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OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
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愛の群像Ⅱ
愛の群像のその後のストーリー
No 12 HIT数 2445
日付 2013/02/25 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル 愛の群像Ⅱ 第十二話 カン・ジェホの嫉妬
本文





第十二話 カン・ジェホの嫉妬




キム・ジュンス

突然シニョンの前に現れ、彼女の思考を占領しつつある
ひとりの男。

『愛してる』
その告白を嬉しくない女が、果たして、この世にいるだろうか。
しかもその相手は十年もの間、自分を想ってくれていたという
麗しい男だ。

《少なくとも私はご多聞にもれない女だと言える》 
シニョンは心の中でそう呟いて、自嘲した。

今も忘れえぬ最愛の夫カン・ジェホが他界して18年、
今までにも自分を求めてくれた男が皆無だったわけではない。
しかし、そのいずれの時も、心を揺さぶられることは無かった。
そうしてシニョンは 《自分はもう誰も愛せないのだ》 と
自覚することになる。その繰り返しだった。

それがどうしたと言うのだろう。
シニョンは今この時も、自分の心が大揺れに揺れていることを
自覚している。

そして恐れにも似た何かを抱いている。

この気持ちは果たして本物なのか。

これが本当の愛と言えるのか。

ただ命の恩人であるジュンスへの恩情でしかないのではないか。

  《錯覚よ》

はるか昔、ジェホに向かって投げた自分の言葉が、彼を強く
傷つけたことを思い出した。

自分の胸に同じ言葉を投げつけてみた。

  《錯覚》

  《・・・錯覚でしょ?ジェホヤ・・・》





翌日、シニョンはまた朝早く家を出ると、学校へ向かった。
そして、前日に購入しておいたあのエメラルドマウンテンを
バックから取り出すと、コーヒーメーカーを使って、丁寧に
淹れ始めた。

二人分の量を。

シニョンは昨日ジュンスが置いて行ったコーヒーカップを
トレイに並べ、コーヒーメーカーからコーヒーが抽出される様を
じっと見つめていた。

約束したわけではなかった。

だから、彼がそのドアを開けて入ってくる保証もなかった。
それでもシニョンは二人分のコーヒーを淹れ、それをカップに
丁寧に、ゆっくりと、注いだ。

その時だった。
ドアをノックする音が背後から聞こえ、シニョンは自分の頬が
一瞬にして高揚するのを実感した。

「どうぞ」 シニョンは応えた。

思った通りの人物が、思った通りの時間にそのドアを開けて
入ってきた時には、シニョンの心がはっきりと《錯覚ではない》
と自分に告げた。

「・・・僕のために?」 ジュンスはコーヒーカップを見て言った。

「・・・・おそらく」 
シニョンは過剰な反応を見せまいと、懸命に冷静を装ったが、
頬の火照りを実感しないわけにはいかなかった。

「喜んでも・・いいかな」 
ジュンスは今度はシニョンの目を見つめて言った。

「自信家なんでしょ?」 
シニョンは赤面しているはずの自分の顔を、ジュンスに隠すよう、
彼に背を向けた形で、カップをテーブルに移動した。

「・・・ええ。かなり」 ジュンスはシニョンの背後からそう答えた。
シニョンは彼に背を向けたまま、口角を上げ、頬を綻ばせていた。



ふたりは昨日のようにソファーに並んで座った。

シニョンは考えていた。二人の間に生まれている温かな何かが、
進展するには少しばかり早過ぎる。
今までの自分ならきっと、こんな風にジュンスを受け入れるまで、
かなりの時間を要していただろうと思う。

それでもシニョンは前に進んだ。
それは、そうすることが自分の心に沿っていると、不思議と
信じられたからだ。

「エメラルドマウンテン・・これもあなたが?」 シニョンが言った。

シニョンのその質問の意味を簡単に理解したジュンスは、
黙って頷いた。

「僕が好きなんです。あなたにも飲んで欲しくて・・・」

「だからジアに?」

ジュンスはまた黙って頷いた。

「今度ジアに会ったら、文句言うことが沢山有りそう」 
シニョンはそう言って愉快そうに笑った。

「僕のためにしたことです」

「・・・ずっと・・長い間・・ジアには沢山支えてもらってたの・・・
 でもそれは・・・あなたに支えられていたということなのね」
シニョンはアメリカで起きていたいくつもの優しい偶然と奇跡を、
ひとつずつパズルを組むように思い出し、感慨深くそう言った。

