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OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
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愛の群像Ⅱ
愛の群像のその後のストーリー
No 15 HIT数 1744
日付 2013/06/15 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル 愛の群像Ⅱ 第十五話 忘れないで
本文






   

第十五話


翌朝、ジュンスがいつもの時間にジョギングスーツに
着替えていると、中庭から何やら物音が聞こえた。

《随分早いな・・・》

ジュンスはジンスクがもう起きたのかと、扉を開けてみると、
そこにはジェホの姿があった。
ジュンスが立てた扉の音に気づいたジェホが、一瞬彼に
一瞥をくれたが、直ぐに頭を垂れて、靴紐を結び始めた。

「随分早起きだね」 ジュンスはジェホに声を掛けた。

「・・・・・・」 
しかしジェホは無言で紐を結び終わると、玄関へと向かった。

ジュンスは相変わらず素っ気ない態度のジェホに苦笑しながらも、
彼の後に続いた。

ジュンスはいつものランニングコースを進んでいたが、
前を走るジェホもまた、同じコースを走っているようだった。
ジュンスが少しスピードを上げて、ジェホの横に並ぶと、
彼は解り易く嫌そうな顔をジュンスに向けた。

《邪魔するな》 ジェホの目がそう言っていた。

「君もこのコースを?」 
ジュンスは穏やかに聞いたが、ジェホは答えようとしなかった。

終始不機嫌そうなジェホに、ジュンスが好意的な笑みを向けると、
ジェホはスピードを上げて、わざとジュンスの前を走った。

「若さには叶わないさ」 
追い抜きざまに、ジェホが嫌味な目つきを投げた。

今度はジュンスがジェホに一旦並んでみせ、これみよがしに
スピードを上げて、彼を追い抜いてみせた。

「経験が違うよ」 ジュンスも言い返した。

するとジェホが意地になったように、ジュンスを引き離さんと、
全速力で駆け抜けた。

しかし、ジュンスは負けていなかった。
互いに意地を張るかのように追いつ抜かれつしながらも結局
後半は、ジュンスがジェホに大差を付け、前を走る結果となった。





ふたりが家に戻ると、ジンスクが台所から顔を出していた。

ジェホは「ハァハァ」と息を切らし、自分の膝に手を付きながら
屈みこんでいた。

「今日はふたりで走ったのかい?」 
ジンスクが嬉しそうにふたりを眺めながら言った。

「別に・・・一緒に・・走った・・わけじゃ・・ない」
ジェホの息はとぎれとぎれで、ぶっきらぼうな強気の声も、
悲しいかな迫力に欠けていた。
一方ジュンスは涼しい顔で、ジェホを穏やかに見つめていた。

「いつから走っているだい?」 ジュンスがジェホに聞いた。

「・・・中学からだよ」 
ジェホが返事をしそうにないので、ジンスクが代わりに答えた。

「へぇー、随分と長く走ってるね。僕もその位から走り始めたんだ」

変らず仏頂面したジェホを他所に、ジュンスは明るい口調で話した。

「この子の習慣はね、伯父さんの・・カン・ジェホの影響なんだよ。
 伯父さんが残した日記に書いてあったんだよね、ジェホヤ」 
ジンスクが台所から料理を運びながら、ジェホに向かって言った。

「へぇー」 
ジュンスはジェホが少し赤くなっているのを見逃さなかった。

「ハルモニ・・余計なことを言うなよ」 ジェホがやっと口を開いた。

「オモ、本当のことだろ?
 伯父さんのお陰で心を入れ替えたって言ってただろ?
 もともとお前は子供の頃、どうしようも無い子だったじゃないか。
 勉強もしない。・・言いつけも守らない。・・友達とも仲良くしない。
 乱暴で、効かん気で・・・」

「言いたい放題だな」 ジェホが不服そうにジンスクを横目で見た。

「それが、ある時から変わった。カン・ジェホの日記を読んでから。
 勉強も沢山するようになったし、学校も好きになった。
 それから・・ジェヨンや私をとても大切にするようになった。
 その頃からだね、あの子の習慣を見習うようになって・・・」
ジンスクは昔を思い出し、嬉しそうにそう言った。

