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OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
サークルオーナー: tomtommama | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 335 | 開設:2006.11.13 | ランキング:30(12728)| 訪問者:3853301/4696927
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mirage
創作mirage-儚い夢- 2006.6より with BYJにて連載中
No 6 HIT数 6322
日付 2006/12/03 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル mirage-儚い夢- 6.泣かないで・・・
本文




     

Thema music select &collage by tomtommama










彼女の滑らかな黒髪にくちづけをして、僕はその額に自分の額を押し当てたまま
しばらく動かなかった。

≪いや・・・動けなかった・・・≫
僕たちはすぐそばにあった互いの熱い吐息の中に、まるで・・・
互いの存在そのものを確認しあってでもいるようだった。

   僕たちは今・・・何処にいるんだろう・・・

   何処に向かおうとしているんだろう・・・


「 私・・・もう震えていません・・・ 」

彼女が自分自身に言い聞かせているかのように小さな声で呟きながら
今僕との接点となっている額を僕からゆっくり離した。

「私・・子供でもありません。」 そして今度は僕をしっかり見つめてそう言った。

「だから?」 僕はその答えを知っていながら、敢えて確認するように聞いた。

「だから・・・あなたの・・・したいように・・・」 彼女は途切れ途切れながらも
精一杯に想いを僕に伝えようとしていた。

「僕のしたいように?」 

「・・・・・・」

“あなたのしたいように”彼女はそう言ったきり、無言で僕を睨みつけていた。

   君にとって・・・セックスという行為が・・・

   相手をそんなにも睨み付けなければならないほど深刻な行為ならば・・・

そんなことを考えていると、急に可笑しくなって僕は声を立てて笑ってしまった。

彼女の眼が“何が可笑しいのか”と、また僕を睨みつけた。

すかさず僕は彼女のその固い視線から逃れてベッドを降りると、
自分の洗いざらしのシャツを手にとって彼女に差し出した。

「これ、着て」

「あの・・・私・・・」 
彼女はたった今、自分が下したはずの決心を簡単に交わされてしまったようで、
拍子抜けしたような顔をしていた。

「何?」

「私・・と・・その・・・」 

「セックス・・・したくないのか?」 
彼女が僕に言おうとしていることを、代わりに僕が言葉にした。しかし彼女は
僕のその言葉に赤面して、また黙り込みうつむいた。

「したくない。」 僕は彼女に向かって無機質にそう言い放った。

僕の冷たい言葉にショックを受けたかのように彼女の表情は一瞬硬直し、
その時、自分の胸を押さえていたブランケットを落としてしまった。

   わかっているかい?僕は君をからかっているわけじゃない

   それなのに僕のひとことひとことに過剰に反応する君に

   僕の方が困惑してしまう

日頃、他人の言動に一片の関心をも示さないこの僕が、彼女の一挙手一投足に
妙に囚われてしまっている。

僕はそんな自分に驚いていた。


「いいから、着て?送っていくから」 
僕は煙草を一本シュガーケースから取り出しながら彼女に言った。

彼女はまだ黙り込んでいた。「どうしたの?」

「今からじゃ・・帰れないわ・・電車もないし・・寮は門が閉まってて入れない」

彼女は不満そうな顔をして、それでもしぶしぶシャツに腕を通していた。

   そんな不満そうな顔をして・・・

   本当はホッとしたんじゃないの?

僕は彼女に視線を送りながら、ため息混じりに心の中でまた笑っていた。


しかし本当は、彼女がさっき垣間見せた怯えたような眼を、この僕が見たくなかった
だけだった。この僕が彼女の肢体を解けなかっただけだった。

   それが事実・・・ホッとしたのはきっと・・・

   この僕の方なのかもしれない

彼女がのらりくらりとシャツを着ているそばで、僕は窓際の椅子に腰をかけ、
くわえた煙草に火をつけた。そして深く煙を吸い込み、大きなため息と一緒に
白い煙を外へと吐き出した。

さっきから僕の動きをただ目で追っているだけの彼女に、僕は無言で手招きをして
低い天井を指差した。

そこは立ち上がると頭が閊えそうなほどの高さで、この部屋のデッドスペースにも
なっていたが、天井には斜めに切り立った屋根を生かして大きな窓が設えてあり、
部屋の中から天空を仰ぎ見ることができる恰好の場所だった。

