何だか今朝は気分が良くない・・・

　　理由はわかっている

　　明日が来ることを　この身体が拒否してるんだ

　　昨日はゆっくり逢えなかったね

　　わかってるよ　ジニョン・・・不満だったんだろ？

　　僕が昨日君を避けるようにしていたのは
　　ただ　君の悲しそうな顔を見たくなかっただけなんだ

　　昨日の夜　君から

　　明日は私の言う通りのデートをして、とメールが入っていた

　　わかったよ

　　今日は一日君の望み通りにする

　　君の望み通りのデート・・・だいたい想像はつくけど

　　僕は君といられればそれでいい・・・

　　以外と早くからやってきた君は　まず

　　自分の服に合わせて　僕の服をコーディネートした

　　今日は恋人同士の定番のデートをするという

　　まず映画を見て・・・

　　　　　　悲恋ものの何ともつまらない映画

　　　　　　君は隣で何度も涙を拭ってたけど

　　　　　　僕はずっと・・・君を見ていた

　　美術館を廻って・・・

　　　　　　現代アートか・・・僕はあまり好みじゃないな

　　　　　　僕の鑑賞対象は君だから・・・

　　ラブラブ繋ぎで公園を散歩して・・・

　　　　　　これは・・・・・・ま、いいかな

　　レストランでお食事・・・

　　　　　　レストラン？　こういうのはレストランとは言わないよ

　　僕と君の趣味はことごとく違っているようだ

　　そしてまた・・・・写真？　これはなんという機械だっけ・・・

　　　　　　あ、プリクラね・・・

　　　　　　僕はこれには一向に慣れないよ

　　　　　　どんな顔していいのか迷ってしまう

　　　　　　でも君が喜んでいるのなら我慢するよ・・・

　　実を言うと僕はこういうデートはあまり得意じゃない

　　　　　　女の子はこんなのが楽しいの？

　　そして　アパートに戻ったとたん君が言った

　　　　　　　　　「なんだか　ここが一番落ち着くわね」

　　ジニョン・・・僕は　はなからその方が良かったのに

　　君に無理無理付き合っていたんだよ・・・

　　今更それは無いんじゃない？

　　君とこうしてテラスに出て　コーヒーカップを傾けながら

　　ソウルの景色を眺める・・・これが僕の至福のときだ

　　
　　いつもこうして　君と静かにまどろんでいたい

　　例えばこうして　僕が本を読んでいる

　　その傍らで君が何かしら用を足しながら

　　気がつくと　時折僕を盗み見ている

　　その優しい眼差しがあれば　僕は幸せだ

　　今・・・僕を見てるね・・・

　　しかも　さっきからずっと・・・

　　何か言いたいことでもある？

　　僕が君に振り向くのを待ってる？

　　でも　振り向かないよ

　　たまにはいいでしょ？
　　僕だけがいつも君を見つめるのは不公平だ・・・

　　こうして・・・

　　君だけが僕を見つめているのも・・・・悪くない・・・・

　　　　　　　　　　「ドンヒョクｓｓｉ・・・
　　　　　　　　　　　明日私、空港に行かないわ・・・」

ジニョンはドンヒョクの肩に寄りかかって　空を見上げながら言った

　　　　「どうして？」

　　　　　　　　　　「だって・・・・・」

　　　　「すぐに戻るよ」

　　　　　　　　　　「すぐ？ニ週間は永いのよ　ドンヒョクｓｓｉ！」

　　　　「今までの一年に比べたらうんと短いよ」

　　　　　　　　　　「そうだけど・・・・」

　　　　「・・・・・・・・・・・」

　　　　　　　　　　「・・・・・・・・・・・」


ジニョンは不満を露に上目遣いに僕を睨んだ

　　ジニョン・・・

　　その目は止めてと言ってるでしょ？

　　僕は本当に行かれなくなる・・・・

