「若!・・ライアンが直接動き出しました」
ライアンの元に進入させた配下の者から、
私とソニーそれぞれに連絡が入った
「一時間もすればそっちへ到着する」
「しかし・・」
「・・・わかった・・動け」
私はソニーに彼らの運命を託した
私が現場に到着するとほぼ同時に、上空からヘリコプターが
降り立った
そして機内から数人の男達が降りたかと思うと、私の車へと向かって来た
身構えた私に向かっていたのは私と手を組んでいたFBI捜査官
ユイ・コールドとモーガンだった
「どういうことだ」
「若・・」
「どうして・・」
「話は後で・・まずはライアンを食い止めましょう」
私はモーガンの言葉に急いでフランクたちの元へと向かった
私が入り口に出向いた時には既に、先に到着していた
モーガンの手のものとFBIがライアンの配下たちを取り押さえていた
私達が建物の中に入った瞬間、一発の銃声が奥から轟いた
私は胸騒ぎを押さえながらその音に向かって必死に走っていた
そして、やっと彼らの元に辿り着いた時、
そこにはフランクとジニョンを狙って銃を構えていたライアンが見えた
私は迷わず胸ポケットから銃を取り出し、ライアンのその手に狙いを定めた
「無傷で返す!
そういう約束じゃなかったか!
ライアン!」
私に右手を打ち抜かれたライアンが私を睨みつけながらFBIに捕らえられていた
その傍らに、フランクとジニョンが横たわっていた
私は急いでふたりに駆け寄ると堅くジニョンを抱きしめていたフランクを
彼女からやっとの思いで離すことができた
「止めて!」
ジニョンはうな垂れたまま私の腕に抱えられたフランクを
まるで奪い取るかのように彼を抱きしめ離さなかった
「ジニョン!離しなさい・・救急車に乗せるんだ!」
「いや・・いや・・連れて行かないで・・
フランク・・フランク・・・私の・・フランク・・」
「怪我をしてるんだ!離しなさい!」
ジニョンは尋常ではない出来事を目の当たりにして錯乱していた
「ジニョン!しっかりしろ!」
君を・・・こんな目に遭わせてしまった私を・・・
許してくれ・・・ジニョン・・・
フランクは・・君の・・フランクは・・・
もう大丈夫だ・・だから・・・
しっかりしろ・・・ジニョン・・・
そしてジニョンもまた・・・私の腕の中で・・・
フランクを抱いたまま、気を失ってしまった
私はジニョンの髪に祈るようにくちづけた
どうか・・・これ以上傷つかないでくれ・・・
ジニョン・・・私の・・・・・・
脈を取った救急隊員が、私に向かって“大丈夫”だと頷いて見せた
私は脱力していく自分を辛うじて持ち堪えていた
「ソニーは・・」
「大丈夫です・・打たれていますが・・
命に別状はありません」
もうひとつの気掛かりをモーガンのその言葉に救われて
私は再度胸を撫で下ろした
「若・・・決して銃を持たない・・・
あなたの信念はどうされました?」
モーガンが笑いながら、さっきとっさに使った銃の出先を問うた
「知っていたのか」
「ええ・・とっくに・・いつも胸ポケットに入れている
振りをなさっていたことも・・・」
「フッ・・・・あれは・・母さんのだ・・・」
「?・・・母さん・・・ですか・・・」
「ああ・・」
「しかし・・それは私がお預かりしましょう
あなたがそういうものを持っていてはいけません」
そう言って、モーガンは手を差し出し、私から銃を受け取った
「それより・・モーガン・・どうして・・ここへ?」
「ボスが・・いえ・・
あなたのお父上が私に命令を下されました」
「父が?」
「これが・・最後の命令だと・・・
レイモンドの思うように・・・
レイモンドの指示に従えと・・・
・・ですから・・ずっと
あなたの動きを追っておりました」
「どうしてFBIに?・・・」
「あなたが望まれていたことですから・・・
そうではなかったですかな?」
「・・・そうだったな・・・」
「・・・・」
「モーガン・・・・」
「はい」
「許してくれ・・
あれほど・・大義名分を掲げながら・・
お前達の意に反して・・・
お前達を窮地に追い込むことなどに
何の迷いも無かった私が・・・
最後は・・・
たったひとつのものを救うことしか
考えていなかった・・・
結局私は・・・それだけの男・・・
もしかしたら・・・
全てをライアンに奪われていたかもしれない・・」
「いいえ大丈夫です・・・あなたはそんなことはなさらない
たとえ・・一時的にそのようなことが起きたとしても・・・
必ず・・あなた自身の信念に立ち返る・・・
あなたは・・そんなお方だ・・・
私は・・父上と同様に・・罪を償いましょう・・
そしていつしか許されるなら・・
また・・あなたの元で・・・」
「ああ・・必ず・・・
お前達が生きていく場所を必ず・・・
築いてみせる」
「はい」
父さん・・・
最後は・・・あなたが下したんですね
28年前・・・
本当はあなたがそうしたかったことを・・・
結局あなたが決断を下された
父さん・・・笑ってください・・・僕は・・・
たったひとりの愛しいもののために・・・
危うく信念すら曲げようとしていた・・・
あなたの決断がなかったら・・・
あなたの勇気がなかったら・・・
力を貸してくださった
あなたの思い・・・決して・・・
・・・無駄にはしません・・・