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OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
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愛の群像Ⅱ
愛の群像のその後のストーリー
No 9 HIT数 3154
日付 2013/02/13 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル 愛の群像Ⅱ 第九話 ふたりを繋いだ糸
本文


   


第九話



キム・ジュンス・・・

この人は・・・私のあのトラウマを知っている?

まさか・・・そんなはずがあるわけないわ


ジュンスは漢江を正面にして車を止め、エンジンを切ると、
ゆっくりとシートベルトを外した。
しかし彼は正面を見据えたまま、動こうとしなかった。

シニョンも自分のシートベルトを外すと、彼と同じように黙して
その言葉を待った。

しばらくの間、ふたりは黒い川面が僅かに揺らめく様を
見つめていた。
いつまでも無言を続けるジュンスに対して、シニョンには
不思議と苛立ちはなかった。
むしろ、彼の傍らにこうして佇んでいる現実に心地良ささえ
感じている自分を見つけ、愉快でもあった。

三分経っただろうか、五分経っただろうか、シニョンは時に
目を閉じ、時にジュンスの横顔を覗き見ながら、自分もまた
彼との接点を思い出そうとした。

長い沈黙の後に、ジュンスがやっとシニョンに視線を向けた。
「・・・・・・驚きましたか?」 

「・・・・・・驚く・・準備をしています」 
ジュンスの問いかけに、シニョンは笑みを浮かべ、そう答えた。

「ははは・・」 
シニョンの言葉に、ジュンスの美しい横顔が笑みで崩れ、
まるで少年のようになった。

「ジュンスssi・・・私たちは・・・随分前に出会ってるんですよね」
シニョンはジュンスの顔を覗き込み、確認するように言った。

正直シニョンにはまだ、キム・ジュンスという男の正体は何も
わかっていない。まるで厚い白雲の中、ふたりを繋ぐ糸を
探しているかのようだった。
それでも、その糸は確かにあるような気がしていた。

「・・随分・・前・・・・ええ、随分前に」 ジュンスは静かに答えた。

「・・・私のトラウマを・・・ご存知なんですか?」

シニョンには、決して思い出したく無い事実がある。
しかし、ジュンスと繋がっているはずの糸を見つけるには、
そのことに触れないわけにはいかない気がしていた。

「・・・・・・」 ジュンスの無言は彼女の言葉を肯定していた。

その瞬間、シニョンの脳裏にひとつの光景が蘇った。
「・・・もしかして・・・いいえ、そんなはずはないわ」
シニョンは自分で言いかけて、首を横に振り、それを取り消した。

「ふっ・・・きっと・・その『もしかして』・・・」 
ジュンスは一瞬笑みを浮かべた後、その顔を神妙に変えて、
シニョンの目をまっすぐに見た。
シニョンは彼のその言葉に、目を丸くして、言葉を詰まらせた。

「・・・・・・嘘だわ」 シニョンはやっとそう言った。

「どうして嘘だと?」 ジュンスは言った。

「・・・・・・」 




『お願い・・・目を覚ましてください・・・お願い・・・お願い・・・』
シニョンはベッドに横たわるその人の傍らで手を合わせ、
何度も何度も祈り続けた。
意識がなく、ひどい傷を負った顔や体は包帯で巻かれ、
見えるのは閉じられたまぶたと乾いた唇だけだった。
幾日も閉じられたままのまぶたの先で、時に揺れる長い睫毛が、
美しい人だと想像させる。

自分の目の前で眠り続けるこの人は、もう10日もこのままだ。
シニョンは祈るように、彼の乾いた唇に濡れたガーゼを充てがい、
幾度も湿らしていた。
まるで彼に命の水を与えるかのように。

