ジニョンssiの?・・・本当の父親?
ヤン・ユソク?
何故そんな話題に、お父様の名前が出るの?
アナベルは、ドンヒョクの執務室の前で、彼と来客との会話を聞いた
先ほど部屋に入って行った来客は・・
確か、ジニョンさんのお母様だと言っていたわ
ドアの向こうから、父の名前が聞こえてきたことに驚いて、
アナベルは身動きができなくなった
「セヨンssi・・・もう少し待っててもらえますか?
僕もそろそろ出ようかと思っていたところなんです・・
ご一緒に・・・」
「そうね・・・ねぇ、ドンヒョク・・
あなたとデートした帰りだということにするのはどうかしら・・
ジニョンを驚かしましょうよ・・あの子、また焼もち妬くわよ」
セヨンが面白がってそう言った
彼女が例え無理をしていたとしても、いつもの明るさを取り戻したようで、
ドンヒョクは少しホッとした
しばらく、ドアの前で立ち尽していたアナベルは、慌ててその場を離れた
そして今しがた聞いた話の内容から自分の直感が正しいことを悟った
そんなことって・・・
ジニョンssiが・・・お父様の娘・・・
お父様が誰よりも愛した女性との娘・・・
そうなのね・・・そういうことなのね
だから、お父様はあんなにも簡単に
ジニョンssiに心を許した・・・
お父様・・・もしかしてあなたも知っているの?
いいえ、知らないはず・・・あなたが知っていたら
私とフランクを結婚させようとは思わないわ
何てことなの・・・
ジニョンssiも知らないのね・・・・
嫌よ・・・認めない
あなたが私の姉だなんて・・・・絶対に認めない
「オンマ!どうしたの?急に・・・・」
「久しぶりにドンヒョクとデートしたくて、ソウルに出て来たのよ」
「えー、まさか、それで本当にデートして来たわけ?」
「そういうこと・・」
「なんでよ~私も誘ってくれたらいいじゃない」
「あら、あなたがいたらデートにならないでしょ
ね、ドンヒョク・・・」
「ええ」 ドンヒョクもセヨンの話に合わせて答えた
するとジニョンがドンヒョクの前で頬を膨らませてみせた
「嘘だよ」
ドンヒョクはそんなジニョンを後ろから抱きしめて膨れた頬にキスをした
ジニョンの顔が綻ぶように笑顔に変わった
「あら、あら・・・見せつけてくれちゃって・・この、裏切り者。」
セヨンがドンヒョクに睨んだ顔を作ると、「ごめん・・セヨンssi」
ドンヒョクはそう言って、セヨンにウインクをして見せた
「ま、いいわ・・・さて、今日は何作ろうかな・・・
ジニョン・・材料何が有る?」
セヨンがそう言いながら腕捲りをして、キッチンに向かった
「わっ、嬉しい・・・オンマが作ってくれるの?
じゃ、リクエストがあるわ・・・・」
「これ・・・今あなたが作ってたの?」
「うん」
セヨンはジニョンが作っていた料理をスプーンですくって口に運んだ
「あなた・・・何?これ・・・
ドンヒョクに・・・こんなもの食べさせてるの?
・・・ゴメンナサイね、ドンヒョク・・・・・
あなた、いつもこんなもの食べさせられてるのね」
セヨンは大げさにまずそうな顔をしてみせた
「こんなものって・・・」 ジニョンはさっきよりも頬を膨らませていた
「はー・・これ人間の食べるものじゃないわ」
「言い過ぎよ・・・オンマ」
「あーセヨンssi?・・・あなたにも責任はあると思うよ
あなたがちゃんと娘に教えて来なかったから・・」
「ドンヒョクssi!」 ジニョンはドンヒョクの言い様に、小さく拳を振った
「ゴメンナサイね・・・本当に・・・ああ、そうね・・
じゃあ、教育し直すから返してくださる?ドンヒョクssi」
≪返して?≫
「あーそれは遠慮しとくよ・・
このままで、我慢する・・・返品はしない。」
≪我慢?・・返品って・・・≫
「それじゃ、申し訳無いわ」
セヨンはわざとらしく申し訳無さそうに眉を下げた
「いいんだよ、僕がこの不良品でもいいって言ってるんだから」
≪不良品!?≫
「でも・・それじゃ・・・」
「もう、いい加減にして!二人とも!」
ふたりが自分のことで遊んでいることに堪りかねたジニョンが
声を張り上げた
ジニョンはセヨンとドンヒョクに向かって、ぶつぶつ文句を言いながら、
台所に向かった
セヨンはクスクスと笑ってその後を追い、ジニョンにあれこれと
指図しながら、手際良く料理を始めた
ジニョンは直ぐに機嫌を直して、まるでふたりはじゃれているようだった
ドンヒョクはそんなふたりの様子を、にこやかに眺めていた
セヨンssi・・・
あなたは本当に・・・間違い無くジニョンの母だ
太陽のように明るいあなたの心を
ジニョンは全て受け継いでいる
僕がジニョンに惹かれた一番の理由・・・
それは、あなたがジニョンにくれたもの
僕は改めて・・・あなたに感謝します・・・心から・・・
「オンマ・・・今日泊ってくでしょ?
