ブロコリ サイトマップ | ご利用ガイド | 会員登録 | メルマガ登録 | 有料会員のご案内 | ログイン
トップ ニュース コンテンツ ショッピング サークル ブログ マイページ
OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
サークルオーナー: tomtommama | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 335 | 開設:2006.11.13 | ランキング:30(12728)| 訪問者:3734315/4577941
開設サークル数: 1238
[お知らせ] 更新のお知らせ
容量 : 89M/100M
メンバー Total :335
Today : 0
書き込み Total : 1988
Today : 1
愛の群像Ⅱ
愛の群像のその後のストーリー
No 1 HIT数 4177
日付 2012/12/22 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル 愛の群像Ⅱ 第一話 幸せの証明
本文


       

第一話 幸せの証明







「ジェホ!ジェホヤ・・」

今朝もまた、その名を呼ぶ自分の声で目が覚めた。
目尻に冷たく残った涙の跡に、暗い夢の中でまた、
あの人を追ったことを思い出す。

ジェホヤ・・・
あなたが目を覚まさなかったあの朝から、私の横を流れる季節は
悲しいくらい味気なくて、彩りさえも寂しく褪せていた。

ジェホヤ・・・
それでも私は生きている。

《何のために?》時にそう呟いてみる。

《何のために生きている?》

でもその問いには、誰も答えてはくれない。
それはジェホ・・・その答えはあなたしか知らないことだから。

あなただけが私の生きる理由だったから。



「シニョン・・起きてるの?早く降りて来なさい!」 
母の不機嫌そうな声が階下から聞こえた。

「えぇ・・今行くわ」 
私は少しかすれた声を懸命に張って答えると、目の前の鏡に映った自分の
情けない顔の口角を上げ、無理に笑みを造った。
ここに戻ってからというもの、母や父の前では笑顔を見せる、
それが自分の努めのような気がした。
ふたりをもう二度と悲しませないために。

「早く顔を洗って、ご飯食べなさい!今日から登校でしょ?」
母がまだ、声を高くして早口に私を急かしている。
きっと、いつものように慌ただしげに朝食の支度をしながら。

ベッドを降りて部屋を出ると、階下に向かった。
階段を下りる途中で、ふと立ち止まって手摺をそっと撫でてみた。
父がこの家を売って、ジェホと私のために家を用意してくれたことを思い出した。
あの頃はジェホと生きることに精一杯で、父の思いに甘えるしかなかったが
正直、父にそうさせてしまうしか無かったことを、ずっと悔やんでいた。
この家は、身を粉にして働いて得た、父の誇りだったからだ。

