《 続 》 【 koko の Valentine's Day♪ … 白いページ … 17話
】
呼子 が キッチンに入ると 光子 が
湯のみ茶碗にお湯をはっていた。
手をとめ 呼子 を 抱きしめた。
「 すなお
に 呼子 を 託したけど、 心配でしんぱいで
一睡もできまへんでした。
少しおおば~かな? 朝方うとうとしたけど
… 」
と、 照れ隠しにおどけて話した。
両肩に手をおき 呼子
の 顔を見ながら、
「 人それぞれ古い記憶は違うやろけど、 私は、 はっきりと
『 光子 の 妹やで
… 』 と言われた3歳の時からず~っ と
呼子 の
記憶は鮮明よ。
しっかり、 私の心のアルバムに刻まれているわ。
私だけではあれしません。
おばあ様 も おじい様 も おかあさん も お父様も
… 」
光子 は 胸をつまらせながら語り始めた。
「 呼子 … 呼子 の お姉ちゃんやで
… 」
また胸に抱きしめた。
しばらく二人して涙していたが、
「
あかんあかん! お茶の用意せんと … 」
早朝、 宅配で京都の実家から届けられた茶菓子を
菓子皿に 光子 が
…
久しぶりに 呼子 の 入れたおいしいお茶が飲みたいと
光子 に 言われ 呼子 お茶を
…
「 それはそうと、 呼子ちゃん 車酔いというてたけどどうしたん!」
呼子 は、 昨夜 直
とのいとなみは話さなかったが
直 に 光子 が 電話を入れたあたりから、光子
に 一部始終話した。
「 そうかあ~ そうやな~ 呼子 ちゃん
。 そうしなさい。
それがいいわ~ そうしなさい!」
と、 光子
が 自分に言い聞かせるかのように
同じ言葉を繰り返しながら言った。
「 やっとわかりました。 すなお
の あのへんな行動。
早くみんなに宣言したかったんやね。
なあ~ 呼子
。 もう、 お仕事ええのと違う。
この際、 もうやめなさい。
そして、 すなお と
一緒に今までの時間を取り戻しなさい。
アメリカか~ いいな~ 私たちも御一行様で行こうかな~
」
二人は顔を見合わせほほ笑んだ。
二階から足音が聞こえ、 光子 が
…
「 あかん あかん! すなお が 降りてきた!
」
そう言って二人は用意されたお茶とお茶菓子をお盆に載せ
廊下に出ると、 直 が
ブラックスーツではなく、
濃紺のよく見ると、
織りが縦じまにおりこまれたスーツに
ノーネクタイで 淡いグレーのシャツに着替え階段を降りてきた。
「
うわ~ 惚れぼれします。 ええ男はんやな~
こんなにいい男はん。 ひとりで日本へ帰った来るなんて、
あちらのお国の女性はどうしてはったんやろね。
そやけどよかったわ。
心配をしてたんどすえ~ あんたが、 所帯持っていて
おつれ連れて帰って気はったらなんてね。
英語の苦手な私が、
英語でご挨拶をなんてね~
あんたは、誰にもなんにも連絡してこないから … 」
光子 の
少しうしろから 直 と 呼子 に
光子 が 時々振り返りながら話し続けた。
客間では、
華子 と 直穂子 が 祭壇の前にすわって話していた。
「 おそおしたな~
」
直穂子 が そう言いながら、 華子 と 席を移動した。
「
久しぶりに 呼子
ちゃんが入れたお茶どすえ~
なんでやろな~ 同じお茶っぱでいれるのに昔から
どこかがちょっとちがうのよね~
すなお は
しあわせものです。
こんなお茶が毎日飲めるのどすえ~ 」
直 は 不思議そうに 光子
の 顔を見た。
華子 と 直穂子 も 顔を見合わせ、 3人の顔を …
ひとときいれ、 光子 が
…
「
さあ~
そしたらお急ぎの方もおられますので、お仕事しましょか?」
と、 言いかけると 直
が
その前にと語りだした。
朝の車中で話した内容を話した。
話し終わり、 少し沈黙が続いたが、
「
ということで、 しゃっしゃと、(はやく) しましょかあ~」
光子
が 仕切りだした。
「 すなお 。 祭壇の横のお盆こっちへ
… 」
と、 座敷テーブルの上を示した。
「
それにしてもすごおすな~ さすが園田のパパさん! 」
大きな3つのお盆に山積みの香典を座敷テーブルの上に置かれた。
そして、 光子
が 箱を並べた。
「 これだけは、 私たちにはできまへん。
華子ママ。 ゆっくりでいいから
…
ああ~ 急ぐ方がおられますなあ~
ちょこっと急いでもらいましょか?
この箱に、
お仕事関係の方とそうでない方をまず分けてもらえますか。
そのあと、 もう少し細かく少し小さな箱の方に分けてね。
これが結構大変なんどすえ~
そのあと、 袋を開けてこちらのお帳面に書き込んでいくんです。
お名前。 住所。
それから覚え書きを書き込んでおく方が便利です。
そうそう、 金額もね。
それは、 手分けして
…
お昼から、 葬儀屋さんも来られます。
その時は、 直
同席するのどすえ~
それから、 今日のお昼と夕食は筒井さんがご用意してくださるそうや。
お言葉にあまえさせていただきました。
それから、 こんなお話は初七日がすんでからどすけど
すなお は、 初七日が済んだらすぐにあちらに帰るというてやさかい、
そやけど、 よけては通れまへんし、これがまた大変で
…
園田のパパさんの遺産相続どすけど … 」
そこまで言いかけたが 母、 直穂子
が
「 光子 。 なんにも今でなくても … 」
「
何言うてますのん。
思いつくことは次々しておかないと、いろいろ次々あるんです。
すなお も
アメリカに帰って、 私も来れるときはできるだけ
来るようにしますけど、 お店のお仕事もあります。
ず~っと、
ご一緒というわけにはいきません。
で
… 遺産相続の件ですけどこれは、おばあ様やおじい様の時と
同じように、 加賀美のお店で顧問をしていただいている
弁護士さんにお願いしたらどうどすかあ~
すなお と
華子ママ が 相続ということになると思いますけど … 」
華子が …
「
光子 ちゃん も 相続者です。
すなお 。 そちらの手続きは、 光子 ちゃんにおまかせしては
… 」
「 お願いいたします。 」
と、 直 が 光子 に
頭をさげた。
「 私どすか~ 私への相続は よろしい 。 」
光子 の
戸籍はそのままにされていた。
「
そしたら弁護士さんにお話ししておきます。
具体的なお話は、49日が終わってからになるでしょうが
こちらの方はこれで、 済みということで
… 」
こんな感じで、 光子
が 思いつくままにメモを取りながら、
てきぱきとすすめられた。
光子 の 指示のもと、 打ち合わせをする 直 と
呼子 の 横で、
華子 と 直穂子 が
振分け作業を始めだした。
インターホンがなった。
光子
が 置時計に目をやった。
「 いや~ もうこんな時間 。 きっと、 筒井さんよ。」
光子
が 席を立つた。