ブロコリ サイトマップ | ご利用ガイド | 会員登録 | メルマガ登録 | 有料会員のご案内 | ログイン
トップ ニュース コンテンツ ショッピング サークル ブログ マイページ
OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
サークルオーナー: tomtommama | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 335 | 開設:2006.11.13 | ランキング:30(12728)| 訪問者:3783011/4626637
開設サークル数: 1238
[お知らせ] 更新のお知らせ
容量 : 89M/100M
メンバー Total :335
Today : 0
書き込み Total : 1988
Today : 1
愛の群像Ⅱ
愛の群像のその後のストーリー
No 16 HIT数 1611
日付 2013/08/01 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル 愛の群像Ⅱ 第十六話 懐かしい文字
本文






   

第十六話



僕を・・・忘れないでシニョンssi・・・

シニョンはカン・ジェホの声を胸に聞きながら、手に取った
ノートをそっと胸に抱きしめた。

《ジェホヤ、忘れたわけじゃないわ・・忘れるわけないじゃない》

「昨日は・・・ごめんなさい、シニョンssi・・・
 あんなことするつもりはなかったんだ・・ただ・・・
 シニョンssiが・・・何処か遠くに行ってしまいそうで・・・
 また・・僕たちから離れてしまいそうで・・・
 伯父さんが・・・可哀相に思えて・・・・・」

「・・・もういいわ、ジェホヤ・・何も言わなくていい」

「・・・ね、シニョンssi・・何処にも行かない?」

「えっ?」

「もう、何処にも行かない?」 
ジェホはそう繰り返しながら、シニョンに切ない眼差しを向けた。

「何処にも・・・行かないわ」
シニョンはジェホに近づいて、そう言いながら彼の頬を撫でた。
ジェホは頬に充てがわれたシニョンの手をそっと包み込むと、
瞳に薄く溜めた涙を、瞼を閉じて一筋流した。



ジュンスはその時、シニョンの部屋の前にいた。
部屋の中から聞こえたジェホの声に、ノックする手を止めた。

しばらくして、
パク・ジェホが部屋から出て来た時、ジュンスは軽く眼を閉じた。
そして、ドアの横の壁に背中を付けたまま、ジェホの顔も見ず、
じっとしていた。
その瞬間、
パク・ジェホが自分に視線を向けたことを、ジュンスは感じたが、
それでも閉じた眼は開けなかった。
ジェホもまた、ジュンスに声を掛けることなくその場を立ち去った。


ジュンスはシニョンの部屋に入るタイミングを失ったかのように
その場に立ち尽くしていた。
その時突然ドアが開いた。シニョンが内側から開けたのだった。

ジュンスとシニョンのふたりは、一瞬互いの眼を見つめたまま
数秒の時間を数えた。

「あ・・・コーヒー・・冷めてしまったかな」 
ジュンスは手にしたトレイに視線を落として言った。

「・・・冷めても・・・美味しいわ・・きっと」 シニョンは答えた。

「入ってもいいかな?」 ジュンスは彼女に同意を求めた。

「入らないつもりだったの?」 シニョンは小さく笑って言った。

「・・・もしかしたら」 
ジュンスはシニョンの問いかけを肯定するかのように答えると、
彼女の眼をまっすぐに見た。

「何故?」 シニョンもまたジュンスの眼を真っ直ぐに見つめた。

「・・邪魔しちゃ悪いような気がした」 ジュンスは真顔でそう言った。

「・・・何を・・邪魔すると?」 シニョンはそう言って、眉を下げた。

「あなたと・・・カン・ジェホの」

「・・・・・・」

「・・・・・・あー冗談だよ。そんな真面目な顔で返さないで欲しいな。
 さあ、コーヒータイムにしよう、冷めたけど、無論美味しいさ」
ジュンスは突然、おどけた様にそう言いながら、自分から先に
彼女の部屋に入った。
シニョンもまた彼の後に続いた。

ジュンスはテーブルにカップを並べ終わると、シニョンに振り返った。
そして、彼女の机に置かれた大学ノートの束に視線を向けた。

「それが?」 ジュンスは《それがそうなのか》というように聞いた。

「えっ?」

「それが・・・カン・ジェホ?」

「あ・・・」

「ごめん・・・聞こえてたんだ。さっきの・・・。」

「ああ」

「でも・・言ってもいいかな」

「何を?」

「今更、それをあなたが読むことに意味があるの?」
ジュンスは静かにそう聞いた。

「意味?」
ジュンスの問いかけは、自分にとって、意外なことだったのか、
当然のことだったのか、シニョンには正直わからなかった。

「ああ、意味」

「・・・わからないわ・・でも・・・」

「でも?」

「読まなきゃいけないような気がする」
シニョンは自分自身に言い聞かせるように、そう答えた。

「止めた方がいい」 ジュンスは即座にそう言った。

「・・何故?」

「苦しくなるだけだ」
ジュンスはシニョンから目を逸らし、窓の外を眺めながら言った。

「・・・・・そうかもしれない」

「・・・・・・前に・・・あなたは言ったね。
 “心に住むひとりの男を死ぬまで離すつもりはない”と。
 “それはあなたにとって許せることなのか”と・・僕にそう聞いた」

「・・・・・・」

「その時僕は、“やってみます”と答えた。
 “僕の好きになった人が、その人を忘れられないままの・・・
  あなただとしたら、許すしかないような気もする”と。
 だから・・・“許せるように、努力してみます”と・・・そう言った」

