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OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
サークルオーナー: tomtommama | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 335 | 開設:2006.11.13 | ランキング:30(12728)| 訪問者:3732408/4576034
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愛の群像Ⅱ
愛の群像のその後のストーリー
No 3 HIT数 4162
日付 2013/01/12 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル 愛の群像Ⅱ 第三話 鏡の中の私
本文


       
第三話 鏡の中の私




「本当にキム教授と初対面じゃないのか?」 ギルジンが不思議そうに言った。
シニョンはその問いに肩をすぼめ、無言で《わからない》と答えた。

「だったら・・どういうことだ?さっきの・・」

「私に聞かないで・・あの人、私を辛かってるんだわ、きっと」

「そんなわけないだろう?」

「ああ、思い出したわ。この学校に初めて登校した日。
 私をからかって面白がってた憎たらしい奴が、ひとりいたわ」

「はは・・いたな・・お前は本気で怒ってた」

「ふふ、この学校と私、相性悪いのかしら」

「はは、そうかもな・・・しかし・・キム先生のこと・・本当に覚えがないのか?
 アメリカで近所に住んでたとか
 仕事の関連で出会ったとか・・・彼も教師だし」
ギルジンはキム・ジュンスのシニョンに対する態度が気になって仕方ないようだった。

「う・・ん・・・」 シニョンはギルジンに促されて記憶を辿ってみた。
「・・・やっぱり覚えないわ。だって、会ってたらきっと覚えてると思うもの」
脳裏に彼の頬の大きな傷跡が過ぎったが、口には出さなかった。

「そうか・・しかし、冗談を言うような男には見えなかったがな」

ギルジンはひと月ほど前、面接のため、キム・ジュンスに初めて会った。
正直愛想がいい男とは思えず、心に引っかかるものがあったが、
それでも、この学校には過ぎた経歴を持つ彼を採用しない手は無かった。

ところが今日、シニョンと接している時のキム・ジュンスは別人のようだった。
人間味を垣間見せた彼に、ギルジンは逆に好感を持つことができた。

「そんなことより、先輩。今日は何をご馳走してくれるの?」
シニョンはギルジンの車の助手席のドアを開けながら言った。

「ああ、さっき、ジョンユンに連絡しておいたよ。彼女もお前に会えると喜んでた。
 大急ぎで病院を出ると言ってたよ。
 しかし・・悪いがその・・彼女料理はあまり得意じゃないんでね、
 きっと何処かに出前を頼むか、買ってくるはずだ。いいか?」
そう言いながらもギルジンは嬉しそうだった。

《幸せなのね、先輩・・・》そう思うと、シニョンにも自然と笑みがこぼれた。

「ふふ、お構いなく。ジョンユン先輩に会えるだけで十分よ。
 料理が得意じゃないのも知ってる」 
シニョンはシートベルトを締めながら、笑った。

「ま、お前も似たりよったりだからな」 
ギルジンもまたシートベルトをして、エンジンをかけた。

「悪かったわね」

「ところで・・その苦手な手料理でも《食べさせたい》と思う人は現れなかったか?」

「んー・・ひとりならキムチにご飯だけでも充分じゃない?
 誰かの食事の心配なんて・・面倒だしね。
 それに・・一人暮らしはこの上なく気楽だったわ」 

「そうか?」
「そうよ」

「・・・気楽に暮らしていた顔じゃないな」 
車を発進させる前にギルジンはシニョンの顔を覗き込んで言った。

「何よ・・・」 

「ほら、その顔だ」

「どんな顔よ」

「私にはもう、幸せはいりませんって顔」

「嘘ばっかり」

「お前のここに聞いてみればいいさ」 ギルジンは自分の胸を押さえながらそう言った。
その言葉に、シニョンはわざとらしく目を閉じ、自分の胸に手を当てる仕草をしてみせた。
そして三拍ほどして、彼女はぱちりと目を開け、言った。

「・・・・・・・・・当たり。だって」

「バカヤロ」 ギルジンがシニョンの頭に軽く拳骨を振り下ろした。

「昔と同じね」 シニョンは拳が降りた後を掌で撫でながら笑った。

「何がだ?」

「先輩にはどうしてか、本心が言える」

「その本心が人をどれだけ傷つけるか、もう覚えたか?」

《そうね、あの頃の私は先輩を沢山、沢山傷つけてた》

「ええ、覚えたわ
 だからね、本心は鏡にぶつけてたの」
 
「鏡?」

「うん・・鏡・・・そしたら傷つくのは鏡の中の私だけでしょ?
 『もうあなたのことなんて、これっぽっちも愛してない』
 『あなたのことなんて、とっくに忘れちゃったわ』って・・
 『あなたがいなくて、大嫌いな料理も作らなくていいし、
  毎日自由で、楽しくて仕方ない』って・・・」

