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OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
サークルオーナー: tomtommama | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 335 | 開設:2006.11.13 | ランキング:30(12728)| 訪問者:3831135/4674761
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愛の群像Ⅱ
愛の群像のその後のストーリー
No 10 HIT数 2865
日付 2013/02/16 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル 愛の群像Ⅱ 第十話 ジュンスが数えた時間
本文





第十話
   



「ずっと・・・こうしたかった」 
ジュンスはシニョンの唇から、自分の唇を離したものの、
近づけた顔はそのままに、そう囁いた。

「・・・・・・」
シニョンはそんな彼の瞳を、目を丸く見開いたまま、
無言で見つめていた。
たった今しがた、《愛してる》と告白をくれた男の顔が、
鼻先が付かんばかりの距離を挟んで、そこにあった。

シニョンはこんな突飛もない状況の中、意外と冷静に
彼の瞳の色を見つめている自分に気がついた。

《なんて綺麗な目なの?・・・それに比べて・・・》

シニョンはハッとしたように突然、ジュンスの胸を強く押して
彼を突き放した。
そして急いでドアを開けると、彼の熱い視線から逃げるように
車を降りた。 

一方、ジュンスはそのまま車に留まっていた。
振り向かず門扉へと突き進むシニョンの後ろ姿を、眼差しだけで
追いながら、彼女がドアの向こうに消えるまでを見送った。
そして・・・
一度目を閉じ、自分を納得させるように溜息をひとつだけ付いて、
車のギアに手を掛けると、アクセルを静かに踏んだ。




シニョンは玄関に入ると、その扉に背を付けたまま動けずにいた。
少しして、玄関脇に掛けられた姿見に映る自分に気がついた。

《・・・なんて顔してるの?》

さっき、ジュンスを突き放してしまったのは・・・
決して彼の突然の口づけに怒ったわけじゃなかった。

彼の思いもかけなかった告白に腹を立てたわけでもない。

それは彼の瞳が余りに美しかったからだ。

あの日自分を助けるために負ったあの頬の傷でさえ、
眩いほどに美しかったからだ。

それに比べて・・・
彼に不釣合いな自分の姿が、急に恥ずかしくてならなかった。

シニョンは鏡に映る自分をしげしげと見つめた。
頬に掌を当て肌をさすってみたり、それを上に引き上げてみたり、
僅かに深くなってきたほうれい線を目立たなくもしてみた。

鏡の中でまるで百面相を描く自分が、更に滑稽だった。

シニョンは引き上げてみた頬から手を離して、重力に任せ
それを元に戻すと、声を上げて笑った。

《何をしてるの?シニョン》 

「何をしてるの?シニョン」
自分の心の声に、こちらを覗いた母の声が重なって聞こえた時、
鏡の中の自分の頬がみるみる赤くなるのがわかった。

「何でもないわ」

そう言ってシニョンは、母の横をすり抜けて、自分の部屋へと
駆け上がった。

「可笑しな子ね」
背後からの母の声が、からかっているように聞こえて、無性に
憎らしかった。



部屋に入ると、シニョンは着替えもせず、真っ先にベッドに
どんと横になった。

天井を睨みつけても、そこにはキム・ジュンスがいた。
今この時、彼女の頭の中はまるでジュンスに乗っ取られて
しまったようだった。
気がつくと彼女は、彼に口づけられた唇を指でなぞっていた。

