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OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
サークルオーナー: tomtommama | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 335 | 開設:2006.11.13 | ランキング:30(12728)| 訪問者:3842675/4686301
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mirage
創作mirage-儚い夢- 2006.6より with BYJにて連載中
No 18 HIT数 6961
日付 2007/01/27 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル mirage-儚い夢- 18.逃避行
本文



      

collage by sakuralong

a picture&music by tomtommama

story by kurumi






空港を後にした車の中で僕たちはしばらく無言だった


この二日間に・・・

僕が自分自身に打ちのめされていた間に・・・

彼女の身に起こったことを思って身が切られる思いだった


失えないたったひとつのものを実際に失うところまで来て

僕はやっと自分の心に決着をつけることができたというのだろうか


しかし・・・この想いを言葉に出して彼女に告げることを

躊躇する自分がいた


それは・・・まだ僕の奥底に潜むソフィアへの想いなのか・・・

それでも、僕は彼女の手をしっかりと握って離さなかった




   「怒ってるの?」


僕が前方を見据えたように黙したままハンドルを握っていると

彼女が恐る恐る僕の顔を覗いながら声を掛けた


   「・・・・・」


   「手・・・痛い・・・それに・・・
    フランク・・・怖い顔してる・・・」


   「・・・・・」


   「やっぱり・・怒ってるのね・・・
    ごめんなさい・・・
    あなたに黙って帰国しようとしたこと」


   「・・・・・」


   「でも、あなたも悪いんですからね!・・
    その・・・連絡くれなかったし・・・

    それに・・・・・きゃー!


僕は車を乱暴に路肩に移動して急ブレーキをかけて止めた


   「びっくりした・・・フランク・・・どうしたの?
    危ないじゃない!」
    

   「・・・・・」


   「フランク?・・・」


   「・・・・・・・・愛なんて・・・」


   「えっ?」


   「愛なんて・・・邪魔なだけだ・・・
    そう思ってた・・・」


   「・・・・・」
     

   「これから僕は・・・
    世の中を這い上がっていかなきゃならない・・・

    愛だの恋だのと、生ぬるいことに
    囚われてる暇なんて無い・・・そう思ってた・・・

    それなのに・・・その僕が・・・何処か可笑しくなった・・・
    とても今までの僕とは思えない・・・

    自分自身をコントロールできないなんて・・・
    初めてのことだ・・・

    すべて君のせいだ・・・
    君のせいで・・・ まるで可笑しくなってしまった・・・」



   「私がいない方がいいってこと?」



   「・・・君さえいなければ・・・
    こんな苦しい想いをせずに済んだんだ・・・

    人の気持ちなんて・・・僕には何ら関わり知らぬこと・・・
    ただ仕事のことだけを考えて・・・

    世の中なんて楽に渡れたはずだった・・・」


   「じゃあ・・迎えに来なきゃよかったじゃない」


   「君さえ現れなかったら・・・」


それまで正面を見据えていた僕が

彼女に厳しい視線を向けて射すくめるように見つめた
      

   「君からの電話を受けてから・・・さっき、君を見つけるまで
    僕がどれほど心配したか・・・わかる?

    君が遠くへ行ってしまうと思って・・・狂いそうだった・・・
    本当に・・・死ぬかと想うくらい心臓が張り裂けそうだった・・・

    君が・・・僕の前からいなくなることが・・・
    どれほど僕を恐怖に陥れることになるのか・・・
    君はきっと想像もできないんだろうね?・・・」 


   「・・・・・・」


   「どうするつもりだったんだ?」


   「・・・・・・」


   「もし・・・あのまま逢えなくなってたら・・・
    あのまま・・・はぐれてしまってたら・・・僕は・・・
    どうやって・・・君を・・見つければ・・・」



        フランクはそう言ったまま・・・

        深く澄んだ褐色の瞳の端から一筋の涙を落とした

                             

   「フランク・・・」


   「・・・・・・」


   「フランク・・・ごめんなさい・・・もう・・しないわ・・
    ・・・あなたを置いて・・・何処へも行かないわ・・・」



        今目の前で涙を流すこの愛しい人は・・・

        私の・・・私だけの・・・フランク・・・


        そうよね・・・

        あなたを信じて・・・いいのね?・・・


        私は彼の頬に掌を添えて・・・指でその涙を拭いた

        彼は私の手を自分の手で包みこむと

        涙を拭った私の指にそっとくちづけをくれた

                          


