《 続 》 【 koko の
Valentine's Day♪ … 白いページ … 最終話 】
1時間少しかかり、 加賀美家に到着した。
「
はやく~ はやく! みんなで帰ってきたから …
おじい様。 びっくりするよね~ 」
光子 の3姉妹は忙しい両親に代わりいつもそばにいた
祖父母が大好きだった。
特に、 考古学の大学教授を務めあげた祖父の書斎で、
はなされる話は、 3姉妹にしてみれば夢の世界で、 幼き頃、
どうして?
どうしての連発で祖父を困らせたが、気長く、 相手をした。
3姉妹の尊敬する人と聞かれると口をそろえ
おばである 呼子
と 祖父であった。
光子が、 騒ぎ立てる子供たちに 「 先にお行き。 」 と 言ったが
「 どうして? みなでそろっていかなくちゃ~ 」
光子は、
華子 と 直穂子 の足もとに気をつけながら車からおろし、
そのあとに続く 直 と 呼子 を 待ち、
車からおりた 呼子
と 目があい、2~3回うなずき言葉を交わさず、
子供たちのあとに続いた。
横になっているはずの良樹の寝室をのぞいたが姿がなく、
リビング居間、 中庭と最後に書斎を除くと最近は目の方も衰え
ほとんど出はいりしなかった書斎に 良樹 はいた。
「 おじい様。 ただいま
… も~ 心配せんとって!
珍しいね。 書斎やなんて
… 」
探し当てた3姉妹の次女が
…
「 みなさん!
書斎どすえ~ 」
次々書斎へと
…
「
おじい様。 驚いた。 今日はもっとおそなるおもてたでしょ~
おかあはんが、 急にみんなで大移動の提案しはって … 」
長女が得意げに説明を始めた。
良樹は机を背に椅子に座ったまま、
孫たちの話に笑み耳を傾けていたが、
後ろの方から 直 が現れると立ち上がり軽く会釈をし、
直の後ろから 呼子 の姿を目にすると表情が一転した。
光子 が 良樹 の身体を支えながら椅子を遠ざけ書斎机の前に …
そして、 光子はドアのそばに立ちすくんでいた 呼子 のそばに行き
背中に手をまわし 良樹 のもとに …
二人は言葉を交わすことなく 良樹 の老いた胸に …
呼子 を 包み込んだ 良樹 の腕は力強く 呼子 を抱きしめた。
二人は勿論、 光子 直穂子 華子 直 は 涙 した。
その様子を3姉妹 光子 の夫は状況が理解できないまま
みなの様子をきょとんとして見つめていたが、 光子 の長女が
「 どうしはったん。 テレビドラマみたいやね。
おじい様と 呼子 おばちゃま。 涙するぐらい久しぶりなん?
それに、 みんなもどうしはったん?
鬼の眼から
… ごめんなさい! またあとで叱られます。
おかあはんまで
…
そうかあ~ おじい様 呼子 おばちゃまや 直 おじさまが
一緒に帰ってきたから驚きはったんやね。
ほら、 ほら
…
素敵な 直 叔父さまもいっしょに帰った来たんよ。」
と、 他の2人の姉妹が すなお を 良樹 のそばに
…
良樹 は 呼子
を胸元からはなし、 直 の手を取り、 二人は涙で
覆われた眼で見つめあい、 お互いに意味深い会釈を交わした。
京都で床に伏せていた 良樹 には、 光子 から
DNA 親子鑑定の結果は電話で知らせられていた。
「
そうやね。 みんな年をとると感傷的になって
…
鬼の眼からも涙も出ます。 」
と、 いつもの 光子節 で少し場がなごみ、
「
お父さん。 大丈夫どすか? 」
光子 が 良樹 に声をかけながら書斎のソファーに腰をおろさせ、
「
さあさあ~ 大移動2弾! あちらのお部屋に移動しましょ~ 」
夕方に 光太郎 の会が終わり、 3時間余りたち
時計の針は8時を指していた。
あちらのお部屋といった部屋には、 みながゆっくり過ごせる
広さの部屋に、 ここでもすでに
光子 の計らいで
急で悪いけれどと使用人頭(かしら)の力を借り
食べ物 ・
飲み物等が用意されていた。
3姉妹が部屋に入るなり、 口々に …
「
いや~ まるで、 ホテルのプチバイキング会場やね。」
「
も~ なんです。 お行儀の悪い。
私たちだけだったらお茶とお茶菓子程度でよかったのよ。
どうせ、 あんたがたが、 お口をぱくぱく
『
おなかすた。 おなかすいた。
』
と、 言いますやろ~ 休んでいるお店の皆に迷惑かけたんよ。
あらためて、 園田のパパの49日の法要家族だけでしましょ~
