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OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
サークルオーナー: tomtommama | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 335 | 開設:2006.11.13 | ランキング:30(12728)| 訪問者:3842874/4686500
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mirage
創作mirage-儚い夢- 2006.6より with BYJにて連載中
No 19 HIT数 7073
日付 2007/01/27 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル mirage-儚い夢- 19.抱擁 前編
本文















      







collage by tomtommama

a picture&music by tomtommama

story by kurumi





  
   「そんなに睨まないでくれる?」


   「えっ?」


   「さっきから、あなたの視線が痛いわ」


ソフィアさんが淹れてくれたコーヒーを飲みながら私は
自分でも気づかない内に彼女を凝視していたようだった


   「あ・・ごめんなさい・・・そんなつもりじゃ・・・」


   「・・・何か付いてる?私の顔・・・」


   「あ・・・・いえ・・あの・・お肌が・・・綺麗だなって」


   「ありがとう・・・・・?」


ソフィアさんは私の慌てぶりに
少しばかり苦笑しながら視線を下ろした


   「・・・・・・」


   「申し訳ありません・・・私みたいな・・・」


私はまだ彼女とどんな話しをすればいいのかもわからず
自分の身も何処に置いていいものなのかすらわからない
中途半端な心境の中にいた

そんな中で・・・
彼女を目で追うことが唯一冷静を保つ手段だった


   「誤解のないように言っておくわ・・・
    あなたを預かったのは私にとっても得策と思ったからよ・・・
    私はね・・・学校を出たら弁護士になる予定なの・・・
    彼が成功しているということは大きなコネクションにも繋がる

    つまり今後の私自身の仕事にも関わるということ・・・
    それだけのことよ・・・
    だから、あなたが恐縮する必要は何も無い・・・いい?」


彼女は先ほどまでの温和な表情を少し険しく変えた


   「あ・・・は・・い」


   「そうだわ・・・お腹すいたでしょ?
    少し遅くなったけど・・・何か作るわね・・・」

そしてまた、元の温和な彼女に戻って、キッチンへと向かった


   「あの・・お構いなく・・・」

口ではそう言いながら、自然現象には勝てなかった
お腹が小さく鳴る音を彼女に聞かれて気まずく照れ笑いを浮かべた
彼女は『クスッ』と優しい笑みを返してくれた


     こんな時・・・食べ物が喉を通らない・・・

     そんな女だったら・・・カッコいいのにな・・・

   

ソフィアさんが「有り合わせね」といいながら振舞ってくれた料理は
想像以上に美味しくて、食事を摂りながらの彼女との会話もまるで
私を緊張させない心遣いに溢れていた


彼女の所作ひとつひとつが優雅で上品で・・・
この世の中にこんな女性がいるのかと本気で思えた


事実、今日一日彼女に付いて歩いただけでどれほど彼女が優秀で
人望が厚く、完璧と言える女性であることを思い知らされた


      フランク・・・やっぱり・・・

      この人と残るんじゃなかったな・・・


      彼女のそばにいるとひどく

      自己嫌悪に陥りそうよ・・・


      あなたとソフィアさんて・・・

      似合い過ぎるくらい・・・似合ってる・・・





   「シャワーどうぞ・・・疲れたでしょ?
    これに着替えて・・・もう休むといいわ・・・
    ベッド・・・使ってね」

彼女は自分の部屋着を差し出してそう言った


几帳面にベッドメイクされた少し大きめのベッドはその上に落ち着きのある
色調のスプレッドが掛けられ、住まう人のセンスを覗わせるものだった


   「あ・・でも・・・ソフィアさんは・・・」


   「私はここでいいの・・・
    まだ、やりたいこともあるし」

そう言って彼女は腰掛けている椅子に視線を流した


   「でも・・それじゃ、あまりに窮屈・・・
    申し訳ないです」

ラブチェアー程の長さしかないその椅子はとても休むのに使えるとは思えなかった


彼女はもう一度その椅子を眺めた後私に振り返った


   「・・・確かに・・そうね・・・じゃあ、一緒に・・いい?」

そしてベッドを指差してウインクしながらそう言った


   「あ・・はい・・・」

改めて見渡すと・・・
何もかもが洗練され落ち着いたレイアウトの彼女の部屋が
どことなくフランクの部屋に似ているような気がして視線を落とした



バスタブの柔らかいソープに身を包まれながら
今自分の身に起きていることの重大さにおののくことよりも・・・
ソフィアさんの存在が大きくのしかかってくることの方が切なかった




