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OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
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mirage
創作mirage-儚い夢- 2006.6より with BYJにて連載中
No 8 HIT数 6342
日付 2006/12/19 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル mirage-儚い夢- 8.星降るベッド①
本文


いつものことながら、マサチューセッツで過ごす時間は瞬く間に過ぎていく。

週に二日だけ・・・ここでの時間は、僕が緊張を要する仕事から少しだけ解放されて、
損得なしに向き合えるわずかな人々とのわずかな時間。
今の僕にとってはもしかしたらこの場所が唯一の安らぐ場所なのかもしれない。
しかし僕は今そんな時間にさえ、決別を急ごうとしていた。

   時々僕は考える・・・
   自分が何のために生きているのだろうかと・・・

   朝になって・・・
   運よく目覚めさえしなければ・・・
   この拭いきれない虚しさを味わうことすらないだろうに・・・

   でも・・・そんな僕にも・・・朝は必ずやって来た

「帰るの?」 帰り支度をしていた僕を見て、ソフィアが言った。

「ああ」

「来週また、講義お願いしてもいいかしら」

「いいよ・・あなたの頼みなら断れないだろ?」

「そう。光栄だわ、先生」

「来週の初めは少し忙しいんだ」
暗に僕は、NYには来ないで欲しいと彼女に告げていた。

「わかったわ。私も研修に追われるだろうし」
彼女は間を置かずそう答えた。

「そう」
ソフィアとの会話はいつも短く終わる。
それは、それだけで彼女が僕の言葉の意味を瞬時に理解してくれるからだった。

「それじゃ・・また来週」 僕はソフィアの首を片手で引き寄せてキスをした。

 

「何してる。」

車を走らせNYに戻ると、そこに彼女がいた。

      ソ・ジニョン・・・

冷え冷えとした僕の部屋のドアの前で、丸まるように膝を抱え眠り落ちていた。
声を掛けても一向に目を覚ます様子も無く、僕はほとほと呆れ返っていた。

      君はいったい・・・何を考えてるんだ・・・


僕が彼女の履いていた靴を少しばかり乱暴に蹴飛ばすと、彼女はやっと目を覚まして
僕を見上げた。

「あっ・・・・お・・お帰りなさい・・・やっと・・・・」
彼女はよろめきながら急いで立ち上がると、僕に向かって苦笑いを浮かべた。
「・・・逢えた」

「やっとって・・まさか・・昨日もここにいたんじゃないよね」

彼女は苦笑いをして、それを認めた。

「あのね。言ったはずだろ!」

「あ、わかってます・・・あんなところで待ち伏せなんかするな! でしょ?」
彼女は少し眠たげだった顔を満面の笑顔に変えてそう言った。

僕はというと、彼女の腹立たしいほどに輝く笑顔を黙って冷たく睨んでいた。

「だから・・・しなかったわ・・・だって・・ほら・・
 ここ・・・・・覚えちゃった・・し・・・」

苦虫つぶしたような僕の前で、彼女は何のてらいもなく、またにっこりと微笑んだ。

「僕に近づくなとも言った。」 僕は無表情に抑揚無くそう言った。

「それは・・・・その・・聞こえなかった」

僕から目を逸らしながら小声で言い訳めいた言い方をする彼女を、
僕は更に睨みつけた。

「うそつけ。」

彼女は知らないふりを装い視線を上にゆらりと逸らせた。

「それに今、何時だと思ってる?子供がうろつける時間か?また・・」

「明日は学校お休みだから・・・」

「だからって・・」

「昨日は2時間位しか待ってる時間無くて・・・結局あなたにも・・逢えなかったし・・・
 でも、明日お休みだから、今日は逢えるまで待ってようかなって・・・」

「で・・いつからここに?」

「あ・・んー・・・3時から?・・・」

「5時間も?・・・君ね・・・」 
余りに呆れてしまって、その後の言葉が繋げなかった。

「あの!」 突然彼女が声を張り上げた。

「何!」

「寒いです・・・」

彼女が「早く開けろ」と言わんばかりに部屋のドアに視線を流した。

僕は呆れたようなため息を彼女の前で深く強調しながら、ジーンズのポケットから
部屋のキーを取り出した。それでも彼女は僕の迷惑そうな反応をわざと
無視したかのように、鍵穴にキーを挿し込む僕の手だけを見ていた。

