【 I'm loving you. 追憶
】 18話
何時間そうしていたのだろ~
早めに始まった行事は 多分10時過ぎには終わったはずだ。
遠くで彼女の声が聞こえたような
気がした。
誰かが私の身体に触れたのを感じた。
うしろを振り返ると黒いギターケースをさげ肩からもギターかな~?
合成皮ケース? 袋? をさげフラワーショップの彼女が立つていた。
何かあったのですかと聞かれたが多くを語リたくない心境だったので
微笑んでごまかした。
それよりそれは
…
と 指をさし聞いた。
彼女は 「
ああ~ ギターです。
最近 時々こうしてきているのです。」
そうだ! 花のお礼をと思い きり出そうとした時
駐車場に祖父の車が止まっていたはずなのに
こちらには顔を出さなかったかと聞かれた。
聞かれたことに返答しないでお花のお礼を言った。
彼女からこちらこそご迷惑をかけたと断りがあった。
今日は先輩の店に行かれたかと聞くと代わりの者が行ったらしい。
さぞかし先輩は気落ちしただろうと思った。
肩のギターを石柱にあずけ 黒いケースのふたをあけ
ギターを出し彼女のお墓の前に置いた。
私はその光景を不思議そうに眺めていた。
いよいよのどの渇きが我慢できなくなり彼女に断り
車にいつもの荷物を取りに行った。
飲み物と言ってもコーヒーとミネラルウォータしかなかった。
彼女に両方を差し出した。
彼女はコーヒーをとった。
クーラーボックスにはコーヒーまだ2本入っていたが
片方の手に残ったミネラルウォーターを
…
彼女は何か落ちつかない様子できょろきょろしていた。
「 あの~ 花は
…?」
と 聞いた。
私は花の方を指をさした。
どうして? と 言う顔をされたがそれ以上触れなかった。
少し沈黙が続いた。
沈黙している間に感じたのだが
この彼女も一度質問して相手がすぐ答えなかったり
表情に変化を表すとそのことには触れない。
家系なのかそのように教育されたのか今の私には助かった。
私は立てかけられいたギターの弦を指先ではじいた。
彼女と目があいそのギターは旅立った彼女の物で
高校の頃から二人でよく弾きながら歌っていたという。
旅立った彼女はギターも上手だったが
それ以上にピアノが上手でショパンをよくひいていたと話した。
そして、合成皮ケース? に 入ったギターを出しチューニングを
…
何か聞かせてほしいとリクエストした。
戸惑ったいたが1曲歌い終わり
「
悲しい歌でしょ~
この歌 叔母が元気な時よく口ずさんでいたのですよ。
小さなころから聞き慣れていて耳にしたのは1番の
~・~ ☆ ~・~
小さな日記に つづられた
小さな過去の ことでした
私と彼との 過去でした
忘れたはずの 恋でした
~・~・~・~・~・~・~・~・~
何度も繰り返されるその部分だけを聞いていましたので
深く考えないでなんとなくかわいい歌だな~と
叔母の歌い方も影響したのでしょうが奇麗なすきとおる声で
気分のいい時 口ずさむ曲でしたので
…
いとことも私も叔母のように何気なくよく口ずさむようになっていました。
ギターを弾き出し この曲に出会い こんな物語がある悲しい歌詞だと
…。
いつも二人でギター弾くと必ず歌うようになっていました。
いとこが旅立ちギターも弾くことがなかったのですが
最近ふと思いだし、 こうしてギターさげて来るように
…」
声を詰まらせた。
やはり一人で歌うとさみしくて
家ではギターを奏でないし歌うこともないのですが
ここでいとこと一緒に
…
涙をぬぐいながら 「 ごめんなさい …
」
と 言いながらギターを片づけようとした。
私はハンカチを差し出し
歌は苦手だけれどギターは少し弾けるから教えてほしいと言った。
フラワーショップの彼女は驚いたが 彼女が使っていたギターを私に手渡した。
ギターを手渡され抱えた時 号泣しそうになった。
フラワーショップの彼女のギターとチューニングをし