   「ひとつだけ・・・聞いてもいい?フランク・・・」


   「・・・・・・」


   「彼女のこと・・・」  


   「・・・・・・」          
     

   「・・・・・・・私・・・あの人に会って・・・凄くショックだった・・・
    いいえ・・・あの人の存在がショックだったんじゃないの・・・

    でも私・・・あの人に初めて会ったあの日・・・
    あの人の目に・・・簡単に射抜かれたみたいで・・・
    まるで逃げるように部屋を出てた・・・

    あの人のあなたを想う気持ちがきっと・・・
    私にそうさせたのね・・・
    私は・・・あの時・・・
    あの人に降参したんだわ・・・きっと・・・」


   「それで?」


   「えっ?」


   「それで・・・降参したまま・・・逃げようとしたの?」


   「・・・・・・・そう・・・なのかな・・・」


   「彼女は・・・僕にとって大切な人だ・・・」


   「・・・・・・・」


   「そんな顔しないで・・・ジニョン・・・
    ごめん・・・きっとこの想いはこれからも変わらない・・・

    男と女としてじゃない、そう言ったら卑怯かもしれない・・・
    僕と彼女は男と女の関係にあった・・・それは事実だ・・・

    彼女が僕を深く愛してくれていることも・・・
    その彼女の想いを僕が断ち切れず悩んだことも・・・事実・・・

    でもどんなに考えても・・・どんなに悩み抜いても・・・
    僕の中に息づいている女はたったひとりだった・・・

    ただひとりだけなんだ・・・僕が愛している女は・・・
    これは誰にも・・・神ですらどうすることも・・・できない・・・」


   「・・・・・・・ただひとり?・・それは・・誰?」


   「・・・・・・・教えない」


彼女は呆れたような笑顔で一度フロントガラスの方を向いて

再度僕に向き直って小さく睨んだ


   「いじわるしてるつもり?フランク・・・」


   「別に?」


僕たちは互いの瞳の中で微笑む自分の姿に満足したように

優しく愛しさを込めて抱き合った


   「愛してるのは君だけだと・・・言って・・・」


   「君だけを愛してる・・・」


   「本当に?」


   「ああ・・」      


     だったら・・・

     だったら・・・いいわ・・・

     あの人があなたの大切な人でも・・・
  
     本当はね・・・

     ちくりと胸が痛いけど・・・許してあげる・・・



   「私も・・・」


   「ん?」


   「私も・・・愛してる人はひとりだけ・・・」


   「・・・それは・・・誰?」


   「・・・・・・教えない・・・」


   「いいよ・・・教えてくれなくても・・・」



       彼はそう言いながら私の唇に静かにくちづけて

       私の言葉を心で聞いた



       静かに流れるこの時間(とき)を・・・

       ふたりだけで漂っていたかった・・・


       いつまでも漂っていたかった・・・



   君だけを・・・

                あなただけを・・・



        ・・・愛してる・・・








あいつの前から彼女を連れ去ったことが何を意味するのか・・・

これから僕は何をしなければならないのか・・・

・・・ただ・・・

彼女を自分から切り離すことはもうできない・・・
     

彼女の話から、このまま彼女を僕のアパートに連れ帰っても

あいつに、簡単に探し当てられるだろう


今はまだ・・・僕には何も無い・・・

何より韓国の彼女の身内に語れる歴史が無い・・・


僕は自分の断たれた歴史を一笑に付すような

名声と地位と財産を手に入れたいと・・・今まで以上にそう思った


彼女との愛を成就するためには・・・

それだけが僕の成すべきことだと・・・そう思っていた・・・



       
僕は取り合えず、彼女をマサチューセッツの学校へ連れて行った


   「ここが・・・フランクがお勉強してるところ?」


   「ああ・・・」


   「ここ・・・さっき、門のところに、ハーバードって・・・
    もしかして・・・あの、ハーバード?・・・」


   「あの?・・ハハ・・確かここは世界にひとつだと思うよ」


   「・・・・・フランクって・・・凄い人なのね・・・」


   「疲れた?・・少し寝るといい・・・
    隣の部屋に仮眠用のベッドがある・・・
    僕しか使ってない・・・
    安心しておやすみ・・・
    明日のことは、明日考えよう・・・」


