【 I'm loving you. 追憶
】 2話
また、 タバコに火をつけた。
何度も折り鶴を開く度に文字の存在に気がつくのが
遅かったことの無念さが胸を痛めた。
読み終わり握りしめ涙で汚した千代紙は
折り目が分からなく元に戻せないものもある。
千代紙の裏に書かれた文字は
ありがとうの文字からの書き出しだった。
~・~ ☆ ~・~
ありがとう 感謝しています。
どれだけにくんだでしょ~
神様なんてどこにいるの?
どうしてあなたは私を選んだの?
そんな神様も私に罪の意識があったのでしょうか
最後の最後に先生に会わしてくれました。
ありがとございました。
神様
今は感謝してます。
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~・~ ☆ ~・~
ありがと~
今日も先生の肩を借り涙し、
包み込まれた温かい胸でも
…
次にあった時には笑顔でと思いながら
瞳を涙がおおってしまいます。
ごめんなさい。
今まで 涙は
…
私は泣かない。
なかない … なかない … と …
母が旅立った時も
…
病魔が歩み寄り告知された時も …
再度の告知があった時も …
何重もの扉の奥にしまい込み
鍵をかけ封印していました。
先生との出会いで …
この世で流す涙をすべて
…
ごめんなさい。
いつの日にか私を思い出していただいても
いつも涙している私なのでしょうね。
=・=・=・=・=・=・=・=・=・=
私は千代紙に記された文章を読み終わった時
君の素敵なかわいい笑顔 僕はしっかり覚えているよ。
大丈夫と声にならない声で千代紙を握りしめ
震える唇をかみしめた。
~・~ ☆ ~・~
ありがと~
目が覚めた時身体中が熱く
はあ~ また熱が と
…
しかし違った。
そ~っと 鏡をのぞいた。
いつも青白い顔が
…
頬が …
ピンク色に …
夢の中で先生と
…
自分でも驚くぐらいの綺麗な身体だった。
胸ももふっくらと …
I'm
loving you.
…
=・=・=・=・=・=・=・=・=・=
そうか~ ちょっとはずかしいな~
どんな僕だったのかな~?
などと意味不明の言葉で千代紙の文字に語りかけ
床で目が覚めた時は
まわりに数本のワインの空き瓶が転がっていた。
~・~ ☆ ~・~
ありがと~
いつもありがと~
いつものようにお昼前に祖父母がきました。
お互いに随分前から目を合わさなくなっています。
分かっているの。
お互いに目を合わすときっと号泣するにちがいないから
…
いいというのに私が好物だったものを
お昼と夕食用に容器に詰め 持って来てくれるのです。
夕食の分は冷蔵庫に
…
ほとんど手をつけることがありません。
来たら前の日の物を持ち帰り
その日の物を冷蔵庫に入れていってくれます。
そして、 庭で咲いている花をいけかえ 帰っていきます。
そんな祖父母に恩返しもできないまま
…
ごめんね。
=・=・=・=・=・=・=・=・=・=
そんなこと知っていたら
私がぜ~~んぶ食べてやったのになあ~
ああ~ こんなのもあった。
~・~ ☆ ~・~
ありがと~
今日ね 祖父母がきてあのあ目玉の瓶を目にして
祖母が祖父に懐かしいですね。
と、 話していました。
ひとつずつ食べてもいいと聞かれましたが
私は即答でだめといってしまいました。
後ろ姿を見送りながら あげればよかったかな~
と 思いましたがやはりだめ!
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この時 少し違った彼女の一面を見たように感じた。
かわいいと思った。
この文章をその時に読んでいたら、
もっとあ目玉の差し入れをしていたのに
…
そうだ! 他に あ目玉の文章があったな~
この時 驚き 涙で濡れた顔が 笑いに変わった。
~・~ ☆ ~・~
ありがと~
あ目玉が宝石のように見えた。
全部 お皿にあけて並べ眺めていた。
そして、 瓶に収めた。
しばらくして瓶を手に取りまた眺めていたら、
あ目玉が息苦しそうだったのでお皿に出してあげた。
さあ~ おうちに帰ろうねと瓶に入れた。
=・=・=・=・=・=・=・=・=・=
~・~ ☆ ~・~
ありがと~
お皿に並べた赤いイチゴ味のあ目玉を
ごめんねと言いながら口に入れた。
口に入れたあ目玉を口の中でどう扱っていいのか迷った。
口を閉じた。
甘かった。
ざらざらがそのうちつるつるに変わっていった。
このとしではじめて食べた。
チョコレートも大学に入ってから
…
ガムを始めてもらい
くちゃくちゃと口の中で食べている友を
不思議そうに眺めた。
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おばあ様は 私が口にするものは
すべて手作りの物を食べさせたと 話していたな~
~・~ ☆ ~・~
ありがと~
先生があ目玉の思い出話をしてくれました。
私が話すのを聞いていただいてばかりで
こんなに長く お話ははじめてでしたね。
先生ってこうしてお話しされるのだ。 と
…
楽しく とてもおかしく
お話しされている先生が かわいかった。
私ね あ目玉食べるのってはじめてだったから
口の中に唾液がいっぱいになって
私は大人だからよだれは流さなかったけれど
ごくんと飲み込んだときのことおもいだし、
あのままだったらよだれがだらだら状態だったと思うと
パニック状態よく分かりました。
勿論そのあと唾液はあ目玉をなめながら
のぞのおくにすこしずつ
流し込むことが分かりましたよ。
口の中に広がる甘さを含み 唾液は少しずつのどの奥に
…
その甘さが身体中にすごく幸せを満たしてくれました。
幸せをありがと~
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なんだか彼女の表現がおかしくて笑わった。
感性が豊かでまだ少女の部分が多くのこされている人だと思った。
その他にも驚かされることが多かった。
~・~ ☆ ~・~
ありがと~
先生に会うのがつらくなってきました。
でも会いたい。
いつまでもぬくもりを感じていたい。
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文字数も少なくなり
字体もあれだけ奇麗な洗練された文字が
弱弱しく刻まれるようになり
そのうち 鶴おれなかったのと悪そうに涙ぐんだ。
そのころから私は長期休暇をとり
どこか静かなところで彼女と生活を考えだし
仕事の整理をしはじめた矢先の出来事だった。
気がつくと雨が私の身体をずぶぬれにしていた。
席を立ちその場をあとにした。
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