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OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
サークルオーナー: tomtommama | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 335 | 開設:2006.11.13 | ランキング:30(12728)| 訪問者:3851965/4695591
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mirage
創作mirage-儚い夢- 2006.6より with BYJにて連載中
No 9 HIT数 6340
日付 2007/01/03 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル mirage-儚い夢- 9.彼女のコーヒー
本文




     

Thema music select &collage by tomtommama





僕は彼女とふたり・・・
並んでベッドに寝転がり、沈黙したまましばらく時間を忘れていた

きらめく星空を眺めながら・・・

こんな光景が・・・前にも何処かで存在していたような・・・
妙な想いに囚われていた

「 前にも・・・ 」
「前にもこんなことがあった気がしない?フランク・・・」

彼女が僕と同時に僕の気持ちのままを言葉にした。
僕は本当に驚いたけれど、その驚きを彼女に悟られないようぶっきらぼうに言った。
「気安く・・呼ぶな。」

そうやって僕は上手く言い表せない、今の不思議な感情を即座にごまかした。

「じゃあ、どう呼べば?Mr.フランク?あーfamily name?  
 そういえば、フランク・・・あなたのfamily nameを聞いてなかった。ね、教えて?」

さっきまで僕の拒絶反応に確かに塞ぎ込んでいたはずの彼女が、急におしゃべりになった。

「君・・・うるさい。」 僕はそう言ったものの、本当はさほど、そう思ってはいなかった。

「あの!・・・私は君、じゃなくて・・・ジ・・ニョ・・ン・・・」

「あのね!僕と君は名前で呼び合うほど親しくもないし、きっと
 これからも、そうはならない!」≪きっとそうはならない・・・≫

「どうして?」

「また・・どうして?・・・どうしても!」

いつの間にか僕たちは・・・
狭いベッドで隣り合わせに横になったまま、顔を突き合わせ言い合っていた。

「恋人がいるから?」

「・・・・そ、それもある・・・」

「そんなこと・・・関係ないと思うけど・・・あなたと私が親しくなることに・・・」

「関係なくはないだろ?それに僕はこれからもっと忙しくなるし、
 余計なことを考えたり、振り回されたりしたくない・・・」

「何も考えることはないわ・・・私たちが親しくなることって・・・
 何か考える必要があるの?」

「だから、子供なんだよ・・君は・・・
 大人の世界では、人との付き合いも慎重にならざる得ないこともある」

「そうかしら」

「そんなだから・・君は危なっかしいって、言われるんだ
 あーあの・・あいつ・・ジョルジュだっけ?彼も心配が絶えないね・・・
 悪いけど僕は彼みたいに君のお守りをする気はない・・」

彼女が急に起き上がって僕を見下ろした。

「どうして、ここでオッパが出てくるの?・・・彼は関係ないわ
 それに私は子供じゃないし・・お守りなんていらない。」

「そのお守り役が何日も現れなくて、パニック起こしたのは誰?」 
彼女の興奮したような反論の後、僕はさらりと言った。

「あ・・あれは・・あの時は単に彼が心配だっただけよ!
 私には自分の意思があるわ・・・その意思に!
 自分に!いつも正直でありたい・・・
 私の心が誰かを求めて・・・誰かに向かってる・・・
 その自分の心を信じたい・・・それがあなたなの・・あなただって・・・」