「そんなこと・・」 ジェホの頬が更に赤くなった。

「そうなんだ」 
そう言ったジュンスのジェホを見る眼差しは、とても優しかった。

「チェッ、勝手なこと言うなよ」 
ジェホはジンスクに向かって悪態をついた。
 
「何だい、本当のことだろ?」

「ハルモニ!早くしてよ、僕もう出るよ」 
ジェホは箸でテーブルを叩きながら、ジンスクに食事を急かした。

「行儀が悪いね、そんなところも伯父さんにそっくりだ」

そう言いながらジェホの頭を叩くジンスクを、ジュンスはちらりと見た。



「じゃあ、行ってきます。ハルモニ」

「もう学校に行くのかい?早くないかい?」

「ううん、家に一度帰ってくる。母さんの様子を見ないと」

「具合悪いのかい?ジェヨン」

「ううん、そんなわけじゃないけど、昨日留守したから」

「そうかい、そうだね、そうしておやり。
 じゃあ、行っておいで。気をつけてね」

「うん」

ジェホは食事を済ませると、バタバタと家を出て行った。

ジェホがジンスクに対してはこんなにも素直な子なのだと、
ジュンスは感心しながら、彼の後ろ姿を眺めていた。

「本当にまだまだ子供だね」 
ジェホの食べた後を片付けながら、ジンスクは嬉しそうに言った。

確かにジンスクに対するジェホの態度は、まだまだ子供に見えた。

「安心したかい?」 突然ジンスクが言った。

「えっ?」 ジュンスが背中に聞こえた彼女の言葉に振り向くと、
ジンスクは部屋に飾られたカン・ジェホの遺影に向かっていた。

「ちゃんと生きてるだろ?」 ジンスクは続けてそう言った。

「・・・・・・」





ジュンスが登校すると、シニョンは既に部屋にいた。

「早いね」 ジュンスはシニョンの部屋のドアを開けながら言った。
シニョンはその声に振り向いて、笑顔で応えた。

「ええ、授業の資料の準備があって・・昨日作れなかったから」

「何だ・・」

「えっ?」

「嘘でも僕に早く逢いたかったから、とか言ってくれるといいのに」

「・・・嘘でもいいの?」

ジュンスはシニョンの言葉に、呆れたように笑った。

「あなたに・・・早く逢いたかったからよ」
シニョンはくるりとジュンスに背中を向けた後、そう言った。

「・・・・コーヒー飲む時間ある?それとも資料手伝おうか?」
ジュンスは綻んだ頬を懸命に元に戻し、言った。

「資料は用意したわ。
 そろそろ、コーヒータイムにしようと思っていたところ」

「了解。それじゃ、準備してくるね」
そう言いながら、ジュンスは自室へと急いで戻って行った。




少しして聞こえたノックの音に、シニョンはジュンスにしては
早過ぎると思いながら、「どうぞ」と言った。

入って来たのはパク・ジェホだった。

シニョンは彼の顔を見て、一瞬言葉を詰まらせた。
ジェホもまた、バツが悪そうな表情で、なかなかシニョンと目を
合わせようとしなかった。

「どうしたの?・・元気がないわ」 
シニョンは教師というよりも、伯母らしく、労りを込めてそう聞いた。

「・・・昨日は・・・ごめん」 
ジェホは変らず目を伏せたまま、ポツリポツリと言った。

「昨日は・・・お陰で思い出の場所に行けたわ」
シニョンは自分の目を見ないジェホを他所に、彼をしっかりと
見てそう言った。

「・・・・これ・・・」 
ジェホがそう言って古そうな大学ノートの束を差し出した。

「・・・何?」 
シニョンは首を傾げながら、それらを手に取った。
それは、10冊ほどもあったので、受け取った彼女の腕にも
ずっしりと重く、少し力が必要だった。

「シニョンssiが持ってるべきだと思って」

「・・・・・・」

実際には15冊もあったそのノートの表には、題名などは無く、
1から始まり15までの数字だけが書かれていたが、シニョンは
見たこともないものだった。しかし、それらを手にした瞬間、
不思議なことに、懐かしさと愛しさが湧いた。

「これ・・は?・・」

「伯父さんのもの・・・だから・・シニョンssiのもの・・・」

「ジェホの?」

「うん・・・本当はもっと早くシニョンssiに渡すべきだったけど・・・
 シニョンssiいなかったし・・・母さんが送ろうとしたんだけど・・・
 僕が先に読ませてもらってたんだ・・・」

昨夜ジェホは、ジンスクの家にこのノートを取りに行っていた。
シニョンにこうして返すために。

このノートはその昔、ジェホが中学に上がる時、伯父である
カン・ジェホが使っていた机を譲り受けた時、引き出しの奥から
見つけたものだった。

最初は好奇心からだった。
読み進む内、次第にのめり込み、カン・ジェホという男に焦がれた。

彼の生き様と、彼の愛と、彼の涙が、ジェホの心に染みたからだ。

そしてジェホはいつしか・・・
カン・ジェホの愛したすべてを愛しむようになった。

「シニョンssi・・・伯父さんは・・・カン・ジェホは・・・シニョンssiを
 心から愛してたんだ・・・だから・・・」

「・・・・・・」

「だから・・・忘れないで。伯父さんを・・・忘れないで」

ジェホはそう言いながら、目に涙を溜めた。


   《僕を・・・忘れないでシニョンssi・・・》

カン・ジェホの声が、シニョンの心の奥に切なく響いた。











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ジェニー・S
人が出来、ジェホを忘れなくても、これからの人生は長いのだから、幸せになってほしいと感じています。kurumiさん忙しいのに有難う、ゆっくり待っています。 2013/06/16 11:54
ジェニー・S
亡くなり、そのノートが過労死裁判に役にたちました。「だから・・・忘れないでシニョンssi・・・」の言葉で胸が熱くなりました。愛した人を忘れることは出来ないです、シニヨンssiにジェホ以上に愛してくれる 2013/06/16 11:49
ジェニー・S
ジョギングでの2人は笑いながら、ジンスクさんは2人の食事のお世話をしながら幸せそうで、嬉しい気持ちになりました。ジェホが持ってきた大学ノートのところから私は涙涙でした、私の夫も大学ノートを沢山残して 2013/06/16 11:38
 
 

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