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OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
サークルオーナー: tomtommama | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 335 | 開設:2006.11.13 | ランキング:30(12728)| 訪問者:3784042/4627668
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愛の群像Ⅱ
愛の群像のその後のストーリー
No 13 HIT数 2225
日付 2013/03/31 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル 愛の群像Ⅱ 第十三話 この世で一番・・・
本文






   

第十三話 この世で一番・・・





「久しぶりに来てみたくなったんだ・・・僕の・・・

  いいや、僕とあなたの・・・隠れ家に・・・」

シニョンは、そう言ったジェホの顔を無言で見つめていた。

「ここ・・もう営業してないんだ・・・でもオーナーに頼んで・・
 たまに息抜きに使わせてもらってる・・・ほら・・鍵も・・」
ジェホは顔の横で鍵を揺らして笑った。

「ね、シニョンssi、こっちへ・・・」
ジェホは立ち尽くしていたシニョンの手を取り、見覚えのある建物へと進んだ。
そして持っていた鍵を鍵穴に差し込むと、ドアを開け、シニョンを
いざなった。
中に入るとジェホは迷うことなくスウィッチに手を伸ばし、暗闇に
灯りを灯した。

明かりと共に中の様子が目の当たりに広がると、シニョンの頬に
少し赤みが指した。
その空間には確かに、ジェホの温もりが感じられたからだった。

シニョンにとって、カン・ジェホと過ごした思い出は、決して
多くはない。
この場所での出来事はその少ない中の忘れられない
ひとコマでもあった。
ジェホが昔、連れて来てくれた「彼の隠れ家」と称していた
小さな美術館。
ジェホは生前、ここをとても大切にしていた。

シニョンもその後、ジェホに伴って何度か訪ねたことがあったが、
この場所の存在は親しい人たちにさえ教えたことは無かった。

  『シニョンssi・・ここは僕とあなたの隠れ家だよ。
   だから・・・ふたりだけの秘密の場所だ。いいね』


シニョンが遠い日に思いを馳せている間、ジェホは勝手を
わかったように、ミニキッチンでコーヒーを淹れ始めていた。
シニョンはそんなジェホを見つめながら、自分が最初に
発すべき言葉を懸命に探していた。

「・・・・・・ジェホ?」 シニョンはやっと声を出すことができた。

「ん?」
 
ジェホは丁度、戸棚からマグカップを出しているところだった。

「・・・どういうつもり?」 シニョンは少し間を置いて聞いた。

「・・・どういうって?」 ジェホはコーヒー豆を挽いている傍らに、
カップをふたつ並べながら言った。

「何の悪ふざけ?」 
シニョンの声には次第に力が込められていた。

「・・・悪ふざけ?」 シニョンの言葉を繰り返して顔を上げた
ジェホも、険しい眼差しをしていた。

「どうしてここを知ったの?」 
シニョンはため息混じりにそう聞いた。

ふたりは少しの間、向きあったまま動かなかった。

少ししてジェホはシニョンから顔を逸らし、ふっと口角を上げた。
「信じないんだね」

ジェホはそう言った後、コーヒーがドリップされていく様をただ
黙って見つめていた。
その最後の雫がガラスの容器に溜まった黒い液体に落ちて、
波紋を描いた時、彼はやっとそれから目を離した。

「部屋に行かない?寒くなったから・・・」 
ジェホは微動だにしていなかったシニョンの手を強く掴んだ。
シニョンはその手を解こうとしたが、大人になってしまった彼の
力には及ばなかった。
彼は彼女の手を掴んだまま、ひとつの部屋へと進み入った。