『シニョンさん、また病室を抜け出したのね』 
点滴を交換に来た看護師が、背後からシニョンに声を掛けた。

『ごめんなさい・・・』

『いいのよ、そうやって声を掛けてあげることはいいことだから。
 でもあなたも余り無理しないでね』

『ええ・・・まだこの方の身元はわからないんですか?』

『ええ、そうなの』

『きっとお身内の方も探してらっしゃるわね』 
シニョンはそう言いながら彼を見た。

『そうね・・・でも今のところはまだ何の手掛かりもないわ』

シニョンは看護師のその言葉にため息を付いた。

『ハンサムさん?今日は何の本を読んでもらうの?』
看護師はベッドに横たわる彼に、明るく話し掛けながら、
シニョンの手にあった本を見た。『あら・・韓国語?』

『ええ・・』

『この人、確かにアジア系のようだけど、韓国かどうかは・・・』

『いえ・・きっと韓国。それでなくても韓国語はわかるはずです』

『それは、どうして?』

『・・・声』

『声?』

『ええ・・あの時、彼が私に覆いかぶさって気を失う数分前に・・
 『大丈夫・・・大丈夫だから。・・・きっと助けが来るから。
  ・・・諦めるな』って・・・
 流暢な韓国語だった・・・
 きっと私がパニックになって韓国語で叫んでいたから・・・』

『そうだったの』

『私・・・この人に生きてもらわないと・・・私・・・』

「・・・シニョンさん・・・」

『私のせいで・・こんなことに』

『シニョンさん、間違えないで。・・あなたのせいじゃない。
 悪いのは過ちを犯した人間のせい。だから・・・
 だから、あなたは苦しんじゃだめ。
 あなたが彼に助けられたのは神様の思し召しなのよ・・・
 彼は確かに今、こうして苦しんでいるけど・・・
 私たちはまだ希望を捨てていないわ。彼はきっと・・大丈夫。
 きっと悲しむわ、彼・・・あなたがいつまでも嘆いていたら、
 彼のしたことが無駄になるんじゃなくて?』
いつも優しく声を掛けてくれていた看護師が、シニョンに対して
少し怒ったように、言い聞かせるように、ひと言ひと言を繋げた。

『・・・・・・』

『さあ、あと一時間だけよ。そうしたら、あなたも休まないと』
看護師は今度は柔らかい笑顔でそう言った。

『・・・ええ』


あの日の出来事が、シニョンの脳裏に鮮明に浮かんでいた。
毎日毎日嘆く自分を諭してくれた優しい看護師の笑顔までも。

「あなた・・なの?あの時の・・あなたなの?」 
シニョンはジュンスに向かって、それだけを言葉にすると、
彼を驚愕の表情で見つめたまま動くことができなかった。

ジュンスはそんなシニョンの様子に、複雑な表情を返したが、
彼もまた、彼女に告げる言葉を探していた。
彼はため息を吐きながらゆっくりと目を閉じ、言葉の代わりに
大きく頷いた。

そして、余りの驚きに固まってしまったかのようなシニョンの手を
ジュンスは自分の手で優しく覆った。

「この手に・・・導かれて・・・僕はこの世に戻ったんです」
彼は静かにそう言った。
「あなたが・・
 毎日、毎日、僕に話しかけていたと、エリーズに聞きました」

「エリーズ?」

「僕たちがいた病院の看護師です」

「・・・エリーズ」
あの看護師のことだと、シニョンは確信した。

「エリーズは僕が転院した後、しばらくして僕を訪ねてくれました」

「知ってたの?彼女はあなたの居場所を・・・
 私が何度尋ねても決して教えてくれなかったわ。
 自分たちは聞かされていないと」


ある日のことだった。
シニョンがいつものように彼の病室を訪ねると、昨夜までは
間違いなくそこに横たわっていたはずの彼が消えていた。
ベットは既に整えられ、シワ一つ無いそのベットを見た瞬間、
シニョンの胸が激しく痛んだ。
シニョンは直ぐに駆け出し、ナースステーションへと向かった。
そしてあの看護師を見つけると、血相を変えた形相で、
彼女の袖を強く掴んだ。

『どうしたの?シニョンさん・・慌てて・・具合でも悪いの?』

『あ・・あの・・彼は・・彼は・・』
シニョンはなかなか言葉を繋げなかった。

『彼?・・・・あ・・もしかして・・あのハンサムさん?』
看護師は納得したように言った。
シニョンは言葉を出さずに大きく何度も頷いた。

『彼は転院したわ』

『転院?』

『お身内が見つかったのよ。だから、ご実家の近くの病院に』

『何処に・・何処に?』

『・・それは・・・』

『教えてください、お願い』

『あ・・私たちも知らないの』

『そんな・・そんな・・・私、彼に何も・・・何も・・・』
シニョンは込み上げる涙を堪えきれずにその場に崩れ落ちた。

シニョンは自分を命懸けで助けてくれた彼に、何ひとつの恩返しも
できていないことを心から嘆いていた。
その後シニョンが何度尋ねても、看護師達は、彼の転院先も、
彼の名前すらも聞かされていないと言い続けた。