「僕も?・・僕の気持ちも・・君に向かってると?・・・」

「・・・・・・」

僕も起き上がって今度は座ったまま僕たちは睨み合った。

「子供の癖に!・・・いや・・子供だから、だな・・・きっと・・・
 自己中心的・うぬぼれ・我侭・図々しい・・・ハッ・・呆れるね、まったく。・・」

僕は彼女に嫌味混じりの言葉を容赦なく投げつけていた。

「いいわ・・・何とでも言って。」

彼女の目が“今度は傷つかないわ”というように僕を強く睨んだ。

「・・・・・・」

「私は!・・・あなたが・・好きです。」 
そして彼女は僕の目を真直ぐに見据えて、ゆっくり言葉をつなげた。

「勝手にしろ!」

僕は彼女のあまりに真剣なまなざしを真直ぐに見られなくて、情けないことに
彼女から目を逸らしてしまった。

「勝手にしていいの?」 彼女がまた得意の輝くような笑顔を僕に向けた。

「でも、今日は泊めないよ!」 僕は大きく溜息をついてみせた。

彼女はそれでもにっこり微笑んで頷いた。
「わかってます・・・でも・・・」

「・・・・・・・」

「また来てもいい?・・ほら・・星・・見たいし・・」 そう言いながら彼女は天窓を指差した。

「星は外でも見れる。」 
僕はそう言って、彼女から顔を逸らした。しかし僕のその言葉は簡単に無視された。

「お仕事の邪魔はしないわ・・・あの・・・恋・・人・・の邪魔もしない・・・」

「・・・・・・・」

 
   邪魔をしない・・・


そう言ったはずなのに・・・彼女は結局毎日ここへ現れた。

学校が終わるとまっすぐにここにやって来て、僕が留守の時は、玄関ドアの前で
例外なく膝を抱えてうたた寝していた。

「君・・・暇なの?」
「何だか、足が勝手に向いちゃって・・」 僕の呆れ顔を前に彼女は決まってそう言いながら、
俯きがちに人差し指で自分の鼻筋を撫でた。

そして部屋に入るなり彼女がすることといったら、僕のベッドに寝転がってまず空を仰いで、
「今日は星が綺麗」「今日は曇ってるわね」などと、独り言を言っていた。

   ≪それは、ここへ来る前からわかってることだろ?≫

しかし空に星が輝いているか、いないかなど・・・
彼女にとってそんなことはさして問題のあることじゃないらしい。

“邪魔はしない”と言った自分の言葉を一応は守るかのように彼女は特に僕に
まとわりつくでもなく、自分の
教科書を広げて勉強らしきことをしてみたり、
いつの間にかまた彼女の手によってベッド脇に移動されたミニコンポで、
僕のコレクションを聴きながら鼻歌を歌ったり、
僕の本を書棚から勝手に取り出しては
「難しい」と文句を言いながら読む振りをしていることもあった。

とにかく彼女はただ・・・僕のそばでまどろんでいることを楽しんでいる・・そんな感じだった。


彼女が現れるようになって、三日目にもなると、僕の彼女への想いにも変化が現れた。

本当のところ、鬱陶しく思っていたいたはずの彼女が、そこにいることにさえ
疑問を持たなくなって来ていた。

いつしか彼女は僕のそばに当たり前のように存在しつつあった。

僕は特に彼女に構うでもなく、部屋にいる彼女を気にするでもなく、ただもくもくと
仕事をすることができていた。

フッと一息を付いてコーヒー片手に視線を上げると、彼女もまた僕の方に笑顔を向けていた。

僕はそんな彼女の笑顔に、自分がどんな顔で返せばいいものか、その一瞬だけが
何とも僕を戸惑わせる瞬間だった。

その度に僕は慌てて仕事に戻っていたが、何故か高鳴る自分の心臓の音が
時にキーボードを叩く速度の邪魔をしていることに気がついた。



彼女が僕の部屋を訪ねるようになって四日目・・・
僕は彼女がこの部屋で何をしようと何一つ口出しをしなくなっていた。

「フランクの入れるコーヒー美味しいわね。私も入れてみてもいい?」

「勝手にどうぞ・・・」

ただし、僕は他人が淹れたコーヒーは飲まない。それはここ何年も続いた習慣であり、
ソフィアはそれを暗黙の内に理解していた。
頑なだと言われればそれまでだが、微妙な香りを楽しみたい嗜好品に関しては、
他人に介入されることを僕は頑固として望んでいなかった。
しかし、それを自分から人に言ったことはない。

だから、彼女が自分で入れて、黙って僕の傍らに置いていったコーヒーにも
手をつけないまま放っておくつもりでいた。
ところが、傍らから漂う香りに誘われて僕は無意識にそれを手にしていた。
そしてその瞬間、僕は彼女のコーヒーを自分が入れたものと錯覚して口に運んでいた。


   僕の入れたものと・・・同じ香り・・同じ味だった・・・

僕はカップに口をつけたまま、無言で驚きの表情を彼女に向けた。彼女もまた
無言で“ん?”という視線を返した。彼女には僕の表情の意味が理解できなかったからだ。

この時僕は・・・他人が入れてくれたコーヒーを初めて口に流し込んだ。
それがどういう意味を成すことなのか、僕は考えないように努力した。



彼女は自分で買ってくるサンドウィッチと自分で淹れたコーヒーを夕飯にして
2~3時間を僕の部屋で過ごすと例外なく寮の門限に間に合うように帰って行った。

そんな日々が五日間続いた。

そして・・・また僕は明日から二日間ここを留守にする。

「明日は・・・来ても無駄だよ・・・」 僕は彼女に言った。
彼女に断る理由などないと思いながら、つい、そう告げていた。

「どうして?」

この頃になると、僕は彼女の「どうして?」もさほど癇に障らなくなっていた。

「帰らないから。」 僕はぶっきらぼうにそう言った。

「ふ~ん・・・」 
彼女が視線を落として寂しそうに頭を垂れたのを見て、僕は少しだけ胸がチクリと痛んだ。

「・・・学校に・・・行ってるんだ・・・」

彼女に自分のことを話すのはこれが初めてだった。

「学校?何処まで?」

「マサチューセッツ・・・」

「・・・いつ帰って来るの?」

「金曜日・・・」

「金曜日・・・何時頃?」

「わからない。でもかなり遅くなる・・・だから・・来るんじゃないよ。」 僕は念を押した。

「・・・・・・・」

彼女はそれっきり深くは聞かなかった。
しかしこの時僕は彼女の質問ひとつひとつに答えていた自分に驚いていた。
たったひと月前は、存在すら知らなかった彼女に・・・。

   いったい・・何やってるんだ?