久しぶりに、一緒に寝よ?」
「えっ?」と、ドンヒョクの方が声を出した
セヨンはそんなドンヒョクを横目で見ながら、思わず吹き出しそうになった
「あら、いいのかしら・・・ドンヒョクssi?・・・
私が、ジニョンお借りしても・・・」
「あ、ああ・・・どうぞ・・
僕も久しぶりにひとりでのんびり眠れそうだ
誰かさんの寝相の心配しなくて済む・・」
ジニョンが直ぐに横目でドンヒョクを睨んだ
「ドンヒョク?・・・強がりはよしなさい
これから、何かあるたびに、どうせ私の寝相、嫌なんでしょって
ジニョンにやられるわよ・・・」
今度はドンヒョクがジニョンを横目で見た
「オンマ、私、そんな意地悪しないわ・・・
ドンヒョクssi・・・今日はオンマと休ませてね」
「ああ・・そうしなさい」
ジニョンとセヨンは久しぶりに布団を並べて休んだ
「オンマ・・・・」
「何・・・・」
「私が小さい頃、良く叔母さんの話してくれたでしょ?」
「えっ?ええ・・・・」
「私が生まれる前に亡くなった叔母さんのこと・・
私は記憶に有るはずないし、どんな人かもわかるはず無いのに
オンマがいつも、「あなたの叔母さんは、こんな人だった」
って、よく聞かせてくれたわね・・・
だから、叔母さん、いいえ、もうひとりのジニョンさん・・・
私の中ではまるで生きているように鮮明だったわ・・・」
「ええ・・・あなたの名前に貰ったくらいだもの・・・
私も、お父さんも、彼女のこと・・とても愛していたわ
だから、あなたにも彼女のこと知って欲しかったの・・・」
「オンマ・・・聞いて?
私ね・・・その叔母さんを愛していた人と会ったの・・・
その方ね・・・若い頃、叔母さんと凄く愛し合っていた人なんだって
それで、今でも叔母さんのこと愛していて
叔母さんとの思い出の残る、このソウルで余生を過ごそうとしてらした
・・・・その話聞いてね・・・私
叔母さんなら、“そんなことしないで”と言ったと思いますって言っちゃったの
奥様のそばにいらしてあげて下さいって・・そう言うんじゃないかって・・
オンマ・・・間違ってるかしら・・・私
叔母さん・・・本当はそばにいて欲しかったかな・・・あの人に・・・」
「ジニョン・・・・その方のことはよくわからないけど・・・
ジニョンオンニは・・・あなたと同じこと言ったわ、きっと・・・」
「ホント?本当にそう思う?オンマがそう言うなら・・・
間違い無いわね・・よかった・・・」 ジニョンがホッとしたように微笑んだ
ジニョン・・・・
その叔母さんが・・・ジニョンオンニが・・・
あなたの本当のお母さんだということ・・・
教えてあげるべきなのかもしれない・・・
でも、私は・・・いつまでもあなたの本当の母親でいたい・・・
ジニョンオンニ・・・・許してくれる?
このまま・・・この子を私にくれる?、オンニ・・・
セヨンは目に滲んだ涙をジニョンに見られないようにそっと背中を向けた
「オンマ・・・寝たの?」
「ん・・・・寝た。・・・」
「オンマったら・・・おやすみ・・・明日は私とデートしましょうね」
翌日の午前中、セヨンはジニョンとふたりで買い物を楽しんで、
“仕事があるから”と・・・昼前にサムチョクに帰って行ったた
セヨンssi・・・・
あなた達の想いは・・・僕が必ず守る
だから・・・
・・・心配しないで・・・