ジェホの死後、父の新しい仕事は着実に成功することとなって、
十年前、父はこの家を取り戻してくれた。
それがどんなに嬉しかったか知れない。

結局私は両親に対して負担を掛けるばかりで、何もしてやれなかった。



ダイニングに向かうと、父はとうに食卓についていて、黙々と食事していた。

「お父さん、おはようございます」 
私は父の顔をまだ真っ直ぐに見られない。

「ん・・」
相変わらず無表情な父が、顔も上げずに小さく返事をした。
私はそんな父に構わず席に着いた。

「顔は?」母が言った。

「後でいい」
私はそう言いながら、スプーンを手に取ると、スープの中にご飯を入れた。

「はぁ・・だらしないわね、私はいったいいつまで
 あなたの面倒を見なきゃいけないの?」
母が私の顔を睨みながら、ため息混じりに言った。

「見てくれなくてもいいわよ」 
いつもの母の嫌味に、私も負けじと憎まれ口を叩く。

それでも父は黙々とスプーンを口に運んでいた。

「やっと父さんとふたりだけの生活に慣れてきたというのに、
 今度は50にもなる娘まで面倒みなきゃならないなんて・・」
母のその辛辣な小言はしばらくは続く。

さて、私も元気にそれに応戦しなくてはならない。
48よ」スプーンを口に運びながら答えた。

「同じようなものでしょ!」
母もやっと席に着くと、乱暴にスプーンを取って言った。

「違う。それにみんな若いと言ってくれるのよ、あー、『シニョンさん、
 どう見ても30代にしか見えませんね』って」

「はっ・・呆れた。お世辞というものを知らないの?」

「お世辞かそうじゃないかぐらいはわかるわ」

「そう!それは良かったわね。50・・いえ48?それでももう子供、
 いえいえ、孫だっていたって可笑しくない年じゃないの」

「お母さん・・ひ孫が欲しいの?」

「はっ・・結婚もしてない人が何を言うの?私はお陰様でひ孫どころか、
 きっと死ぬまで、孫だって抱けやしませんよ」

「悪かったわね」

「あれほど、早く結婚しなさいって・・」

「してるわ」

「・・・・・・」

やってしまった。
母がうつむいてしまった。

母が黙ると怖い。今日こそは些細な母娘ゲンカで済ませたかったのに。
案の定、母はメソメソと泣き始めた。

「ごめん・・」
私は大急ぎで母をなだめようと席を立って、母の背中を撫でたが、
既に無駄だった。

「ジェホ・・ジェホヤ・・どうしてあなたは死んじゃったの?
 私とあんなに約束したのに。決してシニョンを置いて逝かないって、
 きつく約束したのに・・。この裏切り者!」
母が手にしていた皿を床に投げつけて、癇癪を起こす。
私がこの家に戻ってからというもの、そんなことが何度あっただろう。

「いいかげんにしろ。」見かねた父が口を開いた。

「ああっーーー!!」母は更に大声で喚きだした。

「シニョン・・もう行け」
父が犬の子を追い払うような仕草で、私を追い立てた。

「お父さん・・・」

「母さんを興奮させるんじゃない。この家にいたかったらな」
父はため息を付きながら強い口調でそう言った。

「・・・・出て行けってこと?」

「どうして戻って来た?こうして母さんを悲しませるためか?」

「そんなことあるわけないでしょ?ふたりが心配になったからよ」
事実だった。
年老いた両親を放って置けなくなって、私はこの地に戻って来た。
あの人との思い出が詰まったこの地に戻って来た。

10年以上も放っておいてか?」
父はそう言って、私を強く睨みつけた。

「・・・ごめんなさい」
私はそれを言われると何も言えなくなる。
ジェホがこの世を去って、生きる術を無くしてしまった私は
彼と過ごした地を捨ててしまった。
それから一度として戻ることをしなかった私は、結局両親さえ
捨ててしまったと同じなのだ。

「シニョン。お前はあの時、約束したよな。
 余命が短いジェホとの結婚を認めて欲しいと、懇願して来た時、
 認めようとしない私に、お前は約束したな。覚えているか?」

「・・・・・・」<覚えているわ>

「お前はこう言ったはずだ。万が一、あいつがお前を置いて
 先に逝ってしまった後は、決して心をあいつに残さないと。
 『だから結婚を許してくれ』と。」

「・・・・・・」

「それがどうだ。結果はどうだ?あいつが死んでもう何年になる?
 今、お前はどうなった?」

「ちゃんと・・生きてるわ」

「ちゃんと?生きてる?・・はっ・・親を馬鹿にするんじゃない。
 お前がいつも、無理して笑っていることを知らないとでも思ってるのか?」

「無理なんて・・・してないわ」

「いつまでなんだ?
 いつまで引きずっていくつもりなんだ?あいつを・・・」

「・・・・・・」

「シニョン、よく聞け。父さんにとっても、母さんにとってもあいつは・・
 ジェホは大事な人間だった。
 わかっているだろ?悲しんだのはお前だけじゃないんだぞ。
 今でも碁を打つたびにあいつを思い出しては涙が出る。
 目の前に、楽しそうに碁を打つあいつの幻覚が見えるんだ。
 母さんだって、食事を作りながらいつも泣いてばかりだった。
 『これをジェホに食べさせたかった』そう言ってな。
 しかしな、残った私たちがいつまでも悲しんでいてどうする?
 あいつはそのためにお前と結婚したのか?そうじゃないだろう?
 あいつが一番、お前の幸せを願っていたはずだ。そうじゃないのか?」
日頃おとなしい父が珍しく興奮して涙ながらに訴えている横で、
母もまた顔を手で覆っていた。

「・・・・・わかってる」
私は涙を見せないと堪え、やっとの思いでそう答えた。

「わかってる?だったら!その証拠を見せてみなさい。 
 私たちに・・・ちゃんと見せなさい。 
 シニョン・・私たちはもう年だ・・・いつまでもお前の幸せは待てない。
 お前の幸せを見届けないで、私たちは死んでも死にきれない。」

「・・・・・・」

「・・・そうじゃないと・・・あの世でジェホに・・・報告ができないじゃないか」
険しかった父の表情が崩れ、声を震わせた。

「父さん・・・」





私は20年ぶりにこの学校に戻って来た。

敢えて私が、ジェホと出会ったこの学校に教授として戻ることを選んだのは、
他でもない、今度こそ彼を忘れる為だ。
アメリカに渡って十余年。結局は彼から逃げていただけだった。

