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OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
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reason-夢の痕
mirageからpassionまでの空白の日々 ドンヒョク(フランク)とジニョン、そしてレイモンドは・・・
No 2 HIT数 4772
日付 2014/09/22 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル reason-夢の痕- 2話.囚われし者たち
本文

   reason-夢の痕- ThemaBGM   “ 面影 ”

       2.囚われし者たち -フランク・シン 23歳-

      


      


- ニューヨーク -

「父の釈放が決まったというのは本当か」
久しぶりにNYに戻ったレイモンドが、ソニーの顔を見るなり
そう聞いた。

「はい、病状が思わしくなく、獄中生活には無理があると。
 すべて包み隠さず、素直に自供していること。
 今回の摘発が息子である若の行動によること。
 証拠隠滅の恐れも無しと判断されたようです」

父アンドルフ・パーキンの裁判は、長期戦となり、既に一年が
経過していた。
レイモンドにとって、父の体力が唯一気掛かりなことだった。

「そうか・・・」

「良かったですな」

「いや・・私達は諸手を挙げて喜ぶわけにはいかない。
 ・・・・しかし・・・きっと義母が喜ぶだろう」

父を待つと約束してくれた義母ローザ、彼女は今、彼を迎えるべく、
LAの郊外に新居の準備中と聞いた。

≪父さんのことは母さんに任せておけば安心だ≫
レイモンドは自分の胸に手を当てて、心の中だけで安堵した。


すべてが自分の思い描いた世界へと導かれていると言えた。
幼い頃、この世を去った母が息子に望んだ人間としての生き方。

≪あなたがもう少し大きくなって・・・あなたがあなた自身で・・・
  選択しなければならないようなことが起こった時
  広い視野で判断できる・・・そんな人になって欲しい
  今はまだ・・あなたには意味がわからないかもしれない・・・
  でもいつの日か・・・
  ママが言った意味がわかる日が来た時・・・
  その時にどうか・・・あなたの心が・・・
  その意味を受け入れられる心であって欲しい
     

  ママはね・・・本当はあなたに・・・
  あの人の世界を見せたくなかった

  レイ・・・よく覚えておいて・・・
  人は人の道を外れては駄目よ・・・
  どんな時も、人を陥れたり、人を悲しませたり・・・
  決して・・・そんな人にならないでね・・・≫

母がきっと命を懸けて息子に伝えたかった心、その心を
汲んであげられるまでに、多くの時間を費やしてしまった。
陥れてしまった、巻き添えを余儀なくしてしまった人々、
その悲しみや苦しみを、決して忘れてはいない。

≪遅くはないだろうか・・・マム・・・
 愛しき者たちへの償いは・・・叶うだろうか・・・
 マムはきっと・・・知っているよね
 わかってる・・・教えてくれなんて言わないよ
 僕がそうしなければならない・・・
 見つけなければならないんだ・・・その途を・・・≫

「ところで・・フランクと連絡がついたか」
しばし目を閉じていたレイモンドが、不意に振り返って、
ソニーに聞いた。

「先日レオナルド・パク弁護士と連絡が取れました」

「本人とは相変わらずなのか?」

「はい、休暇中は携帯電話は持ち歩かないということです。
 定期的にパク弁護士に連絡が入るようになっているとか・・。
 彼への仕事の依頼は、パク弁護士か、ドイル弁護士が
 受け付けるようになっているそうです」

「ドイル?・・ソフィアさんか?」

「はい」

「彼女は今でもフランクのお守り役か」

「お守り役・・ですか?」

「パク弁護士だけでは持たないだろう。
 決して簡単に操縦させてくれる男ではないからな、奴は」

ソニーは知っていた。レイモンドがフランク・シンのことを話す時、
非難めいた口を利きながらも、表情が穏やかで明るいことを。

レイモンドは一年前、父アンドルフ・パーキン率いるマフィア組織を
自らの手で壊滅状態に陥れた。
その為、父を始め、彼の側近たちの多くは獄中の人となった。

無論、息子であるレイモンド自身も、検察の手を免れない筈である。
しかし、レイモンド自身が告発したことで、彼にはその手は及ばない。
レイモンドは理不尽であると思っていた。
自分自身も、父と等しい罪を担うべきひとりであると、思っていた。

