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OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
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愛の群像Ⅱ
愛の群像のその後のストーリー
No 7 HIT数 3493
日付 2013/01/24 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル 愛の群像Ⅱ 第七話 妹
本文


   








第七話




夕刻、ジェホが約束通り、シニョンの部屋まで
彼女を迎えに来た。
「シニョンssi、用意はいい?」

「ええ、いいわ」
『ジェホ』ではないジェホの登場にも少し慣れたが、
まだ彼の姿を見ると胸の奥が切なく疼いた。
それでも、『彼』の姿に会える喜びの方が優って
いるようだった。

シニョンは朝ジェホと交わした約束からの数時間、
『あの家』に行く心の準備をしていた。

ジェホとの短かった時間、それでも濃密に過ごした
あの家。
ジェホの最期の朝を、悲しく迎えたあの部屋へ。

一度はジェホを忘れるために決別したあの部屋へ、
足を踏み入れる決心は、シニョンにとって簡単では
なかったからだ。

パク・ジェホに導かれながら、次第に昔馴染んだ
道へと足を踏み入れていく。
その場所へ近づくにつれ、シニョンの胸の震えが
少しずつ大きくなっていった。

「ジェヨンは家に?」 
シニョンは動揺を紛らわすように、ジェホに笑顔を
作った。

「うん、朝電話したら、この時間には戻ってるって」
ジェホはシニョンの動揺をよそに、彼女と共に
帰宅している事実をことのほか楽しんでいるようだった。

「私が行くって話したの?」

「駄目だった?」 ジェホは確認するように言った。

「ううん・・そんなことないわ。
私に会いたいって思ってくれるかなって・・」
シニョンは瞳に微かに翳りを見せて、そう言った。

「どうしてそんなこと?当たり前じゃない。
 母さんはいつもシニョンssiに会いたがってたよ」
ジェホはシニョンの不安が杞憂であることを、強く伝えた。

「そう?」


《ジェヨン》

ジェホがこよなく愛した妹、ジェヨン。
18年前、兄のジェホを亡くした時の彼女の悲しみと絶望は、
実際、シニョン以上だったかもしれない。

幼い時から兄だけを頼りに生きて来た妹。
兄の保護下で、兄の愛に包まれて育った妹。
兄ジェホは妹ジェヨンにとって、親のような存在でもあっただろう。

《それなのに私は彼女の悲しみを慮ることさえ忘れていた》

本来なら・・・
自分がジェホに代わって守っていかなければならなかった
大切な妹を置き去りにしてしまった。
シニョンは、すべてを捨てて逃げてしまったのだ。

《合わせる顔がない》と思っていた。でも《会いたかった》

シニョンはジェヨンのことを考えると、懐かしさと、申し訳なさ
とが入り混じった複雑な気持ちになり、俯き加減に歩いた。
その時、俯いたその視界に、大きな手が見えて驚いた。
「ほら・・」 
ジェホはそう言って、シニョンに向かって再度手を差し出した。

「えっ?」 

「手・・繋いであげる。安心するでしょ?」 
ジェホはにっこりと笑って言った。

「・・・・・い・・いいわよ、子供じゃないんだから」
シニョンは思わず動揺してしまった自分が恥ずかしくなった。

「変なの。昔、シニョンssiがそう言って手を繋いでくれたのに」

「・・・あー・・思い出した。
 ジェヨンに叱られて、私に泣きついて来た時ね」

「泣きついてなんか・・・」

「ふふ、そのくせに・・・
 慰めた私に向かってあなたが言ったのよ」

「子供じゃない。そう言って膨れた」 
ジェホが笑いながら後を繋げた。

「子供だったくせに」 

シニョンはさっきまで抱いていた不安な気持ちが、いつしか
失せてしまっているのを感じた。





あのアパートは昔のままだった。
シニョンはしばらくその前に立ち止まって、その建物を
ゆっくりと見渡していた。

「シニョンssi・・入ろう?」

「あ・・うん、そうね」

ジェホに促され、シニョンはやっと部屋に続く階段を上がった。

ドアを開け、部屋に入ると、シニョンは思わず立ち止まった。
《そんなはずは・・・》

十二年前、シニョンがここを去る時に、家具全てを処分して
出たはずだった。
それなのに・・・
あの時のソファーがそのままの場所に置かれていた。

よく見ると、それは少しデザインが違っているのがわかった。
周りの装飾品や小物もジェホと過ごした部屋と同じような
色使いやレイアウトだと、シニョンは思わず苦笑した。

《きっとジェヨンがそうしたのだろう》 そう思った。

シニョンは置き忘れてきた時間が、勢いよく逆戻りする錯覚に
襲われ、めまいがするようだった。
それでも、隣でジェホが腕をしっかりと掴んでくれていたので、
持ち堪えていたような気がした。
シニョンは震える体を悟られないよう、静かに息を吐いて、
平静を保った。

