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OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
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愛の群像Ⅱ
愛の群像のその後のストーリー
No 11 HIT数 2657
日付 2013/02/21 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル 愛の群像Ⅱ 第十一話 エメラルドマウンテン
本文






   









第十一話




「今日は早いのね」
珍しく起こされる前に身支度を整えたシニョンを見て、
母は訝しげな顔をした。

「学校で準備するものがあるのよ」
シニョンはいつもと違う自分の心を、簡単に見透かされそうで、
できるだけ母の視線から逃れていた。

今朝は、シニョンにとってまるで違う朝だった。
眠れずに夜を明かし、頭の中はキム・ジュンスの存在で
いっぱいだった。

単に彼に『告白』という衝撃を与えられたことが原因ではない。

キム・ジュンスは・・・
あの恐ろしい現実の真ん中に自分と共にいた人間だった。
あの日、自分を命懸けで守ってくれた人だった。
そして、ずっと長い間、きっと自分の知らないところで、
影から見守ってくれただろう人だった。

そしてその彼が、自分を長い間、想い続けてくれたという。

こんな自分に《愛してる》とのたまう、何とも奇特な人だ。

幾度も繰り返す母との口論の度に、突きつけられる自分の現実が
否定しようもないことは自分が一番よく知っている。

《そうよ、私はもう若くない》

腹立たしいのは、彼自身がそのことを意に介してないということだ。

「可笑しいのよ、あなたが」

「何が可笑しいですって?」 突然母が私の思考に割って入った。

「えっ?」 
シニョンは自分が独り言を言いながら、黙々とスプーンを
口に運んでいる途中で、母の声に気がついた。

「私の何が可笑しいの?」 母はそう言ってシニョンを睨みつけた。

「オンマのことじゃないわ」

「じゃあ、誰のこと?」

「誰でもない」

「シニョン・・何だか昨日から変じゃない?」

「そ・・そんなことない・・いつもと・・いつも通り・・行ってきます
 お父さん、おはようございます。行ってきます」
シニョンは急いで食器を片付けると、慌ただしく玄関に向かったが、
途中ですれ違った父にも、挨拶だけを残して玄関を出た。

「こんなに早く学校に行って何するんだ?」 父が母に言った。

「知りませんよ」 母はぶっきらぼうに答えた。



シニョンはいつもより二時間も前に学校に着いた。校庭では
早朝学習のために登校している生徒を数名見掛けただけで、
鳥の囀り以外は余計な音がない気持ちのいい静けさだった。

シニョンは誰よりも早くここに来ていたかった。

登校中にキム・ジュンスに会ってしまったら、どんな顔をして
いいのかわからない。
そうなったらきっと、今日の授業をまともに進められないような
気になっていた。

こうすれば、
少なくとも今日初めて顔を合わせるまでの時間を稼げる、
そんな馬鹿なことを真面目に考えた。

しかしそれは部屋に到着して直後、簡単に覆された。

シニョンがコーヒーを飲むためにポットの電源を入れた時、
彼女の理由のわからない動揺の根源が、突然ドアを開けた。

「随分早いですね」

シニョンは驚いて、思わずコーヒーカップを落としてしまった。
ジュンスは近づいて、彼女の足元に落ちたカップを拾い上げ、
それをテーブルに置いた。

「驚かさないで。急にドアを開けるなんて、失礼よ」
シニョンは大急ぎで険しい顔を作り、一気に捲し立てた。

「ノック・・しましたよ」 ジュンスはさらりと言った。

「き・聞こえなかったわ」 《駄目よ、動揺を見せては》

「考え事してたとか?例えば・・僕のこととか」
彼はそう言いながら、シニョンの顔に自分の顔を近づけた。

「自意識過剰だわ」
そう言って彼を非難しながらも、シニョンの動揺は頂点に達していた。
彼女は後ずさりして、彼との距離を保ち、それを隠そうとした。

「違いましたか?それは残念」

「何か御用?」 

「コーヒーでも如何ですか?僕の部屋で」

「調べ物があるんです」

「ん・・・そう・・・じゃあ、コーヒー淹れて持ってきてあげましょう」

「いえ、私はこれで」 
シニョンは今入れようとしていたインスタントコーヒーの瓶を指した。

「駄目です。こんなものは」
ジュンスはそう言って、シニョンのインスタントの瓶を取り上げると、
彼女が制止する間もなく、それを持ち去ってしまった。

シニョンは呆気にとられ、ジュンスが出て行ったドアを見ていた。
しかし直後にハッと我に返ると、急いで《調べもの》の資料と
覚しきものを机に広げ、椅子に座ると、体裁を整えた。

