【 I'm loving
you. 追憶
】 21話
祖父が語ったのは孫二人のことだった。
意外な話に先輩と私は祖父の話を聞きいった。
勿論住職はご存じの話だ。
フラワーショップは他界した彼女が夢だった思いが
そのまま形になってできた店だということがわかった。
仕事が休みの日には朝早くから店に出ていたという。
その時の彼女は違った一面を見せたという。
彼女の母は花々が好きで幼き頃から多くを語られ育った。
ふたりでイギリスガーデンの旅をするのが夢だった。
結局母が他界しその夢は叶わなかったが 母と語った話は
他界した彼女とフラワーショップの彼女との間で語り継がれていったらしい。
フラワーショップの彼女の母は自分の娘を医師にするのが夢だった。
そこであけても暮れても塾通いで 病弱な母と他界した彼女を羨ましく
横目で見ながら日々を過ごしていた。
少しの時間があればその仲間に
…
まるで夢の世界にいるようで、
しかし 自分が置かれている環境もいやではなかったと話していた。
孫たち二人は小学校から大学の付属小学校に通っており
他界した彼女の母が他界した後
祖父母のもとで生活はしたが
隣接する母の妹である叔母の家を行き来し
孫の二人は年子の姉妹のように育った。
他界した彼女は今までの生活とは一転し
いとこ同士で塾通いした。
見事医大に合格したが、
幼き頃より医大を目指していたフラワーショップの彼女は
1年後の受験で いい結果ではなく そのままイギリスに留学した。
他界した彼女は夏休み等の長期の休みには彼女のもとへ
…
イギリスではガーデンめぐりをし、もともと他界した彼女の夢でも
あった花への思いは二人して夜を徹して語った。
フラワーショップの彼女が大学を卒業し数年して帰国したのち
他界した彼女が描いた今までの花屋さんのイメージを
脱皮した店を開店し現在に至っていると祖父は語った。
時間の流れを忘れ
気がつくと日が落ちていた。
住職が経を唱えた。
その後本堂へ引き上げお茶をと提案した。
私は彼女のもとへ
次訪れるのはいつになるか知れないと思い少し彼女と…
この場に残りたいと私の意を話し、 後で本堂の方へ行くと告げた。
先輩が時間が時間なので先輩の店で皆で食事をと
…
とりあえず4人はその場をあとにした。
皆を見送った後 折り鶴の箱を出した。
少し眺めていた。
ふたをあけ
…
一枚に火をつけた。
一枚 … また 一枚 …
煙が空に舞い上がり
…
一輪の薔薇の花を彼女に …
何も語らずどれぐらいその場にいただろう?
携帯が振動した。
先輩からだった。
「
まだかかりそうか?
店の方に移動することになった。
どうする。 一緒に行くか?
」
一瞬あとでと思いもしたが
あとで行くのも抵抗があり すぐその場へ行くと告げ
携帯を切った。
なんだか予期しない展開で気が重かった。
また腰を下ろしかけたがそのまま腰があげれなくなりそうで
「
じゃ~ … 」
と、 荷物を持ちその場をはなれた。
立ち止まり先輩の携帯に
…
この数日あまりにもいろいろな出来事が …
今日で最後の日
…
このままあとにする気になれず先輩に
彼女のそばにもう少しいたいからと素直にそのまま言った。
先輩は 『
そうか
』 と いった。
食事も待たなくていい
もしかしたらそのまま帰るかもしれないからと付け加えた。
『
分かった。』 と だけ返答し携帯を切った。
先輩もひとり残した私を気にし 何か話したげだったが
多分そばに祖父達がおられたのだろう。
私は 彼女の元に少し照れながら戻り、 椅子を広げ腰をおろした。
クーラーボックスからコーヒーを出し彼女にはあ目玉を
…
少し沈黙が続いたが、 ギターケースをあけ
「
今日から僕の部屋へお引っ越しだ。」
と言いながらチュウニングをし数曲テンポを落とし、音も抑え奏でた。
穏やかな気持ちでかなり座っていることに気がついた。
その間 ず~っとギターを抱えたままだった。
頭の中も無の状態だった。
ひょっとしてうつらうつらしていたかもしれない。
「
じゃ~ 帰るよ。 」
荷物をまとめバラだけを残し 忘れな草も片づけた。
片付けながら目がしらに異変を感じたかと思ったら
頬に流れだした。
自分でも分からない?
無の涙と言うのはあるのだろうか?
どうして涙が
…
とにかく流れ出てくる。
空を見上げた。
空を見上げたのに
流れ出るものは
…
手のひらで涙をぬぐいその場を離れた。
駐車場の車に荷物をのせ、 運転席のドアを開きかけた時
2台の車が駐車場に入ってきた。
ライトが眩しく わからなかったが
「
今お帰りですか?」
と言う聞き覚えのある声で ライトが消され車から
フラワーショップの彼女は自分の車から
祖父の車から祖父と住職がおりてきた。
私は軽くうなずき頭をさげた。
祖父は私の肩にふれ
…
「 ありがとう
… 」
目線を落とした。
住職は
「 お疲れ様 …
」
おふたりの短い言葉に多くの言葉がこめられた重みを感じた。
その後ろでフラワーショップの彼女と目があったが
語ることなくお互いに頭をさげた。
住職を見送り
そのあと祖父とフラワーショップの彼女の車を見送り
しばらくその場にたたずんでいた。
そのまま帰宅しょうと車を走らせたが
先輩の店の前を通りかけると
先輩が店の前の道路ぎわに立っていた。
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