      ソープの香りが・・・彼女の香りと同じ


      そして・・・何より・・・


      フランクが好きそうな・・・香り・・・




心地よいはずのこの香りさえも私を動揺させた





   「もしかして・・・気にしてるのかな?」

私がベッドの傍らで立ち尽くしていると、背後から彼女が声を掛けた


   「えっ?」


   「フランクはここには来たことないのよ・・・」


   「あ・・いえ・・そんなこと・・・」


   「気になってたでしょ?・・・
    フランクが好きそうな部屋だなって・・・」


   「いいえ・・・」


      気になっていた・・・

       
   「フランクとは・・・何処で?・・・
    あ・・ごめんなさい・・・」


自分の意思に反してつい口にしてしまったというように
ソフィアさんは一瞬後悔の色を顔に浮かべた

でも私はきっと、彼女のその問いかけを待っていた


   「助けてもらったんです・・・不良に絡まれてるところを」


   「へ~らしくないわね・・・余程あなたに惹かれたのかな」


   「いいえ、私が追いかけました・・ごめんなさい
    あなたという方がいらっしゃることも聞いていました・・
    彼ははっきり、恋人がいる・・
    邪魔をするな、そう言いました、でも私が・・
    無理やり・・追いかけたんです」

私はつい早口になっている自分に気づきながら
勝手に動く自分の口を止められなかった

   「あの人は悪くないんです・・・私が・・・
    凄く好きになって・・・しつこく付きまといました」


   「そんなに・・・必死に庇うことはないわ・・・」


   「でも・・・本当のことです」


   「じゃあ、あなたが私から彼を横取りしたの?」


冗談のような口調とは裏腹に彼女は私に少し厳しいまなざしを向けていた


   「・・・・・」


   「例え、あなたが無理やり彼を追ったところで・・・
    彼は誰にでも簡単に心を許したりしない男よ・・・

    こうは思えない?
    あなたたちが出逢ったのは必然で・・・

    あなたでなければならなかった・・・」


その言い方がまるで・・・
ソフィアさんが自分自身に言い聞かせているように聞こえた


   「フランクの・・・何処が好き?」


   「えっ?」


   「フランクって・・・ぶっきらぼうで・・・
    一見、決して優しいとは言えないわ・・・
    そんなフランクの何処に惹かれたのかしら・・・」


   「・・・・・・考えたこと・・・ありません・・・
    初めて逢った日から・・・あの人のことが頭から・・・
    いいえ・・心から離れなくて・・・
    必死に探したんです・・・
    何処の誰かもわからなかった・・・知っていたのは・・・
    フランクという名前だけ・・・でも・・・
    きっと逢えるはずだと信じてました・・・」


   「信じてた?・・・どうして・・・信じられたと思う?」


   「それもわかりません・・・」


   「わかりません・・・か・・・」


   「フフ・・・」


   「な~に?」


   「彼にもよく、“また・・わかりません・・・か・・”って・・・」


   「そう・・・でも、好きになるのに理由なんてないわよね
    “こんなところが好きです”と言われるより・・・
    ずっとここに伝わるわ・・・」

彼女は自分の胸に掌を当てて、そう言いながらにっこり笑った
    
       
   「・・・・・」


   「私のことを・・・何処までご存知?」


   「大切な人だと・・・」


   「フランクが・・・そう言ったの?・・・あなたに?」


   「はい・・・」


   「ばかね・・・
    女心がひとつもわかってないのね・・・」

私は彼女のフランクを非難するような言葉の中にも
彼への愛を感じて切なかった


   「気になる?私のこと・・・」


   「あ・・・いいえ・・・」


      本当は凄く・・・気になります・・・


   「愛されている・・・自信かな?」


   「あ・・いいえ!」


   「冗談よ・・・ごめんなさい・・・
    ちょっといじわる言ってみただけ・・・

    フフ・・・心配することないわ・・・
    私は彼にとって家族のようなものよ
    大切というのは・・・そういう意味・・・
    あなたにも大切な家族・・・いるでしょ?」


