【 ドンヒョク 鬼のかく乱! はじめての病気 …
】 1話
あれから 2週間…
鬼の か・く・ら・ん?
なにが 鬼のかく乱だ!
もの心がつき 遠い記憶をさかのぼっても
病魔との闘いを経験した事がない。
私は 不覚にもこの病魔に数日間振り回され 仕事に復帰した今も
レオとテジュンは 鬼の首を取ったかのように何につけ私を話題に
あげくの果てには 「
鬼のかく乱
」 などといい 日を増すごとに
二人は楽しそうだが この私としては面白くない日々を過ごしている。
2週間前のこと。
いつもと違った目覚め。
なかなか起き上がれない
…
” どうしたんだ! ドンヒョク!
”
自分自身に問いかける。
昨夜は数日ぶりに日が変わる前に帰宅出来た。
ジニョンも客室でトラブルがあったらしく少し前に帰宅したところだった。
少しご機嫌斜めのジニョンは
チョコパイを口にほおばりながら出迎えてくれた。
口のチョコパイがなくなるのを待ちチョコ味の口づけを
…
おそいから二人でシャワールームにという私の申し入れは
もうひとつ食べてから と
…
この調子だともうひとつどころか箱におさめられたチョコパイが
ジニョンの胃袋へ移動するまで少しかかりそうだと判断した。
このシン
・ ドンヒョクがチョコパイに負け 苦笑しながら
シャワールームへ
…
ジニョンが寝室にバスロープ姿で現れた時間は誤算だった。
多分チョコパイの食べる時間はたっぷりかけ
シャワーは 浴びる程度で出てきたのは明白である。
その後 どちらともなく いろいろ…?
たわむれ事のあとそのまま一糸まとわず 眠りの園へ…
一夜明け 目覚めた。
いつもなら どれだけおそく就寝しても 6時には起床…
6時15分には前日用意しておいた
トレーニングウェアーに着替えジョギングへ
…
だが 今朝はどうしたことか 6時前には目が覚めたものの
意に反し まったく自分の身体が思うようにならない。
考えられない事である。
多分はじめての経験だ。
戸惑っている自分がいる。
ジニョンを起こさないように 昨夜脱ぎ捨てた
バスロープに袖をとおし 何とか リビングのソファーにたどりつく
…
「 ぼく ぷーちゃん… 僕 プーちゃん…
ぼ~~く ぷ~~ちゃんだよ~~
」
結婚して 最初に驚かされたのが この叫びだ。
お互いに互いを求め合い …
愛し合い …
そしてお互いの存在感を確かめ合い …
感じ合い
…
言い知れない満足感にしたり 夢園へ …
そして 心地よい目覚めのはずが
…
聞きなれない? けたたましい! 私には 騒音にしか取れない
” ぼく! ぷ~ちゃん ”
・・・
? ??? ? ・・・
ジニョン愛用の目覚まし時計などと思ってもいない私は
何事が起きたかとジニョンを揺り起こす
…
半覚醒状態で 横目で ジロッ! と 私の顔をしばらく見つめながら
ジニョンは 「
ああ~ スイッチOFFになっていなかったのね。」
私の方からは死角になる位置を手探りで黄色い物体を手に取り
「
ぼく ぷ~ちゃ … 」 の騒音がジニョンの手で退治された。
「
これ かわいいでしょう♪~ はじめてのお給料で買ったのよ。
まだ ご機嫌でよく働いてくれるの… 」
そこではじめて黄色い物体がジニョン愛用の目覚まし時計で
”
ぷー ” と叫び
ジニョンを現実の世界へ誘導する大きな役わりを
果たしてくれているようだ。
なんと! この私より先に生活を共にしていたのである。
ジニョンは 私 と 生活を共にするようになり
そばに私がいる限りは めざまし時計は不要と思っている。
早出の時は勿論私が
…
遅出という出勤の時にも必ず私は電話を入れているが、
どうもその時に世話になっているようだ …
この私としては それ以後1年7ヶ月… 月日は流れたが
この黄色い物体に一度も世話になっていない。
ジニョンは 「
ここにおいて置くからドンヒョクさんもつかっていいよ。 」
私は一言 「 ありがとう …
」
内心 心にもなく ” ありがとう ” なんて!
