collage & music by tomtommama
story by kurumi
オガタを訪ねてロッテホテルにチェックインした女の子は 小田桐杏子という名前だった
やはり・・・オガタがいつも口にしていた
あの・・キョウコ・・・
夕刻、“ThreeHundred
Roses”へ視察に出向くと そこでも偶然彼女を見かけた
ここは近年の経営状況が思わしくなく 先に手がけたラスベガス本店に続いて ソウル支店の再建にも乗り出したばかりだった
僕の所見そのものを辛らつに指摘している彼女を バックヤードから眺めていた
こんな風景を前にも見たことがある
僕は威勢のいい彼女とある人を重ねて苦笑してしまった
「ドンヒョクssi・・・ワイン飲む?」
「ん・・もらうよ・・サランは?もう寝たの?」
「ええ・・今日はテラスで・・いかが?」
「いいね」
ジニョンがテラスに僕の好みのワインとグラスをふたつ用意した 一日に一度はこうして並んで静かな時間を過ごす 仕事の関係で時間はまちまちだけど、いつしか僕達ふたりの日課になっていた
「ジニョン・・新しく再建に掛かったレストランだけど」
「ええ・・・ThreeHundred Rosesね」
「君に力を借りたい」
「え?・・・私に?」
「ん・・」
「再建なんて・・無理よ・・私、素人だもの」
「いや・・君でなきゃできない・・ 数字的なことは当然僕がやる・・・ 君は従業員の動きや心遣いを指導してくれればいい」
「・・・・・・私に・・できるかしら・・・」
「頼むよ・・君ならきっと 満点のサービスを提供できるレストランに変身させられる 僕達の思い出のレストラン・・・ 訪れるすべての人に感動とロマンを与えたい」
「ロマンを?・・ちょっとキザじゃない?ドンヒョクssi」
「そんなことない・・僕達のようにあのレストランで出逢って 恋に落ちるカップルがいたら、素敵だと思わないかい?」
「ふふ・・だとしたら・・ドンヒョクssi・・ 改善しない方がいいんじゃない?」
「ん?」
「だって、あなたは私がレストランに抗議にしたことに 興味を持ったんでしょ?」
「そうか・・・それはそうだ」
「やだ・・ドンヒョクssi・・真面目に納得しないでくれる? 普通は私のようながさつな女に興味をもつ男の人なんていないのよ あなたは特別なの・・変わってるのよ」
「そうなの?」
「ふふ・・でも、あなたが変わった人で良かったけど」
そう言いながらジニョンが少し照れたように笑った
いや・・・君が・・・君で・・・
・・・良かった・・・
この後僕はジニョンに、今日見かけた日本からの訪問者の話をした ジニョンは僕の話を黙って聞いていた
ジニョン・・・君は今6年前の・・・ テジュンssiを追ってアメリカに渡った時のことを 思い出しているのかい?
ジニョンの横顔を覗いて僕は少し胸を疼かせた
今でも僕はまだ・・・ たとえ君の彼への想いは違っていても 君とテジュンssiを重ね合わせることに 心穏やかではいられない
君の心は僕にある・・・ それは疑いようの無い事実だけれど・・・
何故なんだろう・・・ いつまで経っても僕の心がきっと・・・ 君を追いかけているんだね・・・
「ジニョン・・今日はホテルで何か面白いことあったかい?」
「ええ・・沢山あったわよ・・それからね・・ サランにも楽しいことが・・」
僕はキョウコとオガタの話が昔の僕達の切ない過去に 思いを巡らせてしまいそうで・・・
さりげなく話題を変えてしまった
「ボス・・オガタとの連絡がつかないぞ」
「・・・・」
「どうも、家賃も払えなかったらしく、ねぐらにしていた所を 追い出されてしまったようだ」
「そんなに大変なのか・・あいつ・・ そこまで・・・どうして僕に何も言ってこないんだ!」
僕は思わず彼への腹立たしさに、いや・・・僕自身が・・・ 見守るだけで何の力にもなってやれない歯がゆさに デスクを思いに任せて叩いてしまった
「ボス・・・・・・どうする?」
「探してくれ・・・今度ばかりは放っておけない」
「わかった・・ホテル関係だけじゃなく、 広域に探してみよう」
「頼む・・・それから、日本のその後の動きは?」
「モリモトはやっとお前を諦めたらしいぞ お前に代わるM&A専門のハンターを当たっているらしい」
「誰だかは?」
「それはまだ情報が入ってこない・・」
「引き続き頼む」
「わかった」
オガタ・・・いったい・・何をやってるんだ
必ず這い上がってくる・・ そう信じてるんだぞ・・・
今日もあの子は、宛ても無く彼を探してるんだろうか
慣れない地で心細い思いをしてないだろうか・・・
オガタ・・・いいのか?
あの子にそんな辛い思いをさせて・・・
あの子はお前が・・・
大切にしてきた人・・・
・・・そうなんだろ?・・・
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