この場所が僕の一番のお気に入りだった。

彼女は腰をかがめて僕に近づくと隣に腰掛けて、僕をまね天井を見上げた。

「わぁ~綺麗・・・」

「だろ?ここは屋根裏だからね・・・部屋の中からでも夜空がよく見えるんだ」

「素敵だわ・・・あれは、きっと・・・カシオペア座ね・・・あれは・・・シリウス・・・
 それから、あれは・・・」 
無邪気に喜ぶ彼女の顔が更に幼さを増していた。

「星、詳しいんだね」 僕は驚いた表情を作って見せた。

「いいえ・・オッパが・・ジョルジュが凄く詳しいの・・小さいときから
 私を相手によく解説してくれてたから」

「仲がいいんだ」 気のせいか僕は自分の心が少しだけ萎んだように感じた。

「ええ、家が隣同士で、家族同然でしたから」

「・・・・ねぇ・・・どうして・・・僕なの?」 僕は知りたかった。

「えっ?」

「あの日・・僕と君は偶然に出逢った。きっと、ただそれだけのことだったはずだ
 それなのにどうして君はあの日、あんなにも・・・僕を信用できたの?
 どうしてあの後・・あんな風に僕を必死に探した?
 あんなことまでして・・・どうして・・  
 どうして、今君は・・・ここで・・こうしてるの?」 

僕は本当に不思議で仕方なかった。

「・・・それは・・・わか・・」

「わかりません。・・だったね。」 僕が彼女の口真似を彼女の声に重ねたことに、
彼女は「くすっ」と笑って僕を見上げ、続けて言った。

「あなたの目が・・・とても澄んでいて・・・」

「それも・・聞いた・・・」 僕はまたも苦笑しながら彼女の邪魔をした。

「でも・・・それしか言いようがないわ・・・だって・・そうなんだから」 
彼女はムッと口を尖らせながらそう言うと、小さな溜息をついた。

「君って・・・本当に危なっかしい子だね・・・」
僕は彼女のそんな幼いとしか言えない行いに思わず笑いを堪えながら言った。

「ジョルジュにもそう言われました・・・危ない奴だって。でも私・・
 誰もかれもを信用するわけじゃないです・・・強いて言えば、
 私は自分の勘を信じているだけ。」 
彼女は姿勢を正して自信たっぷりにそう言った。

「勘?・・君・・いったいいくつ?」

「18・・」 さっきの自信が少しだけ小さくなった。

「18年生きて来て・・今までにいったい幾つの・・その勘とやらが当たった?
 それにね、例え、今までの勘がすべて当たっていたとして・・・
 今回は残念ながら・・・ひとつも当たってないよ」 僕は少し意地悪く言った。

「・・・・・・」

「僕は決していい人間じゃないし、君が言うような綺麗な目もしてない・・・多分ね
 それに・・・世の中には君の思うような人間ばかりじゃないんだ・・・
 君があの時無事だったことだって、運が良かったと思った方が利口だ」

「・・・・・・」

「・・・・・しかし・・・今日はもう遅いし・・君が言うように寮の門が
 閉まってるんじゃ仕方ないね・・・仕方ないから泊まっていくといい・・・
 でも言っておくけど・・・もうあんなところで待ち伏せしたりするんじゃないよ。
 君はあそこの怖さを知らな過ぎる・・・それから・・・
 二度と。・・・僕に近づくな。・・・わかった?」

僕は彼女の目を見て、言い聞かせるように静かに淡々と、そして最後の言葉は
かなり強調して言った。

僕の言葉に、彼女はただ大きな瞳で瞬きもせず僕を見つめ、無言だった。
「わかった?」 そんな彼女の顔を覗きこんで、僕は再度彼女の返事を強要した。
しかし返事は返って来なかった。
彼女は僕の言葉を聞いた後、寂しそうに目を伏せて黙ったままずっと自分の足元を
見つめていた。
しんみりとうなだれたままの彼女を見ているだけで、僕は思わず
自分の言葉を撤回しそうになった。