「母さん。ただいま」 ジェホが奥の方に向かって声を掛けた。
すると、スリッパの音が慌ただしく聞こえて来たかと思うと、
ジェヨンがシニョンの前に姿を現した。
当たり前だが、大人の女性になったジェヨンがそこにいた。

ジェヨンはシニョンから少し離れたまま立ち止まり動かなかった。
そしてしばらくの間、感極まった表情を隠すことなくシニョンを見つめた。
その瞳が大きく揺れ、大粒の涙がみるみる溢れ出ると、直ぐに
嗚咽が聞こえた。
そしてジェヨンは、溢れる涙を一度拭うと、大きく息を吸い込み、
シニョンに駆け寄るなり、彼女の首にしがみついた。

「ジェヨン・・・」
シニョンがその名前を呼ぶと、ジェヨンは言葉の代わりに
回した腕に力を込めた。
ふたりは長いこと、抱き合ったまま、ただただ泣いていた。

ジェホはそんなふたりのそばで、ふたりが落ち着くのを静かに
待っていた。



「落ち着いたかい?」 
ジェホがシニョンとジェヨンの双方の肩に片方ずつの手を置いて、
優しく言った。
シニョンもジェヨンも涙を拭い、鼻をすすりながら、笑って答えた。
「大丈夫」

「さあ、ここに掛けて」 
またもジェホがふたりを優しく誘導して、ソファーに腰掛けさせた。
ふたりの保護者然とした彼が、ソファーの背もたれの向こうで
彼女たちの肩に触れていた。

シニョンとジェヨンは互いを見つめながら、口を開く準備をした。

「ひどいわ、オンニ・・・」 ジェヨンが先にシニョンに悪態を付いた。
「本当に一度も帰って来ないんだから」

「ごめん・・ごめんなさいジェヨン」 シニョンは素直に謝った。

「いっぱい話したいことがあったのよ。
 いっぱい、相談したいこともあった。
 いっぱい・・いっぱい・・会いたかったのに・・・」
ジェヨンはそう言いながら、大きな瞳にまた涙を溜めた。

シニョンはそんなジェヨンの髪を優しく梳きながら、何度も何度も
「ごめんね」を繰り返した。

「母さん・・もう泣くなよ。シニョンssiはもう帰って来たんだよ
 もうどこにも行かないんだよ・・・だから泣くなよ
 可笑しいよ・・まるで子供みたいじゃないか」
そういうジェホの目頭が濡れているのをみつけて、シニョンは
もう片方の手で彼の頭もそっと撫でた。
ジェホは気まずい姿を見られたとばかりに、即座に立ち上がり、
台所へと向かった。
「コーヒー淹れるよ」

シニョンは彼の強がりはきっと伯父さん譲りだと苦笑した。
「ありがとう、戴くわ」



涙の再会の後は、ジェヨンが用意してくれた料理を三人で
食べながら、楽しく会話を弾ませた。
専ら、その会話の種はジェホがもたらすものだった。
彼はふたりがいつまでも涙に暮れないよう、懸命に気を遣っていた。

「だからね、母さんたら、おっちょこちょいだから・・」

「ジェホ・・それ以上ばらさないで。オンニに呆れられちゃうわ」

「そんなことないよ、だから母さんは可愛いんだ」

ジェホは母親をとても大事にしているのだと、シニョンは微笑ましく
とても親子とは思えない若くて美しいジェヨンと逞しく育った
ジェホのふたりを交互に見つめていた。

「シニョンssi・・」 

「ジェホヤ・・伯母さんに『シニョンssi』は失礼じゃない?」 
ジェヨンがジェホを嗜めるように言った。

「ストッープ、オンマ。
 それはふたりの間では解決済み。余計なこと言わないで」
ジェホはジェヨンに掌を向けてそう言った。

「でも・・」 ジェヨンはジェホからシニョンに視線を移した。

「いいのよ、ジェヨン。その方が私も若返ったように錯覚するから」

「えーそれって、何だか・・オンニだけずるいじゃない?」

「じゃあ、ジェヨンssiって呼んであげようか?」 
ジェホがジェヨンに言った。

「何をくだらないことを言ってるんだ?」 
三人の背後から冷めた声が聞こえた。

ジェヨンの夫パク・ソックが玄関から入って来ていたことに、
話が弾んでいた三人は気づかず、突然の声に驚いて振り返った。

シニョンはソックに気が付き、即座に立ち上がった。
「ソックssi・・ご無沙汰してました」

「これはこれは・・お義姉さん・・お帰りなさい。長旅でしたね。
 こちらこそ、いつもお父上やお母上にはお世話になっております」
含んだ物言いに、シニョンは違和感を覚えたが、黙って笑顔を返した。

