【 I'm loving you. 追憶
】 3話
すべてを洗い流してくれるかのように毎日よくふった雨
梅雨明けにむかいここ数日は 夏日に
…
このころから毎年のことだが医局に
夏休み希望表と称する物が貼り出される。
夏休み休暇を順番に1週間程度とる。
子供がいる者は学校の夏休みに休暇を合わす為
黙認で皆が了解のもと優先で予定が組みこまれる。
子供がいても大きくなったもの者
その他の者は7月から9月の間振り分けられる。
今まで私には無関係で休みを取ったことがなかった。
このシステムに書き込むのは初めてと思う。
今年は書き込んだ。
皆を驚かせたようだ。
自分でも驚いている。
誰もいない医局で、何気なく貼り出された用紙を眺めていると
この休みを利用して彼女に会いに行こう~ と 思った。
そう思うと思いはすでに彼女のそばに
…
そうだ! 忘れな草を …
手配しなくては …
あ目玉も
…
それから彼女に編んでもらった帽子をかぶっていこう~
ああ~ 今は夏だった。
でも忘れずにもっていこう。
彼女にかぶった姿を見せていなかったから見せなくては
…
そして
…
帰宅してからもそのことばかり考え 寝つくことができなかった。
とうとう夜が明けた。
そのままシャワーをして身支度を
…
早めに出勤した。
皆の夏休みの申し入れの調整をする
医局秘書の来るのを医局で待っていた。
7月の中頃から8月いっぱいは夏休みに合わす希望者が優先で
難しいだろうがその辺りをのぞけば
…
子供のころ遠足の前の日のように胸がときめいた。
医局秘書は皆より少し早めに出勤するはずだ。
「
おはよ~ございます。」
いつもの元気印のふくよかな40歳半ばの秘書がドアをあけた。
誰も部屋にいなくてもこの調子で入ってくると以前聞いていたが迫力があった。
私の存在に気がつき 当直だったのかと聞かれた。
当直ではないとつげ 少し照れながら本題にはいった。
その時の私はなんだか悪病から解放された感じだと表現していた。
夏休みの件と切り出し
できるだけ早してくれないかと申し入れた。
秘書は驚きが隠せない様子だった。
何か感じるものものがあったのだろが
そこは深く入り込まないで分かりましたと一言。
いつも感心するが仕事が仕事だけにそれぞれ個々の
心の動きをさりげなく把握して
さりげない計らいが人として洗練されていた。
大丈夫かな~ と念押しすると
誰をさておいても 「
勿論
」 と 即答してくれた。
そして すぐに 貼り出された夏休み希望表とは別の
最終決定表という表を取り出した。
今日は金曜日。
しあっさての 月曜日からですがいいですか?
と 言いながら1週目に私の名前を書き込んでくれた。
その日 と あくる日の土曜日には
何人もからどうしたのか? どこに行くかとと質問攻めにあった。
仕事の合間に以前世話になったフラワーショップに電話を入れた。
話し出すと声のトーンが変わり 「
ああ~ 忘れな草の方ですね。」
と 明るい声に変わった。
週末だけに仕入れが難しいが 用意してくれると返答してくれた。
あくる日の土曜日の遅い時間に取りに行くことにした。
あ目玉は1か月前ぐらいに母が注文した時に
多く頼んでおいたと袋に入ったものを数袋と
瓶入りの物が2つ置いていったのがある。
彼女の居場所のメモは手帳の中に大切にしまってある。
彼女が旅立ち1ヶ月あまりたった頃
彼女の病室の病棟看護婦長が私を訪ねてきた。
詰所に祖父母がお世話になったと挨拶に来た際
私にも会いお礼を兼ね挨拶がしたいが言葉が見つからず
お礼の手紙を何度も書きかけたが文字が並べられず
その旨を婦長さんの方からと
…
すぐではないがその時がきたら
最終的に彼女がこの場所にという所在地だけが書き込めれた
用紙が入った白い封筒を預かったと届けてくれた。
土曜日 午前中の仕事のはずがやはり帰りは7時すぎになった。
フラワーショップは8時で閉店しているが
9時頃まであとかたづけ等で店にいる
と いっていただいていたので急いで車を走らせた。
店の前に設けられた店専用の駐車場に車を停め
駐車場についたと携帯から連絡を入れた。
可愛くまとめてくれていた。
帰り際に 取りに来るのは日没以後になるが
毎日 金曜日までお願いしたいと申し入れた。
えっ! と 小さな声が耳に入った。
このオーナーで店がやっていけているのかな~と思うぐらい
くち数も少なく 愛想うもよくない。
しかし私にとっては気が楽だ。
量は多くてもいいし、 なければ一輪でもとにかく金曜日までとお願いした。
そして土曜日は真紅のバラを1本
…
休みの最後に彼女のところに行く日曜日には
彼女が好きな忘れな草ではなく真紅の薔薇を彼女に渡しかった。
そして 私に残してくれたあの言葉を
今度は彼女に私から
…
ご用意させていただきますとメモをとった。
あまり早く行くと彼女が寝ているかもしれないと
考えている自分がおかしく気がつくと笑みがこぼれていた。
ショルダーバッグに思い浮かぶものを次々詰めた。
寝かけたが、以前医局の忘年会の抽選会で
軽量で折りたたみの椅子が
当たったことを思い出し、その椅子も持っていこ~
また寝かけると脱水症状になっては1週間彼女のところへ行けなくなる。
確かそれもビンゴーゲームか何かでもらったのがあったはずだ。
小さなクーラーボックスを探した。
箱をあけることもなくそのまましまいこんでいたが
一件クラーボックスには見えないおしゃれなつくりになっていた。
500ccぐらいのペットボトルだと4-5本ははいるだろ~
冷蔵庫をあけ ミネラルウォーター それにあまり飲まないが
随分前に買い置きしていた缶コーヒーや炭酸飲料等を
クーラーボックに入れたり出したりしていたが元に戻し
ボックスもテーブルの上に置き よし、 出かける前に詰めようと
寝室に引き上げかけたが 後ろを振り返り
テーブルの上のクーラーバックスを眺めた。
足もとに目線を落とし そんな自分に苦笑しながら
今は開業した、宴会担当を一手に引き受けてくれた彼の顔を久しく思い浮かべた。
しかし、景品はアウトドアに凝っていた彼のらしく
アウトドア関連グッズが多く非難されていたが、
口癖でいつか日常生活でも必要な時が来ると言っていたが
今の私にはありがたかった。
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