   「本当に・・・そうでしょうか・・・」


   「自信がないの?」


   「彼はあなたを愛してると思います・・・
    あなたも・・・あなたは・・・どれほど彼を愛してきたんでしょう・・・
    そして今でも・・・
    私はあなたの・・・彼への愛に敵うことができますか?」


   「私の・・・彼への愛に?・・・・」

   
   「・・・・・・」

   
   「それは・・・無理だわ・・・」


   「・・・・・・」


   「私の心は・・・私だけのものだもの・・・
    あなたの心も・・・あなただけのもの・・・

    どちらが勝っていて・・・どちらが劣ってる・・・
    そんなこと・・・どうやって計れるかしら・・・」


   「・・・・・・」


   「ただ・・・彼が必要としたのが私ではなく・・・
    あなただった・・・それだけのことよ・・・」


   「・・・・・・・」


   「男と女はね・・・
    神様に生を受ける前はひとつの体だったんですって・・・

    神はそれをわざと引き裂いて・・・この世に遣わした

    引き裂かれたそのふたつの体は
    何とかひとつの体に戻りたくて
    もうひとつの体を無意識に探すの・・・
    そして・・・惹き合い・・・愛し合う・・・

    でもね・・・誰もかれもが
    その引き裂かれたからだと巡り会う訳じゃないわ
    だから世の中には上手くいかないカップルもいる

    その代わり・・・
    本当に引き裂かれたふたつの体なら・・・
    まるで磁石のように引きあい離れないはずよ・・・」


   「・・・・・・」


   「フフ・・・昔母にね・・・教わったの
    “あなたも・・・その半身に巡り会うといいわね”って・・・」


   「半身・・・」
       

   「そう・・・半身・・・
    あなたたちがもしそうなら・・・」

彼女はそう言ってしばらく言葉を呑んでいた

      あなたたちがもしそうなら・・・


その後にどんな言葉を繋げたかったのだろう

    
   「・・・・・・」
        

   「ひとつだけ・・・お願いしてもいい?」


   「・・・・・・?」


   「彼を・・・フランクを・・・
    いつも・・・抱きしめてやって・・・
    心が壊れないように・・・いつも・・抱きしめてやって・・・

    フランクの心はガラスみたいで・・・
    あなたよりも・・・うんと子供で・・・
    誰かが抱いていてやらないと・・・
    いいえ・・・あなたが・・抱いていてやらないと・・・
    きっと簡単に砕け散るわ・・・」

              
   「・・・・・・・・どうして・・・」


   「・・・・・・?」


   「どうしてあなたは・・・そんなに・・・」


   「そんなに?」


   「いいえ・・・何でも・・・ありません・・・」


       どうして、そんなに彼のことがわかるんですか?


そう言いかけて私は口を噤んだ


聞いてしまったところで・・・どうすると言うの・・・

聞いてしまったところで・・・

ソフィアさんがフランクをどれだけ愛しているのかを

思い知るだけ・・・そんな気がした


   ソフィアさん・・・


   私はあなたのように大人ではありません・・・


   あなたのことが気にならないなんて・・・嘘・・・


   あなたを・・・大切な人だという・・・フランクの心が・・・


   まだ胸の奥に突き刺さっていて・・・凄く・・・苦しいんです・・・


       あなたたちが半身同士なら・・・


   あなたのその先の言葉を訊ねなかったのは・・・


   もしかして・・・フランクの半身が・・・


   私ではなくあなたではないのか・・・



        そんな自分の思いを恐れたからです・・・










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