10分程してジュンスは戻って来た。
今度はちゃんと聞こえたノックに、シニョンは声を震わせないよう
注意しながら、「どうぞ」と言った。

彼はトレイに洒落たコーヒーカップをふたつ乗せ入って来た。

「ここで飲むおつもり?」 シニョンはふたつのカップを見て言った。

「いけませんか?」

「調べものがあると言ったでしょ?」

「手伝います」

「結構です」

「ん・・・じゃあ、30分コーヒータイムにしましょう」

「30分も?」

「じゃあ、20分?」 ジュンスはシニョンの目を覗き込むようにして、
彼女の答えを待った。

「・・・・10分なら」 
シニョンは今この時、自分の顔が、《仕方なく受け入れた》という
表情を彼に見せていることを願った。

「ん・・やってみましょう」 ジュンスはそう言って、テーブルに
ふたつのカップを丁寧に並べて置いた。

シニョンはジュンスの細やかな強引さが可笑しくてならなかったが、
唇を結んでそれを堪えると、彼に促されるまま、カップの前の
ソファーに座った。

「並んで座っても?」
ジュンスはシニョンの座ったソファーを目で指して言った。
彼の仕草がとても紳士的で、スマートだとシニョンは思った。
彼女は無言で座った位置を移動し、自分の隣にスペースを空けた。

「Thenk you」 ジュンスが柔らかい声で言った。

「You wellcome」 
シニョンは自分でも驚くほど自然に彼を受け入れた。

ふたりは並んで座ると、静かにコーヒーカップを持ち上げた。

シニョンはカップから仄かに漂うその香りに、一瞬目を見開いた。
彼女はジュンスに無言で視線を向けたが、彼は正面を向いたまま
カップの淵で小さく深呼吸し、優雅に香りを楽しんでいた。

シニョンは何も言わなかった。

ただ彼と同じように、黙して静かにそれを味わった。




「・・・・10分・・・経ちましたね」 ジュンスがポツリと言った。

シニョンは時間が余りに速く経ったような気がして、確認するように
腕時計を見た。

「調べものがあるんでしたね」 ジュンスは少し残念そうに言った。

「・・・・・」

「始めますか?」

「・・・どうして?」 シニョンは正面を向いたまま彼に聞いた。

「えっ?」

「どうしてなの?」

「何が・・ですか?」 ジュンスはシニョンに視線を向け聞いた。

「どうして、私なの?」 今度はシニョンもジュンスを見た。
 
ジュンスは正面に向き直って、少しの沈黙の後にゆっくりと答えた。
「・・・・・イ・シニョンだから」

「わからないわ」

「努力してください。わかるように」

「いくつだと思ってるの?」

「知らないとでも?」

「あなたと十も違うわ」

「八つです」

「大して変わらないわ」

「そんなことが気になりますか?」

「ならないわけないでしょ?」

「どうして?」

「どうしてって・・」

「十年経てば僕は50歳です。あなたはその時58歳。
 二十年後は僕は60歳で・・あなたは68歳。
 三十年後・・70歳と78歳? どちらもおじいさんとおばあさんだ。
 遺伝学上僕の方が早く白髪頭になるだろうから、
 きっと見た目年齢は逆転するでしょうね」

