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OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
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reason-夢の痕
mirageからpassionまでの空白の日々 ドンヒョク(フランク)とジニョン、そしてレイモンドは・・・
No 1 HIT数 3947
日付 2014/09/14 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル reason-夢の痕- 1話.あの日
本文


はじめに
mirageの48話~50話辺りを再読いただいてからお読みいただけると、
この物語 ‟reason-夢の痕” 内容に繋がるかと思います^^kurumi



   

ジニョン! 」

レイモンドは思わず声を上げ、ドアへと向かう彼女の足を止めた。

「フランクに・・」

「・・・・・・」

「フランクに・・何か伝えることは・・あるかい?
 ・・・・もし・・もし彼に会ったら・・・・」

ジニョンはレイモンドのその言葉に少しの間沈黙していたが、
俯きながら微かに口角を上げると、小さく口を開いた。
「いいえ・・・」

そして次には、抱えた想いを振り切るかのように顔を上げ、
きっぱりと答えた。「いいえ。・・・何も。」

結局ジニョンは最後まで、あの輝くような笑顔を見せることなく、
ドアの向こう側へと消えて行った。

レイモンドは今にも彼女を追いかけて行きそうになる自分を、
拳を握り締め耐えていた。
そして、自分の背中の向こうで、やはり泣いているだろう馬鹿な男に、
恨めしい想いをぶつける術を探した。

「あれで・・・いいのか・・・・」
レイモンドの、宙に問い掛けた声が、余りに悲し過ぎた。

いいのかと聞いてるんだ!答えろ!」

レイモンドの張り上げた怒りは、宙に向かっていたのではない。

しかし彼にはわかっていた。
この言いようのないこの怒りは、きっと自分自身へのそれだと。

フランクとジニョン、自分の欲の為に巻き込んでしまった、
今となっては愛しくて止まないふたりだった。
そんなふたりに別離を迎えさせてしまった自分の不甲斐無さに、
言いようのない怒りが込み上げた。

それでもやはりぶつけるしかない男がいる。

答えろ!・・フランク!


しばらくして、裏口のドアを開け、フランクが部屋に入ってきた。

「・・ジニョンを連れて来るなんて・・」
フランクはレイモンドを恨めしげに睨み付けると、そう言った。

 
「彼女が来ると知ったら・・・ここに来たか?」





フランクはレイモンドに、この家を売却する手続きのために、
ここに来るよう指示されていた。
彼が到着していたのは、レイモンドとの約束の時間より
一時間も前のことだった。
最後になるだろうこの家との別れを、できれば誰もいない時に
済ませておきたかったからだった。

部屋に入ると案の定、ジニョンとの思い出が否応無しに蘇る。

感傷に浸るなど、決して得意なことではない。
しかし、きっとそれに沈んでしまうだろうと予測できた。

フランクは、その感傷のひとつひとつに蓋をするように、
ふたりで使った家具や調度品に白布を掛ける作業に時間をかけた。
その作業が終わった頃、家の前で車が停まる音が聞こえた。

レイモンドが到着したのだと思い、窓のカーテンに手を掛けると、
車から降りる血相を変えたジニョンの姿が目に入った。
フランクは慌ててカーテンから手を放すと、裏口へと向かった。
ジニョンの視界から逃げたのだ。




別荘に車が到着すると、ジニョンは車が停止するよりも早く、
車のドアを開けて降り立ち、ふたりの家に向かって走った。

そのドアを開けると、そこは初めてここを訪れた時のように、
全ての調度品が白布で覆われていた。

ジニョンはその光景を目の当たりにして、愕然とした。

あまりのショックに瞳が大きく見開き、それはみるみるうちに
涙の珠となった。

「フランク?・・フランク?・・・」
ジニョンはドアというドアを開けては彼の名前を繰り返し呼んだ。

「フランク!・・フランク!・・フラ・・」 
そして、とうとう全てのドアを開け尽くしてしまった。
その瞬間、真っ白になった頭の中で何かが壊れていった。
彼女は床に膝を強打した衝撃で、自分が崩れ落ちたことに
気が付いた。

「フランク・・・悪ふざけは止めて・・フランク・・お願い、出て来て・・・

 冗談なのよね・・フランク・・
 そうやってあなた・・いつも意地悪ばかり。
 私・・あなたの意地悪にはもう慣れっこなんだから・・・
    
 こんなの・・何てこと無いんだから・・・

 私を怒らせて・・隠れて笑ってるのよね
 そうなんでしょ?