「冷静になれ・・シニョン・・・冷静になれ・・・」
シニョンは自分に言い聞かせるように、何度も何度も呟いた。

「イ・シニョン!
 子供じゃあるまいし・・あんなこと位で動揺してどうするの!」
終いには、自分の吐き出す独り言に、焦りを見つけて苦笑した。

そして突然ハッとして、携帯電話を取り、アドレス帳を開いた。
しかし、その人の番号はなかった。
《それはそうよ、入れた覚えはないわ》

その時だった。
静かな部屋に電話の音が鳴り響いて、シニョンは思わず
持っていた電話を落とすところだった。

「もしもし」 
表示された番号は見知らぬものだったが、シニョンは迷うことなく、
受信ボタンを押した。

「シニョンssi?」

《やはり・・・》 キム・ジュンスだった。

「あ・・は・・はい、ど、どなた?」 
シニョンは彼からの電話だと想像していた自分をごまかすように
冷静を装ったが、その声は間違いなく動揺を伝えていた。

「・・・驚いたな」 ジュンスは名前を名乗らず、ただそう言った。

「えっ?」

「いえ・・電話に出るのがすごく早かったから」

「あ・・今・・電話を持ってたから」

「ああ、そうだったんだ」

「この電話番号・・どうして・・・?」

「あー・・学長が教職員の名簿を・・」

「ああ、気がつかなかったわ」《あれがあったわね》

「もしかして・・」

「えっ?」

「もしかして今、僕に電話しようとしてましたか?
 それで・・番号がわからなかった、とか・・」

「んっ・・《勘がいいやつ》・・あ・・あの・・・お願いがあります」 
シニョンは咳払いすると、《大事な話がある》とばかりに
ベッドの上に正座した。

「はい、何でしょう」

「あ・・あの・・・あの事件のことだけど」

《そうよ、このことを言っておきたくて電話したかったの》

「ええ」

「私とあなたがその・・出会った日のこと、伯母や先輩、
 あ、いえ学長に話しましたか?」

「いいえ、誰にも話していません」

「ほんとに?・・あぁ、良かった。
 あの・・そのこと・・誰にも言わないで欲しいんです」

「言わないで欲しいって?」

「私があの事件に巻き込まれたこと、誰も知らないから」

「知らないって・・・」

「あの日、心配して連絡くれた人たちにも嘘をついたの。
 私は発見されてからはすぐに動くことができたし・・・。
 《あなたのお陰ね》
 何とかごまかせたわ・・電波が届かない所に旅行に出てたって・・・。
 といっても、丸一日連絡が取れなくて、みんなは・・・
 かなり気をもんだらしいけど・・・」

「どうしてそんなこと・・・」

「ひどいショックを受けると思って。
 離れていると特に余計な心配をしてしまうでしょ?ただでさえ。
 だから、知らなくて済むことはそのままにしておきたかったの。
 その時も・・・今も・・・これからもよ・・だから・・」

「あ・・それじゃあ、今まで飛行機に乗れなかった理由も?
 今まで言わなかったの?これからも話すつもりはないと?」

「・・・・・・乗れなかった・・って、どうしてそれを?」

「あ・・・ごめんなさい。
 あなたにはまだ話してないことが沢山あるね・・・」

「いつから?」 シニョンは少し呆れたように言った。

「えっ?」

「さっき話していたわ。『いつあなたを見つけたか』って」

「ああ」

「いつから・・私を?」

「ん・・・あなたを思い出した直後から、人を介して調べてた」

「・・・・・・」

「驚いた?」

「ええ、私の知らないところで、少しずつ年を取っていく私を、  
 ずっと見てたってわけね。何だか嫌な感じ」

シニョンはジュンスと話していると、もうずっと以前からの
旧友であるかのように、次第に打ち解けていくような気分だった。

「悪いストーカーだとは思わないで」

「そんなこと言ってないけど」

「心配だったんだ。あなたが健康を損ねてないか。
 あの事件を引きずってないか。ちゃんと生きてるか・・・
 幸せに暮らしてるか・・・」

「あなたの方が大変だったのに?」

「あなたも・・・重いPTSDに苦しんでいた」

「どうしてそれを・・・・・・あ・・・まさか・・」

「・・・・・・」

「あの頃、私にはまだNYに知り合いもなくて・・そうよ
 相談できる相手も誰ひとりとしていなかった。
 それがある時、偶然に出会った韓国籍の女性いたの。
 彼女は精神科医をしている人だった。
 彼女と何度か話していて、自分がその病気だとわかったの。
 10年前のことよ。今でも彼女とは親交を結んでる。
 ジア・・・キム・ジア・・・もしかして・・・あなたが?」

