夜空に輝く星がひとつ消え ふたつ消え
ラピスラズリの世界がまるで透けるように
明るく変わりゆく空を
僕は眠れないまま見上げていた
僕の隣で 僕の腕を枕にして
君がスヤスヤと寝息をたてている
僕の胸に白い手を乗せ
夢の中で僕の鼓動を確認でもしているかのように・・・
君の寝顔はとても安心しきっているように見える
こんな安らぎが この世に存在していたことを
僕は今まで知らなかった・・・
眠れなかった
この安らぎと君の愛をかみ締めながら・・・
消えてなくならないようにと 祈りながら・・・
ときどき僕は胸に置かれた君の手を取り
その掌にキスを落としていた
君は夢の中で
くすぐったそうにしていたね
ジニョン・・・早く起きて・・・お願い・・僕を見て
僕は心の中で君に声を掛けていた
君の頬にキスをして
君のまぶたにキスをして
君の耳にキスをして
そして囁いた
・・・・・起きて・・・・・
君は僕の心の声が聞こえたかのように少し動いたけれど
でも君は起きそうにもない・・・・しょうがないね・・・
少し名残惜しかったけれど・・・
僕は君を起こさないように、君の頭からそっと自分の腕を外すと
静かにベッドを降りた
ジョギングから帰ると
バスルームでシャワーの音がしていた
起きたんだね
僕はバスルームにそーっと音を立てずに進入すると
ドアの前で君に聞こえよがしにわざとらしく咳払いをした
「えっ? えっ?・・・ドンヒョクssi?
・・・ちょ・・ちょっと・・待って・・」
君の慌てぶりが目に浮かぶようで、可笑しかった
「大丈夫・・・襲わないよ・・
安心してゆっくりお入り」
「・・・・・・」
「それとも・・襲って欲しい?」
「バカ・・」
「正直な君は凄く素敵だったのに・・」
「ドンヒョクssi!・・あっちへ行って!」
君がきっと顔を真っ赤にしているのが想像つく
からかうのはこの辺にしておこう
「わかったよ・・我慢する・・」
僕がもうひとつのバスルームでシャワーを浴び出てくると
君はもう服を着て キッチンで何やら探していた
「何してるの?」
僕はキッチンのカウンター越しに君を覗いて言った
「何か朝食作ろうと思って・・・」
「いいよ 僕がやるから」
「いいわよ ・・・私が・・・」
「僕の方が早いよ・・きっと」
「ドンヒョクssi・・・私そんなに頼りない?
何にも出来ない人みたい」
「出来るの?」
「出来ないけど・・・」
「じゃいいじゃない 僕がやったって」
「・・・・・・・・・」
ジニョン・・・
君はこうして僕と普通に会話しているけれど
さっきから一度も僕を見てないね
「ジニョン?・・・」
「何?」
まだこっちを見ない・・・・
「これ 手伝って」
君が僕に近づいた時
僕は急いで君を捕まえて 君の腰を僕に抱き寄せた
そして君の顎を僕の指に乗せて少し持ち上げると
驚いて目を丸くした君がやっと僕の視線と交わった
「ジニョン・・・」
僕は少し神妙な顔つきで君の視線を釘付けにした
「えっ?」
「一日が始まったら・・・」
「な・・何?」
「まず何を置いても・・・最初に僕を探して
僕を見なさい・・・」
「・・・・・・・」
「・・・わかった?」
君もまた神妙に、瞳を一度伏せて無言で返事をする
そして僕はそのまま君にキスをした
石鹸の香り・・・良かった この石鹸を選んで・・・
君にぴったりの香りだ・・・・・
用意した料理をふたりでテラスに運んで朝食を摂った
「ドンヒョクssi・・・
今日何時だったっけ飛行機・・・」
「12時」
「私も一緒に空港行くわね」
「来ないんじゃなかったの?」
「行きます!」
「どうして?少しでも永く僕といたいから?」
僕はわざと君の顔を覗き込んで茶化すように言った
「そうよ」
ジニョンは真顔で即座に答えた
「素直にそう言われると冗談で返せないじゃない・・・」
「素直になりなさいって・・あなたが言った・・」
「そうだったね」
「あっ! いけない!
ジェニーに連絡するの忘れてた
心配させちゃったわ きっと・・・」
ジニョンが突然思い出したように叫んだ
「大丈夫だよ・・・伝えといたから」
僕はコーヒーを飲みながらさらっと答えた
「えっ?・・いつ?」
「昨日の朝・・・
ジェニーが出勤前に朝食持って寄ってくれた・・・」
「昨日の朝・・って・・・・えっ?」
君は少し事の次第を思い巡らせた後
やっと僕の魂胆に辿り着いたようだった
「・・・・・・・・・・」
僕は君から視線を逸らして無言でコーヒーをすすった
「ドンヒョクssi !」
そうだよ・・・・
昨日君が 帰りたくない と言わなくても
僕は絶対に帰さなかった・・・
君は思い切り頬を膨らませて 僕の胸にこぶしを振った
僕はそのこぶしをそのまま掴んで引き寄せた
そして君を当然のように抱きしめて
当然のように・・・キスをひとつ・・・
次第にエスカレートする僕を君がたしなめた
「ダメよ ドンヒョクssi」
「まだ 時間がある・・・・」
「こんなところで?」
「僕は構わないけど?」
「せめてお部屋に連れてって・・・・」
僕は君をそのまま抱き上げてテラスを出た
「以外と重いね・・・・ジニョンssi 」
「じゃあ 降ろして」
君が僕の首にしっかり巻きついたままそう言った
それは・・・
・・・ だ め ・・・