「君の図々しさには負けるよ・・いったい何のつもり?」

「何のつもりって・・・私は自分に正直なだけです」

「正直がいいことだと、パパやママから教えられた?」

「ええ。」 そう答えて彼女はまたにっこりと微笑んだ。

僕は彼女に対して、一言一言に皮肉を交じえ冷めた言い方を強調していたが、
彼女には一向にそれが通じている節はなかった。

「通じない振り?」      

「何のことですか?」 彼女は僕にきょとんとした表情を返した。
≪それって天然なのか?≫
「・・・・何でもない。」 僕はわざとらしく大きな溜息を吐いて見せた。

 

僕は部屋に入るなりキッチンへと向かい、コーヒーメーカーに豆を入れて作動させた。
彼女はほんの少しだけ恐縮しているような顔をしながらも、しっかりと僕の後に
続いて部屋に入った。

「で、何の用?」 僕は彼女の顔も見ずにぶっきらぼうにそう言った。

「どちらにお出かけだったんですか?昨日はお泊り?」 
彼女は僕の質問を無視して言った。

「質問してるのは僕だ。」

「今度から電話して来るようにします」

「電話番号・・誰が教えると言った?」

「・・・・・・・」 彼女が少しばかり不満げに口を尖らせた。

その表情はきっと彼女のくせなんだろうと思うと、可笑しくてならなかった。
そのあどけなさに僕は思わず噴出しそうになるのを堪え、彼女から顔を背けていた。
     
「コーヒー・・・飲んだら帰って・・」 僕は淡々と言った。

「あ・・フランク」≪フランク?馴れ馴れしいぞ≫「気安く呼ぶな」

「ねぇ、フランク・・」≪聞いてるのか?≫
「このベッド、こっちに移動した方がいいと思わない?」

彼女は僕の部屋のデッドスペースを指差して明るく、そう言った。

「・・・・・・」

「この前ね、そう思ったの・・・そう思ったら、どうしても早く伝えたくて」

「・・・・・・」

「早速、やってみない?」

にっこり笑ってそう言いながら、彼女はその場に置かれた椅子を動かし始めた。

「勝手なことをするな。」

「だって、こっちにベッドがあると、寝ながら星が見えるわ」

「そうしない理由がある」

「何故?」

「・・動線が悪くなる」

「だって、ここ、仕事部屋と言ってもベッドがあるということは
 お仕事のお客様が見えることはないんでしょ?」

「・・・・・・」

「だったら、絶対こうするべきよ!ねっ!そうしましょ!」 
彼女は口と一緒に素早く手も動かしていて、話し終わる頃には、その場所にあった
小さな椅子やテーブルが別の場所に移動されていた。

「フランク・・手を貸して・・頭の方・・」 
さすがにベッドはひとりで動かせないらしく彼女はそう言いながら、シングルベッドの後ろに
手を掛けて僕に目で指示した。

そんな彼女を僕は何故か怒る気にもなれず、彼女のしたいように手を貸した。

「うん、これでいいわ・・・」 
彼女は移動したベッドを前に腕組して満足げに微笑んだ。

「気が済んだ?」 僕は呆れ顔で彼女を見下ろした。

「フランク・・どうして、最初からこうしなかったの?」

その時僕は彼女にベランダに出るドアを指差した。

「あ・・・」

そして半分しか開けられなくなったドアを開けて見せた。

「あ・・・・・でも・・これって・・何とか人・・一人・・・
 出れ・・そう?・・ね・・」 
彼女が申し訳なさそうに僕を見上げながら自分の鼻筋を指で掻いていた。
その仕草もどうも、彼女が恥ずかしさを照れ隠しする時の癖らしい。

