたんだろう・・・
        自問自答しても・・・答えがみつからない・・・

        生きていることさえ面倒になってた・・・
        それでも毎日・・・食べて・・寝て・・息をしている・・・
        そんな自分が嫌だった・・・

        そんな時だった・・・あの男と出くわしたのは・・・

        銃を突きつけられて・・・最初は責任感から・・金を奪われまいとした・・・
        僕はレジを開けようとせず彼を逆上させていた
        僕のこめかみに冷たい銃口が当てられたとき・・・
        思わず“殺してくれ”そう口に出してた・・・打って変わって
        僕の狂喜した様子に、強盗の方がひるんでしまってた・・・

        “お願いだ・・死にたいんだ・・殺してくれ・・・
         どうした!殺せないのか!お前が殺せないなら!”

        僕は護身用に店長がしまってあった銃を取り出して
        自分の頭に突きつけた・・・

        あの時は・・・
        あの男より僕の方が狂ってた・・・」

        「・・・・・・」

        「引き金を引く寸前だった・・・あなたが群集から飛び出してきて
         僕に向かって大声で怒鳴った・・・

         “フランク!・・・ひとりで逝くのは許さない!・・・
          あなたは・・・ひとりじゃないのよ!・・・”

         僕はあなたの行動に驚いた・・・

         何をやってるんだ!銃を持ってる奴がそこにいるんだぞ!
         その男に背を向けて、僕の前に立ちはだかったあなたが
         逆に気になって・・・僕は引き金を引くのを・・忘れた・・・

         幸いに男はもう犯行を続ける気力を失いかけていて・・・
         あなたに危害を加えることはしなかった・・・
         警官が男を取り押さえている間・・・そんな外野をよそに
         あなたは僕をずっと睨んでた・・・」

        「・・・・・・・」

        「・・・・・・・」

        「・・・・・あの時・・・周りのものは何も見えなかったわ・・・
         あなたの目が本気だと思った・・・前から不安に感じていた・・・
         そのことが目の前で起きている・・・それしか見えなかった・・・」
   
        「無鉄砲なんだよ・・・はらはらした」

僕はやっと彼女に視線を向けた

        「あなたに言われたくないわ」

彼女もまた、僕の方に向き直って微かに笑った

        「それに凶暴」

        「誰が?」

        「僕を叩いた」

        「叩いた?・・・」

        「思い切りね・・・痛かった・・・本当に痛かった・・・」

        「それは忘れたわ」

        「そのあと、僕を抱きしめてくれたことも?」

        「・・・・・・」

        「僕はあなたの腕の中で思い切り泣いた・・・
         本当は怖かったのに・・・きっと逆上していた・・・
         僕が人前で泣いたのはあの時が初めてで・・最後だ・・・

         嬉しいことが遭ったときも・・・
         あなたが心から喜んでくれていたことに
         その時、初めて気がついた・・・」

        「・・・・・・」

        「僕はいつの頃からか・・・あなたがくれるものを
         当たり前のように受け取っていたんだね・・・」

        「・・・・・・」

        「あなたが僕にとって・・特別な存在だった理由を・・・
         忘れていた・・・」

ソフィアは一旦窓の外へ視線を戻して遠くを見つめていた
そしてまた彼女が視線を自分の足元に移して
小さくため息をもらしながらポツリと言った


        「特別な存在・・・それには理由が必要なの?」

        「・・・・・・」

        「彼女は・・・」

        「・・・・・・」

        「彼女はどうやって、あなたのあの笑顔を引き出せたのかしら・・・」

ソフィアはまた遠くに視線を移しながらそう言った

        「・・・・・・」

        「さっき・・・私を彼女と間違えて振り向いたあなたの笑顔・・・
         ちょっとショックだったわ・・・
         今まで一度も見たことない・・・柔らかい・・・顔・・・
         そんな風に・・・彼女を見るのね・・・」

彼女は今度はそう言いながら僕に振り返り微笑んだ
        
        「ソフィア・・僕は・・・」

        「フランク・・・帰るわ・・・何だか、凄く疲れた・・・」

        「ソフィア・・・」

        「お願い・・・今はまだ・・・何も言わないで・・・
         私は今・・・何も答えられない・・・」

        「・・・・・・・」


         何も言わないで・・・

   あなたはそう言った・・・

         今はまだ何も答えられない・・・

   あなたがそう言った・・・


   でも・・・


      何を言えばいいのかわからなかったのは・・・


             ・・・僕の方なんだ・・・

    


    
   










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