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OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
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mirage
創作mirage-儚い夢- 2006.6より with BYJにて連載中
No 22 HIT数 7251
日付 2007/01/27 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル mirage-儚い夢- 21.ふたりだけなら・・・
本文















                     




collage by bluema

music by tomtommama

story by kurumi








僕たちは二人でキッチンに向かい
まず使い勝手をチェックした


「ジニョン・・・冷蔵庫に何が入ってる?」

「ちょっと待って?・・・卵でしょ・・ベーコンやハム・・・
 バターとジャムと・・・レタス・・」

「あーじゃあ・・・卵とバター、ベーコン出して・・・
 スクランブルエッグにしよう・・・パンもあるみたいだし・・・
 朝はそれで十分でしょ」

「は~い」


僕がコーヒーの豆を挽いているとジニョンがどう見ても
不慣れな手つきで卵を割ろうとしていた


「何してるの?」

「卵割ってるの・・・」

「・・・君・・・料理やったことある?」


ジニョンは照れ笑いを浮かべながら大きく首を横に振った


「ジニョン・・・コーヒーの続き・・・頼むよ・・・」


僕は彼女に手招きをして卵が無事なうちに
クッキングの主導権を僕が握ることに決めた

彼女は満面の笑みで今度は頭を大きく縦に振った

僕は小さくため息を吐きながら彼女とすれ違いざま
彼女が僕に向けた小さな掌にハイタッチをした

彼女は僕に屈託の無い笑みを送りながら
慣れた手つきでコーヒーを淹れる・・・

そんな彼女のくったくない姿に自分の頬が緩んでいくのを
僕は実感していた

自分のそばにいる人間をこんなに柔らかな気持ちで
見つめている自分が信じられないくらいだった

これが君の言う・・・幸せ・・・なんだね・・・

             ジニョン・・・



僕はスクランブルエッグにパンとコーヒーを
ふたつのトレイに用意した


「ジニョン・・・用意できたよ・・・?」


ふと辺りを見渡すと彼女が見当たらなかった
僕は慌てて彼女の名を叫んだ


「 ジニョン?ジニョン!」


部屋中探しても彼女の姿が見えない


「 ジニョン! 」

「 フランク!こっちよ・・」


声のする方に慌てて赴くと
ジニョンは湖畔に面したテラスの
テーブルや椅子を綺麗に拭いていた


「ジニョン!」


彼女の姿を見つけてホッと胸をなでおろした僕の様子に
彼女はきょとんとした表情を僕に見せた


「フランク・・・ここで食べましょ?きっと気持ちいいわ」

「あ・・ああ・・・」

「どうしたの?」

「いや・・・何でもない・・・」


僕は急いで彼女に背中を向けると
慌てふためいた自分をごまかした
そしてキッチンに戻って
さっき用意したふたつのトレイをテラスに運んだ

昨日ここに着いた時には夜が更けていて
見ることができなかった全貌を
こうして明るくなって改めて眺めると
白いカントリーハウス風の建物が周りの樹木と
湖畔とのコントラストを描いて絶妙な美しさを誇っていた