<そう、父さんの言う通りよ>

私は未だに彼の呪縛から逃れられてはいない。
だから韓国への帰国を決めた時、戻る場所はここしかない、そう思った。
そして彼を今度こそ、私の心から葬ってあげようと。
父の言う通り、きっと彼もそれを望んでいる。そう思ったからだ。

校舎は幾度か改築されているものの、概容はあの頃のままだった。
ジェホと出会った教室も、ふたりでお茶を飲んだ教授室も、そのままだ。

心でそう呟きながら、シニョンは指で机を撫でた。

「シニョン」その声が背後から聞こえて、振り向いた。

「先輩」

「来たか」

「先輩・・あ、いえ学長ですね。お元気でしたか?」

「ああ、随分と年を取ったがな」

「そんなこと・・・先輩はまだ若いわ」

「はは、お前こそまだまだ若い。あの頃と少しも変わってないじゃないか。」

「それは言い過ぎよ。いつからお世辞が上手くなったの?」


ソン・ギルジン先輩。
私とジェホを影になり日向になり支えてくれた大切な友人。

「しかし・・何年ぶりだ?」

「12年・・・先輩・・・不義理をして、ごめんなさい」

「ああ、心配していたよ、もの凄くな。
 あいつもずっと・・・お前のこと、気にかけていた」


《どうして助けてくれなかったの!ジェホを返して!》


「・・・・・ごめんなさい」
ギルジンの妻であり、ジェホの主治医でもあったジョンユンを
あの頃、理不尽にも責め立て、その後は避け続けていた。

《ごめんなさい・・・自分の心のコントロールすら、
 できなくなってしまっていたの》

「・・・・今度お宅にお邪魔していい?ジョンユン先輩に会いたい・・・」

「ああ、喜ぶよ」

「怒ってないかな」

「そんな奴じゃないだろ?」

「そうね」
懐かしい先輩の笑顔を久しぶりに見て、不思議と心が和らいだ。
きっと、昔からいつも、私を暖かく見守ってくれていたそのままの
笑顔だったからだろう。

「先輩・・あ・・学長」

「先輩でいいよ」

「クレ・・先輩・・この部屋をわざわざ?」
ここは、壁紙こそ変わっていたが、昔自分が使っていた部屋のままだった。

「ああ、他の部屋の方がいいか?」

「ううん・・・ありがとう」

「授業は明日からだったな」

「ええ」

その時ギルジンの携帯電話が鳴り、彼はその電話に応対すると
シニョンを振り返った。
「ちょっと急用ができたんだ。悪いけど、学校案内は少し待ってくれるか」

「あぁ、案内なんて」

「結構変わってるんだよ、昔と。じゃ、後で」

ギルジンが慌ただしく部屋を出て行く様子に、シニョンは微笑むと
急に静かになった部屋を見渡し、窓辺に向かった。

窓の外に見える景色は昔のままだった。
グランドの土の色も、そびえ立つ木々も、改築された校舎と違って、
ジェホがいたあの時間に今にもタイムスリップしてしまいそうなくらいに
そのままだった。

その時だった。シニョンの瞳が大きく見開いた。

目の前に階段を上ってくる「彼」の姿が見えた。

「えっ?」
シニョンは自分の目を疑った。「ジェホ?」
咄嗟に彼女は窓を開けた。

「彼」が前方に向かって笑顔を向けた。

「ジェホ!」女の声が彼の笑顔の先から聞こえて来た。
「ジェホ、おはよう」

《ジェホ?》

「おはよう」そして「彼」が口を開いて、その声を発した。
それは紛れもない、ジェホの声だった。

《きっと今、私は夢を見ているのだろう。》

しかしその声は、
夢の世界なら、必ず自分に向けられるはずのその声は、
まったく知らない若い女に向けられている。

シニョンは驚きのあまり呆然としながらも、ふたりを目で追っていた。
階段の上で落ち合ったふたりの男女は、軽く抱擁を交わし、
シニョンがよく知っている「彼」のくったくのないあの笑顔は、
自分の知らない女の頬に摺り寄せられた。

