《 続 》 【 koko の Valentine's Day♪ … 白いページ … 14話
】
直 が
運転する車は、 昨夜とおなじ道路を走ったが
夜中とは違い 渋滞の中をゆっくりと進んだ。
呼子 は、この渋滞が
心の切り替える時間を神様が与えてくれているのだと思った。
車中では、二人の会話はなく重苦しい空気が
…
ふたりが過ごした数時間。
その間、呼子は全くと言っても過言ではない。
直穂子が語った話は脳裏から消えていた。
3人が待つ園田家に近づくにつれ 呼子
は …
すぐそばにいる ちょく も 呼子
の心中は察した。
いくつ目かの信号待ちで、膝に置かれた 呼子 の手を
ちょく の
手が包み込んだ。
ちょくの手の甲にひとしずく 呼子 の涙がはじかれた。
後部の車のクラクションで信号の変わったことが告げられ
発進したが、すぐに方向指示器の合図を出し路肩に車を止め
携帯を取り出した。
実家の園田家の電話番号は指が覚えていた。
「
おまたせいたしました。 園田でございます。」
こおこが電話に出た。
「 …
もしもし、園田でございます。」
「 … ああ~ 僕です。 」
「 なんや~ すなおどすか~ どうしはったん!
まさかこのままアメリカに帰るなんて言うのと違うやろね~
「 今、そちらに向かうところでです。 停滞していて
… 」
ちょくはうまく次の言葉がつながらない。
「
そう。 たいへんどすな~ そしたら、
もうこちらにむこおてくれてはるんどすな~」
「
それが、用事を思い出し済ませたいので少しおくれます。」
「 そうなん? こんなにはように
…?
しかたおへんな~ はよきりあげて おかえりやす。」
ちょくはどう言葉をつけくわえればいいのか迷っていた。
”
じゃ~ ” と言い電話を切るか?
” はい!
” と言えばいいのか?
と、だまっていると、
「そうそう。 呼子 は まだマンションどすかあ~
ゆっくりでいいよなんていうてしまいましたけど、
なんや忙しくなりそうで …
」
ちょくは、すこし迷いながら
「
一緒です。」
呼子 を ちらっとみて答えた。
「
なんや~ そうどすかあ~ 一緒どうかあ~
しかたおへんな~
呼子 ちゃんの事 お願いします。
昨日の今日やさかいに 呼子
もかわそうな思いをさせてしもて …
元気なはずはないやろけど、大丈夫 …? 呼子 … 」
「 ……
と 思います。」
「 なんや。 たよりないな~ あんたがしっかりせんと …
そう~ 余程の事がない限りはあんたや
呼子 の携帯には
連絡入れまへんけど、時間がかかるようでしたら また連絡ちょうだい。
すなお。 koko
ちゃん頼んだよ。
かわそうで、胸が張り裂けそうですわ。」
こおこの声が涙声になった。
すなおの用事というのはカンの鋭いこおこは何かを感じた。
すなおも
「 はあ~ 」 と吐息をひとつつき、
天をあおぎ、涙がこぼれ出るのを …
そして、携帯を 呼子
に差し出した。
携帯からかすかに何を言っているかはっきり聞き取れないが
こおこの声が聞こえた。
そ~っと 呼子 が携帯を耳にあて、
「 もしもし …
」
「 … 呼子 …… 」
こおこは携帯に 呼子
が出ると思わなかったので驚いた。
すぐに、すなお! やるな~ やさしいやん。 と
今、涙したからすさんが、明るく振る舞った。
「 呼子
ちゃん。 すなおとあさはよ~から ドライブどすか~
まあ~ よろしいやろ~
しばらくは、このお姉さまが、しきっておきますさかいに
まかしときなさい。」
と、こおこ節で話し出したが、いつものように長くは続かなかった。
「 呼子
ちゃん。 つらかったね。
大丈夫かあ~
すなおがそばにいてくれたから安心はしていましたけど、
これでも、あんたのお姉ちゃんやさかい
…
一睡もできしませんでしたんよ。
加賀美のおかあさんも、園田のママも口にはせえへんけれど
あんたのことを心配で心配で
…
」
涙声になりあとは聞き取りにくくなった。
こおこは大きく吐息をひとつつき、
「 呼子
。 はよ~ お顔見てせてね。 すなおに変わってくれる。」
結局、 呼子
は 涙するばかりで、ひとことも話さないままに
ちょくに携帯を渡した。
「 すなお。」
「 はい。」
「
おおきに~
こっちのことは、何とかしますさかい、園田のパパには悪いけれど
ちょこっと我慢してもろて、今は、 呼子
のことの方が
大事やからおねがいしますね。
ほんなら、切るよ
…」
そう言って切られた携帯を 直 は、
しばらく眺めていた。
10年前に、こおこが姉と紹介され、その姉が父、光太郎を
” 園田のパパ
” と 呼び
また、自分の事を ” すなお
” と 呼び捨てで呼び、
加賀美のおとう様 加賀美のお母さん。
すなおを長く育ててくれた義母のことを園田のママと呼び
疎遠になりがちな環境をまとめ切った姉こおこ。
自分はと言うと、ものの数日でその場からいや日本から逃げ出した。
そして、今回父の葬儀を済ませ、すべての身の回りを整理し、
アメリカでの永住を考えていた。
その事をつげるべき席で、まさかの流れに
…
携帯をジャケットのポケットに入れ、車を発進させた。
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