【 koko の Valentine's Day
】 8話
「 koko
さん。 すなおは昨夜遅く帰ったようで、
朝はいつもですがあわただしく出かけて行きます。
koko
さんの事も聞く事が出来なかったの。
今日ね。 午前中に筒井さんにご用事があり、
こちらに寄せていただいた時に、
koko
さんが神戸の大学の付属病院で医師をされていて、
お名前が加賀美さんといわれる事を知りました。
それから、 koko
さんが筒井さんにてんとう虫のチョコレートを
差し上げられたと言うことも … その時わたくしは …
」
ちょくさんのお母様はそこまで話されると、声をつまらせ
おばあ様がお母様に小声でなにやらお話されたあと
ちょくさんのお母様は小さくうなずかれ
「
ごめんなさい。 続きはわたくしから話させていただくわね。」
と、おばあ様が …
「
わたくしも、華子さんから話を聞いた時は驚きました。
だから、華子さんが筒井さんから聞いた時の驚きは
大変だったと手に取るように
…
このような説明で、なんの事か koko
さんにはおわかりになられないと思いますが、
今しばらく現在の流れのままでお話させていただきますね。」
ちょくさんのお母様は華子さんなんだ。
私は、深くうなずきおばあ様に視線を
…
しかし、どうして! 私が加賀美で …
てんとう虫のチョコで驚くのだろうと思った。
「
私達は、
迷うこともなく確かめなくてはならない事柄に行きあたりました。
koko さん の
お電話番号もわからなかったので、あのような形になりました。
勿論、なおにそれとなく聞くと言う事も考えました。
筒井さんにお電話をして聞こうかとも思いました。
そうする事はできなかったのです。
二人で、ない知恵をしぼり、なおの大学の名簿でなんとか
koko
さんのお勤め部所がわかりお尋ねいたしました。
この判断が正しいかどうかと言う判断はその時は出来ませんでした。
そして、こうしてお逢いしていただくことになったのですが、
koko
さん。
koko さんは、加賀美さんとおっしゃられるのね。」
「
はい。 加賀美呼子 と申します。
koko は呼ぶ子と書きます。」
「 koko
さんのご実家は? ごめんなさい。
何回も言わせていただいて本当に、失礼を重々わかっているのですよ。
それでも、どうしても教えていただきたいの。」
「
京都です。」
お二人は、顔を見合わせそのまま目線を下に落とすと、
ますます思いこんだご様子が伝わってきた。
その後、しばらく話がとぎれ、このままではと思い
「
あの~ 申し訳ございません。 このような場合どのように
お話をさせていただいていいかわかりません。
しかし、昨夜お会いいたしました時より一夜にして、
何かご様子が違うように感じております。
こうしてお逢いすることもちょくさんに内緒と言う事で
わたくしにあらためてお話が
…
何なりと、ご遠慮なさらないでお話ください。
簡単なお話ではないようにも推測しますが … 」
「
そうですか。 ここさんは呼ぶ子と書いて koko さんなんですね。
もうひとつお尋ねをしていいですか? koko さんのご実家は?
」
「 実家といいますと … 」
「 京都でご両親様やご家族様 … お元気でお過ごしですか?
」
先ほど、私が提案に近いお話をしたことなど上の空で、
このままでは、らちがあかないと察し、
よし、こうなったら、私の個人情報を
…
どちらにしろ、ちょくさんと結婚なんてことになると
いつかは伝えなくてはいけないこだろうしとお茶をひと口いただき、
「
実家は京都で、和菓子のお店を古くからしております。
お店は、祖母 と 母 と 姉
とが、今はしきっております。
お店の方は、すでに結婚しておりまして、姉夫婦が
継ぐことになると思います。」
「
そうですかあ~ お姉さまがあ~ お父様は? 」
「
父はまったくお店とはかかわりなく、
京都の大学に勤めております。」
「 お姉さまはもうご結婚を …
」
おばあさまは、
気がつかれないようにハンカチで涙をぬぐっているように思えた。
私は、すごく疲れを感じている。
「
ごめんなさい。
お話が飛び飛びで … なおの事はご家族様には?」
「
具体的には話した事はありません。
あらためて、話す機会がありませんでした。
聞かれる事もありませんでした。
」
「
そうですかあ~ 」
そうですか~
の 一言のお返事されるたびに重い雰囲気が伝わってくる。
聞かれた事に答えながら、投げやりに答えているように感じだした。
そして、まったく元気がなくなったちょくさんのお母様が
「
koko さん …
筒井さんにさし上げられたチョコレートですが
どちらかでお買いになられたもおですか? 」
私は、大きく溜息をつきたいと思ったが、おさえた。
この方達 私から何が聞きたいのか?
お二人にいったい何があるというのだろ~
しかし、隠す事でもないし、
ここで感情的になり
いい加減になさってください。
何があるのですか?
はっきりおっしゃってください。
と、言いたい心境だが、お二人を見ていると痛々しく、ぐっと抑えた。
私は、私らしくない少し早口で歯切れよく話しだした。
母の知人からのいただき物ですとひと言でもよかったが、
少し私が話すことで場もちするのではと
…
そばにおいていたバックの中からカンケースを取り出した。
そして、テーブルの上におき、ふたをあけた。
「 どうぞ。 よろしければお召し上がりください。 」
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