自分で自分をほめてやりたかった。
この ” ぷ~
” たる物体にも嫉妬をしているに違いない
自分がありがとうなんてご褒美ものだ。
存在も忘れていた。
しかし、 この時は一転した。
2週間前 この ”
プー ” たる名前の物体に私は願いを託した。
お願いだ
… もっと頑張ってくれ! 僕のもとにジニョンを…
ジニョンの深い眠りから目を覚まさせてここへ…
と 願った。
ジニョンは この日の朝は
僕がジョギングに出かけ帰って来る頃には
起きておこうと
この 「 僕 ぷーちゃん
」 たる物体の世話になろうとしたのだろう?
ソファに やっとの思いで浅く腰をおろし
両膝に 両肘をおき手を組み
頭をうな垂れ 心拍は早く 呼吸は浅く
…
やっと 座っているという状態で
あの 「 僕 ぷーちゃん … 」 の連呼
…
私は ささやかな願いを この … ぷーちゃんに …
「 ぼく! ぷーちゃん!
」 の 叫びが止められ 静かに
よしこれで ジニョンが起きるんだ。
起きてきてくれると思ったが
「
ぼく ぷーちゃん
」 は 静かになった。
何の動きもない。
どうしてなんだ?
OFFにスイッチを切りかえない限り 頭のボタンを押すだけでは
5分ごとに繰り返される と ジニョンが得意げに
黄色い物体の説明をしたのを思い出した。
じゃ! お前にまた頑張ってもらうのは 5分待たなければならないというのか?
この時 5分と言う時の流れが こんなに長く空しいものとは
…
そして 再びかすかに
「 ぼく! ぷーちゃん … 僕! プーちゃん …
」
最初は小さくやさしく … だんだん大きく …
ぼく! ぷ~~~ちゃん! の 連呼
…
” そうだ! 頑張ってくれよ! 今度こそ!
”
ジニヨンの声が聞こえた。
「 もう 元気なのはいいけれど ちょっと! うるさいのよねえ~
」
” よしよし! これで … ”
エッ! またまた? 静かに … 何の動きもない
。
私の方は もう限界だ! 心拍は早く・・・
呼吸は浅く 酸素を取り入れるのがうまくいかない。
ああ~~このまま死を
… 誰にも看取られるずに …
このまま片道の旅立ちに
…?
死んでいくと言うのは こんなに簡単なのか?
” もうだめだ!
”
すると 寝室のドアが 「 カチャッ・・ 」 と 開く
…
頭を持ち上げる事もできない。
声を出す事すらおっくうに
…
頭蓋の中に大きな石が
…
今にも身体が 爆発してもおかしくないぐらい熱い。
身体は意思とは 関係なく ぶるぶるとふるえだし 異状にに寒い
…
頭を動かすと割れそうに痛み
頭をさげたまま 少し頭を横に目を少し開くと
…
ジニョンの足元が見えた。
” 朝からお酒でも飲んだのかい!
”
ジニョンの足は 千鳥足状態で あっちにふらふら … こっちに
…
多分 目が覚めていないんだろう。
浴室に直行して 目覚めのシャワーをしようと移動中のジニョン
…
” ジニョン! 僕! 僕 ドンヒョクは … ここに … ”
心で叫ぶ … 気がつかない
… ああ~~~ と思った瞬間 …
ジニョンは 方向を変えないで バツク!
「
いやあだあ~ ドンヒョクさん! びっくりさせないでよ。
そんなカッコで
… 走りにいかなかったの? 」
ベットからここへ やっとの思いでたどりつき
とても着替えができるという状態ではなかった。
生まれたままの姿で目覚め
そばにあったバスロープに袖を通すのがやっとだった。
ジニョンは 僕の前にすこし足を広げて立った。
君のバスロープは 膝上
… 10センチ???
いや20センチ … ぐらいの位置から 前が 逆 ヴィ に開いている …
白く
… 生々しい引き締まった細い足が
…
目の前に!