」
光子 がそう言いながら、 加賀美家の 八重 と 勝彦
園田の 光太郎 の位牌が設けられた仮の祭壇に置かれた。
大人たちは、 それぞれが好みの飲み物をいただきながら、
光子 の子供たちが主となり場をなごませた。
予定通り 直 は 2日間の滞在でアメリカへ帰ると告げた。
みなの目が冷やかなものとなったが、
1日も早く日本での生活に戻るために、
仕事を片づけるという事で、 何とか皆は納得した。
残りの1日は、 おもに 光子 と 園田家の亡き 光太郎 の
事務的なあと始末の報告等と、華子 の身の振り方が話された。
光太郎 の身の回りの物の整理は 華子 の体調を見ながら
光子 や 光子 の子供たちで整理すること
…
華子 の生活だが、 直 が帰国するまでは、
神戸の園田家でひとりでの生活よりも、
加賀美家で皆と生活した方がと 光子 から提案された。
今までも月のうち半分以上加賀美家で 直穂子 とできることを
無理をしないでお店の手伝いを喜んでしていた。
財産的な部分は、
弁護士にすべて任せる。
とはいえ、 光子 の手により整理されたいろいろな書類に
直は説明を聞きながら目を通すのに、 かなり時間をとられた。
その間、 呼子 は、 良樹 と庭を散歩したり、
もともと口数の少ない二人は、会話もなく
静かに時の流れを共に過ごした。
昼食は、 光子 と 直 は、その場から離れることなく、
おむすび、サンドイッチ、スープ、お味噌汁もカップに入れられ、
簡単に片手でいただけるようにと、 用意され作業を進めた。
良樹 と 呼子 は、 庭先のテーブルで、
良樹 は白粥と鶏肉を中心の野菜料理を
…
呼子 は、 サンドイッチ数切れとスープを
…
華子 と 菜穂子は 良樹 と同じものを 光子 の夫と
お店の役職についている者たちと社長室で昼食を
…
朝、 8時過ぎから開始された 光子 と 直 の 仕事が、
お三時をむかえる頃にはほぼ片付きみなでティータイムとなった。
ひとり
・ ふたりと 光子 の 子供たちが …
「
急いで学校から帰った来たんえ~ ]
と 口々に語りながらその場に加わり華やかさがました。
直 が明日発つ話題になり、 呼子 の 発言に皆を驚かせた。
呼子 の発言に皆を驚かせたのは、1ヶ月半ぶりに帰国し、
皆の思いは
そろってこのまま日本での生活だと思っていたからだった。
教授から鑑定結果表を手渡された時。
冷静にこのまま職場復帰ができる状態ではないことを相談していた。
教授は、 直 から 直 のアメリカでの生活を聞いていたので
教授の提案で、アメリカから定期的なレポート提出し、特例で
長期研究出張という形を推薦してもらい、教授会で承認されていた。
勿論、 簡単に承認されなかったが、
今までの 呼子 の下向きな勤勉努力の成果が評価された。
そのことを、 はじめてこの場で明日、 直 とアメリカへと
報告したものだから、大変なことに
…
このことは、 直 にも話されていなかったというか話す
時間がなかったというのが正しいかもしれない。
チケットは、
直 の同じ便で
用意された。
結局、 直 の仕事の都合が年内には終わらず、
年が明け3月いっぱいまでということになった。
呼子
は、少し心が揺れた。
もし許されるのであれば数年このままの生活でもいいのではと
…
直 にそれとなく提案したが、時遅しで、すでにちょくが
卒業後研修をしていた父の長年務めあげた職場でもあった、
大阪の大学へ4月の中旬、
新学期から助教授の席が決まっていた。
呼子 だけがアメリカに残るとなるとまた離れ離れになる。
直 には、 耐えられないことだと、 猛反対を受けた。
呼子 も何度か 直 にアタックしてみたが、
この件に関しては、首を縦に振らなかった。
・ ・ ・ ・ ・
桜並木を男女がゆっくりした歩調で
…
月明かりに照らされ、 明日にでも開花しそうな
ふっくらしたつぼみの桜の木々に眺められながら、
心の会話を楽しんでいるかのようにゆっくりゆっくりと
…
4キロ、2000本あまりも植えられているという
桜並木を男女がゆっくりした歩調で
…
時折、 顔を見合わせ微笑み
…
加賀美 呼子 園田 直 の それぞれの
白いページに…
…
綴られた ...............
《 完 》
|