あの笑顔は・・・・

あの声は・・・

シニョンは危うく気を失いそうになってしまいそうだった。
震える手で窓を締めると、フラつきながら、やっと椅子に腰を下ろした。

少しして、ドアを叩く音が聞こえた。
「は・・い・・」シニョンは小さく答えた。

「失礼します」《あの声だ》

そして誰かがドアを開け、顔を覗かせた。
まるでスローモーションのように、その顔がドアの隙間から滑り出た。

シニョンは一瞬目の前が真っ白になるのを感じていた。
そしてそのまま、意識を失ってしまった。


私は夢を見ていた。
幾度も繰り返し見たあの日の夢だ。

ジェホが目覚めなかったあの朝、私は彼のそばを離れなかった。
連絡が取れないことを心配した母が部屋を訪れた夜まで
私は彼の傍らで眠っていた。
このままふたりして目覚めなければ、私たちは幸せのままだ。
そうなればいい、そう思っていた。

だから私を起こしてしまった母を恨んだ。

ジェホを私のそばから離した父を恨んだ。

ジェホを灰にしてしまった伯母を恨んだ。

私は涙も流さず、ただ静かにその光景を見ていた。

私の目の前から、ジェホが消えていく風景を・・・

ただ見ていた。







 


前の書き込み 愛の群像Ⅱ 第二話 彼
次の書き込み 次の書き込みがありません。
 
tagawa
kurumi☆様、愛群をありがとうございます。私もずいぶん前に一度しか見れませんでした。今でも「ジェホ」と聞くだけでウルウルしてしまいます。文字が滲んで時間を掛けながら読ませていただいてます。 2013/01/09 10:08
kurumi☆
愛群は悲しすぎて一度しか見れなかった作品。でもすごく心に残った作品。だからこそ、私なりの結末をつけてみたかった。だから書いています。 2013/01/08 23:14
kurumi☆
hiro305さん、ありがとう^^タオルはさほど必要はないと思います^^しかしながら、私は泣きながら書いています^^ 2013/01/08 23:12
kurumi☆
nari50さん、ありがとうございます^^本当に辛い物語でした。ラストは苦しくて、三日間目を腫らしていました(笑)「なんてことしてくれたの!」という気分でした 2013/01/08 23:09
kurumi☆
ジェニーさんはきっと大丈夫(笑)そう思っていました^^私も愛群の中では、シニョンさんとのやり取りより、おばさんとのやり取りが印象的でした^^今後の展開を楽しんでくださいね^^ 2013/01/08 23:07
kurumi☆
ayagikuさん、いいんです^^賛・否どちらのお声も出していただいて^^ドンヒョクの創作をお待ちくださっている方のお声はブロメでもいただきますが、今はまだ書けませんので許して^^ 2013/01/08 23:05
kurumi☆
dangowaoishiineさん、ありがとうございます^^今回のヒロインは私たちと等身大を意識してこの年齢にしました^^(私はもっと上だけど^^) 2013/01/08 23:03
hiro305
「忘れない」事が先にいった人との一番の繋がりだから・・・。シニョンさんのこれからがどう展開していくのか楽しみですがやっぱりタオルが必要みたい。なんせkurumiさんの創作だから・・・・ 2013/01/08 16:11
hiro305
アップされている事を今日気がついたおバカな私です。。。 最初から切ない展開ですね・・・「ジェホが死んでも忘れて幸せに生きる」と言うような台詞があって、自分的にはありえない!と思っていました。 2013/01/08 16:07
nari50
とても辛い物語でしたが、いつまでも記憶に残る作品でした。あの頃のヨンジュンさんは、とてもいい表情をしています。kurumiさんの物語の展開も楽しみにしています。 2012/12/29 21:01
ジェニー・S
kurumiさんが 愛群のその後を書いてくださるののを楽しみにしています。♪ 2012/12/29 08:08
ジェニー・S
私は 愛群が好きです、ジェホが伯母さんとの会話で、 「伯母さん、僕は幸せになったことが無いので幸せって解らない」と言うようなセリフがあり号泣してしまいます。 2012/12/29 07:50
ayagiku
kurumiさんの新しい創作、待っていましたと言いたいんですがどうも【愛群】は受け付けないんです(涙)相手役の女優さんに拒絶反応なんです。【姉御】に見えて、、、ごめんなさい。 2012/12/25 16:39
dangowaoishiine
kurumiさん、ありがとうございます。お話が甦り、ジェホとシニョンの楽しかった場面が浮かんでくるのに、涙が溢れて止まりません。私の中でずっと止まっていたシニョンがうごきだしました。 2012/12/24 14:59
 
 

IMX