でも! 今の僕は そんなジニョンにも反応しない。
いつもなら 君の元気印の声は僕の宝もなんだが
今は ” お願いだ! お願いだから・・・
その宝物の声 ボリュームのスイッチを少しでいい
ほんの少しでいいから下げてくれないかなあ~ ”
と 心で叫ぶ!
尚も 「
おはよう♪~ ドンヒョクさん! どうしたの
おはよう♪~ ねえ~ おは??? 」
やっと いつもと違う私に気がつたらしい
…
私は 浅くソファーに坐り 両膝に両腕を
そして 頭を垂れている姿を 私の前に膝をつき 私を覗き込み
「
ドンヒョクさん! あなたどうしたの? 」
元気印の声がより大きい音量に 私は心の中で悲鳴をあげた。
”
お願いだ~ スイッチを ボリュームのスイッチを 下げてくれ~! ”
ますます君は叫びだす。
「
ドンヒョクさん! 病気なの? 」
”
えっ! 病気? この私が病気?
このシン・ドンヒョクが病気と言うのか? ”
今まで 弱音を押しつぶし ピンピンに張り詰め
多分これに近い事があったかも知れないが
全てを押し込んできたんだろう。
なんということだ!
人と目が合えば 笑みを浮かべ挨拶もする いや! 出来るように
…
気に入らないからと 怒鳴る事も殆どなくなり
要点のみの会話ではなく 余分ごとも はさみながら会話も少しは
人並みに
… その他にも …
すると
… 病気の方が歩み寄ってきたと言うのか?
ジニヨンが 尚も叫びながら 両手で頬を 額に手を・・・
ああ~ 気持ちがいい
… 冷たさが心地良い …
「 すごい熱! 大丈夫? 」
”
熱があると言うのか? ”
今度は 両手で僕の両肩に …
そして! 揺らしだす。
同時に頭も揺れる …
「 ねえ~ 大丈夫? 大丈夫よねえ~?
」
” ジニョン! 大丈夫じゃないみたいだ
…
揺らさないでくれないか!
揺らすと頭が割れそうなんだ!
爆発しそうなんだ! 頭が痛いんだ!
僕を殺す気かい
… そんなに 揺らすとつらいんだ。
頭が割れそうなんだ! 揺らさないでくれ
…
その肩の手を離してくれないかな~ ”
その叫びが届いたのか? いや違うようだ!
ジニョンは急に肩に置かれた手を離し 受話器を持ち
誰かに電話をかける。
やはり! 叫ぶ!
「 すぐに来て
… ドンヒョクさんが 死んでしまう!」
泣き声で訴えている。
すぐに受話器を置き また 私の両肩にジニョンの両手が
…
「 ねえ~ お願い
… 何か言って! 」
大声で叫びながら なおも揺らす。
「 ねえ~ どうしたらいいの
… どうして欲しいの … 大丈夫 ? 」
多分 こんな時には 一言
「 大丈夫だよ …
」
と 言えば ジニョンは安心するのだろうが
........... 今の私は
..............
” ジニョン僕は … 僕の … 今の願いは
… ”
.............. 意識がだんだん遠ざかっていく
.............
この時 私は自分の心に強く誓いを立てた。
この人と一生共に生き抜くためには ただ
・ ただ
元気でいなくては と …
この元気印のパワー も
…
お腹のそこからの発声のいきとどいた声も …
ビタミン愛も
…
元気でなければ …
ソ ・ ジニョンは 受け止められない
…
この病気と称するやっかいなものに 犯された時 …
ソ ・
ジニョンを 僕は 残念だが 受け止める事はできない。
” 神様! このままでは
…
さほど時間がかからないで あなたのおそばに …
この場において神様に一言
…
この私が 何をしたと言うのでしょう …
あまりにもこの拷問はひどいのでは
…
この世でただ一人 …
最も愛する女神の手で …
僕は 今 破壊されようと
…
あなたのお気持ちひとつで 何とか救いの道へ
と 言うわけには・・・ ”
願い事は言ってみるものだ。
チャイムが遠ざかる意識に中で
…
ジニョンの両手が 僕の両肩から離れた …
............. 神は ..............
................ いたのだ ?
...............