 驚かせようとしてるのよね?そうよね・・フランク・・・

 答えて!フランク・・フランク!
フランク!ー」

ジニョンは不意に立ち上がると、狂わんばかりに泣き叫びながら、
家具を被った布を乱暴に剥いで回った。

その布が、ほんの少し前に他ならぬフランクの手によって、
掛けられたとも知らずに。

≪ジニョン・・・泣くな。・・・ジニョン・・・泣くな・・・≫

その時、フランクはジニョンの悲しい叫びに耐えきれず、
自分の胸を掻き毟り、両手で耳を塞いでいた。

「・・・・うそつき・・うそつき!・・」

「ジニョン!」
レイモンドは彼女の興奮を抑えようと必死に捕まえて抱きしめた。
しかし・・ジニョンの狂気は、彼の力さえも簡単に振りほどいた。

「うそつき!・・・迎えに来るって言ったのに

  待ってて・・って・・待ってて・・そう言ったのに・・
  私がいればいい・・そう言ったのに・・」

≪ごめん・・・ジニョン・・・ごめん≫
フランクの目に涙が滲んでいた。

「そうよね・・そんなはずない・・そんなはずない・・・
 あなたが私に嘘なんて付かない
 あなたが私をひとりになんてしない・・・
 だって・・・あなた・・私がいないと駄目じゃない
 私がいないと・・・私がいないと・・・」

≪ああ、そうだよ・・・君がいないと・・・僕は・・・≫
フランクの胸に後悔の刃が刺さっていた。

「約束したでしょ!フランク!
 ・・・フランクー・・フランクー・・ねぇ、何処にいるの?
 どうして私を置いていくの?私は・・どうすればいいの?」

≪僕は・・・≫

「返事して・・嫌よ・・・フランク・・・置いていかないで
 私を置いていかないで・・・置いて・・いかないで・・・・
 嫌よ・・・嫌・・・
フランク・・・フランク!-」・・・

≪僕は・・・≫





    
レイモンドはフランクに詰め寄ると彼の胸倉を激しく掴んだ。

「よくも・・・ジニョンに・・ジニョンに・・私の・・ジニョンを・・あんなに・・」
レイモンドは彼を睨みつけながら、憐れみに泣いていた。
しかしまるで抜け殻のようになってしまった哀れなフランクは、
レイモンドに身を任せるように、肩を揺さぶられたままだった。

「あの子の笑顔は守れ・・そう言っただろ?
 あの子には・・お前しかいない・・そう言っただろ!
 何故・・守らなかった!何故・・守ろうとしない!何故・・・」

「・・・何故?・・・」
フランクは、レイモンドの問いかけを呟くように繰り返した。

≪何故?・・・何故?≫
彼は、自分の心にも何度も問い掛けた。


    
     
「お前はこれから先ずっと・・その報いに苦しむんだ・・
 後悔に・・・苦しむんだ」
レイモンドは振り絞るような声でフランクにそう言った。
それはまるで自分自身への言葉でもあるかのように。

≪後悔?・・・後悔なんて・・・
 それは心を持った人間のもの・・・≫

    
    
「・・あなたに・・何がわかる。・・あなたに!・・何がわかる!」

フランクはレイモンドに自分の持て余した心をぶつけながら、
彼に叩き付けられた背中が、力無く壁を滑り落ちるまま、
身を任せた。

溢れ出る涙も拭おうとせず、流れるままにした。

自分ひとりで下してしまった決断を、どうやったら肯定できるのか、
自分に詰問した。

でもその答えは、何処にも無かった。何処からも聞こえなかった。

≪ここにいたんだ≫
ついさっきまで、ここにジニョンがいた。
愛しいジニョンが、愛してやまないジニョンが、自分を求めて、
泣いていた。

何度も・・何度も・・ドアを開けようとした。

何度も何度も・・・声を出そうと、口を動かそうとした。

何度も・・・駆け寄り、彼女を・・・ジニョンを抱きしめようとした。

その衝動を、いったい何が喰い止めたのか・・・わからない。

≪君がいなければ・・・すべてが・・・いらない・・・
                   

    
  君がいなければ・・・もう・・・何も無い・・・≫

フランクは既に、自分が今何処にいるのかわかっていなかった。
何を思い、何をしているのかさえわかっていなかった。

≪後悔なんてあるはずがない・・・
 後悔なんて・・・心を持った人間が味わうもの・・・
 僕はもう、心を捨てたんだ・・・ジニョン・・

 僕は・・・・・
  
               
       ・・・心を・・・捨てたんだ≫





ジニョンはドアを開け家を出ると、振り返ることもなく歩いた。
少し先に、ジョルジュが車のフロントに寄り掛かっているのが見えた。
彼はジニョンが車に近づくと、ただ黙って助手席のドアを開けた。

車のドアに手を掛けたジニョンが、ふと動きを止めた。
そしてゆっくりと後ろに振り返り、今出て来た家に視線を向けた。

「ジニョン?・・・行かないと」 
ジョルジュの声は決して窘めているわけではなかった。
彼女が今、引き返したとしても、止めるつもりもなかった。

ジニョンは結局視線を戻し、開けられたドアの中へ身をかがめた。
ジョルジュはそんな彼女の姿に、ホッと溜息を吐いた。


空港までの車中、ふたりは長い時間無言だった。

ジョルジュはBGMを掛けることも忘れていた。
ジニョンが今どれほど傷ついているか、手に取るようにわかっていた。
その傷を自分が簡単には癒せないこともわかっていた。
しかし、彼は彼女の涙の音を聞き逃したくはなかった。
せめて、その涙を拭ってやりたかった。必ず拭いたかった。