しかし父が言った。
「お前には、私に代わって成し遂げて欲しい≪償い≫がある」
その父もまた、レイモンドと志は同じだった。しかし世襲に流され
行動を起こせなかった弱い人間だったのだ。

レイモンドは父のその言葉を素直に受け止めた。
今こうして世界を飛び回り、大きく事業展開していることも、
投獄されている組織の人間たちを、更生させ、社会復帰を
させることが、自分に与えられた務めだと承知しているからだった。

そしてフランク・シンもまた、レイモンドの強い味方となって動いていた。
この一年、顔を見せたのは数えるほどだったが、彼を必要とした時は
表であれ裏であれ、必ず手を貸してくれていた。

フランクとレイモンドは今、仕事の上では良き理解者であり、
成功に導くパートナーとなりつつあった。
しかしふたりの間には、まだ癒えぬ複雑な感情があることも事実だった。
フランクにとって、レイモンドに対する憎しみは消えるものではない。
レイモンドの、フランクに対する憐れみ、悔恨の念もまた、
いつまでも拭い去れないものだった。

≪どうして、彼女を巻き添えにした≫

≪どうして、彼女を置き去りにした≫

それでも、ふたりは決してその「彼女」の名を口にすることはなかった。
仕事で向き合う時のふたりの間に、「彼女」はいなかった。

「フランクと会う手筈を整えてくれ」 レイモンドはソニーに言った。

「お急ぎですか?」

「ああ、そろそろ一か月になるからな」

「一か月?・・・何が・・ですか?」



- ソウル -

ジニョンがソウルに戻って一年が過ぎようとしていた。
彼女は帰国後猛勉強の末、数か月後にはソウル大学に編入を果たし、
その後も大学生活を満喫していた。

少なくとも周囲の者達にはそう見えた。

フランクとの別れの原因を作った父に対しても、何事もなかったように
接していた。
何も知らない母に、心配を掛けまいとしていたのかもしれない。

いつも明るく、屈託のない娘。
父はそれが本当の娘の姿とは思ってはいなかった。
輝きに満ちた娘の笑顔が、陰りを見せる一瞬を見逃さなかった。
しかし、彼女の表の顔を信じる道を選んだ。
秘められた箱の蓋は決して開けまいと、父は心に決めた。

あの男の存在を、きっと流れゆく時が消し去ってくれると信じていた。

或る日、ジニョンは学校の休みを利用して、ひとり家を出た。
途中の花屋で、一番美しいと思った桔梗の花を束にしてもらい、
店を出ると、ジニョンはその小さな花束を愛おしそうに胸に抱いた。

その足でバスターミナルに向かい、目的の行先を調べると、
一台のバスに乗車した。
最初はほぼ満員だったバスが、二時間もすると次第に減っていき、
目的地に近くなる頃には、数えるほどになった。

ジニョンは誰も座っていない最後部の海側の席に腰を掛けていた。
窓に手を掛け、ほんの少しだけ開けてみると、海の匂いがした。
ジニョンは軽く息を吸い、その海風に浸ってみた。
まるで、懐かしいものにでも出会ったように、心地良さを感じた。

父にも、母にも、ジョルジュにさえ告げず訪れたこの場所は、
ジニョンにとっても初めての町だった。
バスを降りると、港が見え、その先に突き出た防波堤の先に
赤い灯台が見えた。
≪ここね・・・≫

ジニョンはきょろきょろと辺りを見渡し、出会った人々に、
とある場所を訪ねて回った。
目的の場所は、港の正面の小高い丘の上に有ることがわかった。
教えられた通り、山道に作られた細い土の階段を踏みしめ上り、
その場所へと向かった。秋夕(チュソック)が過ぎたばかりのせいか、
その道を上って行く人もジニョンだけだった。

ジニョンは初めて訪ねるその場所に向かいながら、次第に気持ちが
高鳴るのを止められなかった。

きっとそこには、自分の気持ちを察してくれる誰かがいるだろう。
声を聞いてくれる見えない誰かがいてくれるだろう。
そう信じてジニョンは前に進んでいた。

そして、とうとう辿り着いた。

「綺麗・・・」 ジニョンは思わずそう口にした。
そして、自分の手にあった小さな花束を見て、クスッと笑った。
そこには彼岸花が咲き誇り、まるで敷き詰められた花絨毯さながらで、
小さな花束など無用に思ったからだ。



