【 koko の Valentine's Day 】
18話
「 ただいま~ 」
「 いや~ koko ちゃん… おかえり~
おつかれさん。 きいてきいて! このおふたり
私ひとりにお仕事おしつけて、朝から雲隠れしたかとおもったら、
今度は、6時頃に
koko ちゃんのところへきなさいなんて
ほんまに、何を考えている事やら … 」
「 こお子ちゃん。 そこまでで
…
koko ちゃんお疲れどす。
さあさあ~ ごはんにしましょ~ 」
koko
は いつものことだが、この三人と共に過ごす時は、
口数がますますすくなくなる。
と、いうか?
口をはさむチャンスがあたえられないといった方が正確な表現だ。
ダイニングルームには、出前されたお寿司と、
玄関ドアを開けた時、いいにおいがしたお吸い物が
…
母達の訪問時には、テーブルに一杯の手作りの物が
並べられているいつ光景とは少し違ったが、朝からろくな食事に
ありついていなかった
koko
は空腹とのたたかいだ。
これもいつものことだが、いただきますから口に入るまで、
それぜれが思いのままに話しだし、今日は、耐えられるだろうか?
「
いや~ どうしはったん! えらい、おご馳走やねえ~
はよ~ はよ~ koko ちゃん! これって特上ですなあ~ 」
「
もう~ なんです。 お行儀の悪い。
さあさあ~ せっかくおばあ様と作らせてもらいました
お吸い物さめてしまいます。」
ありがたい事に、どういうことか今日は 「
いただきます
」 の、
あと さほど時間はかからなかった。
こお子が、それぞれの好物をお皿にのせた。
「
おばあちゃんは、 あわび。
おかあ様は、おたい。 koko ちゃんはどっちさきにいただく。
うに。 トロ。 そうやね~ ふんぱつして迷わず両方。
わたしも … 」
それから、食卓は火が消えたかのように静まり、特に koko
は箸がすすんだ。
おなかが満たされかけた時、
母達はほとんどはしがとまったままだというのに気がつき、
「
おばあさまとおかあさん。
ほとんど食べてないねえ~ こんなにおいしいのに … 」
「 ほんまや~ どうしはったん!
」
八重もなほこも同じ胸の内だった。
このあと、二人がどのようなおもいをするかと思うと
食事がのどをとおらなかった。
「
お昼、食べるのがおそかったさかいに …
おいしい~ いっぱいおたべやす。」
「 おいしいよ~ 」
「
そ~ それはよかったわ。 」
いつもは、いつまでもだらだらと食卓で過ごすのが、今日は、
母が
…?
「 そしたら、みなさんお疲れででしょうから、
今日は私がお片づけしますので、 リビングの方へ …
お茶は、あったかいおいしいのに入れ替えてお持ちいたします。」
「 いや~ そうどすかあ~ ほんなら …
」
と、 いつも要領にいいこお子がお茶の入った湯のみを
手に持ちたちかけると、 祖母、八重が、
「
こお子! みなんでお片づけしなさい。」
「 どうしたの~ いつも着替えているのに、今日は着替えないで
…
よごしたらあきまへん。 私が …
そやけど、 お茶はおかあさんがおいしいの入れてね。」
と、 koko
が あと片付けをしだした。
koko
のマンションには、それぞれの、着るものは勿論だが、
小物は少しずつふえ、
母と祖母は横になる前に、普段に着替えたが、
夕食の準備の前に到着した時の着物に着替えていた。
「 そうどすかあ~ そしたらお言葉に甘えさせていただいて
あちらでまたせてもらいましょ~
」
祖母と、こお子はリビングに移動した。
片付けつといってもお寿司の受け皿と湯のみとお吸い物の器。
すぐに片付け
koko もリビングに移動した。
「 koko は こっちに … 」
と、 祖母がこお子の横に koko
の席を誘導した。
いつもはそれぞれが好きなところへ腰をおろして
いるのにと、
不思議に思いながら指定された席にすわった。
そこへ、 母 なほこがお茶を運んできた。
母は、祖母の横にすわり、
顔を見合わせそれぞれがうなずき 祖母八重が呼吸をととのえ
「
こお子。 koko。 今から少し大切なお話をさせてもらいます。」
「 いや~ どうしはったん! あらためて! こわおすなあ~
」
いつもの事だが、ふざけてこお子がひと言、話しかけると
母、なほこがたしなめた。
「
今日は、ばたばたさせていまって悪かったわね。
特に、 こお子には …
」
母、なほこはそう話したあと目線をそらした。
こお子と koko
は異様な雰囲気に顔をみあわせ
母に目をやった。