「・・・・・・・ジョルジュ」
ジニョンが窓に頭をもたれ外を眺めながら、やっと口を開いた。

「ん?」

「・・・ソウルに帰ったら・・・」

「ん・・」

「・・・カルグクス食べたい」

「ん。・・・いっぱい・・・食べさせてやる」

見覚えのあるはずの景色が、まるで見知らぬ世界のようだった。
その景色がいつまでも終わらないようで、夢を見ているには、
あまりに長い時間のように、ジニョンには思えた。

「早く覚めたらいいのに・・・」 
ジニョンが独りごとのように呟いた。

「ん?」

「何でもない・・・」

「そうか・・・」

「ん・・・何でもない・・・」

そう言って窓のガラスにコツンと頭をぶつけたジニョンを、
ジョルジュは目の端で見ていた。

ジニョンに涙は無かった。
しかし、ジョルジュには見えていた。
彼女の心が潰れそうなほどにもがき苦しんでいる様が、
哀れでならなかった。

「泣けばいいのに・・・」 ジョルジュが呟いた。

「えっ?」

「何でもない」

ジニョンはクスッと笑って見せた。






レイモンドは抜け殻のようになってしまったフランクがたまらず、
一分でも早くこの場を立ち去りたいと思った。

彼が不憫でならなかった。
しかし、今の彼をどんな人間が助けられるだろう。

見捨てられることを望む男に、誰の手が役に立つだろう。

レイモンドはフッと溜息を吐き、彼を置き去りにすることを選んだ。

≪情けない奴・・・お前も・・・俺も・・・≫



フランクはレイモンドが帰ってしまった後も、その場に残り、
項垂れ、肩を落としたまま床に座り込んでいた。
部屋に差し込んでいた日の光が徐々に彼から遠くなっていた。

フランクは思い出したように、部屋の中をぐるりと見渡した。
部屋の中はジニョンが怒りにまかせて剥ぎ取った白い布が、
冷たい雪のように舞い落ちていた。

フランクは力を振り絞り立ち上がると、その布を一枚一枚
拾いながら、家具のひとつひとつに掛け始めた。

すると突然、フランクはその布を投げ捨て、裏口へと走った。
そして停めてあった車に乗り込むと、素早くエンジンを掛けた。
裏庭に作った花壇すらも無視して、車を切り替えし走らせた。

メーターが振り切れるほどのスピードを上げ、ただ無心に走り抜けた。

しかし、それはすべてが無意味なことだと、移り行く空の色が
彼に教えた。

彼は道路の真ん中で突然急ブレーキをかけ、車を停めたかと思うと、
両手をハンドルに思いきり叩き付け、力の限り叫んだ。

「あー-ー!!」

そして彼はそのまま、ハンドルを抱え込むようにうつ伏し、
長い時間顔を上げなかった。

何台もの車が、身動きしないフランクの車とすれ違いざまに、
けたたましくクラクションを鳴らし、罵声を浴びせながら、
邪魔な車を避け走り去った。

しかし、彼の耳にはそんな騒音など、届いてはいなかった。

彼にはもう、この世の何もかもが、存在しなかった。

誰も・・・。

自分すらも・・・。


しばらくして、彼はやっとその顔を上げた。
目の前はすっかり赤くなっていた。
窓の向こうに、黛色に染まる稜線を、沈みゆく夕日が赤く、


         ・・・揺らしていた。・・・






 


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kurumi☆
宜しければ、終わりを迎えるブロコリですので、皆様のコメントを残していただけると幸せです^^ 2014/09/18 18:33
kurumi☆
理由がわからないのですが、このページのコメント欄が表示される人とされない人がいらっしゃるそうです。私たちの最後の作品、できれば皆様のお声が聞けたら嬉しいです^^メニューの下にcafeIZMを置きました 2014/09/18 18:31
mf1117
フランクの悲痛な叫びがジニョンを追いかけたくても追えない!涙です。 2014/09/17 22:58
hiro305
kurumiさんの綴る言葉とtomちゃんの画像・音楽にもう胸が締め付けられています。やっぱりK&Tのフランクは別格です!ドンヒョクに囚われ底なし沼のフランクまで沈み込んだ切なさが蘇りました^^ 2014/09/14 23:10
hiro305
嬉しいお知らせで跳んできました。過去旅中でしたが即47話に飛んでひと泣き(大泣き)して今ここにいます。あの心を切り裂かれた別れからの10年が展開するのですね。 2014/09/14 23:03
 
 

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