- イタリア -

フランク・シンはその頃イタリア、ローマにいた。
ひとつの仕事を解決した後、レオにも、ソフィアにも告げず、
この一年、余暇と言える日々はすべてこの地で過ごしていた。

ローマ、テルミニ駅に近い馴染みのホテルを拠点に、毎回少なくとも
一か月もの間滞在しているフランクにとって、この街は既に、
旅の地とは言えなくなっていた。

狭い路地が多いローマでは、フランクは自転車を利用することが多く、
コロッセオ、フォロロマーノ、気が遠くなる程の年月を生きた遺跡を
風を肌で切りながら辿り、夕刻になると、テヴィレ川に掛かった
サンタンジェロ橋を渡る。まるで日課のように辿るこのコースを、
フランクは殊更愛した。

フランクは不意に自転車を降り、橋の欄干に立つひとつの像を
長い時間見上げていた。これもまたいつものことだった。

そして、橋を渡りきったところに構えるサンタンジェロ城に上がり、
その中で営業しているカフェテラスでしばし時を過ごした。

サンタンジェロ城は遥か昔、牢獄として使われていたこともあるという。
周囲を高い壁で囲み、等間隔に設えた狭間(さま)は、正に要塞だ。

フランクはいつも決まった席に座り、決して美味いとは言えない
コーヒーを注文した後、静かに本を開く。
最大の観光シーズンを過ぎたこの季節には、城に上る人もまばらだった。
互いに関心を持たない、すれ違うだけの人々。
それでもフランク・シンの佇まいは、人目を惹いた。
左の肘をテーブルに付き、長い指で微かに頬を支える仕草は、
絵画のように見えた。

「あの・・・このお席よろしいでしょうか」
イタリア系の美人が、少し顔を赤らめながらフランクに声を掛けた。
見ると、他の席は十分に空いている。

「この席がお好みなのかな?」 そう言ってフランクは迷わず席を立った。

「あ・・そうではなくて」 女は慌ててフランクの袖に手を掛けようとした。

「長居して悪かったね」 
フランクは彼女の声が聞こえなかったかのように、カフェの店員に
声を掛けると、その場を立ち去った。
無視された形になった女は、恨めしげな視線を彼の背中に投げていた。

外はやっと夕暮れの色合いを描いていた。9月とはいえ、この地の日は
まだ長い。彼は城を出て、入口の傍に停めた自転車に手を掛けた。
ハンドルとサドルの間のトップチューブを跨ぐように掛けたバックに、
持っていた本を無造作に仕舞い、乗らずに押して橋に向かった。
そしてまた、さっきと同じ像の前に差し掛かって、足を止めると、
それをしばし見上げていた。



「待って!・・・ちょっと待って」

フランクは見上げていた視線を、その声の方向にちらりと向けた。
声の主は、先程フランクに声を掛けた女のもので、間違いなく
彼に向って走り寄って来る姿を、彼は無表情に眺めていた。

女は彼の傍まで近づくと、息を整えるために両肩を揺らしながら、
自分の胸に手を当てた。

「お・・お願い・・待って・・」
彼女はフランクから視線を逸らすことなく、そう言いながら、
自分の胸に当てていた手を、フランクの腕に伸ばした。

しかしフランクは彼女のその手を避けるように、腕を後ろに引いた。

女は、フランクのその行為に「クスッ」と小さく笑った。

「何?」 フランクは相変わらず無表情に聞いた。

「あの・・わかっていると思うけど・・・
 さっきはあの席に座りたくて声を掛けたんじゃないわ」

「・・・・・・」

「あなたの正面の席に座りたかったからよ」

「それで?」

「これはきっとわかってないと思うけど・・・
 私はあのカフェでバイトをしているの。あなたが・・・
 あの椅子に座るようになる一年も前から」

「・・・そう」

「ずっと気になっていたの」

「何が?」

「どうして・・・この人の目には何も映ってないんだろうって」

「・・・・・・」

「どうして、この人は、ここにいるんだろうって」

「・・・・・」

「まるで投獄されている囚人みたいに」

「囚人?」

「ええ」

「だから・・・何?」

「だから・・・えっと・・・だから・・・その・・・
 どうして・・・どうして、せっかく注文したコーヒー、飲まないの?」
彼女は本当はこんなことを聞きたかったわけではなかった。
しかし、彼の自分に対する、終始つれない態度に対して、
つい、どうでもいいようなことを言ってしまい、彼女の目が微かに泳いだ。