「ジアが長い間そうしたのは、彼女もあなたが好きだったからです」

「私もジアが大好きだったわ・・・それって・・・
 あなたのことも好きだったという・・ことになるのかしら・・・」

シニョンは自分が発している言葉が、まるでおとぎ話のようで、
恥ずかしかった。《いい年をして、何を言っているんだろう》
正直なところ、ジュンスが笑ってくれたら救われるような気もした。

「そう思ってくれるなら・・・ジアに感謝しないといけないね」
ところが当のジュンスは、彼女の言葉を素直に受け取った。

「ふふふ・・・」 
シニョンは急に可笑しくなって、声を上げて笑ってしまった。

「可笑しいですか?」

「ええ、私たち・・・可笑しい」

「そうかな」

「だって・・・」
「まだ出会って間もない」 
ジュンスがシニョンが言うだろう言葉を、繋げるように重ねた。

シニョンはジュンスの真剣な眼差しに、笑うのを止めた。

「ごめんなさい。・・・正直まだ・・・よくわからない・・・でも・・・
 あなたのことを考えると・・・何だか不思議なの・・・
 自分の心がすごく揺れているのがわかる。
 胸が熱くなるのがわかる。
 そんな自分の思いを、否定したくない・・今は、そう思ってる。
 それだけじゃ・・・駄目かしら」

「・・・すごい進歩です」 ジュンスは満足げに言って微笑んだ。

「でも・・・」

「でも?」

「私は・・・
 私の中に住んでいるひとりの人を死ぬまで離すつもりはないの。
 いいえ、きっと離せない。
 それって・・・あなたにとって許せること?」

「・・・さあ・・どうでしょう」 
ジュンスは一瞬考えてそれだけを言うと、彼女から視線を逸した。
そして彼は正面を見据えたまま、コーヒーカップを口に近づけた。

シニョンはジュンスの横顔を見つめ、彼の言葉を自分の中で
反芻してみた。
《そうね。許せるわけがないわ》

「・・・やってみます」 ジュンスが俯き加減に言った。

「えっ?」

「男として・・・
 あなたの中に住むひとりの男に勝てないのは悔しい気分です。
 しかし、僕が好きになった人が、その人を忘れられないままの・・・
 あなただとしたら・・・許すしかないような気もします。
 だから・・・努力してみます。許せるように・・・」
ジュンスはそう言って輝くように微笑んだ。

シニョンはその瞬間、彼の屈託のない笑顔に、愛しいジェホを
重ねてしまった。

それはジュンスへの裏切りなのだろうか、それとも・・・
ジェホへの裏切りなのだろうか。

シニョンはジュンスの視線から逃れ、カップに口を近づけると、
自分の思いを彼に悟られないようコーヒーを口に流し入れた。

その時だった。

「シニョンssi・・入ってもいい?」
ドアをノックする音の後にパク・ジェホの声が重なった時、
シニョンは時計を見た。


『僕にもそのコーヒーご馳走して』

『明日授業に入る前だったらいいわ』


《約束していたんだった》 
シニョンは思わず動揺して、立ち上がった。
その動揺は、パク・ジェホが、自分がカン・ジェホのことを
思っていた時に現れたからかもしれなかった。

「どうしたんです?」 
ジュンスがシニョンの異変に気がついて言った。

「あ・・いえ・・何も・・」

「入ってもいい?」 ジェホの声が再度ドアの外から聞こえた。
昨日ノックと同時にドアを開けたことを窘められたジェホは
シニョンの許可を素直に待っていたのだった。

ジュンスは徐ろに席を立ち、シニョンの代わりにドアを開けた。
「どうぞ、パク・ジェホ君」

ジェホはドアを開けた瞬間、またもシニョンの部屋で出くわした
キム・ジュンスの顔を見て顔を強ばらせた。
そしてそのままシニョンに振り返り、彼女を強く睨みつけると、
無言で踵を返し、その場を立ち去ってしまった。

