あなたが僕からやっと解放されてこの部屋を後にしてから
僕はひとり・・・
今この時が現実であることをかみ締めるかのように
部屋の中を懐かしみながら見渡した・・・
そしてベランダに出て一年前と少しも変わらぬ景色を眺め
あなたと同じ空気を吸った
苦しかったこの一年という時の流れさえも
今は何故か愛しい
ベランダから部屋に戻ると僕は椅子に深く腰を掛けた
僕はそうして随分長いこと壁に掛かった時計を眺めていた・・・
退勤時間まであと二時間・・・
ジニョンssi・・・
あなたを待つことにはいつまでも慣れないけれど
今日は今までと違う
あなたは必ず僕の元にやって来る
その安心感にくすぐられながら・・・僕は静かに目を閉じた
あなたが戻るまで静かにこうしていよう
何故か・・・
こんなにも落ち着いていられる自分が不思議だった・・・
幼い頃からずっと不安という悪魔がつきまとい
人に愛されないことが自分の中で大きなわだかまりとなって
人を愛することさえも忘れていた・・・
あなたを愛する自分に気がついてからもずっと
本当は自信が無かったんだ・・・
自信が無い・・・そういう経験は初めてのことだった
どうしても失いたくない・・・あなたという存在が
僕のそれまでの価値観すらも払拭してしまっていた
そのあなたを僕はこの胸に取り戻したんだね・・・
信じていいんだね・・・
長かった・・・
本当に長かったよジニョンssi・・・
初めてあなたに出会った日
あの時自分が恋に落ちたことに僕はまだ気付かないでいた・・・
2度目にあなたを見かけた時も
自分がなぜあなたに興味を抱くのかわからなかった・・・
砂漠であなたを拾うまで
もう出会うことすら無いと思っていた・・・
あの時、別荘であなたの素顔に少しだけ触れて・・・
あなたをもっと知りたいと思った自分自身の感情に
正直になろう・・・そう思った
だからこのソウルに来たんだ
あなたに逢うたび 僕の心は子供の頃の
人間を信じられなくなる前の自分に戻っていくようだった・・・
母に触れる安らかさを味わうかのように
心から落ち着くことが出来た
でもそれからの僕達の前には
大きな試練が立ちはだかっていた
僕の仕事があなたを深く傷つけ
あなたをこの手に抱くことすら出来なかった
あなたのためにここに来た・・・
そのことに決して嘘は無かったのに・・・
どうしてわかってくれない?
仕事と恋は関係無いことでしょ?・・・
その僕の想いなどあなたには通じなかったよね
そして結局・・・
あなたが欲しい・・・全ては僕のその欲望と引き換えに
僕が考えを変えていかなければならなかった・・・
どうすればわかってくれる?
あなたの心が僕に向かってくれないもどかしさが
更にあなたを傷つけてしまったこともあった・・・
あの日あなたから・・・一緒に行けないと告げられた時
本当は・・・
そんな予感がしていた
やっぱり僕には幸せは訪れない
あなたは僕に・・・舞い降りないと・・・
そして、その別れから・・・一年・・・
あなたの心を信じたい僕と・・・
あなたはやはり僕とは生きられない人・・・
そういう思いがずっと僕に付きまとっていた・・・
あなたの愛を信じる僕と・・・
あなたを遠くに感じる僕・・・
あなたのそばにいられない現実が
僕をより一層孤独に落し入れることもあったんだ
ジニョンssi・・・
テジュンssiから あなたが僕を待っていると聞かされた時
何故彼からそのことを聞かなければならないのか正直腹が立ったよ
僕よりもこの人の方があなたをわかっているのか・・・
あなたにとって本当はこの人の方が必要な人間ではないか・・・
そう思ったこともある・・・
離れた時間は人の心を変えていく・・・
あなたと繋がっている・・・そう信じているそばから
僕の心は不安の海を泳いでいた
さっきまでのあなたは・・・僕を愛していた・・・
たった今のあなたも・・・僕を愛している・・・
でも・・・明日のあなたは・・・僕を愛してくれるだろうか・・・
僕を・・・本当に待っていてくれるんだろうか・・・
そうなんだ・・・
あなたのことだけに関しては・・・
僕のそれまで培った余裕も・・・自信も・・・簡単に消えうせた
この一週間連絡をしなかったことはとても辛かったけど
「帰ってもいいか」尋ねた時のあなたの反応が怖かった・・・
あなたに愛されている・・・
その形の見えない確信と・・・
もう愛されていない・・・
計り知れない恐怖・・・
僕の中でいつもその思いを抱くふたりの僕が戦っていた・・・
だから直接逢ってあなたの心を確かめたかったんだ
もしもそうしてあなたの困惑を感じ取ったら?・・・
あきらめる?
いいや、それでも絶対にあきらめなかったよ
だから僕はここへ来た・・・
もしもあなたが僕を置いて行きそうだったら
もう一度あなたを追いかけようと
もう一度あなたの愛に挑戦しようと・・・
ここへ来た・・・
さっき、テジュンssiに連れられホールに現れたあなたの瞳が
僕を見つけて輝いた時・・・
僕がどれだけホッとしたか
きっと・・・あなたには・・・
・・・わからないだろうね・・・