彼がカフェに現れるようになって一年。
彼女、エマヌエーラ・ビアジは大学に通う傍ら、二十歳の頃から
このカフェでバイトをしていた。

或る時、毎日同時刻に現れる自分と同年代の若い男に気が付き、
その日から彼のことが気になって仕方なかった。
彼の出現は一か月近く続き、突如現れなくなる。
そして数か月後また同じ様に現れる。これでもう四回目だった。

何処か悲哀に満ち、氷のような冷たい目をした美しい彼のことが、
気にならない女は、この世に決して存在しない、彼女はそう思った。

「君達が淹れたコーヒーを飲まないことへの批判を、聞かなきゃいけない?」
つまらない質問が功を奏したのか、彼は彼女にやっと、まともな言葉を返した。

「コーヒー豆の問題なの?」 エマはここぞとばかりに、しつこく食い下がった。

フランクは少し可笑しくなってきて、つい口元が緩みそうになった。
「どうしてそんなに拘る?」

「気になるの」 思ったことは言わずにいられない、気になったことは
確認せずにはいられない、これは本当だった。
しかし、本当はコーヒーのことなんてどうでも良かったのだ。

「・・・・・ひとつに水。それから豆の種類。それとお湯の温度。
 それから・・・」 ≪淹れる人≫
 

「それから?」

「・・・何でもないよ」

「ねぇ、自分で淹れてみたら?豆と水は言われたものを用意する」
エマは決して冗談と言えない眼差しで、フランクを見据え、続けて言った。
「また飲まないコーヒー注文されるのって、嫌なの。」

「あー・・・じゃあ、今度は違うものを注文するよ」

「違うものって?メニューも見ないし、聞かないのに?」

「よく見てるね」

確かにフランクはカフェに入ると、「コーヒー」のひと言だけしか発していない。
その後席を立つまで、周囲に視線を向ける事すら無かったかもしれない。
そんな自分を思い起こして、少し可笑しかった。

「あーしかし・・残念だけど、しばらくは他のメニューも注文できないな」

「へっ?・・どうし・・」
「多分、明日帰国することになるから」
フランクはそう言い残すと、くるりと方向を変え、自転車で走り去った。

エマは素早く立ち去る彼の後姿を、呆気にとられたように見送った。
≪勇気を振り絞って、やっと声を掛けたのに・・・≫
彼女は次第に遠ざかる彼を目で追いながら、自嘲するしかなかった。



「レイモンド?」 フランクはホテルに戻るなり、電話口のレオに向かって、
面倒臭そうに言った。レオから連絡を受けた時点で予測できたからだ。

「ああ、直ぐにニューヨークに戻って欲しいそうだ」

「三か月は休むと言っただろ?」

「断るか?」

「・・・いいや・・いい」

「受けるんだな」

「ああ」

電話を切ると、フランクはバーカウンターに立ち、グラスに氷を落した。
そしてそのグラスとウォッカのミニボトルを左指で器用に挟み持ち、
テラスに出ると、徐に椅子に腰かけ、テーブルに置いたグラスに、
静かにボトルを傾けた。

≪フランク・・ちゃんと食ってるか?ちゃんと寝てるか?≫
さっきの電話のレオの言葉が脳裏に浮かんだ。

「ワイフか、お前は・・・」 フランクは思い出し笑いしていた。
自分がこのところ、笑っていなかったことに気が付いて、更に可笑しかった。

そして、レイモンド・・・
フランクが休暇に入ると、一か月と空けず仕事を用意する。
どうしても仕事させておきたいらしい。

「嫌な奴」 フランクは小さく悪態をついた。

≪仕事をしている方が楽だとでも?≫


ふと、先刻サンタンジェロ城で出会った女の言葉が蘇った。

≪まるで・・投獄された囚人みたい≫

フランクはフッと口角を上げ、小さく笑った。

囚人か・・≫



        ・・・「笑える・・・」・・・




※秋夕(チュソック)韓国のお彼岸
※狭間(さま)要塞などに開けられた鉄砲や矢で中から外への攻撃に使う極小さな窓穴
※お断り:イタリアの9月は実際はオンシーズンで観光客は多いですが、創作上、少し静かなイメージで描いています^^;

 


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