「ジェホ・・ジェホヤ・・」 
シニョンはジェホの態度に驚いて、彼を呼び止めたが、
彼は立ち止まらなかった。

「大分、嫌われたみたいですね。パク・ジェホ君に」 
ジュンスが言った。

「ごめんなさい。あの子・・
 昨日からあなたに対して失礼な態度ばかりで・・・」

「いいえ・・・甥ですから・・・あなたの・・・」 
ジュンスはそう言いながら、怒りを背中に描いたパク・ジェホの
後ろ姿を見送った。





その日の授業が終わりに近づいたとき、シニョンは教室の
学生たちを見渡した。
そこに、後方の窓際に陣とったジェホが授業中終始、
そっぽを向いている姿があった。

終業のチャイムが鳴ると、生徒たちは各々席を立ち、
教室を後にしていく。
そんな中、ジェホはなかなか自分の席を立とうとしなかった。

シニョンは教壇で、生徒たちの提出物の整理をしながら、
彼のその様子を時折視界に入れていた。

キム・ミンスがジェホの肩に触れ、何やら声を掛けていたが、
ジェホは彼女を邪険に追い払っていた。

結局教室の生徒の席にはジェホの姿だけとなった。

ジェホは席に座ったまま、無言でシニョンを睨みつけていた。

「いつまでそうしてるの?」 
シニョンは机に視線を落としたまま、言った。
ジェホは答えなかった。

「コーヒーを飲めなかった位で怒ってるわけじゃないわよね」 
シニョンは再度彼に声を掛けた。

「・・・僕は子供じゃない」 ジェホがやっと口を開いた。

「約束・・忘れていたわけじゃないわ」 
シニョンは今度はジェホを見て言った。

「あいつ・・・シニョンssiの何?」

「あいつって、キム教授のこと?そんな言い方、失礼じゃない?」

シニョンは教材を胸に抱え立ち上がった。
そして、ジェホに近づきながら言った。
彼女がそばまで来ると、彼は音を立てて乱暴に立ち上がった。
シニョンは一瞬その音に驚いて、一歩後ずさった。

「答えてよ」 一歩下がったシニョンに、一歩近づいたジェホが
詰問するように言った。

「な・・何を答えるのよ」 
シニョンは、今度は後ずさらないようその場に踏ん張って、
ジェホを見上げ言った。

「あいつを好きなのか?」 
ジェホは鬼気迫る表情でシニョンを睨みつけた。

「ジェホヤ・・・」 
シニョンは彼に何を言っていいのかが、わからなかった。

挙げ句の果て、ジェホはシニョンの肩を強く掴むと、彼女の
体を激しく揺さぶり、怒鳴った。
「答えろ!あいつはあなたの何!」

「ジェホ!」 
シニョンは興奮するジェホを諌めるように名前を呼んだ。

「許さない」 
ジェホの声は怒鳴り声から次第にトーンダウンしていった。

「えっ?」

「許さない」 ジェホは更に小さな声で繰り返した。

「許さないって・・何を?」

「僕を忘れるのは・・許さない」 
ジェホは消え入るような声で言うと、シニョンの肩に額を付けた。

「言ってることが・・・わからないわ」 シニョンはそう言った瞬間、
持っていた教材を床に落としてしまった。
ジェホが突然、彼女を引き寄せて、強く抱きしめたからだった。

「ジェ・・ホ・・・」
シニョンは抵抗しようと体を捩ったが、彼は彼女を抱きしめた力を
緩めなかった。
「離しなさい・・ジェホ」

「嫌だ」

その時シニョンはジェホの肩越しに、教室の入口に立つ
キム・ミンスを見つけた。
シニョンは力の限りでジェホの胸を押し、彼を自分から離した。

「ジェホ・・・」 
ミンスの声に気づいたジェホは、自分の気持ちのやり場を
無くしたように教室を早足に出て行った。
ミンスは呆然と立ち尽くすシニョンを、強い眼光で睨みつけた後
ジェホの後を急いで追った。

