collage & music by tomtommama



                          story by kurumi











　　　
　　　　　　　「僕を待っていた？」


　　　あなたは大きな瞳に涙をいっぱいためて大きく頷いた

　　　やっとの想いで辿り着いた僕の愛に・・・頷いた


　　　　　　　「僕も待っていた・・・」   この日を・・・

              「・・・・・」

　　　　　　　「チェックインを・・・」

　　　　　　　「いつまでこちらに？お客様・・・」


　　　あなたは溢れそうになる涙を必死に堪えるように　　
　　　僕に精一杯の笑顔を作って答えた


　　　　　　　「永遠に・・・」

　　　　　　　「・・・・・」

　　　　　　　「永遠にあなたの傍にいます」


　　　あなたは僕のその言葉に大きく一度深呼吸して
　　　もうこぼれ落ちる涙に逆らおうとはしなかった

　　　そしてそのまま僕の胸に飛び込んで来てくれた

　　　僕は、そんなあなたを決して逃すまいと
　　　万感の想いを込めて受け止めた


　　　　　　　ああ・・二度と離さない・・・


　　　こうしてあなたを抱きしめたかった・・・

　　　あなたに抱きしめられたかった・・・


　　　　　　　僕の・・・ジニョン・・・


　　　離れ離れだった長い時間が一瞬にして消え去り
　　　僕とあなたの時間は僕の腕の中で確かに重なった





　　　しかしジニョンssi・・・
　　　気がつかないかい？
　　　ここはホテルのロビーの真ん中だよ・・・

　　　確か・・ホテリアーは
　　　ホテルの中で客と個人的な時間を
　　　過ごしてはいけなかったよね

　　　　　これは・・・いいのかな？

　　　あなたはそんなことも忘れてしまったかのように
　　　まるで・・・ここが・・・
　　　あなたと僕だけの世界であるかのように・・・
　　　固く僕を抱いてくれていた

　　　そして僕の肩の上で
　　　いつまでも震えるように泣いていた


　　　そうだね・・・
　　　今はもう少しこのままでいよう・・・

　　　しばらくこうしてふたり抱き合っていよう

　　　今日のこの日まで・・・

　　　どんなにか逢いたくて・・・

　　　どんなにか触れたくて・・・

　　　どんなにか・・・愛したかったのだから・・・

　　　そうだよ
　　　ここがどこであろうと・・・構わない・・・

　　　あなたがそのことに気付いてしまわないように

　　　こうしてそっと・・・

　　　・・・あなたを抱いていよう・・・


　　　
　　　あなたの肩越しに
　　　僕達を温かく見つめるテジュンｓｓｉが見えた

　　　そして僕に向かって納得したかのように頷くと
　　　僕達の前から静かに去って行った



　　　テジュンｓｓｉ・・・

　　　大切な忘れ物・・・

　　　やっと受け取りに来ました


　　　あなたのお節介は少し疎ましかったけれど
　　　今は礼を言いましょう・・・

　　　
　　　あなたが間違いなく・・・
　　　彼女の背中を押してくれたのだから・・・

　　　


　　　どれくらいの時間が経っただろうか

　　　泣き疲れたあなたが僕からゆっくりと離れると
　　　涙を拭い僕の顔を見上げて照れくさそうに笑った

　　　そして　思い出したように支配人の顔に戻った


　　　　　　　「あっ・・・お・お客様チェックインを・・・
　　　　　　　　こ・・こちらへ・・・」


　　　あなたのその慌てぶりが僕は可笑しかった


　　　　　　　「何が可笑しいの？」


あなたが後ろで待つ僕に振り返りプーと頬を膨らませる

　　　　　　　　フッ・・・可愛い・・・・


そしてフロントでチェックインの手続きをする
あなたの頬は真っ赤に染まったままだった

スタッフ達もさっきまでの僕達の様子を見ていたはず

受付嬢が意味有げな笑みをあなたに向けながら
部屋の鍵を差し出した

僕が昔ここで怒りに任せて腕をねじ伏せてしまった
見慣れたベルボーイが僕の荷物を持って微笑んでいた

あなたは彼らの視線に居心地が悪そうに何度も俯きながらも
何とか支配人の面子を保っているようだった


　　　そんなあなたの後ろで　僕は可笑しかった・・・

　　　そして・・・幸せだった・・・



　　　　　　　「お部屋に・・・ご案内します　お客様・・・」

　　　　　　　「お願いします・・支配人・・」


サファイヤヴィラまでの道のりは　去年と同じ桜が満開だった

去年の今頃　あなたに一緒に行けないと言われ
寂しくあなたにくちづけたのもここだったね・・・


　　　ジニョンｓｓｉ・・・

　　　僕もサファイアヴィラまでの道は慣れていること
　　　知っているでしょ？
　　　きっとあなたに案内されるまでもなく辿り着けるよ

　　　それなのにあなたはまるで初めて案内するかのように
　　　僕の前を歩き道案内に努めている・・・


　　　　　　ねぇ・・

　　　　　　いつまでこうしている？・・・


　　　僕は並んで　あなたの肩を抱いて歩きたいけど


　　　　　　ここではだめ？　　

　　　　　　やっぱり・・規則だから？


　　　僕の視線を背中に感じながら

　　　あなたも今の僕の気持ちと同じくらい
　　　幸せを感じてくれているかい？


あなたは何度も心地良さそうに深呼吸をしながら歩いていた

そんなあなたの後姿を追いながら僕の視線はさっきから
あなたが後ろ手に組んだ白い指に光るものを見つめていた


　　　
　　　あの日僕があなたに贈った・・・
　　　
　　　　　　　僕から一生離れられない魔法の指輪・・・


　　　あなたの指で誇らしげに光を放つその輝きが


　　　　　　　　　　　僕の心を更に熱くした・・・


　　　そして僕は・・・

　　　今までずっと僕の代わりにあなたに寄り添い


　　　あなたを守り抜いたその指輪に


　　　　　　　　
　　　　　

　　　　　　　深く深く・・・感謝した・・・