「ちっとも面白くない話だわ」

「はは・・そうかな。いい話だと思いましたが」

「・・・・・・」

「あなたは・・・とても若くて、とても綺麗です」

「もっと面白くない」 シニョンは憮然として言った。

「卑屈だな」 ジュンスがさらりと返した。

「・・・・・!」 シニョンはジュンスの横顔を睨みつけたが、
その顔がシニョンの怒りを面白がっているように見えて、
余計に腹立たしかった。

「どちらにしても残された人生は後三十年、長くて五十年?・・・
 こんなことを言い合ってる時間がもったいないと思いませんか?」

    『怒るのはもう止めてください
     あなたとの時間がもったいないです
     今日一日、損をした気分でした』

  聞こえたのはカン・ジェホの声だった。


「・・・・・・ど・・どれだけ長生きするつもり?」
シニョンは心に聞こえたジェホの声を頭から振り払うように、
ジュンスとの会話に戻した。

「あなたとなら・・・長生きできそうな気がする」

「直ぐには答えられないわ」

「いいですよ、考えてくれて・・・でも余り待ちたくないな」

「待ってくれなんて言ってないわ」

「十年待った僕に言う言葉ですか?」

「・・・それはあなたが」

「そう、僕が勝手に待ったんです。しかし・・・
 僕とあなたには、ひとつしか答えはありません」
ジュンスは突然、厳しい表情になって、強い口調で言った。

「・・・・・・」

「無論。一緒に生きる、という答えです」

「勝手なのね・・・私の気持ちは?」

「昨日も言いましたよね。僕を知って欲しいと。これから・・・。
 そしたら自ずと、あなたの気持ちはわかるはずです」

「自信家なの?あなたって」

「ん・・・否定はしません」 ジュンスはニッコリと笑った。

その後しばらく、ふたりは黙って互いの瞳を見つめていた。
シニョンはキム・ジュンスという男の真実を見るために。
ジュンスはイ・シニョンに自分の真実を届けるために。

その時だった。ドアがノックと同時に開けられた。

「シニョンssi、おはよう。もう登校して・・・た・・の?」
ジェホの笑顔が、ジュンスを見つけて、真顔に変化するのを見て、
シニョンは直ぐにソファーから立ち上がった。

「ジェホヤ・・おはよう。あなたも珍しく早いのね」

「キム先生、おはようございます」 
ジェホはシニョンの言葉を無視して、ジュンスを睨むように見た。

「ああ、おはよう、あ・・パク・・ジェホ君?」
ジェホに挨拶を受けたジュンスは、仕方なくというように立ち上がった。

「へー、すごいな、僕の名前をご存知なんですか?
 あなたの講義は受けたことないけど」
ジェホは少しばかり刺々しくそう言った。

「君の大叔母さんの家に居候しているんでね」
ジュンスはそんな彼の反応を意に介さない様子で答えた。

「ああ・・」

同じ位の長身の男ふたりが、目の前で、何故か睨み合っていた。

「ど、どうしたの?ふたりとも・・」

「どうもしませんよ、シニョンssi・・
 それじゃあ、調べもの?頑張ってください」
ジュンスはそう言いながら机の上の資料に意味有りげな視線を
向けると、そのまま部屋を出て行った。

シニョンは自分がわざとらしく広げていた資料を、ジュンスに
見透かされたのだと、それを片付けながら赤面していた。


「何だか虫が好かない男だな」 
ジェホがソファーにドスンと腰掛けながら言った。

「教授に向かって失礼よ」 
シニョンはジェホを嗜めるように言った。

「ところで、どうしてあいつと?」 
ジェホは唇を尖らして見せた。

「どうしてって?コーヒータイムしてたの」

「ふーん」 
ジェホはまだ少し残っていたコーヒーの匂いを嗅いだ。
「苦そうだな」

「そうでもないわよ。
 酸味も苦味もほどよくて、香ばしい香りが心地いいわ」

ジェホはシニョンの言葉にカップに鼻を付け、匂いを嗅いでみたが、
よくわからなくて首を傾げた。

「エメラルドマウンテン・・・」 シニョンが言った。

「エメラルド・・マウンテン?このコーヒーの名前?」

「うん・・・NYである人に薦められて・・・飲み始めたコーヒー・・・
 最初はね、名前が素敵だなって・・・
 でも好きになったのはきっと、昔ね、ジェホが入れてくれていた
 コーヒーの香りに似てたから」

「ふ~ん・・・エメラルドマウンテン・・か・・
 じゃあ、今度僕にも淹れてよ。
 伯父さんが好きならきっと僕も好きだよ」

「ええ、今度買ってくるわね」

「あるんじゃないの?」 ジェホは目の前のコーヒーを見て言った。

「忘れてたの・・・」

「忘れてたって?・・何を?」

シニョンは今、心が自然と落ち着きを取り戻したように思った。

韓国に戻ってからのこの二週間は正直、心が疲れていた。

父や母との確執とも取れるわだかまり、
カン・ジェホを知る人たちとの喜ぶべき再会の連続は、
嬉しくもあり、切なくもあった。

「韓国に戻ってから・・・すっかり忘れてたの・・・

 私・・・このコーヒーを飲むと・・・

 本当に心が落ち着くの・・・」








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hiro305
ジュンスとシニョンの会話がテンポ良くてちょっと優しめの理事を彷彿とさせますね^^シニョンさんもきっと心地良さを感じとっているのでは?  2013/02/24 15:59
utahime27
うん!こんなグングン迫ってくるドンヒョク的な お・と・こ 大好きです!^^ 但し、ベタベタはイヤ! 2013/02/24 12:14
ジェニー・S
面白くて、ニヤニヤしながら読んでます。優しいドンヒョクに思ってしまうジュンスとジェホが睨み合うシーン、楽しみで~す♪ 2013/02/24 08:22
 
 

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