この部屋もまた、シニョンには彼との思い出の場所だったが、
今は到底懐かしむ気分にはなれなかった。

ジェホは重ねられた布団の上からクッションを取り出し、それを
床に置きながら言った。
「まだ暖かくないから、この上に座ってて。コーヒー持ってくるよ」 

ジェホが部屋を出て行くと、シニョンは力が抜けたように
腰を落とし、頭を抱え込んだ。




少しして、ジェホがコーヒーをふたつ手にして戻って来た。
そして彼はシニョンの手にカップを持たせ、自分も彼女の
傍らに腰を掛けた。

「温かいでしょ?」 ジェホはシニョンとの間に生じた隔たりを
気にしていないとばかりに、明るく言った。

「・・・・・・」 シニョンは答えなかった。

「ここ・・・覚えてるよね」

「・・・・・・」

「僕が初めてあなたに心を開いた場所・・・」
ジェホは、自分が「カン・ジェホ」だと言わんばかりにそう言った。

「・・・・・・」

いつまでも無言のシニョンに向かって、ジェホは話を続けた。
「あなたは・・・」

「止めましょう、ジェホ・・・パク・ジェホ・・・」
シニョンがやっと口を開いて、ジェホを悲しげに見つめた。

「僕は・・・カン・ジェホだ」
ジェホはシニョンから目を逸らしてそう言った。

「いいえ違う」
シニョンの強い口調に、ジェホは彼女を睨むように見返した。

「何故違うと言える?どうして違うと言える?
 この前だってそうだった。あなたは信じてくれなかった。
 でも僕はカンジェホだ。あなたと愛し合ったカン・ジェホだ。
 ほら、覚えてるでしょ?
 あなたはあの日、ここで僕と心を交わしてくれた。
 あなたが優しく僕の心を癒してくれた。
 ここで・・・僕があなたに話したこと・・覚えているでしょ?
 忘れたりしないよね。
 ここで・・・あなたが僕にしてくれたことも・・・忘れていないよね。
 ね、シニョンssi・・僕は・・」

「カン・ジェホ」 

「・・・そう。カン・ジェホだよ。僕は・・カン・ジェホ」

「そう・・・もしもあなたがカン・ジェホなら・・・」
シニョンが切ない眼差しでジェホを見上げると、彼は息を呑んだ。
「・・・・・・」

「もしもあなたが本当にカン・ジェホなら・・・ジェホに体を返して。
 パク・ジェホに返して」

「・・・・・・」

そしてシニョンは、無言で睨みつけるジェホの目を見つめたまま、
バックから携帯を取り出し、彼から視線を逸らさないまま、
その電話の向こうに言った。

「・・・・・ジュンスssi?お願い、迎えに来て欲しいの・・ここは・・」

ジェホはシニョンのその言葉に、怒りを顕にした眼差しを向けた。
彼は瞬間的に、彼女の手にあった電話を奪い取り、それを床へ
激しく叩きつけた。
そしてシニョンをそのまま壁に押し付け、彼女の手首を強い力で
押さえつけた。

「ジェホ!」 シニョンはジェホを強く睨みつけた。

「あいつには渡さない・・・あんな奴に・・・渡さない・・・」
ジェホの行動は常軌を逸していたが、シニョンはそんなジェホを
憐れむような眼差しで見つめながら、努めて穏やかに言った。
「・・・・ジェホ・・・離しなさい」

「・・・・・・」

「ジェホを傷つけないで」

「・・・どういう意味?」

「カン・ジェホは・・・妹を・・ジェヨンをすごく愛してた・・・」

「・・・だから?」

「だから・・・あなたがカン・ジェホなら・・・こんなことをしない。
 愛する妹の子供を・・・パク・ジェホを傷つけるようなこと・・・
 決してしない・・・」

「どうしても信じないの?
 だったら、僕はどうしてこの場所を知ってるの?
 どうしてここがあなたとの大切な場所だってわかるの?
 あなたと・・カン・ジェホの・・」

ジェホはそう言いかけて項垂れると、シニョンの手首を離した。

「ジェホ・・・」 
シニョンは突然膝を抱え込むようにして黙り込んでしまった
ジェホを放っておけず、彼の隣に並んで座った。
そして彼女は、ジェホが用意してくれたコーヒーカップを手に取り、
少しぬるくなってしまったコーヒーを口に流し込んだ。

