1話 【 四月の雪 を ドンヒョク と … 】
午後 4時30分をまわろうとしている。
今日は 事無く ゆっくりとした時の流れの中で仕事を終えた
ソ支配人。
ロッカールームのドアを開け中に入ると スンジョンが制服姿で
壁にもたれ手に何やら紙のような物をひらひらと
…
「 先輩! 」 反応がなく いつもの元気がない? 少し大きな声で!
「 先輩!
」 スンジョンはジニョンの声に驚いた。
「 何よ。 驚かさないでよ! 」
「
どうかしたの? 何だか元気がないようだけれど?
それにしても こんな時間にここで何をしているの? 」
「 そうなの
。 そうなのよね~ 」
ジニョンの携帯の着信音が
…
ドンヒョクからの着信音で笑顔で携帯に出た。
「 ジニョン! 仕事終わった。 今どこ?
」
「 ロッカールームよ 」
「
切りのいいところで仕事が終わりそうだから迎えに行くよ。
食事には少し早いから
久しぶりにドライブしてそれから外で食事しょ~
」
「 じゃ~ 着替えて待っているわ。 」
「 着いたら電話するよ。
」
この時間帯に 仕事の切りがいいはずがない。
二人は もう一週間もすれ違いの生活が続いている。
ドンヒョクは限界に達していた。
急に退社すると言い出した時
レオから さんざん嫌味も 皮肉も 脅かしに近い言葉も
…
ドンヒョクは ジニョンとのすれ違いの限界が解消されるのであれば
レオのこんないやがらせなど 上の空で さっさとレオの前を通り過ぎ
振り返ることもなく 軽く手を振り部屋をあとにした。
そんなドンヒョクの後姿を見送りながら レオは 内心ここまで
良くぞ変えてくれた と ジニョンに 感謝の念にかられていた。
ジニョンは ドンヒョクと話しながらスンジョンを見ていた。
いつもならこのような状況の時には 必ずと言っていいぐらい
冷やかしや いたずらを仕掛けてくる。
何だか様子がおかしい
…
「 先輩どうしたんですか? 」
「 理事からでしょう。 いいわね。
」
「
いいわねって 先輩らしくないわ。
少しなら時間があるから話聞いてあげるわ。
何かあったのでしょう。
それよりさっき 聞きそびれたけれど
どうしてこんな時間にここにいるの~
」
「
そうなのよ。 そうだ! これあげるわ。
映画のチケットよ。 プレミヤ席よ。
やっとの思いで 手に入れて今日ダーリンと行くはずだったの。
数週間前から この日の為に ダーリンのお母様にヨイショして
今日朝からおちびを預けて、
明日の夕方に迎えに行くはずだったのよ。
映画を観て それから 食事をして そして
…
ああ~~~ 天国から地獄よ。
おちびさ~ なんとお昼ご飯も食べないし
どうも様子がおかしいと思って義母が熱をはかったら
38度もあるって連絡があったの。
1年 365日もあるのに何も今日 熱を出さなくても。
今 ダーリンが迎えに行っているわ。
社長が今日は暇だから
私にも少し早いけれど帰ってやれって
… 」
「 じゃ 早く着替えて帰らないと ? 」
「 そうね。 はい! これ!
」
ジニョンに映画のチケットを渡す。
「 いいの~ 」
「
行けないんだから仕方ないでしょう。 理事 お迎えなんでしょう。
理事と行けば 。 覚悟していきなさいよ。 」
「
覚悟? どうして!」
「 どうして! ハンカチ いやタオルがビチャビチャになるぐらい
涙が出るんだから
… 不倫 不倫よ。 」
「 えっ! あのチケット! 今日封切りでしょう。 」
「
そうよ~ 7時30分からの分だから十分まにあうでしょう。
何よ嬉しそうに … 」
「
だって! 映画なんて久しぶりだし
この映画はチケット取れないって聞いていたから もう諦めていたのよ。
まさか 封切の日に観れるなんて! おちびちゃんに感謝だわ。
」
「 何よ うちの子の病気喜んだりして! 」
「 ごめんなさい!
