「何、にやついてるの?」
ソフィアの声だった
「さっきから、ノックしてるんだけど・・・」
「あ、ごめん・・・気がつかなかった・・・」
「こちらこそ、考え事のお邪魔だったかしら・・・
ミンアを叱らないでね・・・
私が勝手に通って来たの・・・
何かいいことでもあった?それとも・・・
彼女のことでも考えてたとか?」
「・・・・・・」
ドンヒョクは自分の心の中を見透かされて
照れ隠しにソフィアから視線を逸らせた
「図星・・といったところね・・・・・
でも、幸せそうなあなたを見るのは、心地いいわ・・・」
「ところで・・・あなたが突然訪ねてくるなんて・・・
珍しいね・・・何か急用?」
「ええ、 あなたに内内の依頼よ」
「今度は何?何でもどうぞ・・・」
「随分張り切ってるわね」
「電話代、稼がないと・・」
「電話代?何のこと?・・・」
「何でもない」
ソフィアはドンヒョクの思い出し笑いのような笑いかたが
何故か可愛くて、「変な子ね」と言いながらも目を細めていた
「大きな仕事よ・・CSグループのジュニアから直々の・・・
今、SHグループとの合併問題が起きてるの知ってるでしょ?」
「ああ、そのCSグループが、何であなたのところを通して僕に?」
「ジュニアと私、昔からの知り合いなのよ・・それで、相談があったの・・・
今、会社としてはロイド社・・・スティーブの父上の会社なんだけど
そことの繋がりで、スティーブに任せようという動きになってるらしい
スティーブもそのために日本から帰って来たらしいわ・・・
でも、今回の合併に絡む仕事は社命が掛かってる・・・
決して失敗は出来ない・・・そこで・・・
ジュニアとしては、確実に成功させられるだろう
あなたに頼みたい・・・そういうことなの・・・」
「確実に成功させる?そんな保証はできない」
「それでも、フランク、チャンスだわ・・・乗らない手は無い・・・それに・・・」
「それに・・・何?」
「あなたが今考えていることに、彼は必ず役に立つ・・・
信用できる人間よ・・・今日これから、彼に会うことになってる・・・
同席するわね、フランク」
ソフィアの言葉には有無を言わせない強さがあった
彼女がそこまで言うからには、その人物は会う価値がある・・・
他人にあまり信頼を寄せることのないドンヒョクだが、
ソフィアとレオの言葉は彼にとって例外といって良かった・・・
ドンヒョクはソフィアに黙って頷いた
レオからは定期的に連絡が入っていた・・・
スティーブ・ロイドには気をつけろ
あいつは、然程実力はないが、
間違いなく父親の権力を笠に着ている
今までも、自分の意に添わない人間は
力づくで潰して来たようだ
思い通りに事を運ぶためなら、
どんな卑怯な手でも使うという噂だ
それが、日本の企業に受け入れられなかったんだな
そんな奴がお前に敵意を抱いてるんだ、
どういう汚い手を使ってくるか
わからない・・・十分注意を払え
どんな手を使ってこようが構うものか・・・
今の僕にこれ以上落ちようがあるか?レオ・・・
不思議と僕にはもう・・・
怖いものなど・・・何も無い
ジニョンさえ僕の元にいてくれれば・・・
・・・何も怖くないんだ・・・