collage & music by tomtommama
story by kurumi
「菊地・・・調べはついたか」
「ああ・・シン・ドンヒョクと緒方総支配人は旧知の仲だった 現在のロッテホテルの再建の時期、 緒方はこのホテルの前社長の紹介でロッテホテルに勤めてる そこで新しく理事に就任したシン・ドンヒョクと知り合ってる」
「知り合ってるとはいえ・・理事と一従業員だろ? それが知り合いと言えるか?」
「普通はな・・・しかし、緒方はその時、 再建に一役買って、新理事を手助けしたそうだ ふたりは年齢も近いこともあって友人になったと・・・」
「だとしたら・・・」
「いや・・その後、ふたりの仲に妬みを抱いた古参幹部が このホテルで起きた事件を持ち出だし、緒方を窮地に立たせた 結局、緒方は半年でロッテホテルを去ってる シン・ドンヒョクともそれきり連絡を取ってなかったらしい シン・ドンヒョクは、今や韓国では再建の神様と言われる大物だ 一介のホテルマンとの友人関係が継続しているとは思えない・・・ 所詮、その時限りの付き合いだった・・そういうことだな
それよりもうひとつ・・面白いことがわかったぞ・・」
「・・・・・・」
翌日、緒方はドンヒョクの部屋にひとりで現れた
「報告書をお持ちしました」
「ご苦労様です」
意識して事務的な緒方にドンヒョクも同じく 冷めた眼差しで書類を受け取った
「・・・・・・」
そしてドンヒョクは報告書に一通り目を通した後 彼に当てつけるかのように深いため息をついて 書類からゆっくりと手を離した
ホルダーに挟めただけの書類が互いの足元の間で散乱し その光景が緒方の感情に火をつける
「何をなさるんです!」
緒方がドンヒョクを睨みあげると、彼は冷たく口の端で笑った
「まるで・・子供だましの企画書」 「・・・・・・!」
「この程度のものでホテルの改革が実現できると? これでは素人も同然です・・・がっかりだ」
「・・・・・・」
「残念ながら、これには資金援助はできません・・・」 「・・・私は・・・」
「・・・・・・」
「私はこのホテルを・・・ 我々の大切なこのホテルを守らなければならない ここで働く人々を守らなければならない・・・ 大日東開発などにのっとられるわけにはいかないんです」
「のっとり?何のことです?」
「とぼけるな・・・ドンヒョク・・・俺は信じられないよ・・・ まさか、お前が・・・ついこの間・・・ 水沢圭吾に気をつけろ・・そう忠告してきてくれた、そのお前が・・・ 何かの間違いだろ?・・いったい・・」
「言葉には気をつけなさい・・・総支配人」
「・・・・・・」
「確かにあなたとは旧知の仲だ・・・ しかし、ことビジネスにかけては、互いにプロに徹しましょう」
「・・・失礼致しました・・・管理理事・・・ しかし、これだけは言わせてください・・・ 私はこのホテルの総支配人として・・・ たったひとりのリストラも考えていません・・・必ず・・・ それを必要としないほどの企画書をあなたに見ていただく お願いです・・・もう少しお時間をください」
そう言って緒方はドンヒョクに深く頭を下げた後 彼に無碍にされた書類を拾い集め部屋を立ち去ろうとした
「あー緒方総支配人・・・」
「・・・・・・」
「あなたのご自慢の・・・このホテル・・・私としても・・ かなり期待してました・・・ 初めての日本でしたからね・・・しかし・・・」
「・・・・・・」
「昨日から二日間滞在させていただいているが・・・ どうも退屈すぎて・・・非常に・・・つまらないホテルだ」
そう言いながら、ドンヒョクは眉を下げて口を尖らせ わざと困ったような表情をして見せた
「どうぞ・・チェックアウトなさる時は・・・ お手伝いさせていただきましょう」
「それはありがとう・・・ 私も・・・一日も早く、その日が来ることを願いたいものだ・・・ 企画書は二日お待ち致しましょう・・・ その内容次第で、リストラ案は直ちに実行していただきます」
「・・・・・・承知・・致しました」
緒方はドンヒョクを睨みつけると静かに部屋を立ち去った
「面白いこと?・・何だ」
「シン・ドンヒョクについている柏木という秘書」
「森本会長の?」
「ああ・・彼女は一年前までシン・ドンヒョクの秘書だった」
「へぇー・・・」
「ということはだ・・シン・ドンヒョクがこの仕事に係った理由・・・ 彼女が森本との間を取り持ったということだ・・ これで・・ボスの懸念は晴れただろ?」
「・・・・・・・・」