「君・・・毎日ここへ来てて・・・ちゃんと勉強してる?
 学生の本分を忘れてないか?」 僕は項垂れていた彼女にそう聞いた。

「してるわ」 彼女は項垂れたままそう答えた。

「ホントか?アメリカの大学は入るのは簡単だけど、進級や
 卒業は難しいんだよ・・・本当に大丈夫?」

「・・・たぶん。・・・あさってから試験だから・・復習もしてるし」

彼女はベッドに広げた教科書を指差して言った。

「貸して・・・」 僕は手を出して言った。

「えっ?」

「教科書」

僕は彼女の数冊の教科書を手に取り一通り捲ると、レポート用紙にペンを走らせ、
それを彼女に渡した。

「解いてみて」

「・・・・・・・」

「たぶん・・・問題はそんなもんだ・・・それが回答できたら試験は大丈夫」

彼女は不思議そうな顔をしながら、僕が渡した問題を解き始めた。

「んー難しいわ・・・」

「それくらいのものを難しがるようじゃ、理解が足りないな
 とにかく、その問題が解けるようになるまで復習してごらん」

「あ・・は・・い・・・」

この数日間決して、彼女のそばには寄らなかった僕がいつの間にか、ベッドに
広げられた教科書を挟んで彼女と向き合っていた。
僕の教授にいつしか彼女も促されて、復習に取り組む彼女は真剣そのものだった。

一瞬、彼女のその真剣な面差しの先に見えた伏せたまつげに、ときめいた自分を発見して

   ・・・また・・・驚いた

       
   本当に・・・


   何をやってるんだろう・・・僕は・・・    

 

 

木曜日
僕はいつものようにマサチューセッツへと向かい、その日の夜もほとんど
僕専用になっていた研究室に泊った。

いつものように、コーヒーを淹れて、カップを口に運びながら窓の外を眺めていた。

ふと夜の窓ガラスに映った自分の顔が少し緩んでいることに気がついて可笑しくなった。


  まさか・・・


僕は自分の心に生まれた柔らかい何かを懸命に否定していた。

何故ならその時、僕の脳裏をよぎっていたのは彼女が淹れてくれたコーヒーの香りと、
彼女の輝くような笑顔だったからだ。

   

 


翌朝、ソフィアが研究室に訪ねて来た。

「おはよう・・・フランク・・・」

「おはよう・・・」

僕はいつものように彼女にキスをした。その直後、彼女がふと僕の顔を覗きこんだ。

「何?・・・」

「いいえ・・何でもないわ・・・」

彼女は先週の講義で僕が出した宿題のレポートを集めて持参していた。

「ここへ・・・置いておくわ・・・お願いします・・・」

「ん」

「・・・フランク・・・」

「ん?」

「今日一緒に・・・帰ろうかな・・・NY・・・」 ソフィアが突然そう言った。

「えっ?」

「冗談よ」 振り向いた僕の顔を見て、彼女は即座に「冗談」と言った。


   僕は今・・・どんな顔をしたんだ?・・・ソフィア・・・


「構わないよ・・・一緒に行く?」 僕は平静を意識して彼女に言った。

「止めとくわ・・・」 彼女は即座に笑顔を添えて答えた。

「どうして?」

「どうして?・・・さあ、どうしてかしら・・・」

彼女は自分自身に問いかけるように呟いていた。


そんな彼女のうつむき加減の顔が少し寂しそうに見えたのは、僕の気のせいだっただろうか。

「・・・・・・」

僕はその後、彼女に何も言わなかった。
彼女もまた、何も言葉を続けず「じゃ、また来週ね」そう言って研究室を出て行った。


   何が言いたい?・・・

   今 僕はあなたに何を?

   今日は・・・教えてくれないのか・・・ソフィア・・・

   いつも僕の気持ちを誰よりも早く・・・

   当の僕自身よりも正確に分析して僕に告げてくれた

   そして僕はあなたのその言葉に・・・

   黙って目を閉じ・・・手を引かれて生きてきたんだ

   あなたの言葉は優しくて・・・時に厳しくて・・・

   いつも僕を勇気付けることを忘れなかった


   ソフィア・・・僕は今・・・何に揺れている?

   どうして・・・何も言ってくれない?

   それとも・・・何も言わなかったことが・・・あなたの言葉?


   僕は今・・・僕の心は今・・・


      何処にあるんだ?・・・ソフィア・・・













































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