彼女はジェホの手にもカップを持たせようとしたが、彼は首を
横に振って強く拒んだ。そんなジェホを切なげに見つめながら、
シニョンはアメリカに発つ前日のことを思い出していた。

  『シニョンssi、行かないで。僕も一緒に行く』

まだ幼かったジェホが、自分にすがって泣きじゃくった日のこと。
結局その後拗ねてしまって、丁度今みたいに膝を抱え込んで
黙り込んでしまったこと。
   
今この時、ふたりの息遣いだけが微かに聞こえる音もない部屋で、
ジェホのコーヒーは、僅かも減っていかなかった。



しばらくして、シニョンはジェホを残して部屋から出た。
そして小さくため息を吐きながら、手の中の携帯電話を見つめた。
それは、さっきジェホが床に強く叩きつけてしまったせいか、
電源を入れても作動してくれなかった。

「どうしよう・・・」 
シニョンは、30分程前に掛けたジュンスへの電話を思い浮かべ、
彼がきっと、自分の電話の意味もわからず心配しているだろうと、
それが気掛かりだった。

室内はすべての照明が消されていて、電話機を探そうにも、
足元すらよく見えなかったので、シニョンは、さっきジェホが
点けていた場所を思い出しながら、照明スウィッチを探していた。

その時だった。
目の前のドアノブがガチャりと音を立て、扉が内側に動き出した。
シニョンは思わず身構えて、後ずさりした。
小さな玄関灯の灯りを背に黒い影が中へを入るのがわかると、
シニョンは更に身構えた。

「シニョンssi?」 その影は言った。

「・・ジュンス・・・ssi?」 

シニョンの視界に、その影が光にうっすらと浮かび上がるように
ジュンスを認めさせると、彼女の頬が安堵に綻んだ。
「・・・・でも・・・どうして?」

「迎えに来て、と頼まなかった?」 ジュンスはそう言って笑った。

「え・・ええ・・いえ・・そうじゃなくて・・・どうしてここが?」

「ああ・・・これ・・・」 
ジュンスはそう言って、自分の携帯のストラップを持って、それを
ゆっくりと振ってみせた。
それでもシニョンにはまだ理解できなかった。

「それより・・寒いくないですか?・・車に・・」 
ジュンスはそう言って玄関の方を指した。

「あ・・ええ・・ちょっと待っててくださる?」
シニョンはそう言って、ジェホがいる部屋に向かった。

シニョンが部屋に入ると、ジェホは積み上げられた布団に
寄り掛かって寝ているようだった。

「ジェホヤ・・」 
彼はシニョンの声に、一向に反応しなかった。

ジェホはきっとキム・ジュンスと帰ることを拒むだろうと思った。
シニョンは仕方なく、メモに伝言を書いて、彼のコーヒーカップの
横に置いた。

「・・・・ジェホヤ・・・帰るわね・・・」
シニョンは再度声を掛けたものの、諦めたようにため息をついて、
後ろ髪を引かれる思いを残しながら部屋を出た。

シニョンが部屋を出ると、ジェホはゆっくりと目を開けた。
そしてその視線を彼女が残したメモに落とし、それを手に取った。

 《ジェホヤ・・・先に帰るわね・・・
  ジェヨンには連絡を入れておくわ
  明日はちゃんと学校に来るのよ シニョン》

ジェホはそのメモを握りつぶし、壁に向かって投げつけた。




シニョンが外へ出ると、ジュンスが車にもたれ掛かって待っていた。
シニョンはジュンスがドアを開けてくれたので、それに従った。

帰路につく間、シニョンは残してきたジェホが気がかりだった。
そして、ほんの二時間ほど前まで一緒に過ごし、自宅まで送り
届けたはずの自分が、全く違う場所から彼を呼び出した理由を
聞こうともしないジュンスのことも。