「それで?」

「・・・・・・鏡の中の私がね・・
 涙をぽろぽろ流しながらこっちの私を見てるの。
 可哀想に、って顔して・・・
 こっちの私は少しも悲しくないし・・泣いてもいないのに・・・」

「・・・・・・」

「するとね、その中に彼が現れるの・・・
 『シニョンssi・・泣かないで』って・・
 ・・・彼が鏡の中の私を・・・労わるように抱きしめてるの・・・」

「・・・・・・」

「・・・だから・・・来る日も来る日も・・毎日・・そうしてた。
 そうしたら、彼に逢えるから・・・」

「・・・・・・」

「・・・先輩・・・」

「・・・何だ」

「・・・・私・・・ちっとも・・・大人になれない」 シニョンはそう言って、涙を一筋こぼした。

「・・・ずいぶん、シワは増えたぞ」 ギルジンが意地悪くそう言った。

「チィ・・」 シニョンは頬を伝った涙を手の甲で拭いながら、悪態をついた。

ギルジンはため息と共に、心の中で呟いた。

《ジェホ・・・お前・・・
 どうしていつまでも・・・こいつを放してやらないんだ》




「シニョン!」 
ギルジンの家に着くと、ジョンユンが待ちかねて玄関先でふたりを待っていた。
そしてシニョンが車から降りるやいなや、彼女を抱きしめて離さなかった。
「シニョン・・シニョン・・シニョン・・・」
シニョンの名前を呼びながら、彼女の目には涙が溢れていた。

「先輩・・・苦しいわ・・・」 シニョンの頬を濡らすジョンユンの涙が、温かかった。

「あ、ごめん・・・よく来てくれたわね。会いたかったわ」
ジョンユンはシニョンをやっと離してそう言った。

「うん、私も会いたかった」

シニョンがそう言うとまた、ジョンユンは彼女を強く抱きしめた。

「おい、いつまでここにいるつもりだ?
 中に入ってからでも挨拶はできるだろ?」 ギルジンが言った。

「ごめん、ごめん・・シニョン、さあ、中に入って」

「ええ」

ふたりの家に入ると直ぐに、落ち着いた装飾のリビングに案内された。
リビングの中央に置かれたテーブルの上には、ところ狭しと料理が並べられ、
既に小さなパーティーが開かれるばかりになっていた。

「すごい・・」

「言っておくけど、私が作ったわけじゃないわよ」 
ジョンユンが、高級レストランのメニューのような料理を前にしてそう言った。

「言わなくていいのに」 シニョンは笑いながら返した。

「今日は随分と張り切ったな。この出前は近所の屋台じゃなさそうだ」

「ギルジン!」 ジョンユンはギルジンの胸を肘で突いた。

「ふふ、先輩・・ありがとう」

「ほら、座って。再会に乾杯しよう」

こじゃれたワインクーラーに浸されていたワインのボトルを取り出して
ジョンユンは満面の笑顔で、ギルジンに《開けて》とばかりに差し出した。



「何年ぶりだろう、こうして三人で飲むの」 
シニョンがワインを飲み干して、ため息混じりにそう言った。

「20年位になるな」 ギルジンもまた感慨深げに言った。

「そうね、学生時代の気分よ、今」 ジョンユンも言った。

「それは言い過ぎだな」

「そんなことないわ。
 いつまで経っても不思議と頭の中は若い時のままなのよ。
 残念なことに、体はついて行ってないけどね」
ジョンユンがワインをグイと飲み干して《もう一杯》とグラスを差し出しながら言った。