   「ええ・・・フランクは?」


   「ん・・僕はちょっとやることがある」


   「そう・・・おやすみなさい」


   「おやすみ・・・あ・・待って・・・」


   「・・?」


僕は彼女を抱き寄せて彼女の耳にくちづけながら囁いた


   「大丈夫・・・大丈夫だよ・・・きっと・・守る・・・
    どんなことがあっても・・・離さない・・・
    いいね・・・」


   「うん・・・」

彼女は僕の背中に回した腕に力を込めてただ頷いた


   「いったい!何を考えてるんだ!お前・・
    俺を殺す気か!」




レオの怒鳴り声が受話器を耳に当てるまでもなく響き渡った


   「すまない」


   「すまない、で済む仕事じゃないんだぞ!
    取り敢えず今回は俺の判断で切り抜けた
    お前・・・やる気はあるんだろうな」


僕をボス・・と呼ばないレオの言葉が怒りの程を現しているようだった


   「必ずやる・・・」

   「・・・・・・明日、いや・・もう今日だな・・・
   会って話がしたい・・・それまでに資料の用意を・・・いいな」


   「あ・・・ああ」


この三日間、ろくに寝ていないことなど何の理由になろうか・・・

レオの怒りは当然のことで、僕は何ひとつ言い返す術を持たなかった


   「何だ?」

   「いや・・・わかった・・・」



レオからの資料の分析に追われて、気がつくともう朝日が昇っていた


   「フランク・・・」

   「ん?・・・あ・・おはよう・・・起きたの?」

   「寝なかったの?・・・」

   「ん・・・」

   「大丈夫?」

彼女は心配そうに僕の顔を下から覗いた


   「大丈夫・・・君のキスがあれば・・・」

   「フランク・・・フフ・・・じゃあ・・」


彼女はまるで女神のように微笑んで僕の頬に唇を寄せた

   「コーヒー・・・それ?」

僕の部屋と同じコーヒーセットが置かれているのを見つけた彼女は

慣れた手つきでコーヒー豆を挽いた




   「フランク?・・・」

研究室のドアを僕の名を呼びながら開けてソフィアが入って来た

ジニョンは思わず隣の仮眠室へと走り去った


   「逃げるな!・・・ジニョン・・・出て来い」


僕はジニョンに向かって叫んだ

ジニョンはゆっくりとドアを開けて僕とソフィアの前に立った


ソフィアは僕たち二人を交互に見て一度目を閉じた後

ひとつため息をついて僕に顔を上げた







   「レオ弁護士から、あなたの所在を知らないだろうかと・・・
    昨晩、連絡があったわ・・・知らないと答えた・・・
    でも、気になって・・・そしたらここに明かりが・・・
    いったい・・・どういうこと?」


   「彼女を連れて逃げて来た」


   「逃げて?・・・」


   「理由は言わないよ・・・でも・・・
    今、彼女をひとりにするわけにはいかない」


   「ハッ・・・それで?ここは学校よ
    しかもこの棟は部外者立ち入り禁止・・・」



ソフィアが少し呆れたようにため息をついた


   「住む場所を用意するまで・・・見逃して・・・」


   「あなた・・・大詰めを迎えた仕事があるんじゃないの?」


   「ああ・・これから・・NYに帰る」


   「彼女は?」


   「一緒に・・・」


   「あ・・フランク・・私は・・・何処か小さなホテルに
    あなたのお仕事の邪魔したくない」


   「いや!・・・一緒に連れて行く」


   「だって・・」


   「・・・・・・私が・・・預かるわ・・・」


   「・・・・・!」


ソフィアの突然の言葉に僕もジニョンも驚きを隠せず彼女を見た



   「あなたの仕事が落ち着くまで・・・彼女を私が預かる・・・
    今、取り掛かってる仕事・・・不意にしたら、今までの
    あなたの苦労が無駄になる・・・そうでしょ?」


   「だけど・・・せっかくだけど、それはできない」


   「あなたはどう?フランクはあなたをひとりにしたら
    誰かに連れて行かれる・・・そう思って恐れてるの・・・
    でも、彼の仕事に、間違いなくあなたは邪魔になるわ・・・
    それでも・・・付いていく?」


   「・・・・・・・いいえ・・・」

   「じゃあ・・・どうする?」

   「・・・・・あなたと・・・残ります」

   「そう・・・なら、話が早いわ・・・フランク・・・
    そういうことだから・・・」

   「ソフィア・・・どういうつもり?」

   「どういう?・・・私が彼女を・・・どうにかするとでも?」

   「そんなこと思ってない」

   「なら・・任せなさい」

   「フランク・・・私は大丈夫・・・お仕事行って来て・・・
    お願い・・・これ以上あなたの邪魔をしたくない」

必死に懇願するジニョンの目を見ていると僕は頷くしかなかった


確かに、NYに連れ帰っても、仕事の間、結局は彼女をひとりにしてしまう

まだ、NYを離れていた方が安心はできた


   「・・・ソフィア・・・
    あなたに頼めた義理じゃないのはわかってる・・・
    でも・・・彼女をもう・・・失えない・・・」

   「いいから・・・早く、行きなさい」

僕はジニョンをソフィアの元に残してレオの待つNYへと急いだ



ソフィアさんはフランクを見送った後、しばらくドアを見つめて

小さくひとつため息をついた後、私に振り返った

   「さて・・・自己紹介がまだだったわね・・・ソフィア・ドイルよ
    多くは語らなくても・・・いいわね・・・」

そう言いながら彼女は白くて細い手をそっと差し出した

   「ソ・ジニョンと申します」

   「知ってるわ・・・フランクがそう呼んでたから・・・
    私が少し校内の用事を済ませる間・・・ここに・・・あ・・
    いいえ・・・私に付いて来る?」

   「はい」


ソフィア・ドイル・・・

私は彼女と初めて、真直ぐに対面した


   理知的で・・・

   何もかもに隙がない・・・


私は彼女が校内の用事を片付けて歩く間、

彼女の後を黙って付いて歩いた

   斜め後ろから覗く彼女の凛としたうなじが私に

   小さくため息をつかせた

フランクを・・・心から愛している・・・


     美しい人・・・

   でも・・・

      私もあなたに負けないほど・・・フランクを・・・


        ・・・愛しているんです・・・










                        2006.10.10作


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