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OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
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mirage
創作mirage-儚い夢- 2006.6より with BYJにて連載中
No 23 HIT数 7484
日付 2007/01/27 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル mirage-儚い夢- 22.告白
本文
 


         




collage & music by tomtommama

story by kurumi
















       「星がいっぱい・・・」


       「ん・・・」


夕食を済ませると僕たちは
テラスに置かれたロッキングチェアーの上で
ふたり同じ方向に重なり満天の星を見上げていた

 

今日一日、食料品や日用品の買い物以外をこの家の
周辺を散策しながら静かに時間(とき)を過ごした

ジニョンとふたりで今夜のメニューを考えながら
スーパーのカートを押し

約束の釣竿も買って
明日からのふたりの生活を夢見ていた


他の誰の姿も無くて・・・誰の声も無くて・・・
今このときに存在するものは・・・

風の流れに重なり触れ合う葉の音と
小さくこだまする小鳥の囀りと・・・

   そして・・・

   僕の・・愛しい・・ジニョン


今までただの一度も味わったことのない
この安らぎのときを僕は決して離すまいと
幾度も幾度も抱きしめていた

 

彼女への・・・えもいわれぬ愛しさに恐れさえ抱き
神に祈る思いで天空を仰ぎ見る

都会の空とは比べ物にならないほど輝きを放つ星ぼしが
まるで僕達ふたりを祝福しているかのようで安堵した

この僕がそんな感傷に浸たりきることができるのも・・・
きっと・・・
この腕の中で無邪気に笑う天使のせいに他ならない


       「私ね・・・」


       「ん?」


       「フランクのアパートで見上げる星空・・・
        すごく好きだったの・・・
        まるで・・・窓枠が額縁みたいで・・・
        夜空が一枚の大きな絵のようだったから・・・」


       「曇り空で・・真っ暗でも?」


彼女が星空を見たくて僕の部屋に来るという
大義名分が、時折天空に裏切られていたことを
僕はそう言ってからかった


       「意地悪ね・・・」


彼女は視線を僕の顔に向けると小さく睨んだ


       「あなたの部屋に行っても・・最初の頃・・・
        あなたは・・殆ど話しかけてくれなくて・・・
        すごく寂しかった・・・

        ぁ・・確かにね・・・あなたのそばで過ごせてる・・・
        それだけでも幸せだったの・・・それは本当なのよ・・・

        星が空一面に輝いている日はいいの・・・
        本当に綺麗で・・・幸せな気分に浸れてた・・・
        でも・・・曇ってて・・真っ暗な夜空の時は・・・
        ちょっとだけでもあなたの声が欲しかったりしたわ・・・

        あなたってそんな時も・・・すごく厳しい顔をしていて・・・
        怖いくらいだったから・・・」


       「君が勝手に来てたんだ・・・」


       「そうだけど!・・
        私が・・勝手に押しかけて来てたけど・・・        
        ちょっと位相手をしてくれてもいいんじゃない?
        そう思って・・・あなたのこと睨んでたわ・・・」


   知っていたよ・・・


       「それなのにあなたときたら・・・
        私のそんな気持ちにも気付いてくれなかった」


彼女はそう言いながら・・・今きっと口を尖らせている


       「忙しいって・・言ってただろ?」


 