」
「 いいわよ。 さあ、着替えるとするわ。
チケットの嫁入り先も決まった事だし …
」
ジ二ョンの携帯の着信音が …
「
ドンヒョクさんからよ。
ハイ! ああ~ まだ ロッカールームにいるの。
あっ! まだ着替えていなかったわ。 ごめんなさい
」
ドンヒョクは苦笑しながら …
「 いつもの所で待っているから …
」
「 わかった。 急ぐわね。」
「
急がなくていいよ。」
と ドンヒョクは言いかけたが ジニョンの事 大切なこのひと時が
…
すぐにつけ加えた。
「
でも 少し急いでもらった方がいいかなあ~
早くジニョンの顔が見たいから …
」
ジニョンは少し顔のほてりを感じながら
「 うん! 何処にも行かないで 待っててね
。」
言葉とは裏腹に愛想なく ” プッン!
” と きれた。
ドンヒョクはジニョンのひとこと!
” 何処にも行かないで 待っててね
。”
心に直球で打ち込まれたのもつかの間 携帯からの
” ツ~ ” と いう音を耳にしながら
笑みがこぼれる自分に照れを感じ タバコに火をつけた。
ロッカールームでは スンジョンが
「
何よ! ” 何処へも行かないで … ”
ああ~~
… 映画のチケットあげたくなくなったわ。
気が変わらないうちに早く行って …
」
いつものスンジョン先輩に少し戻ったかな~ とおもいつつ
「
行かせていただきま~す。 お子ちゃま お大事に … 」
「
ちゃんと この穴埋めしなさいよ!」
ドンヒョクは ジニョンの姿を見つけると車から出て
助手席のドアを
…
「 お疲れ様 」
「 ドンヒョク も …
」 と 言い
ジニョンからいつもとは逆にドンヒョクに軽く口づけを
…
ドンヒョクは ジニョンの予期しない行動に驚きながら満足げに
ドアを閉め運転席に
…
ジニョンの肩を引き寄せ 「 お返し 」 と 唇を重ねた。
「 ジニョン どうしたの? ご機嫌だね
。
僕のお迎え そんなにうれしい~ 」
「 勿論嬉しいけれど … 」
”
勿論? けれど? ”
ドンヒョクはジニョンの言葉に動揺した。
「
ね~ ドライブは今度にして 軽く食事して これこれ …
」
ロッカーで スンジョンにもらったチケットをドンヒョクにみせる。
「
何? ああ~ 映画のチケット 。
そんなこと 電話の時には言っていなかったでしょう。」
「
そう。 そうなの。 ロッカーにスンジョン先輩がいて
今日封切りのこの映画に総支配人と行くつもりが
おちびちゃんが熱出して行けなくなったからいただいたの。
この映画 今日が封切で
とても人気があってなかなか取れないチケットなのよ。
まさか 封切の日に観る事が出来るなんて!
」
ドンヒョクはジニョンが機関銃のごとく いつ息継ぎをするのだろうと
自分自身が息苦しくなるのを感じながら 軽く縦に首を振り
”
なんだ! そういうことか。 てっきり … ”
苦笑しながらエンジンをかけた。
「
ねえ。 一緒に行ってくれるでしょう 」
「 で お食事の方はどうなさいますか? 」
「
開映時間まで 2時間ぐらいはあるけれど
イタリア料理とか? フランス料理のコースはダメだと思うわ。
ねえ バーガーにしましょうよ。
あれだと まとめて栄養が取れるでしょう。
パンでしょう。 お野菜がいろいろ。 ハンバーグ
… お肉でしょ~
ほら この映画上映する映画館 この間ドンヒョクさんが
探して来てくれたあの体裁のいいバーガー屋さん
近くでしょう。 そこにしましょう。
」
興奮冷めやらずのジニョン!
「 バーガーでお決まりのようですねえ。 姫 …
」
ドンヒョクはかなり無理をして時間のやりくりをした。
それだけに 有意義に二人だけの時間を ゆっくり過ごしたかった。
急な 想定外の時の流れに異議申し立てをしたいような
気持ちにかられていたが ジニョンの 異様な興奮状態の
押せ押せムードに まったく入るすきなどなかった。
店に向かう道中もず~っと ご機嫌で話し続けるジニョン。
映画館の駐車場に車をあずけ 3分ぐらい歩くと店についた。
以前きた時は開店したばかりで予約なしではいれた。
最近は全席予約が必要となっていた。
ジニョンの ”
はあ~ ” の 溜息が一段と力が入った。
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