   ≪可愛い・・・≫

そう心の中で思ってしまった自分が急に可笑しくなって、声を立てて笑ってしまった。

彼女はベッドを動かしたことを呆れられたと思ったらしく、更に申し訳なさそうな顔をした。

「あの・・ごめんなさい・・・元に・・」

「いいよ・・これで・・・僕も本当はこうしたかった」

「本当に?」

「ああ」

彼女は僕のその言葉に、輝かんばかりの笑みを向けた。
僕は彼女が僕に向けてくれたその微笑が本当にまぶしくて、彼女をまっすぐに
見ていられないほどだった。

「コーヒー・・・どうぞ」

僕はなんとも中途半端な場所に移動されてしまったテーブルに、ひとつのカップを置いて、
それを彼女に勧めたが彼女は一向にコーヒーに手を付けようとはしなかった。

「どうしたの?寒かったんでしょ?体温まるよ」

「・・・・いらない」 彼女は俯いたまま言った。

「・・・・・・?」

「だって・・そのコーヒー飲んでしまったら・・・帰らなきゃいけないんでしょ?」

僕が手早く入れたコーヒーの理由に反発して彼女がそう言った。
僕はまた心の中で笑ってしまった。「いいから・・飲んで。」
僕が少しばかり強引に勧めると、彼女はしぶしぶカップに手を添えた。
「君・・・可笑しな子だね」

「・・・・・・」

「僕のベッドをあそこに移動したくて、あんな寒い中僕を待ってたわけ?」

「そうじゃないわ・・」

「だったら・・・何?」

「あなたに逢いたかったから」 彼女は率直にそう言った。

「ふ~ん・・・で、逢ってどうするの?」

「どうするって・・・
 好きな人に逢いたいと思うのは自然なことでしょ?」

「僕を好きなの?」

「あなたが・・私の気持ちを恋だと言ったわ」

「僕が言った君の気持ち?・・・じゃあ、君がこうしてるのは僕のせいなんだ」
僕の言い方は彼女に対して、かなり意地悪だった。

「・・・そうじゃないけど」

「まだ世の中のこと何も知らない・・お嬢さん?僕はね・・・
 君みたいなお嬢さんのお遊びに関わってる暇なんて無いんだ」 

「お遊びって・・・そんな・・ひどいわ」

「とにかく。・・・もう一度言うよ・・・僕に・・近づくな。」
僕は彼女の鼻先に指が付かんばかりに近づけて、念を押すようにゆっくりと言った。

「どうして?」 しかし彼女は脅しのような僕の言い方に動じる様子は無かった。

「だから・・僕にはそんな暇が・・」

「どうして?」 彼女が僕に詰め寄るような目で「どうして」と繰り返し訴えた。

僕は少し彼女に圧倒されて後ずさっていた。
そして彼女の大きな瞳がみるみる涙で潤んで、彼女はそれを一生懸命落とさないように
堪えているようだった。

「ねぇ、どうして?・・・子供の・・私に・・・ちゃんとわかるように説明して・・・
 あなたのことを想うと胸が苦しくなる・・・だから、あなたに逢いたくなる・・・
 こうして・・そばにいたくなる・・あなたが私のことを・・・本当に嫌いなら・・・
 仕方ないわ・・でも・・」

「でも?・・僕も・・君のことを好きだと?」≪冗談言うな≫

「・・・・・・」

「随分なうぬぼれ屋さんだね・・・君は僕の心がわかるの?」

僕は彼女の顔を呆れたように睨みつけた。

「そういうわけじゃないわ・・・でも・・・」

「また・・でも?」

「感じるの・・・」

「感じる?何を?・・・」

「わからない・・・」

「得意の・・わからない・・か・・・」

僕は彼女に向かって馬鹿にしたような薄笑いを浮かべた。

「・・・・・・・」

彼女はそんな僕に対して、睨み付けるような挑戦的な瞳を向けていた。

   何なんだいったい!・・僕は君に・・・

   そんな目で睨まれる筋合いは無い








 


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