自分の腕の中に存在する彼女をからかうのは実に楽しい

彼女の抑揚をつけた話し方や甘い声があまりに可愛くて・・・
彼女のそばにいるだけで心が穏やかになっていく・・・
そんな自分を僕は楽しんでさえいた


       「仕事がそんなに大事?・・・
        いつもパソコンをこーんな顔して睨んでて・・・
        私のことなんて眼中になかったもの・・・」


彼女は自分の目尻を上に吊り上げながら
僕の顔を真似ているらしかった


       「・・・・・そう見えた?」


       「見えた」


   それは君の誤解だよ・・・


       「確かに・・・君がいることさえ忘れてた・・・
        あー・・きっと、君に少しの興味もなかったのかも」


       「え・・・本当に?」


       「ん・・・」


       「・・・・・・・・・」


そして僕は僕のからかいに彼女が次第にひしがれて
沈黙し始める頃・・・そろそろと自分の本心を打ち明ける


       「嘘・・・・本当はずっと気にしてた・・・君のこと・・・」


   君が夜空を見上げながら瞳を輝かせていたことも・・・

        
       「・・・・・・・・・」


   時折僕の方を盗み見て・・・可愛い表情を雲らせていたことも・・・


       「眼中になかったら、最初から部屋に入れたりしないだろ?
        君の視線が僕に向いてない時・・・しっかり君を見てた・・・」


   全部・・・知っていた・・・

 
       「ホント?」


人一倍素直な彼女が一瞬にして笑顔を満面に変える


       「ん・・・」

 
       「フランクってやっぱり、可愛くないわ」


       「ハハハ・・可愛いって・・どういうのを言うの?」


       「その時、ちゃんと素直にしてくれてたら
        もっと毎日が楽しかったのに・・・」


       「・・・・ホント・・・そうだね・・・」


   本当に・・・もったいないことをした・・・

 

僕は彼女の細い体をぎゅっと強く抱きしめると
ふたりを包んだブランケットの合わせを深く重ねた


       「寒くない?」


ジニョンは僕の胸の上で頭を左右に振った


       「・・・ねぇ・・・覚えてる?・・・」


       「ん?」


       「初めて逢った時も・・・
        こうして、あなたが温めてくれた・・・」


       「覚えてるよ・・・
        あの時は君の気迫に僕は君の言うなりだった」


       「気迫?」


       「そう・・・私を置いていくの!って・・・」


       「フフ・・・だって、必死だったもの・・・」


       「彼の為に?」


       「ぁ・・・その時は・・・」


       「ジニョン・・・僕を好き?」


僕は自分から問いかけておきながら彼女の言葉を遮って
抱きしめていた腕に更に力を込めた


       「好きよ・・・」


       「愛してる?」


       「愛してるわ・・・・」


彼女は少し体を僕の方に翻して僕の神妙そうな問いかけに
怪訝な表情を向けた


       「・・・・・・・」


       「・・・・フラ・・ンク?・・・」

      

      
       「僕はね・・・つい最近まで・・・この世の中に・・・
        僕を愛してくれる人なんてひとりもいない・・・
        そう思って生きていた・・・」


       「・・・・どうして?・・・」


       「昼間・・僕が何処で生まれたのか・・・そう聞いたよね・・・」


       「ええ・・・でも・・・話したくなければ・・」
       「東海・・・」


       「東海?・・・韓国の?」


       「ん・・・」


       「ぁ・・・だから・・・ハングル・・・」


       「10歳の時・・・母が死んで・・・
        僕は孤児院に預けられたんだ・・・

        最初のうちはね・・・父が直ぐに迎えに来ると思ってた
        母が亡くなって・・きっと忙しくて・・それで僕は家に帰れない・・
        それだけのことだと思ってた・・・
        いつ父が来てくれるのか・・・・指折り数えて・・・
        窓から孤児院の門を来る日も来る日も覗いてた・・・

        でも・・父はとうとう現れなかった・・・
        そのうち諦めて・・・僕は窓のそばにも立たなくなった・・

        そうしているうちにアメリカへの養子縁組の話が持ち上がって・・・
        僕の知らない間に大人たちの間で話は進められていた
        
        父はね・・・結局・・・
        アメリカに発つまで僕に会いには来なかったよ
        僕に合わせる顔がなかったのか・・・
        それとももう・・僕のことなんてどうでも良かったのか・・・

        だけど・・・その頃には僕にとっても
        そんなことなんて・・もうどうでも良くなっていた
        父からどんな弁明があったところで・・・
        父は僕を捨てた・・・
        そのことに変わりなかったから・・・
        