そんな自分を奮い立たせるかのように、僕は勢い良く立ち上がりベランダに通じる
細いドアから外へ出ると、部屋の中の彼女に手招きをした。
「出ておいで・・・」

彼女は僕に言われるままベランダに出て来た。

「見て・・・」 僕は下に広がる摩天楼を指して言った。

「綺麗・・・」 彼女は前方に広がるその夜景を眺めて呟きをもらした。

「綺麗?本当にそうだと思う?・・・
 あの灯りの窓の奥では、男たちが金の取り分でもめて、
 殺し合いをしてるかもしれないよ・・・
 あの窓の奥では男が出した別れ話に女が泣き叫んでるかも・・・
 あっちの灯りは子供が、母親が帰って来なくて眠れずに・・・
 泣きながら母親を探してるのかも・・・
 でも・・・遠くから見ている君には・・・ただ綺麗に見える・・・」

「あなたには・・・綺麗に見えないの?」 
僕の言葉に対して、彼女は不思議そうな顔でそう言った。

「ただの景色だ。」 僕はそう答えた。

「あの灯りの窓の奥では・・・
 仕事に成功した男たちが祝杯あげてるかも・・・
 男と女が・・・愛し合った後・・・ふたりでワインを傾けてるかも・・・」
彼女はさっき僕が言った言葉を、ポジティブに解釈して、そう言った。

「愛し合う?それがどんなことかも知らないくせに。」
僕が茶化すように口を挟むと、彼女はまた得意の口を尖らせて見せて話を続けた。

「あそこの窓の向こうでは・・・
 怖い夢を見た子供に母親が優しい声で絵本を読んで聞かせてるかも・・・」

       
「それは君の願望かな?」

「あなたは意地悪なのね」

「フッ・・どうしたら・・・そんな風に何でもいいように考えられる?」

「どうしたら・・・そんな風に悪く考えられる?」

今度は彼女が僕の目をまっすぐに見つめて僕の心に問うた。
その時の彼女の顔は決して18歳の子供ではなく、僕よりも遥かに大人に見えた。

「・・・・・・」

「人は確かにいい人ばかりじゃない・・・
 そんなこと・・・子供の・・私にだってわかります・・・でも・・・」

彼女は僕に子ども扱いされてることに抵抗しているかのように、自分で《子供》を
強調して言った。

「君に!何がわかる」
僕は彼女の言葉の続きを強い口調で遮ってしまってから少し後悔した。
「・・・・君には・・・何も・・わからないよ・・・・」
僕は小さく呟きながら彼女から視線を天空へと移した。


「フランク・・・・」 彼女は僕をそう呼んだ。

「・・・・・・」

「フランク・・・・・泣かないで・・・」 彼女が突然僕の頬に掌を当ててそう言った。

僕は泣いてなどいなかった。なのに、彼女は何故か至って真剣に僕を慰めていた。

そして、僕の頬を優しく撫でて、僕の唇の端にそっとくちづけた。

僕が彼女の行為に驚いて彼女の方を振り向くと、彼女はまるで聖母のような
柔らかい微笑で僕を見つめていた。

その時僕はその微笑を真直ぐに見てはいられなかった。

僕が思わず彼女から顔を背けかけた時彼女は、もう一度、僕の唇に自分の唇を
静かに重ねた。

僕は決して泣いてなど・・・いなかった・・・

それなのに君は・・・

 

    どうして・・・僕の心が・・・


         ・・・わかるんだ・・・









       






 


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kurumi☆
励ましが追い風に・・・いいこと言うね、相棒・・・さあ・・ペン進めなきゃ^^ 2006/12/26 15:48
kurumi☆
yukiiinaさん、こんにちは^^ここにレスがあるのに一瞬驚いた^^そうなの・・・言葉がなくても読んでくださるだけで嬉しいですが、感想をいただければもっと嬉しいです^^ 2006/12/26 15:46
tomtommama
yukiiinaさんいらっしゃいませ^^ロム専さんから浮上してくれるのは 嬉しいですぅ~♪ 励ましが追い風になってkurumiちゃんのペンも進みます。好きに語ってくださいね^^ 2006/12/26 09:31
yukiiina
ここで始めましては、無いのですがホテファンではいつもロム専で創作ホテリアーが大好きです^^。kurumi☆さんのmirage追いかけて今日入会しました、宜しくお願します^^。 2006/12/25 23:33
 
 

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