「ボス・・・彼は・・緒方総支配人は・・・ 親しいご友人ではないのですか?」
「そうだよ・・・親友だと思ってる」
「でしたら・・彼にも事情をお話して、事を進められる方が・・」
「マユミ・・・モリモトは今回の買収に関して 少し前までかなり焦ってなかった?・・・」
「はい・・つい先日、解決を急ぐ余り、 このホテルへの銀行融資を一時的にストップさせてしまい、 水沢氏に時期尚早と咎められていました」
「今はどう?」
「そうですね・・・今は少し余裕というか・・・」 「それは何故だと思う?」
「・・・・・・」
「僕がこの仕事に・・・モリモト側の人間として係っている以上・・・ 僕サイドが所有するオーシャンホテルの債券は 彼の元にあるも同じ・・・・」
「なるほど・・・」
「彼らが気を緩めて事を進めている間・・ 解決すべき問題に着手する時間が稼げる このホテルは・・・業界での生き残りをかけて・・・ 確固とした柱を築かねばならない・・・今が正念場と言える」
「でしたら・・尚更緒方総支配人と協力なさった方が」
「フッ・・・あいつはね・・・追い込まれれば追い込まれるほど すごいアイディアを生み出す力を持っている・・・ それに・・・僕の周りにも・・あいつの周りにも 敵と思しき人間はいるだろう・・・誰に どこでどう見られているかもわからないだろ?」
「ボス・・・あなたがお辛くはないですか」
「昔なら、こんなこと当たり前のことだった・・・ 実際他人にどんなに恨まれようが・・ 憎まれようが・・知ったことじゃなかったしね・・・ そんな生き方をしていたんだな・・・僕は・・・ でも今は・・・ あいつにあんな目で睨まれるのが辛いよ・・・ 今の僕が・・ぬるま湯に浸かって生きてる証だな・・・」
「ボス・・・」
マユミはしみじみと言ったドンヒョクのその言葉がきっと・・・ 彼の偽らざる本音なのだろうと思うと切なかった
「でも大丈夫・・・僕には・・・ ほら・・君が用意してくれたその向こうに・・・」
そう言って笑いながら、ドンヒョクはTV電話を指差した
「ドンヒョクssi・・・どうかしたの?」
『ん?』
「何だか・・疲れてるみたい・・・ あなたがそんな顔してると・・・私心配よ」
『ん・・・君に心配掛けたくて、ちょっとそんな顔してみた』
「何・・それ・・」
『ハハ・・ごめん・・大丈夫だよ・・・僕は』
「そう?」
『ん・・』
「本当に?」
『ん・・・こうして君の顔見られるだけで・・・ どんな一日もハッピーで終わる』
「・・・それは私も同じよ・・・でも・・・ お仕事大変なんじゃない?・・・こんな時 あなたのそばにいてあげられないなんて・・・ やっぱり辛いわ・・・」
『君は僕のそばにいるよ・・・ほら・・ここに』
そう言ってドンヒョクは自分の胸に掌を当てた
「ドンヒョクssi・・・」
『そんな顔しないの・・ジニョン・・・ あ・・それなら・・・ひとつ僕のお願い聞いて』
「なあに?」
『キスして・・』
「えっ?」
『僕と同時に画面に・・・』
「え~・・なんだか恥ずかしいわ」
『いいから・・・』
「うん・・こう?」
『ジニョン・・目を閉じなさい・・』
「は・・い・・」
『・・・・・・』 「・・・・・・」
「マム!テレビなめちゃ、いけませんよ」
背後から可愛い悪魔の声がふたりだけの時間を引き裂いた
「オモ!サ・・サラン・・寝たんじゃ・・」 「ダディ~マミィがテレビなめてました~」
「な・舐めてなんかいません!・・」 『そうなの?いけないマミィだね・・・ 駄目だよ・・ジニョン』
ドンヒョクは画面の向こうで笑いを堪えながらサランに答えた ジニョンがサランの後ろで口を“裏切り者”と動かして可愛く睨んでいる
「ダディ~~あいたかった~」
サランがそう言いながらTV電話のモニターを 小さな体いっぱいで抱きしめた
「サラン!ダディを独り占めしないで!」
ジニョンもサランに負けじと参戦する
「だめ~サランがおはなしするの~」
「こら~!離しなさい・・あなたはもう寝るお時間」
「マミィだけ、ずるい」
ドンヒョクは画面の向こうで大騒ぎをするふたつの宝物を 愛しい眼差しでただ見つめていた
君達がいるから・・・
僕はどんな辛いことでも耐えられる
そしてどんな戦いにも向かって行けるんだ・・・
君達を愛している僕は・・・
世界一幸せな男・・・
『ねぇ・・・』
「えっ?なあにドンヒョクssi」 「な~に?ダディ・・」
・・・『仲間に入れて』・・・
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