「・・・・・・」

「しかし・・・やはり許せない。そう言ったら、あなたはどうする?」
そう言いながらジュンスはシニョンに視線を戻した。

「ジュンスssi・・・」

「やってみたけど・・・努力してみたけど・・・やはり許せないと、 
 今・・そう言ったら、どうする?」
ジュンスはゆっくりと言葉を繋げながら、シニョンに近づいた。
そして、彼女の頬を両手で挟むと、しっかりと自分に向けた。
「答えてみて」

「・・・・・・」 
シニョンはジュンスの声をまるで遠くで聞いているような気分だった。

「答えられない?」
ジュンスはシニョンの答えを急かすように言った。

「・・・どう答えれば・・・いいの?」 シニョンはやっとそう言った。

「僕か。・・・カン・ジェホか。・・・」 
ジュンスは強い眼差しと言葉でそう聞いた。

「・・・・・・」
シニョンはジュンスの熱い眼差しに、目眩がしそうだった。
それでもシニョンは懸命に彼の情熱と戦った。

「そのノートを封印して欲しいと言ったら?」
ジュンスは机の上のノートに視線を落とした。

「・・・それは・・・できない。」 
シニョンは迷いながらも最後ははっきりと答えた。

「何故?」

「きっとそれは・・私の・・一部だから」

「悲しくなるだけだ」

「それでも」

「苦しくなるだけだ」

「そうだとしても」

ジュンスは一瞬小さくため息を吐くと、それまでシニョンの頬を
挟んでいた両手をゆっくりと離した。
そして、彼女に背を向け、テーブルの前の椅子に腰掛けると、
カップを手にし、冷めたコーヒーを口にした。

「・・・まずい」 
ジュンスはそう言って顔をしかめると、カップをテーブルに戻した。




ジュンスがシニョンの部屋にいたのはどれくらいだったのだろう。
シニョンは気づくとひとりで冷めたコーヒーをすすっていた。

《きっと怒ってるわね、ジュンスssi》

当然だとシニョンは思った。

いくらキム・ジュンスが、人間として大きな人であったとしても、
許せることとそうでないことがあるだろう。
シニョンは自分自身がたった今しがた、ジュンスの切なる願いを、
聞き入れられないと、彼の前で断言してしまったことを思い出し、
大きくため息を吐いた。

しかし、彼の願いを聞き遂げる選択は、カン・ジェホの存在をも
否定してしまいそうで、シニョンには受け入れることはできなかった。

《それでいいの?》
シニョンはジェホのノートを指で撫でながら、自分自身にそう聞いた。

「ジェホヤ・・・私とジュンスssiを許せない?」
シニョンがそう聞いた瞬間だった。窓の外から風が吹き込んで、
机のノートがスローモーションのようにパラパラとめくれ上がり
数冊のノートが床に落ちてしまった。
シニョンはそれを拾い上げようと、腰を屈めると、その中に
懐かしいジェホの文字が見えた。


《5月10日

 シニョンssiが別荘にやって来た。
 僕とずっと一緒にいると言う。決して離れないと言う。
 僕は自分自身の心に蓋をして、懸命に彼女を拒んだ。
 こんな僕と一緒にいて、彼女の幸せがどこに生まれると言うんだ。
 僕の願いは、シニョンssiの幸せだけなのに。
 シニョンssiが幸せに笑う、それだけが、僕の唯一の望みなのに。
 あの人は何もわかっていない。


5月11日

 シニョンssiを家に帰そうと彼女の実家に電話を入れた。
 そのことを彼女がひどく怒って、僕をなじった。
 「私の気持ちは変わらない」のだと。
 「だから、こんなことをしても無駄」なのだと。
 僕は彼女の熱い眼差しに自分の強い決心が揺らぐのを恐れた。
 わかってる。でもそれは駄目だ。絶対に・・・駄目だ。


5月12日

 何てことを言ってしまったんだ。
 生きたい、と・・・
 死にたくないと、言ってしまった。
 シニョンssiにすがって、さらけ出してしまった。

 そうだよ・・・僕は死にたくない。死にたくない。死にたくない。
 シニョンssi・・・生きたいよ。あなたと生きたいよ。

 いいやいっそ
 あなたの腕の中で、たった今息絶えることができたら
 どんなにか楽だろう。



次第に文字が歪んで見えなくなってしまった。
シニョンは胸の奥が締め付けられ、息ができないほどだった。
彼女は余りの苦しさに、自分の胸を何度も叩いて、息を戻した。

20年も前の出来事が、鮮明に浮かんで来るのを拒めなかった。
そして・・・
自分の心に間違いなくカン・ジェホが生きている事実を思い知った。

「ジェホヤ・・・」
シニョンは立ち上がることも、止めど無く流れる涙を拭うのも諦め
机にもたれかかっていた。




ジュンスは自分の部屋で新しく淹れたコーヒーを片手に窓際に立ち、
外を眺めていた。

《悲しくなるだけなのに・・・苦しくなるだけなのに・・・
 シニョンssi・・・
 どうして・・・自分をいじめるんだ?・・・
 あなたはもう充分・・・辛い思いをしてきたじゃないか》






















前の書き込み 愛の群像Ⅱ 第十七話 カン・ジ...
次の書き込み 愛の群像Ⅱ 第十五話 忘れない...
 
ジェニー・S
ことをしたら、気持ちに一区切りが出来るようにおもいます、その後を前を向いて新しく生きてほしいと思います。ジェホもきっとシニョンssiの笑顔を待っていると思います。  私も涙涙です。 2013/08/01 17:54
ジェニー・S
ジェホのノートを読むのは昔を思い出し悲しく、胸が苦しくなると思いますが、シニョンssiが彼とそこで生きた証が綴られている訳ですから、一度しっかり読み涙を流し、思い切り泣く 2013/08/01 17:45
 
 

IMX