そして・・・
湖畔の水面を走ってきたかのような心地よい風が
ジニョンの笑顔とコラボレーションして
僕の心に安らぎをもたらす

今までにこんなにも・・・
愛しい朝を迎えたことがあっただろうか・・・

僕の奥深くに眠っていた何かが
呼び覚まされる妙な感覚があった


   君という存在が僕の中の危険な闘争心の刃をも
   仕舞わせてしまいそうになる
   このまま君と・・・こうして暮らせたら・・・


「フランク?」

「ん?」

「ヤ~ネ・・・真面目な顔しちゃって・・・」

「そう?何?」

「今日はお仕事はないの?って聞いたの・・・」

「ああ・・・うん・・・仕事ね・・・休み・・・」

「ホント?」


僕は先日の案件を終了させた後
3日間の休暇をレオに宣言してきた
レオも次の案件までに休養も必要だろうと
その間は電話はしないと約束をした


「じゃあ・・今日は何して遊ぶ?」

「遊ぶ?・・・はは・・・遊ぶんだね・・・」

「可笑しい?」

「いや・・・」


そう言いながら僕は声を立てて笑っていた


「何だか感じ悪い・・フランク・・・」


彼女が口を尖らせて僕を睨む


「ごめん・・・」


僕は更に可笑しくなってお腹をかかえていた

それはきっと彼女には理解できなかっただろう・・・


   君の“遊ぶ?”という言い方が
   何故だか僕の遠い記憶にあったものを
   懐かしく思い起こさせたような気がしていた

   そんなこと言っても・・・
   僕の過去を何ひとつ知らない君にはまだ・・・

   理解できないね・・・


「ね・・フランク・・・さっき言ってた、ボート・・・あるの?」

「ああ・・あるはずだよ・・・ほら・・あそこに見える・・・」


僕は前方に見える小さな桟橋に繋がれた
小ぶりの白いボートを指差した


「ホントだ・・・あれ・・使ってもいいの?」

「ここにあるものはみんな、自由にしていいんだ」

「じゃあ、後で乗せてね」





まず彼女が乗りたがったボートに
ランチ用のサンドウィッチを持って乗り込み・・・
碧く澄んだ水辺に漂ってみた

「フランク・・・凄く綺麗ね・・・
 私こういうの・・・生まれて初めて・・・」

「僕も・・・生まれたのは海の近くだったけど・・・
 こういうところはなかったな・・・」

「海の近く?・・・フランクは何処で生まれたの?」

「あ・・・ジニョン・・・見てごらん・・・魚がいる」


     何故・・・ごまかす?・・・


「わぁ・・・本当だ・・・ね、フランク・・・
 今日、買い物行ったら、釣竿買って?」

「釣竿?」

「そう・・・魚釣るの・・・美味しそうでしょ?」

「そうか・・・お前たち・・・
 食いしん坊のジニョンに食べられる運命なんだね・・・」


僕はボートの上から水面に向かって神妙を装って
呟いてみせた


「フランク!そんな言い方ないわ!」

「ところでジニョン・・・釣った魚は誰がさばくの?」


彼女は甘えたように見上げて僕を指差した


「やっぱりね・・・」


僕は彼女の首に片腕を回して引き寄せ
軽く締めるそぶりをした

彼女は僕のその腕にしがみつきながら
可愛く弾けるように笑っていた


「ジニョン・・・おいで・・・」

「ん?・・・」


僕はボートに寝そべって彼女に隣に横になるよう促した


「見てごらん・・NYのアパートより広く仰げる・・・」

「本当だ・・・」

「綺麗だね・・・」

「ええ・・・とっても・・・・・・・・・・」


彼女の言葉が止まってしまったことに
僕は怪訝な顔を彼女に向けた


「どうかしたの?」

「ううん・・・何となく・・・ 
 この空は何処までも続いてるんだろうなって・・・」

「何処までも?」

「ええ・・・何処までも・・・だって・・空はひとつだもの・・・
 この同じ空の下で・・・私の愛する人たちが 
 生活をしてるわ・・・父や・・・母や・・・・ 
 あなただって・・・そうでしょ?」

「・・・・・・・」

「心配してる・・・かな・・・」

彼女のぽつりと言った言葉が僕の胸をチクリと刺した
僕が起き上がり彼女を見下ろすと・・・
彼女は小さく笑いながら寂しそうな瞳を僕に向けた

「後悔してるの?・・・」

「・・・・・・・」


彼女はそれには何も答えず、僕の後に起き上がると
さっきまでの自分の弱さを振り払うかのように
首を横に振り微笑んで寂しさを隠したようだった


「ジニョン・・・もう少し待って・・・ 
 僕が君のご両親に自信を持って会えるまで」

「自信?フランクは十分立派な人じゃない・・・」

「立派?何処が?僕の何処が立派なんだ!
 君は僕の・・・何を知ってる?」


僕は思わず彼女に厳しいまなざしを、
まるで自分を卑下するかのような言葉を吐きながら
向けてしまった
そしてそんな自分を省みて思わず視線を伏せた


「何も知らないわ・・・だって・・・
 何も教えてくれないもの・・・

 あなたのファミリーネームも・・・
 あなたの生まれたところも・・・
 あなたのご家族のことも・・・
 あなたのお仕事のことも・・・
 私は何も知らないもの・・・

 ソフィアさんは知ってるんでしょ?
  あなたのお仕事が凄く大変なことも知ってた
 私よりも・・・うんとあなたのこと知ってる・・・」


彼女ははらはらと涙を頬に伝わらせながら
僕を悲しそうに睨んだ


「ごめん・・・そんなつもりで言ったんじゃない・・・ 
 お願い・・・泣かないで・・・」


彼女の涙を見るのが辛くて
うつむき加減の彼女の額に自分の額を
押し当て目を閉じた

それでも・・・
彼女の頬を伝う涙の音が僕の心に切なく伝わってくる


「・・・・・・」


「ごめん・・・」



   話さなければならないことは沢山ある・・・

   僕がどういう人間なのか・・・

   君が沢山の愛情を受けて育ったことと
   真逆な人生を送ってきた僕・・・

   君はそれを知っても・・・
   僕を変わらず愛してくれるだろうか・・・

   僕が歩く道を・・・
   君は僕に寄り添い一緒に・・・

   歩いてくれるだろうか・・・

   そうだね・・・

   君には僕以外に愛する家族が存在することを
   僕は受け入れなければならない・・・

   この世の中に・・・君とふたりだけなら・・・

   ここにいるとつい・・・
   そんな絵空事を望んでしまう・・・

   ただ愛してる・・・それだけでは・・・


   駄目なんだね・・・



     ・・・どんなにいいだろう・・・


   君に隠したこの想いを・・・僕は目を閉じ・・・


       また封じ込める・・・  



      どんなに・・・いいだろう・・・


           この世の中に・・・     
  
          君と・・・ 





               ・・・ふたりだけなら・・・























                     2006.11.7作
























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