美術館を出る時から、ずっと無言で運転しているジュンスの横顔を、
シニョンはそうっと覗き込んだ。

「何ですか?」 ジュンスはフロントガラスを見据えたまま言った。

「えっ?」

「何か言いたげだから・・・」

「ああ・・・・んっ!・・・あの・・生まれ変わりって・・・信じる?」
長い沈黙の後にシニョンは聞いた。

「生まれ変わり?」

「ええ・・・生まれ変わり」

「あー・・・信じないわけじゃないけど」

「信じるの!?」 シニョンは声を高く張り上げた。

「そんなに驚くことですか?あなたが聞いたのに・・」 
ジュンスはシニョンの大きな声に、眼を丸くして笑った。

「・・・それより・・・誰といたのか気にならなかった?さっき・・」
シニョンは声のトーンを意識して下げた。

「誰かと一緒だったんですか?」

ジュンスがとぼけたように言ったので、シニョンは呆れたような
声を漏らした。
さっきから何ひとつ詮索しないジュンスに対して、彼女は妙に
苛立ってもいた。

「あなたって・・・」

「僕が何か?」

「私の・・その・・・気にならないの?」

「気にならないって?」

「私の・・・・その・・・」

「亡くなったご主人のこと?」
言いよどんでいるシニョンに、ジュンスは逆に聞いた。

「・・・・・・」

「気にして欲しい?」

「そうじゃないけど・・・
 今まで一度もあなたから尋ねられたことがないなって・・」

「んー・・・あなたの・・とても愛していた人の・・その話を・・ 
 僕は聞かないといけないのかな」
ジュンスが言葉を強調するように、ゆっくりと言った。

「そうじゃないけど・・・」

「だったら。・・・聞かない選択をします」 
ジュンスは少し声を張ってそう言った。

「・・・・・・」

「不服?」

「・・・・・・あ・・いえ・・・あ、そうだわ・・それより!」

「今度は何?」

「これ・・」

「ん?・・」

ジュンスがシニョンに流した視線の先に、彼女の手にある
携帯電話を認めた。

「電話が・・?」

「これであの場所がわかったって・・さっき・・」

「ああ・・」

「どういうこと?」

「GPS・・契約してあるから・・その携帯と僕の携帯」

「えっ?」

「あ・・誤解しないで・・いつも使っているわけじゃないですよ」

「あの・・・・契約って?」 シニョンは首を傾げた。

「その携帯・・誰から?」
ジュンスは《これが答え》と言うように言った。

「これは・・プレゼントされたの・・・・あ・・ジア・・に?」

ジュンスは、まだシニョンがすべてを理解していなさそうだったが、
ある意味の答えにはたどり着いただろう様子を伺いながら、
満足げに笑った。

「ま、難しいことはいいでしょ?・・・
 あなたが僕を必要とした時に、あなたを見つけられたんだから」

シニョンはそれでもまだ納得がいってないというように、
再度首を傾げ呟いた。「GPS?・・・・・・」

「それで・・・パク・ジェホは大丈夫だったのかな?」 
ジュンスが突然言った。

「えっ?」 シニョンは思考回路の軌道修正を余儀なくされた。
「知ってたの?」

「いいや」

「だって・・」

「あなたの言動から連想しただけです」

「・・・・・・」

シニョンはジュンスが見えないところで、僅かに唇を尖らせた。

いつもそうだ、とシニョンは思った。
何故かいつも最後には、ジュンスに遊ばれているような気分に
なってしまう。

「あなたって・・・」

「ん?・・・」

「あなたって・・・いったい何者?」

「はは・・何者?ときましたか?」

「だって・・」

「僕は。・・・この世で・・まちがいなく・・・
 
       あなたを一番愛している男」


 


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ジェニー・S
ジェホ、ジュンス2人共にこんなに愛されるシニョンはとまどってしまいますね、この後が楽しみです♪ 2013/04/01 07:15
 
 

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