        何が何だかわからないまま飛行機に乗せられて・・・
        海を渡った・・・そして突然・・・
        “この人たちが今日からお前のお父さんとお母さん”・・・
        そう言われて紹介された人たちは・・・話す言葉すら違ってた・・・

        もちろん・・孤児院を出る前に話は聞かされてたよ・・・
        養父母となる人たちがアメリカ人であることや・・・
        彼らには実子はいないけど・・
        僕の他に、他国からも養子を迎えてること・・・
        敬虔なカトリック信者で・・・ボランティア精神に溢れていること・・・
        でも、10歳の子供が何処まで理解できたと思う?

        それでも・・・
        変わってしまった環境の中で僕は自分の生きる術を探した

        僕の生きる場所はここだけなんだと
        自分に言い聞かせた

        そして僕は・・・フランク・シン・アンダーソンという人間に
        生まれ変わった・・・」

       「フランク・シン・・・・アンダーソン・・・それがあなたの・・・」

僕は彼女の言葉に頷きながら先を続けた

       「養子先ではね・・・
        僕は凄く賢くて行儀のいい子・・・そう言われてた・・・

        本当は我侭も不満も言いたかったし・・・
        周りの子供達が親に甘えている姿を見ると
        本当に羨ましかった・・・

        “フランク・・・あなたは私達の自慢の子供よ”
        そう言われて心をくすぐられるようだった
        でもその反面・・そのことが凄く重たかったんだ
        成績が良くて・・・行儀が良くて・・・
        大人の言うことを良く聞く・・・だから・・
        ここに置いてもらえてるんじゃないか・・・
        本気でそう思って、かなり無理してた・・・ 
             
        ある時僕は・・・
        自分が精神のバランスを崩してることに気がついた

        養父母たちの言葉も素直に受け入れられず
        屈折して物事を捉えるようになって・・・
        いい子を演じることにも疲れて・・・
        ことごとく彼らに反発した

        周りの何もかもが嫌になっていったんだ・・・

        いつしか僕は・・・
        “この家から逃げ出したい”そう思うようになってた・・・

        それが13の時だ・・・
        どうしてもひとりになりたくて・・・
        養父母に頼んで全寮制の学校に入れてもらって・・・
       
        それからというもの・・・
        僕は必死に勉強して・・・早く独り立ちしようと考えた

        自分だけの力で世の中を渡って・・・お金を稼いで・・・
        地位と名誉を我が物にして・・・大人になったら
        僕を捨てた実の親を見返してやる・・・そう思ってた・・・
        たった13の子供が本気でそう思ってた・・・

        遠く離れたこの地で生まれ変わるはずだったのに・・・
        新しい僕に・・・フランクに・・・なるはずだったのに・・・
        
        結局最後に僕の中に宿っていたのは・・・

        どうでもいい・・・そう思っていたはずの・・・
        父への恨みだけだったんだ・・・」
        
        
       「・・・・・・・・」


ジニョンは僕の淡々とした告白をただ静かに聞いていた

 

       「僕は人間が嫌いだ・・・だから・・・
        人を信じたことなんて一度もない・・・

        人を愛したこともない・・・
        愛を・・・信じたこともない・・・

        今までは・・・そうだった・・・

        そんな僕が・・・どういうわけか
        君を・・・愛してしまった・・・

        最初は信じられなかったんだ・・・
        僕自身・・・僕の心が信じられなかった・・・

        でもどうしようもないほど・・・君を愛してる・・・
        胸が締め付けられるくらいに・・・愛してる・・・

        そのことに嘘はない・・・君は・・・

        こんな僕を・・・信じられる?」


       「・・・・・・・・」

彼女は僕の問いかけに答えずただうつむいていた

       「・・・・信じられない?」


       「・・・・・・・・」

そっと持ち上げた彼女の顎が涙で濡れていた

僕はただ静かに涙をこぼしながら僕を見上げる
彼女の瞳に息を呑んだ

 


