番外編 【 koko の Valentine's Day♪ 直呼 (tyoko)
6話 】
ドアを開けると 顔色のすぐれない呼子が出迎えた。
”
ぅん? この匂いは … ”
「 いいにおいでしょ~ なんとか間に合ってよかったわ~ 」
「 何とかって今まで
… 」
「 そうよ。 遅くなるってメールでひと安心したわ。」
「
それはないだろ~ ショックだな~ 」
「
だって、 2時間後なんて間にあわなかったもの~
自分の食べるものは簡単なもので済ませていたし、
時々、 加賀美に母や光子ちゃんがマンションにきた時に
帰ると食事を並べてくれていたのがこんなに大変だなんて
…
こんな時間だけど食べる? 」
「 勿論 。
居残り組の食事の誘いもお茶だけで済ませたんだよ。」
そう言いながらキッチンへ …
テーブルに並べられた食事を見ながら
「 これ全部つくったの~? 呼子が …? 」
「 そうよ
。 だけど今日だけかも?
くたびれちゃった! 主婦失格ね。
仕事の方がず~っと楽だわ。
だから、 クレームはなしよ。
早く着替えて
… 」
着替えに行きかけた 直が振り返り呼子の前でひざまずき
「 ちょこちゃん 。 ただいま
… 」
呼子の腹部を指でつついた。
遅い夕食を済ませ 呼子の所属室長の話になった。
「
呼子の室長のところは4人も子供さんいるんだね。
子供ひとりひとり妊娠初期の症状が違ったらしいよ。
ひどい子のときには、 室長がつわりにになり5キロもやせたらしい~
部屋を出るときに気になることを言っていた。
一夜あけると神秘だなんて
… 何が神秘なんだろ~?
そうだ! 携帯で話していた 悟ったって何をさとったの~ 」
直は、 ワインを飲みながら
「
途中で話終わるから気になって … 」
「
ああ~ そのことね。
ちょくさんを見送り幸せ気分に慕っていたら、
やはり少し気分がすぐれなくなり、 不安で涙まで
…
こんな話し方をするとまた ちょくさんに心配をかけるわね。」
少し、 トーンを下げ恥ずかしそうに
…
「 直さん 。 私たちのベビーちゃんは 多分? 絶対あの時に …
そして、 胎芽(たいが)として7週
。
それから、 胎芽を卒業して胎児に成長して …
妊娠7週ごろに人間の赤ちゃんの姿へと …
今、 ちょこちゃんは胎児になりたてということでしょ~
魚みたいだったエラの部分やしっぽがなくなり、
人間らしい形になって、 頭と胴体に分かれて、 2頭身に
…
これから手と足の区別ができて、 心臓、 肝臓、 腎臓、
胃腸などの臓器もできて、 妊娠7週の末には
脳や脊髄 神経細胞の約80%がつくられて、
脳の神経や目の視神経や耳の聴神経なども
…
胎盤や臍帯のもとになる組織が発達して、
羊水(ようすい)も少しずつたまり始め ちょこちゃんの身体のいろいろな
器官や胎盤など、ちょこちゃんを育てるための胎児付属物ができる
とても大切な時期でしょ~
私の卵子と 直さんの精子が結び付いて1ミリよ。
そこから、 1日 1日
…
室長じゃないけれど、 神秘よね。 」
呼子は、 腹部に目線を
… おなかに手をあてがえ
「
この中で数か月のあいだ。
ちょこちゃんが私たちと対面するその日まで
特に、 今のこの時期 必死で頑張ってくれていると思うと
私のいろいろな症状は、 ちょこちゃんが
”
私は頑張っているよ。
”
と、 この中で戦っていると思うとどれだけ大変だっても
がんばれる~ いや! 頑張らないとね。
そう悟ったのよ。
そう思ったら、 ちょくさん
。 ちょこちゃんに感謝してね。
お買いもの代行の人に買い物を頼んで、直さんの食事頑張れたのよ。
1日中 だらだらして、 ブルーに染まっていたわ。
ねえ~ すご~いでしょ~
こうして、 一歩 一歩 強くしてくれるのよね。」
淡々と話す
呼子は 反対に呼子の横で
直はひと言ひと言に
うなずきながらティシュの箱をかかえ号泣していた。
「
私ね
。 始まったばかりでつわりがどんなものか
よくわからないし、 ひどい方は入院も必要になるらしいわ。
どのような症状でもうけいれるわ。
ねえねえ~ ちょくさん
。 」
と、 涙する直さんのひざをたたき
「
書見によるとね。 つわりってある日に目が覚めると
ほとんどの人が急に終わるんだって …
あれはなんだったの~ って
…
それを読んだときにね。
ちょこちゃんがひと仕事終わる時で、
そのころから私のお中も大きくなってくるのよね。
私の子宮の羊水の中で活発に体を動かして
手足をパタパタ動かしたり、胎動として感じるんでしょ~
とにかく、個人差はあるもののつわりは、8週から10週ぐらいがつらく
ほとんどの人が、 12週から16週で終わるらしいわ。
ようするに、 今から 2~3週間がピークということね。」
理科系の呼子。
理論的に割り切るところがあり、 分析できると
楽天的に物事を処理する傾向にあるのでよかったと直は思った。
「
室長が言ってた神秘というのは、 一夜にしてというのは
そういう意味を含んでいるのかな~
とにかく、 ちょこちゃん! 僕たち二人をよろしくお願いします。」
と、 呼子の腹部に向かって話しかけた。
「
え~ 何かおかしくない?」
と … 呼子が言ったものの
「
そうよね。 しんまいパパとおかあさんをよろしくかな~
きっと、 こお子ちゃんみたいなしっかり者のちょこちゃん誕生よ。」
ふたりは声を上げ笑った。
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