《何だったの・・・》 シニョンは不思議な感覚に襲われていた。
ジェホの突然の行動に、シニョンは言葉を失っていた。




この日から三日間、ジェホはシニョンの授業に姿を見せなかった。

一方キム・ジュンスは、シニョンと自分の関係をより近づけようと、
学校以外でもふたりの時間を作るよう、シニョンに求めた。

シニョンは彼のその想いに応え、ふたりの歩み寄りはさほど
無理なく、自然な形で実りつつあった。

シニョンがジュンスの想いを知って、まだ数日しか経っていない。
だとしても、
シニョンはこの事実を不思議なことだとは思わなかった。



週末の日曜日も、シニョンはジュンスの誘いに応じて、
東海までドライブした。

東海の海辺に近づくと、ふたりは車を降りて、緩い海風を浴びた。
防波堤から望む水平線を見つめ、しばし無言で立っていた。

「元気がないですね」 
ジュンスがシニョンと同じように水平線に視線を向けたまま言った。

「そんなことないわ」 

「僕に嘘はつけませんよ」 ジュンスはシニョンの目を覗きみた。

「・・・・・・」 シニョンは黙って彼の目を見つめた。

ジュンスは風になびくシニョンの髪を、彼女の耳に掛けてあげながら
彼女の目を熱く見つめた。

ジュンスの唇が自分に近づくのを、シニョンは黙って見つめていた。
彼女は、彼の睫毛がゆっくりと閉じられるのを確認した後、
自分も目を閉じた。

彼の大きな腕が腰に回され、抱きしめられた感触に彼女は
間違いなくときめいていた。
耳に掛かる彼の息に、頬を撫でる彼の指に、彼が自分に
注ぐ愛情すべてに心を奪われていた。

いつの間にかシニョンは彼の首に自分の腕を回していた。


たった今まで沈んでいた自分の気持ちを、キム・ジュンスという男は
まるで魔法を掛けるように、簡単に払拭してしまう。
その事実を実感し、シニョンは涙した。

静かな口づけ、優しい口づけ、そして長い口づけだった。
シニョンはこの瞬間に、
この口づけが永遠に終わらなければいいとさえ思った。

しかし、それは必ず終りを告げる。
ジュンスの長い睫毛が、自分からゆっくりと離れていく様を、
シニョンは薄く開けたまぶたの先で見送っていた。
それでも彼女は、彼の首に回した腕を解かなかった。
ジュンスもまた、彼女の腰に回した腕を解かず、互いに少しだけ
顔を離して互いを見つめていた。

「少しは・・・元気になりましたか?」 ジュンスが言った。

「・・・ええ。そうみたい」 シニョンはあっさりと認めた。

「なら、良かった」
ジュンスはそう言いながら、シニョンの後頭部を優しく撫でた。




星が空にひとつふたつと浮かび上がる頃、シニョンとジュンスは
ソウルへと戻った。
ジュンスはシニョンを自宅まで送り届けると、『また明日』と言って
彼女の頬に軽く口づけた。

シニョンはたったそれだけのことで赤面する自分が、可笑しくて
ならなかった。

《まるで子供ね》

ジュンスと過ごしている時間、あれ程気になっていた
パク・ジェホとのことも忘れかけていた。

こんな感情は、ジェホと愛し合ったあの頃に味わっただけ
だったことを、改めて思い知った。

それは・・・
ジュンスに申し訳が無いことなのか、

ジェホに申し訳が無いことなのか、

未だに混乱する自分の胸の内が、憎らしかった。



ジュンスの車が名残惜しそうに消え去った後に、角の向こうから
ジェホが現れ、シニョンは肝を潰さんばかりに驚いた。
「きゃっ・・あー驚いた・・・ジェホ・・驚かさないで」

ジェホはシニョンの驚きを無視して、彼女の手首を強く掴んだ。
「痛い!ジェホ・・何するの?」

しかしジェホはシニョンの抵抗を無視して、その腕を掴んだまま、
彼女を連れ去った。

そして車道に出ると、瞬時に手を上げてタクシーを拾った。

ジェホはシニョンを止まったタクシーに無理やり押し込むと、
運転手に行き先を告げた。
その時、シニョンは驚いたようにジェホの顔を見た。

車の中で、シニョンはずっとジェホの強ばった横顔を見ていた。

しばらくしてタクシーが止まったのは、薄暗くわかりにくかったが、
そこは紛れもなくシニョンにとって見覚えのある場所だった。

車を降りた彼女は、驚いたように辺りを見渡していた。
一方、後から降りて来たジェホは、無言のまま彼女を見つめて
いるだけだった。

「どうして・・・ここへ?」 シニョンは彼に聞いた。

ジェホはゆっくりと答えた。

「久しぶりに来てみたくなったんです・・・僕の・・・

  いいや、僕とあなたの・・・隠れ家に・・・」

シニョンは、そう言ったジェホの顔を驚愕の眼差しで見つめた。











   


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