ワンフレーズづつ繰り返し教えてもらった。
さほど難しい曲ではなかったので数十分ほどで弾け
彼女の歌に何度かあわせ そのつど伴奏もアレンジして弾くと
フラワーショップの彼女も驚いていた。
クラシックギター曲のかなり高度な曲まで弾くことができたが話さなかった。
店を閉めていたが身体の調子でも悪かったのかと聞くと
どうしてか頑張りがきかなくて 週明けから今まで通りにと話した。
そうだ。 と 思い携帯を取り出し先輩に…
やはり元気のないぶっきらぼうの声だ。
理由はわかっているが触れだすと話が長くなりそうだので
「
ギターを持って墓地にすぐ来てほしい
」
と だけ話し 切った。
携帯を見て笑みをこぼした。
先輩の驚く顔を思い浮かべながら
先輩が来るのは今の電話で分かっているフラワーショップの彼女も
きっと驚くだろうだろうな~ と 血が騒いだ。
先輩はピアノもそうだが私以上にギターを奏でることができる。
先輩のもっている数本のギターはかなり高価なものだ。
フラワーショップの彼女と彼女が奏でていたというように
私と先輩もよく合奏していた。
ふたりで合奏したのはほとんどクラシック曲が多かった。
少しタンゴの曲なども
…
3-40分で来ることができるだろうが 元気のない先輩だったら
1時間ぐらいはかかるかな~ と 思いながら
しかし今日は特別ば日だと知っている。
報告もしないで私のあの電話のかけ方で
何事かと思いひょっとして飛び出してくるかもしれない。
午前中の私はどこへやら
…
今は一転してわくわくしている。
もともとフラワーショップの彼女も私も 会話が弾む方ではないようだ。
話すこともなくふたりはそれぞれのギターの弦に触れていた。
先輩が来る方向を気にしていたら小さく人影が
…
先輩も近づき 彼女の存在を確認したのだろ~
走り出した。
ギターと何やら荷物を下げているようだ。
先輩がそばまで来るとフラワーショップの彼女に向かって 荒声で!
「
心配したのですよ。
今日店にも来なかったし
…
…… まあ~ 元気そうなので安心しました。」
そう言いっている先輩は うれしそうにも見えた。
私には無事に終わったかと聞き 私はうなずいた。
彼女はその会話に不思議そうにしていたが 話には入ってこなかった。
先輩は最初彼女が祖父と一緒に来たのかと一瞬思ったようで
彼女の様子からそうではないと悟り それ以上触れなかった。
先輩がギターの事を切り出す前に私が先輩に
「
驚いた。 このギター彼女のものだそうだ。
ふたりでよく弾き語りしていたそうで
二人でよく歌っていた歌を聞かせてもらったんだ。」
と 彼女のギターを先輩に渡しかけたが 先輩は押し返し空を見上げた。
先輩の心の声が聞こえたような感じがした。
” そのギターはお前が … 離すな … ” と
…
空を見上げこみあげてくるものをおさめているのだろ~
私はフラワーショップの彼女にもう一度お願できますかと言った。
彼女は照れながらギターを奏でだし少し遅れて私が合わせてひいた。
1番を歌い終わり 先輩がストップをかけた。
多分私と彼女のギターの音が微妙に合っていなかったのだろ~
私も弾きながら気がついていた。
私が気がついたのだから 絶対聴音の持ち主の先輩にとっては
我慢しきれないことかもしれない。
先輩はフラワーショップの彼女のギターを
…
私のギターとチューニングし彼女に渡した。
彼女は不思議そうに眺めている。
先輩も持ってきたギターのチューニングをし
はい。 どうぞと声をかけた。
彼女が体裁悪そうに始めた。
そのあと私が
…
1番が歌い終わる頃 邪魔にならない音で先輩が入ってきた。
彼女はすごく驚いていた。
そのはずだ。
先輩にとってはこの程度の曲は弾きながら即興はお手の物だ。
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