「あれは・・・嘘だったのね。あなたの名前も・・・転院先も・・・
 知らないと言われたわ」

「僕の両親がそうしたんです。
 意識が戻っても、僕があの悪夢を思い出さないように・・・
 できればその記憶が無くなればいいと、思っていたらしい」

「あぁ・・」 シニョンは納得したように答えた。
その後も悪夢に悩み続けた彼女には簡単に理解できたからだ。

「ごめんなさい・・突然こんなことを打ち明けて、混乱してるでしょ?」

シニョンは何度も大きく頷いた。
「・・・・混乱してる。何から聞いていいのか、何を話せばいいのか・・・
 でも、何よりも先に・・・あなたにお礼を言いたいわ
 あなたのお陰で私は軽い怪我だけで済んだんですもの
 それなのに、あなたに何の恩返しもできなかった・・・」

「僕が恩返しに来たのに?」 ジュンスは笑顔でそう言った。

「・・・私に?何故?」

「僕はあの後、転院すると直ぐに目覚めたんです。
 意識が戻ったんです。その時の僕の第一声が何だと?」

「・・・・・・?」

「『シニョン』・・・」 ジュンスは囁くようにその名前を口にした。

「えっ?」

「シニョン・・・それ以外、他には誰も・・何も・・覚えてなかった」
ジュンスはそう言うと、真顔でシニョンを熱く見つめた。

「・・・・・・」

「僕は長いこと・・白い雲の中に浮かんでいるようでした・・
 その時、心に聞こえてきたんです・・『シニョン』って・・・
 いつもいつも、僕の手を取って、何度も何度も話しかけていた。
 その人が『シニョン』と呼ばれていた・・
 それだけを思い出したんです」

「・・・何故?」

「僕にもわかりません。
 でも少しずつ記憶が蘇ると、事故直後のことも思い出しました。
 あなたと暗闇で過ごした数時間、震えながらも、僕を励ましてた」

「励ましてくれたのはあなただわ」

「いいえ。違います。僕はあの時・・絶命寸前でした。
 でもずっとあなたが僕を抱いて、言い続けていた。
 『諦めないで、必ず助けが来るから。諦めちゃダメ・・・
  死なないで・・お願い、お願い・・』」

「あなたが最初にそう言ってくれたのよ、『諦めるな』って」

「僕は直ぐに意識を失ってました。そのあと・・・
 暗闇の中であなたが、どんなに怖い思いをしたか・・
 泣いていたでしょう?辛かったでしょう?可哀想に・・・」
ジュンスはそう言いながら、シニョンの髪に触れた。

「・・・・・・」 
シニョンはジュンスの言葉に、瞬時にその日の思いが蘇って、
込み上げる涙を堪えきれなかった。
ジュンスはシニョンを慰めるように、彼女の髪を撫で続けた。

しばらくしてシニョンの嗚咽が収まると、ジュンスはまた話し始めた。
「僕は・・・エリーズに感謝しました。
 あなたのことを教えてくれた彼女に・・心から。
 それまでのすべての謎が繋がったんですから・・・
 記憶の奥に残る《シニョン》という名前・・・
 そしていつもここに響いていた・・・あなたのその声」
ジュンスはそう言いながら、自分の胸を掌で押さえた。

「・・・・でも、だからって・・・どうして・・韓国へ?」

「それも、話すと長くなりますよ」 
ジュンスは少しばかり茶目っ気まじりにそう言った。
「でも・・・話さなければ・・・いけませんね。
 いつ僕が・・あなたを見つけたのか・・・
 僕が・・どうしてここまで来ることができたのか・・・
 ただ、その前に・・・真っ先に言っておきたいことがあります」

「・・・・・・」

「僕が何故突然今、このことを告白する気になったのか」

「・・・・・・」

「本当はもう少し、僕という人間をあなたに知ってもらって・・
 あなたとの本当の出会いを待ちたかった・・・
 すべてはそれからのことだと・・自分に言い聞かせていました」