「・・・僕のいとこだ。彼女は」

「どうしてその時に言ってくれなかったの?」

「ベッドの中だけで生きた二年間、あなたのことだけが
 生きる支えだった。
 ジアが話すあなたのことが僕に勇気をくれていた」

「・・・・・・」

「そしてやっとベットから解放されると、今度は違う目的が
 生まれた」

「・・・・・・」

「あなたに会いたかった」

「・・・・・・」

「きついリハビリに耐えられたのは、この足で歩くことができたら、
 あなたに会える、そう思えたからだ。
 一歩進めば、あなたに一歩近づく、二歩進めばまた二歩近づく。
 そうやって、毎日毎日、あなたへの距離を数えた」

「・・・・・・」

「そしてやっと、それが実現したのが五年前」

「五年前?」

「あなたとジアが会うことになっていたカフェで、
 あなたと背中合わせに僕は座った。
 目を閉じて、あなたの声を聞いたんだ。
 少し舌っ足らずでハスキーな・・甘い声だった。
 意識が無かった夢の中で聞こえていた・・・
 あなたの声だった」

「どうして・・・私にお礼を言わせてくれなかったの?」

「突然こんな傷を持った見知らぬ男が現れたら、
 困ったでしょ?
 だから、そっと影から見てた。はは・・笑えるでしょ?」

ジュンスが初めて自分の顔の傷のことに触れたので、
シニョンは少し驚いた。

「ごめんなさい」

「何が?」

「あなたの・・・傷・・・私のせいだわ」

「怒るよ」

「事実だもの」

「僕は好きなんだ、この傷」

「・・・・・」

「あなたでなくて良かったって、この傷を見るたびに思えたから」

「ジュンスssi・・・」

「それに僕にはまだやらなければならないことがあった。
 あなたに出会うための準備」

「出会うための準備?」

「もうひとつ告白すると、僕はもともと研究者で、教職になんて  
 興味は無かった。だから正直、子供たちに教えることには
 今でもあまり自信がない。
 でも、あなたに近づくためにこの道を選んだ。
 教職一筋のあなたにしてみれば、不道徳極まりないね」

「どうしてそこまで?」

「何度も同じことを答えなきゃいけない?」

「何だか悔しいわ」

「悔しいって?」

「私だけが何も知らなかったなんて」

「これから・・知ってくれればいい。
 いや・・知って欲しい、僕のことを」

「・・・・・・」

「どうしたの?」

「それは・・・無理よ」

「何故?」

「無理なものは無理」

シニョンはまだ、自分が胸の内で思ったことを吐き出すことは
できなかった。
どう考えても自分が彼にふさわしいとは思えなかった。

《何故自分なのか》 理解できない。

苦境の中で、自分に行き着いた彼の心を慮ったとしても、
道理に適うわけがない。

そう思った。

ふたりはしばらくの間電話を耳に宛てがったまま、無言で
時を数えた。

「ごめんなさい」
シニョンはそうひと言だけ告げると、ゆっくりと電話を切った。

ジュンスはシニョンに切られてしまった電話の向こうの無機質な
機械音に耳を傾けていた。
そしてたった今しがたまで、その向こうにいた彼女に向かって、
呟いた。

「いいや、駄目だ、シニョンssi・・・僕は・・・

 あなたでなければ・・駄目なんだ・・」





 
 






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hiro305
思いがけないジュンスの思い、ホントにドンヒョクみたいです^^生死をさまようギリギリの場面を2人で乗り越えたならそれも運命。ジェホは自分が叶えられなかったシニョンさんの幸せを願っていると思う・・・ 2013/02/19 23:11
ジェニー・S
ジュンスのシニョンを一途の思う気持ちが う~ん ドンヒョクssiを思い浮かべてしまいました。「僕だけを見て」って言いそう♪ 2013/02/18 18:11
 
 

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