ふと気がつくと、今まで雄弁だったジェホが無口になり、
表情も強ばっているように見えた。

「お帰りなさい、もないのか・・・息子よ」
ソックはそう言いながら、ソファーに座っていたジェホの頭を
二度小突いた。
ジェホはその瞬間、すっくと立ち上がり、小柄なソックを見下ろした。

「な、何だ?文句あるのか?」 ソックが一瞬びくついたように言った。

「あなた、酔ってるの?・・向こうに行きましょう」 
ジェヨンがシニョンの手前、その場を取り繕おうと、ソックの腕に
触れて言った。
その瞬間、ソックがジェヨンの手を大きく振り払ったせいで、
彼女はソファーに尻餅付くように倒れてしまった。

「母さんに乱暴するな!」 
今度はジェホが乱暴にソックの胸ぐらを掴んだ。

「オヤジに向かって、その態度は何だ!」 
ソックも応戦しようとしたが、力はジェホが優っているようだった。

「止めなさい。ふたりとも」 
シニョンが仲裁に入ったが、ジェホはソックを睨みつけたまま、
掴んだ胸ぐらを離そうとしなかった。
「ジェホ!」 
シニョンは無理矢理にその腕をソックから引き離した。

「いったい、どうしたの?ソックssi・・」 
シニョンはソックに少し批判的な眼差しを向けて言った。

パク・ソック
ジェホの古くからの友人であり、ジェホの妹の夫となった男。
彼はカン・ジェホが病に倒れてからというもの、懸命にジェホや
シニョンの力になってくれた心優しい義弟だった。
あの頃のシニョンにとって彼がどれほど助けになったかしれない。

しかし
目の前にいる彼は、年を取り、やつれた上に、無精ひげを生やし、
美しく成長したジェヨンとは以前にも増して、不釣り合い過ぎた。

シニョンは昨夜、伯母から彼らの事情を少し聞いていた。

パク・ソックはカン・ジェホから生前、『一家の長』として
家族を託されていた。

それは彼にとって大きな励みとなったが、一方では抱えきれない程の
プレッシャーでもあった。
懸命に仕事に取り組んでいたものの、その後、仕事に失敗、
少ない財産すら無くしてしまっていた。

パク家の生計は専ら、ジェヨンがシニョンの父とジンスク伯母が
経営する会社で得る収入で賄うこととなった。
その後、シニョンの父がソックを会社に入れることを提案したが、
パク・ソックはそれを受け入れなかった。

その頃、ジェヨンが会社でも実績を上げ、高待遇になったこともあり、
自分が新たに身内の会社に参入することは、夫としてのプライドが
許さなかったのではないか、と伯母は言っていた。

その後もやることなすこと失敗。
息子ジェホが大人になるにつれ、彼から責められる度に、
「カン・ジェホ」から責められている気がしたらしく、全てが逆効果に
なってしまっていた。

シニョンは、俯くジェヨンと、父親に非難の目を向けるジェホを見て
何よりその二人の前で粋がるしかないソックが哀れでならなかった。

「シニョンssiの前で恥ずかしくないのか、オヤジ!」

「ガキのくせに、親に説教するのか!」

「何が親だよ、親らしいことをしてきたのか!」

「何を!」

ふたりの言い争いが次第に激高していくのを、ジェヨンは震えながら
祈るように胸の前で手を合わせた。

「いいかげんにしなさい!」 シニョンはふたりに向かって叫んだ。

「あんたには関係ない!」 
ソックがシニョンの体を跳ね除け、シニョンはその場に倒れてしまった。

その瞬間、ジェホが鬼のように激怒した。

「シニョンに何をする!パク・ソック!」

「だ、大丈夫よ・・私は大丈夫」 
シニョンは咄嗟にジェホの激しい怒りを沈めようとした。
しかし、彼の怒りは収まることは無かった。

「ジェヨン!」
ジェホがシニョンを抱きかかえながら、母であるジェヨンに向かって怒鳴った。
「だから!・・だから、こんな奴と結婚するな、と言っただろ!
 だから!許さないと、言っただろ!」

ジェホが発したその言葉に、シニョンも、ソックも、ジェヨンも
余りの驚きにその場で硬直してしまった。

そして誰よりも・・・
ジェホ自身の驚きを、その眼差しが語っていた。











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rz
ええ~~~~~@@ジェホが憑依しちゃったのかしら~!!!どうなるの~ 2013/01/27 13:06
ジェニー・S
ソックも家長としての責任に負けそうになって辛い気持ちを家族にぶつけているのかしらネ、シニョンとジェヨンが抱き合って泣いているのをジェホが優しく、二人の肩に触れて労っているのは嬉しく、涙です。 2013/01/26 10:49
 
 

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