私はフランクとソニーがホテルを出た後に
ホテルの非常出口を使って階下へ降りると
誰にも尾行されないように他の車を使って
裏口から外へ出た
ジニョンを助ける前にあの書類を奴らに
奪われるわけにはいかない
「Mr.レオナルド・パク?
レイモンド・パーキンです
フランクから連絡が入りましたか?・・」
「はい・・」
「では私が告げる場所まで・・その書類を」
「承知しました」
「ライアンを出せ」
私はレオナルド・パクと連絡を取った後で
ライアンに電話を掛けた
「何のようだ・・・」
「取引をしないか」
「取引?」
「ああ・・今から私は例の書類を手に入れる」
「例の書類?何のことだ?」
「とぼけるな・・・私はお前に組織を譲る
あの書類もだ・・
しかし・・この首謀者がお前でないとしたら」
「俺でないとしたら?」
「お前に渡す必要も無いだろう・・・
予定通りFBIに渡す」
「FBI?お前・・それがどういうことか・・」
「ああ・・わかってるさ・・」
「お前・・最初からそのつもりで?
組織を潰す気でいたのか?」
「そうだと言ったら?」
「そんなことが許されるとでも思ってるのか!」
「私が許した」
「ふざけるな!・・
あの女はどうなってもいいんだな」
「ふっ・・やはりお前の仕業か」
「・・・・」
「だったら・・話は早い・・
本当言うと、そんなことはどうでもいいんだ
組織がはびころうが・・潰れようが・・
私にはもう関係ない」
「どういうことだ」
「この前・・お前が言っただろ?
たかが女に手を焼いている、と・・
組織よりもそのたかが女の方が大事になった・・・
だから・・・
このNYとももうさよならだ
いいか・・
しかし本当に、彼女と引き換えでなければ
この取引は成立しない
お前の子分達にようく言い聞かせておけ
彼女にたったの一筋でも危害を加えたら・・
組織も・・お前も・・全滅だと・・」
「・・そんなことができるわけ・・」
「できないとでも?・・」
「・・・・」
「取引・・成立だな」
「わかった・・書類と引き換えに
あの女を無傷でお前に返えすと約束しよう
親父が組織の参謀にと望んだフランクは
こっちがいただく」
「好きにしろ」
ライアンにとって、私という存在は邪魔でしかない
きっと彼は私を亡き者にしようと考えているだろう
書類を持ってアジトへ出向いたとたん、彼の手の者に刃を向けられる
それは覚悟の上だった
しかし、たった今彼と交わした取引が形の上だけでも成立した以上
ジニョンの安否は保障される可能性が高くなった
少なくとも私がその場に到着するまでは・・・
ソニーにはフランクとジニョンに危害が及ばない限り
私が到着するまで待てと伝えた
何としてもあのふたりだけは助け出さなければならない
ソニーも同じ思いを抱いているはず
旧友ソ・ヨンスの愛娘であるジニョンを救い出すこと・・・
きっとそれだけを考えているだろう
それだけに・・・
フランクと共に行かせるべきではなかったかもしれない
ソニーという男は私に忠誠を誓いながらも
決して私の言いなりになる男ではない
私は一刻でも早く彼らの元へ辿り着こうと
思い切りアクセルを吹かせた・・・
どうか・・・神よ・・・
もう二度と・・・
私の大切なものたちを・・・
・・・奪いたもうな・・・