「あ、それわかる。
 頭の中のスピードと体のスピードの速度が合わないって感じ」
シニョンが大げさに目を見開いて同調した。

「そうそう」

三人はまるで大学時代の飲み会のように、つまらない話題で笑い
昔のように互いをけなし合い、じゃれあって、長く過ぎ去った時間を
急いで飛び越えた。



「先輩、もう帰らないと」 シニョンが腰を上げながら言った。

「ああ、そうだな。もうこんな時間だ・・車を呼ぶよ」

「えーー、もう帰るの?イ・シニョン!まだ帰さないわよ」 
ジョンユンがワインで赤く色づいた顔で、少しろれつが回らない調子で言った。

「先輩、また来るから」 シニョンはジョンユンに言った。

「ダメ!・・あんたは嘘つきなんだから
 また何処かへ行っちゃうんだから!」 ジョンユンは声を張り上げた。

「おい、もう何処にも行かないよ、シニョンは」
ギルジンはジョンユンの体を支えながら、宥めるように言った。

「嘘をつくなー!」

「嘘じゃないわ、先輩、もう何処にも行かない。また来るわ」

「信じないぞ、イ・シニョン!あんたはね!
 会いたくなかったくせに!私に会いたくなかったくせに!」

「そんなことないわ」

「・・・・・私が・・私が・・・ジェホを殺したって思ってるくせに!
 私が嫌いなくせに!また何処かに消えてしまうんでしょ!」
ジョンユンは完全に泥酔していた。

「先輩・・・」

「わーーー!」 ジョンユンが大声で喚いたかと思うと、泣き崩れてしまった。
「ごめん・・ごめん・・シニョン・・ごめん
 あんたの大事な大事なジェホを助けられなくてごめん・・・」

「先輩・・・」

「今だったら・・・今だったら・・・助けられるのに・・・
 時間を戻したいよ、シニョン。・・・時間さえ戻ったら・・・助けられるのに・・・
 ごめん・・・ごめん・・・シニョン・・・ごめん・・」

ジョンユンはそう喚きながら、いつの間にかソファーにもたれかかり、眠ってしまった。

「許せ、シニョン。酔うといつもこうなんだ。
 今の医学なら、ジェホを助けられたって、必ずこうやって泣くんだ」 
ギルジンはジョンユンを抱き起こしながらそう言って、ジョンユンの髪を撫でた。

「ううん・・ううん・・・」 シニョンは大きく首を横に振った。

「わかってやってくれ・・・こいつもお前に去られて、ひどく傷ついたんだ」

「わかってる・・・わかってる・・ごめんなさい」 
シニョンはジョンユンに対して、申し訳なさで一杯だった。
「ごめん・・私こそごめん・・・先輩・・・」
シニョンは眠ってしまったジョンユンを抱きしめて、心から詫びた。



帰りのタクシーの中で、シニョンは涙が溢れて仕方なかった。
自分だけが苦しんでいたと思っていた情けなさに、嫌気がさした。

自分が韓国を捨ててしまったあの時から、

父も苦しんでいた。
母も苦しんでいた。

ギルジンもジョンユンも・・・

そして・・・


「ここで止めてください」

シニョンは車を降りると、少し歩いて、ひとつの小さな門をくぐった。
懐かしい韓屋には灯りがひとつだけ点っていた。
すると中から声が聞こえて来た。

「どなた?」

懐かしい声と共に部屋の中から、その人が現れた。
ジェホの伯母チョン・ジンスクだった。

「伯母さん・・・シニョンです」

「シニョン・・・」 間も無くジンスクの目から涙がこぼれ落ちた。

「不義理をして申し訳ありませんでした」

「・・・・・・」 ジンスクはしばらくシニョンを見つめた後、両手で顔を覆った。

シニョンはその場を動けず、黙ってジンスクを待った。
少ししてジンスクが涙を拭い、大きく息を吸って、平静を取り戻した。

「よく来たわ。帰国してたのは聞いていたのよ
 でもあなたがこうして訪ねてくれるのを待ってたの」

「はい・・・」

「さあ、上がって」

部屋に上がると、シニョンはぴたりと足を止めた。
そこにはジェホがいた。
正面に飾られた彼の笑顔の大きな写真が彼女を出迎えた。

シニョンは韓国を去る時、ジェホの写真はたったの一枚も持って行かなかった。
戻って来てからも、彼の写真は一度も見たことがなかった。

しかしここにはジェホがいた。

アメリカの地で・・・いつも鏡の中の私を抱きしめてくれた

ジェホがいた。











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kurumi☆
ジェニーさん、今さっきジェニーさんのレスを読んで、次回を持ってきました^^ 2013/01/15 23:16
kurumi☆
rzさん、ありがとう^^「ものすごく面白い」と言ってくださって、すごくすごく嬉しいです^^ 2013/01/15 23:15
kurumi☆
hiro305さん、ありがとう^^この回は正直、私も泣きながら書きました(笑) 2013/01/15 23:14
ジェニー・S
涙ボロボロです、ジェホの亡くなったことは、シニョンだけでなく 彼を沢山の人が苦しい思いでいたんですネ。この続きが楽しみです。 2013/01/15 21:28
rz
もの凄くもの凄くおもしろいですーーー!!!どうもありがとうございます!!!!!! 2013/01/13 20:30
hiro305
涙・涙で字が曇ります・・・写真を見なくても余計につのる想い、皆それぞれに悲しみや辛さを抱えたのですよね。 鏡の中の対話には嗚咽がこみあげます;; それにしてもキむ・ジュンス 気になる存在^^ 2013/01/13 14:15
 
 

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