【 I'm loving you. 追憶 】 6話
ひと回りもふた回りも大きく感じさせる友であるオーナー
月日の時間(とき)の流れが人を変えるというが
歳の差は私より2歳年上だ。
私は医学部でオーナーは法学部。
それぞれの実家が同じ方向にあり
通学時帰宅時に時折顔を合わせ
大学構内で出会った時から話すようになったという
平凡な出会いから今に至っている。
会う時には今回のように毎日会うこともあるし、
今回の出会いの前のように2-3年も間があく時もある。
会えば期間とは関係なく若き日の2人に戻してくれる。
感性や価値観はよく似ているが専攻分野からでも
わかるように理系と文系 お互いから学ぶところが多かった。
二人とも兄弟のいないせいもあるだろう。
私は先輩を兄のように思い、先輩も弟を思いやるかのように
何かとそれとはなしの気遣いがうれしかった。
たわいもない話をしながら
店内の巡視をする先輩の後ろをついて歩いた。
灯りを落とし、 奥のカウンターで手早くおつまみが盛りつけられた
お皿を前にグラスを交わした。
しばらく沈黙の後、 先輩が
「 なんとか元気にやっていけそうか?
」
軽く2-3回首を縦にうなづき、
「 まあな~
」
多分 大まかな話は耳には入っているのだろう。
「
そうか? それはよかった。」
それぞれワインの手助けもあり
お互いにいつもより口数が多いように思うが
それでも話は静かなゆっくりした流れで進んだ。
夏休みをとり、昨日 今日の行動の話をした。
話の途中何度となく私の顔をのぞきこみ笑みをこぼした。
「
そうか! 」
またも沈黙が続き
「
そうか~ よし。 明日から食事の用意をしてやる。
行く時はここに寄れ。 いいな~ お弁当を作っておいてやる。
帰りはここで食べて帰れ。」
お顔を見合わせ お互いに苦笑した。
しばらくして
「
わるかったな~ 急におしかけて …
そろそろ帰るとするか?」
「
そうか。 明日もがんばれよ。」
明日も頑張れよの言葉がなんとなくおかしく
先輩も口から出たものの自分でもおかしかったのだろ~
顔を見合わせそのあと笑った。
タクシーを呼ぶかと聞かれたが
少し歩き適当なところで拾うと言い残し店を出た。
多分私の後ろ姿が見えなくなるまで見送っているだろうから
少し歩いた所で振り向かないで片手を上げた。
帰りついてから昨夜とは違い おなかも満たされ
酔いがさめたといってもまだほろよ気分だ。
部屋はきれいに片づけられ洗濯物も届けられていた。
昨日と大きく違ったのは本をひろげる時間もなく
持っていった飲み物もコーヒー1本だけ口に
…
あとはクーラーボックスから取り出し冷蔵庫に戻した。
勿論カメラは使わなかった。
携帯の着信音が
…
先輩からだった。
「 どこだ! ついたか? 」
「
今日はありがと~ ついた。」
「 明日は何時出だ。 車なかったら不便だろ~
朝 とどけてやる。」
少し考え込んだ。
忙しく日々を送っている事を知っている。
気の毒に思ったからである。
しかし、遠慮しても結局押し切られるに違いないことは予測でした。
明日は久しぶりに電車を使い早く出ようと帰宅途中考えていた。
そのままその時間帯をつげるには気がひけ
思っていた時刻より遅く 9時ぐらいと答えた。
じゃ~ それまでには届けると電話が切られた。
携帯電話をながめ苦笑した。
昨日、今日の行動は話したが
いつの日かは話すことになるだろうが
今日の会話では彼女のことの詳細は話さなかったが
気持ちがほぐれた感じがした。
浴室に行き今日はお湯につかりたい気分になり お湯をはった。
その場を離れることなくお湯がためられていくのを何気なく眺めていた。
浴槽の半分ぐらいお湯がたっした時、
その場で衣類を脱ぎだし ドアから隣接する洗面ルームに
放り投げ かけ湯をして浴槽に身を沈めた。
気持ちがよかった。
少しうとうとしかけ睡魔と闘いながら
このままではと思い洗髪し身体を
…
目覚ましを合わしベットに
…
すぐに睡魔と手を結び覚醒まで1度も目を覚ますことなく熟睡した。
久ぶりも久しぶり。
昨夜に引き続き睡眠がこんなに心地よいものだったんだと思った。
まだこのままでいたかったが先輩からの電話を思い出し、
シャワー室に
…
身支度を整えコーヒー豆をひき たてた。
部屋中にいい香りがした。
マグカップに注ぎかけると携帯の着信音が
…
地下の駐車場についたと連絡が入った。
エレベーターの前まで出迎えた。
大学の卒業と同時に不規則な時間帯の職業に
家族を巻き沿いにするわけにもいかず住まいを別にした。
その後 このマンションの情報を仕入れた先輩が
自分が理想とするマンションを見つけたという話に花がさき
結局 私がここに移り住むようになった。
先輩はレストランの上階に住まいを設けている。
先輩は部屋に入るなり
「
どうだ! 住み心地は …?
」
リビングへコーヒーを運ぶとテーブルにサンドイッチが置かれていた。
一緒に食べようと作ってきてくれた。
このあたりも相変わらず気を使わせたようだ。
朝から男二人で絵にならないという会話をしながら
最初は朝からこの量は多いのではと思っていたが
二人しておいしくたいらげた。
朝はサンドイッチだからとお昼はお弁当にしたと手渡された。
届けられた車に乗り込みレストランの前で先輩をおろし
彼女のもとへ
…
1日目と同様の行動で過ごした。
帰りには営業時間内にフラワーショップに立ち寄り
その後 先輩の店に立ち寄り今朝のこともありお礼を兼ね
レストラン閉店時を待ち 先日立ち寄ったお寿司屋に招待した。
おすし屋のオーナーも先輩はよく知っていて
閉店後 3人で昨夜より少し多めのお酒が入り
車は代行業者に依頼して届けてもらった。
夏休みも4日目となり先輩に朝よるようにといわれていたが
早い時間帯だったので 店の前を素通りし彼女のもとに
…
お天気もよく読んでおきたかった本も半分以上読みすすみ
席を立ち景色を眺めカメラを持ってきていたことに気がつき
シャッターを押していると、 後方から声がかかった。
振り返ると先輩が立っていた。
「
手間のかかるやつだなあ~
ほれ! 忘れ物。」
と、 紙袋を手渡された。
先日話はしていたとはいえ、 少し動揺している自分に気がつき
落ちつかなかった。
先輩は無言のまましばらくたたずんでいた。
大きく溜息をしたように感じた。
手を合わししばらくその場を動かなかった。
私も気がつかないふりをしていたが 涙をぬぐっているようにも思えた。
数日後 珍しく酔った先輩がこの日のことを
耳を澄まさないと聞きとれないBGM
いろいろおかれていた物を目にした時
私がどんな思いでと思うとたまらなかったと語った。
「
ああ~ 邪魔者は退散するか! 」
と
言い残し帰っていった。
しばらくして遅めのお昼を食べていると人の気配がした。
どうもこちらに向かってくるようだったので
手早く片付け近寄ってくる人を眺めていた。
黒い衣に身をまとった者と男女の年配者が
…
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