　　　　「ジニョン　もう遅いから・・・・・送るよ」

　　　　　　　　　　「えっ？」

　　　　「ジェニーが心配するんだろ？」

　　　　　　　　　　「え・・ええ・・・」

ジニョンは少し戸惑いを見せながら僕に訴えかけていた

ドンヒョクはそれを無視して玄関へ向かった

しかしジニョンはなかなか出て来なかった

　　　　「どうしたの？　　行くよ！」

ドンヒョクがリビングに向かって声を掛けると
やっとジニョンが顔を出し、玄関に出て来た


　　　　「何してるの？早く・・」

ジニョンは少し口を尖らせながらドンヒョクに向かって口を開いた

　　　　　　　　　　「このまま・・・・帰ってもいいの？」

　　　　　「どういう意味？」

　　　　　　　　　　「・・・・・・・・・」

　　　　　「帰りたくないの？・・・」

　　　　　　　　　　「・・・・・・・・・」

　　　　　「言って・・・・帰りたくないの？」

　　　　　　　　　　「どうして・・・・・・」

　　　　　「何？」

　　　　　　　　　　「知ってるくせに・・・」

　　　　　「何を？」

　　　　　　　　　　「・・・・・・・・・・・・」

　　　　　「僕が何を知っているというの？」

　　　　　　　　　　「いじわるなのね・・・あなたって・・・
　　　　　　　　　　　私がどういう気持ちなのか
　　　　　　　　　　　どうして　帰りたくないのか
　　　　　　　　　　　とっくに　知ってるくせに・・・・」

　　　　　「知らないよ」

　　　　　　　　　　「うそ！」

　　　　　「嘘をついてるのは僕じゃないでしょ？」

　　　　　　　　　　「・・・・・・・・・・」

　　　　　「嘘をついているのは・・君自身」

　　　　　　　　　　「私は・・・」

　　　　　「僕は君の気持ちを大切にしてきただけだ・・・
　　　　　　それを非難するの？」

　　　　　　　　　　「そんなこと・・ない」

　　　　　「あぁ・・・じゃあ僕が
　　　　　　君の気持ちなんて無視すれば良かったんだ」

　　　　　　　　　　「・・・・・・・」

　　　　　「無理やり・・
　　　　　　君を僕のものにすれば良かった？」

　　　　　　　　　　「止めて！・・・・そんな言い方」

　　　　　「だったら！はっきり言いなさい！
　　　　　　君が今まで頑なに僕を制止したんだ

　　　　　　君がはっきり言いなさい
　　　　　　君の口から・・・・
　　　　　　どうして帰りたくないのか・・・
　　　　　　・・・僕に・・どうして欲しいのか・・・」

ドンヒョクは厳しい口調で彼女を睨みつけていた

ジニョンは今にも零れそうな涙をこらえてドンヒョクを見上げた

ドンヒョクはジニョンの傍に寄り　彼女の頬を両手で挟むと

しっかりと目を合わせた

　　　　　「言って・・・」

ジニョンの頬を伝う涙がドンヒョクの手を伝って落ちた・・・

そして　ジニョンはやっとの思いでドンヒョクに想いをぶつけた

　　　　　　　　　「････帰りたくない・・このまま帰りたくない・・・
　　　　　　　　　　　あなたと････あなたと一緒にいたい
　　　　　　　　　　　あなたに・・・・・・・・あなたに私を・・・」

ドンヒョクはジニョンが最後まで言うのを待たずに彼女の唇をふさいだ

　　　　　　わかってるよ

　　　　　　わかってる

　　　　　　その先は言わなくていい

　　　　　　ごめん・・また君にこんな意地悪・・・

　　　　　　また・・泣かせてしまった・・・でもね・・・

　　　　　　でも・・・

　　　　　　僕がどれだけ　君を求めていたのか

　　　　　　君をどれだけ　欲しかったのか・・・

　　　　　　　　　　・・・少しは・・・わかった？・・・