「・・・・・・」

「でも・・・あなたに実際に接して、考えが変わったんです」

シニョンはジュンスの話しを理解しようと、真剣に聞いていた。

「ね、シニョンssi・・人生って・・いつ、何が起こるかわからないでしょ?
 それは僕とあなたが一番よく知っている」

「・・・・・・」

「時間がもったいないと思ったんです」

「時間?」

「あなたと僕の時間です」

「私と?」

「ええ、あなたと過ごすべき時間です・・・シニョンssi・・
 僕は・・・あなたを・・・愛しています、心から」 
ジュンスは至って真面目な顔で言った。

「えっ?」
シニョンは彼の突然の告白に大きく目を見開いた。
彼のその言葉を、遥遠くで聞いているようだった。
《彼は・・いったい何を言っているの?》

愛してる?

私を?

シニョンの頭の中を、彼の言葉が何度もこだましていた。

「愛してます」 

ジュンスが再度告白した瞬間、混乱していたシニョンの頭が
やっと正気に戻った。
とたんに彼女は大きな笑い声を立てた。

「ジュンスssi、悪ふざけが過ぎるわ」

「悪ふざけ?」

「ええ、悪ふざけ。だってそうでしょ?」

「可笑しいですか?」

「私たち、出会ってまだ数日よ」

「いいえ」 違う、と言いたげにジュンスはシニョンを睨んだ。

「現実はそうだわ・・あなたは・・」《勘違いしてる》

「わかりました。今日はこれでおしまいにしましょう」
突然ジュンスがシニョンの言葉を遮って、彼女のシートベルトを
乱暴に締め、自分のそれも手速く締めながら言った。
そして彼は車をバックさせると、素早く車道に向かった。

「あの・・・」 シニョンはジュンスに話しかけようとしたが、
彼は正面を見据えたまま口を閉ざした。

乱暴に運転された車が、数分後にはシニョンの自宅前で止まった。
「降りてください」 
さっきまで少しばかり熱くなっていたジュンスが少し冷静を
取り戻したようだった。

「でも、あの・・」

「嫌なことを思い出させてしまったことは・・謝ります。
 今日の僕は確かにどうかしていたかもしれない。
 少しだけ後悔もしています。
 でも・・・これを乗り越えないと・・・あなたとの始まりがない。
 だから話したんです。
 だから。・・・後悔するのは・・止めます」
ジュンスは熱くシニョンを見つめ、そう言うと、シニョンに顔を近づけ
突然その唇に口づけた。

シニョンは余りの驚きに体が固まったように体を後ろに引いていた。
口づけられた彼の唇が、ゆっくりと彼女のそれから離れていくとき、

シニョンは・・・
薄く閉じられた彼のまぶたの先の長い睫毛を・・・
スローモーションのように見ていた。

あの時・・・
病院のベットに眠る彼の睫毛だった。

毎日毎日、祈りを込めて見つめ続けていた彼の長い睫毛だった。











※「ジュンスとシニョンが語る十数年前にアメリカで起きた事件」とは、
実際に起きた事件を背景にしています。
しかしながら余りにも悲惨な出来事でしたので、この物語の中では敢えて
その詳細には具体的な形では触れません。
でもきっと読まれる方にはその事件が何なのかは想像ができてしまうと思います。
ただ、この中では二人が出会った因果関係としてだけ捉えていただけると助かります。
理不尽にも奪われてしまった多くの命や傷を負った多くの人たち、それぞれに
それまでを培っていた人生がありました。
そして今も尚苦しんでいる人たちが人生を歩んでいるでしょう。
そのことに哀悼と励ましの気持ちを込めて、題材に取り入れました。kurumi


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hiro305
ジェホをおくった後迷路を歩むような月日を過ごしたであろうシニョンさんの時間の中に、確実に次につながる出逢いがあったのですね。それもあの悲惨な事件が・・・。ジェホの為にも心の闇を乗り越えて欲しいです。 2013/02/13 15:28
ジェニー・S
ジュンスssiとシニョンさんの出会いが、あの時の事件だったのですね、お互いに命を助け合うことで、生きてこられた訳ですから、これから先が楽しみです。涙しながら読みました。 2013/02/13 14:08
utahime27
ちょうどあの時TVを観ていて、急に映画に切り替わったのか・・・と思いました。実際にこのような事があったに違いありません。シニョンが新たな道の入り口まで辿り着いたのでしょうか・・・とても胸に響きました。 2013/02/13 12:08
 
 

IMX