       「・・・・どうして・・・君が泣くの?」


       「ごめんなさい・・・何も・・知らなくて・・
        私・・・さっき・・あなたのこと・・責めた・・・」

彼女はそう言いながら僕の膝の上を降りると
そのまま僕の前にひざまづいて僕の手を取り頬ずりをしたあと
手の甲に涙混じりの唇をそっと落とした

 
       「・・・・・・」

そして彼女はしばらくすると・・・やっと顔を上げて
彼女のキスをただ黙って受けていた僕と真直ぐに向き合った

       
       「でも・・・愛してくれる人が誰もいないなんて・・・
        どうして、そんなこと思うの?
        そんなの・・・悲しすぎる・・・

        私だけじゃない・・・
        ソフィアさんだって・・・あなたを心から愛してる・・・

        あなたの亡くなったお母様だって・・あなたを愛してたはず・・
        お父様だって・・・きっと、ご事情があったはず・・・」


       「ジニョン・・・
        そんなこと・・・もうどうでもいいことだよ」
       

       「フランク・・・」 

      
       「僕は・・君がいてくれればそれでいい・・・
        愛してると・・・言ってくれる君が・・・」


       「だめ・・・」


       「・・・・・・」


       「嫌よ・・・フランク・・・
        あなたが・・・そんな悲しい心のままに生きるのは嫌・・・」


       「・・・・・・」


       「親に愛されない子供なんて・・・この世にはいない・・・
        絶対に存在しない・・・私はそう信じてる・・・」


彼女の瞳からなおもとめどなく涙が零れ落ちていた
僕の手を強く握り締めながら視線を決して逸らさない彼女の瞳の中に
僕は神々しい優しさと強さを見つけて圧倒されていた

 
   ジニョン・・・君という人は・・・

   人に裏切られて育っては来なかった

   だからそんなにも人間をも信じられるんだね・・・

   世の中にはね・・・

   君が想像もつかない人間だって存在するんだよ・・・


   でも・・ジニョン・・・可笑しいんだ・・・

   君のその紛いの無い綺麗な瞳を見つめていると・・・

   吸い込まれるように君の無垢な心に埋もれていく


   そうかもしれないと・・・


   こんな僕でも・・・本当は母に愛されて・・・

   父にも・・・愛されて・・・
 
   この世に存在したと・・・


 

        ・・・信じてみたくなるよ・・ジニョン・・・      

       



























                                 2006.11.14作

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ゆめ
大変な作業を有難うございます。わくわく、どきどきしながら、続きを待っています。想像力の限りを尽くしてついてまいります。 2007/01/30 22:29
kurumi☆
ちょっと辛い部分もあると思いますが、最後まで応援していただけると嬉しいです^^ 2007/01/27 18:47
kurumi☆
そのままの形で残せたらなと・・・このmirageが私にとって一番心に残る作品となるような気がしています・・・だから、長くなっても、思うように・・・書き終えたいと思ってます^^ 2007/01/27 18:46
kurumi☆
yukiiinaさんのように初めて読んで下さる方がいらっしゃるので、ここには全部完全な状態で残したいと思ってます・・・他では著作権の問題でご迷惑お掛けしてはいけないと遠慮している画像や音楽もできるだけ 2007/01/27 18:43
kurumi☆
ずっとはじかれてUPできなかったのに、昨日は何故かここには入れられたの^^この時とばかり、まとめて入れちゃった・・・でも、その次の回でまたストップ・・・^^; 2007/01/27 18:41
yukiiina
とても素敵なお話で・・ソフィア・ジニョン・フランク皆が素敵で3人の言葉にただ夢中に読んできました・・まだまだ続くのですね?ドキドキです^^。 2007/01/27 13:03
yukiiina
kurumi☆さんありがとうございます^^一気にここまで・・良かった幸せで読めば読むほどに幸せが溢れててきっと2人は大丈夫・・・? 2007/01/27 12:51
 
 

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