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collage &
music by tomtommama
story
by kurumi
and
Special Guest
翌日の株主総会は東京オーシャンホテルの前途を 期待する温かい声に包まれ、つつがなく終了した
森本会長は、オーシャンホテルの代表理事の座を退くことを表明し、 検察から摘発された罪状を甘んじて受ける覚悟を内外に示した
「マユミ・・・君はどうする? 君さえ良ければ、ソウルに戻るか?」
「いいえ・・ボス・・・私は会長のお嬢様と共に 会長を待ちたいと思います・・・ そして、今度こそ・・・ あの方を“ボス”と呼べるように・・・」
「そうか・・・」
「はい・・・ボス・・ お仕事をご一緒させていただけて 幸せでした・・・」
「君は何処ででも通用する秘書だ・・ 自信を持って」
「はい・・ボスのお陰で、森本会長もお嬢様も 心を救っていただいたように思います・・・ そして、私も・・・」
「君の心を?・・・心を救うなど・・ 他人が簡単にできるものじゃない・・・ もし救われたのだとしたら、それは・・ 会長も・・お嬢さんも・・そして君も・・・ 自分自身で救われる道を選んだんだ・・・」
「・・・・・はい・・・ 本当にありがとうございました」
「ん」
「マユミssi・・・ドンヒョクがお世話になりました 今度は是非、お仕事を抜きに・・・ ソウルで待ってるわ・・」
ジニョンが満面に笑みを湛えて感謝を現した
「はい!奥様・・」
「それは無しよ・・ジ・・ニョ・・ン・・」
「はい・・ジニョンssi・・・ ではボス・・私は、会長がお留守の間の 雑務がございますので この辺で失礼させていただきます」
「ん・・・」
「お元気でね」
三人は互いにハグを交わして、別れを惜しんだ
夕刻・・・ 東京オーシャンホテルの新しく完成した広間では 盛大なパーティが催された 会場は各界の重鎮を初め、ホテルの株主・ 得意客など、百名余りの出席者で賑わっていた
しかし、その中でも・・・やはりひときわ周囲の目を惹いたのは、 黒のタキシード姿の颯爽としたドンヒョクと 色鮮やかなオレンジ色のマーメイドドレスに身を包み 彼に寄り添うジニョン・・・ まるで絵に描いたように凛として美しいシン夫妻の姿だった
取り分け、オーシャンブルーを基調にした会場の内装に映える ジニョンの出で立ちには会場からざわめきがあがるほどだった その様子にドンヒョクは得意げに彼女の腰を抱く
緒方はドンヒョクのジニョンを見つめる瞳の穏やかさと 彼の成し遂げる仕事とのギャップの大きさが可笑しくて・・・ それでも彼の偉大さを誇らしげに来賓客の後方で ひとり悦に入っていた
そして杏子達オーシャンホテルの人々も 同じく遠くから彼らに羨望の眼差しを送っていた
「みんなが君を見てる」
「そんなことないわ・・・」
「いいや・・君が一番綺麗だ」
ドンヒョクがジニョンの耳元にそっと囁くと ジニョンの頬が一瞬にして薄紅色に変わった
「あ・・・ちょっと待ってて」
「ドンヒョクssi・・何処へ・・」
ドンヒョクはおもむろにジニョンのそばから離れると 中央のメインテーブルに飾られたデコレーションフラワーに手を伸ばした
彼はその中から一輪の花を抜き取るとそれを後ろ手に隠して 彼女の元に戻ってきた・・・そして・・・
「どう?」
その花をジニョンの髪のサイドに差し込んで彼女の顔を覗いた
「どうって・・・よく見えないけど」
「ほら・・」
ドンヒョクは鏡面になっている壁を指差した
「まあ・・・」
「君のドレスと同じ色だったから」
「ハイビスカスね・・綺麗・・」
「君の美しさには叶わないけど」
ジニョンがまた俯き頬を染めると ドンヒョクはそんな彼女をこの上なく愛しげに見つめていた
ふたりは緒方の為に、不在である北野社長に代わって 出席者に挨拶して回り、オーシャンホテルを華やかに盛り立てた
そして・・・ ダンスタイムの花形もまた、このふたりだった・・・ 流れるようなふたりの息の合ったステップは誰もが息を呑んだ
「本当に素敵・・・」
ふたりの姿を追っていた杏子が、水沢の横で羨ましそうに呟いた 彼女のあまりに羨ましげな表情に、水沢は笑みを浮かべた
「可笑しいですか?」
「いえ・・」
「笑ったわ・・」
「ごめんなさい・・・でも・・・ あなたも・・もう少し大人になったら・・・ きっと、あの方に負けない位に美しくなる」
水沢がことのほか真面目な顔つきでそう言った
「・・・水沢さん・・慰めてるんですか?」
「いえ・・慰めてなんか・・本気です・・・ だから僕は・・・」
「だから?」
「だから僕は・・シン・ドンヒョクのような男に・・ 素敵なあなたを守っていける、強い男に・・ そして・・あなたの元へ戻ってきます・・・」
「水沢さん・・・」
「いいですね・・・」
「・・・はい」
ドンヒョクはジニョンと踊りながら、少し離れたところで 話しかける水沢を前に顔を赤らめ微笑む杏子を 感慨深げに眺めていた そしてその先に・・・ ふたりに温かい眼差しを向ける緒方の姿を見つけて 彼自身が出した結論を親友としてため息混じりに 受け入れた・・・
「どうしたの?ドンヒョクssi・・・」
「ん?・・・いや・・・みんな・・・幸せに・・・ そう祈ってたんだ・・・」
みんな・・幸せに・・・
そう言ったドンヒョクの言葉がとても温かくて、優しくて・・・ ジニョンはその言葉が向けられた先に視線を送りながら 彼の背中に添えた掌に力を込め、彼を優しく抱きしめた
「そうね・・・みんな・・幸せに・・・ 私達のように・・・」
「僕達のように?」
「ええ・・」
「それは無理だ・・・」
「どうして?」
「僕達程幸せな人間はこの世に存在しない」
「ふふ・・」
「異論ありますか?奥様・・・」
「いいえ・・・異議なしです・・旦那様・・・」
「よろしい・・・」
ドンヒョクはジニョンを愛しそうにしっかりと自分の胸の中に抱いた そして彼女の髪に唇を落とし、小さな声で囁いた
「ジニョン・・キスしたくなった・・」
ジニョンもまた、彼の胸の中で小声で答えた
「ここでは駄目よ・・」
「我慢できない」
「しっ!・・声が大きいわ・・ドンヒョクssi・・ 緒方さんに恥をかかせては駄目よ・・」
「じゃあ、部屋に戻ろう・・」
「まだ、パーティ終わってないわ」
「構わないさ・・もう接待は十分だろ?」
そう言ったドンヒョクがジニョンの手を取ってホールの中央から離れると 緒方のそばを通り抜けながら、彼にウインクを残して走り去った
緒方はその光景に、思わず苦笑いしながら両手を上に上げた
逃げられたか・・・
・・・ま、いいさ・・・
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