最終話 【 四月の雪 を ドンヒョク と … 】
電話の呼び出し音が鳴り響いた。
ドンヒョクはいつも聞きなれているこの音にも 反応し
頭を抱え また寝返りし 膝をまげ 海老状態に
…
「 電話のそばにいるのだから出てくれればいいのに …
」
ジニョンはソファーに横たえるドンヒョクを横目に 受話器を取った。
「
おはようございます。 ジニョンさん! 」
「 ハイ! レオさん 。 おはようございます。 」
「
昨日 早く退社する代わりに
今日は 1時間早く出勤することになっていたんだが
…
こんな事 はじめてでボスまだ出社していないんだ!
ジニョンさんが心配するといけないから
今まで様子見ていたが何もないとは思うけど 心配になって!
それでボス何時ごろ出かけましたか?
」
と、 ジニョンが話す間もなくレオは早口で立て続けにしゃべった。
ジニョンが話そうとするとまた レオが
…
「 それで まさか? まだ家にいるなんてことないですよね~ 」
「
ごめんなさい。 まだ 家にいるの …
」
ドンヒョクの方に目をやると電話に出る様子もなく
ソファーから起き上がろうともしない。
「
レオさん ごめんなさい。 折り返しこちらからさせていただくわ。
」
そういうと受話器を置き ドンヒョクに
「
レオさんからよ。 どうするの? どういう風にいえばいいの? 」
ますます弱弱しい声で
「
ジニョン少し離れて静かに喋ってくれるかな~ 」
「 もう! ドンヒョクさんったら! ねえどうするの
」
ますます大きな声で …
受話器を持ちダイヤルボタンを押す。
「
ジニョンです。 」
「
ジニョンさんボスに何かあったのでは?
長い付き合いだ。 言ってくれないかなあ。
何があっても驚かないから …
」
レオは 先の電話から感じとられる雰囲気がいつもと違い
てっきり あの発熱の時のように何かがあったのではと
…
「 それが … ドンヒョクさん 二日酔いみたいなの~
」
ジニョンは鼓膜が破れるのでないかと思うぐらい
レオの笑い声が受話器のむこうから聞こえてきた。
「
ジニョンさん冗談はよしてくれ。 ボスが? それはないよ。
どれだけ飲んでもボスが二日酔いは
…?
えっ! 本当なんですか? 」
「 そうらしいのよ。 なんだか大変みたいで …
」
「 とにかくそちらへ伺います。
」
ジニョンは食事の後片付けをし 寝室の窓を開け
ベットメイキングを済ませ ドンヒョクにベットに移るように
声をかけかけていると インターフォンが
…
「 ハ~イ! 」
「 おはようございます。
」
と、 言いながらレオがなんだか 嬉しそうにリビングへ
。
レオもジニョンに負けないぐらい普段から声が大きい。
ドンヒョクは 背をむけ ソファーに横たえた長身のからだを
ますます丸く あの凛としたドンヒョクは何処へ
…
と いった状況を レオは自分の目で確かめますます上機嫌 。
「
ボス 二日酔いだって? 大変だなあ。
ターミネーターが変身するには この間の発熱といい
何度も荒波との戦いがありそうだなあ。
さあ~ これを飲んで!
二日酔いのプロの特効薬だ。 ジニョンさん水を
… 」
ジニョンはレオに水を手渡しながら
「 ねえ~ レオさん、二日酔いにプロなんてあるの?
」
またまたジニョン! 天然発揮
レオは ドンヒョクをソファーに座らせ
常備している非ピリン系の鎮痛剤と 漢方の胃腸薬を服用させた。
「
ボス。 これでしばらくすると頭重感 頭痛 嘔気等から
解放されるから2時にはでてきてくれよ。
まあ~ それまでは多めにみよう。
3時からの打ち合わせはこちらに来てもらうように 調整するから。
1時間あれば書類の見直しは大丈夫だろう? 」
そう言って帰りかけたレオが
ドンヒョクの二日酔いの相手がテジュンだと知り
「
そうだ! 帰りにソウルホテルの社長殿の顔でも … 」
と 言いかけるとドンヒョクが
「
レオ! 早く仕事に戻れ! 」
「 ボス それはないだろうよ。
」
ジニョンに向かい
「 お宅の旦那は 人使いが荒いんだから …
」
と ジニョンに笑いかけた。
ジニョンは苦笑しながら 車の所まで見送り
しばらく立話しをしてリビングに戻ってきた。
ドンヒョクはキッチンでミネラルウォーターを飲み干し
全く昨日の事など何もなかったかのような
ジニョンの振る舞いに安堵し ジニョンから切り出さない限り
触れないでおこうと 少し後ろめたさを感じていた。
部屋に戻ったジニョンが
ミネラルウォターを手に持っているドンヒョクをみて
「
持っていって上げるのに …
」
と、 いいながら笑顔のジニョンにドンヒョクは微笑み返した。
レオの言ったように薬の効果があり 少し いや! 随分楽になった。
「
ねえ~ ドンヒョクさん。 二日酔いにはシャワーもいいわよ。
どちらにしても シャワーしたら! 」
「 うん …
」
ドンヒョクは浴室へ …
いつもより温度を下げ 目を閉じ顔に
…
ジニョンが浴槽にお湯をはってくれていた。
少し温度が高めの湯船に身体をしずめた。
なんだか先ほどまでの症状がうそのように消えていた
。
なんだったんだ! あれは?
のどの渇きを感じ もう少しこのままでいたかったが
我慢しきれず出ることにした。
軽く水滴をぬぐい バスロープをはおり 首からタオルをかけ
キッチンへ
…
キッチンにジニョンが また何かを口に入れて もぐもぐしながら
「 早かったわね。 大丈夫?
」
「 随分! いや うそのようだ。
胸のあたりの不快感や頭痛はらくになったよ
。
そうだ! ジニョンのお気に入りのあのレストランで軽くランチしよう
。
そのまま事務所にでるよ。 でも! ジニョンは少しはやいかな~ 」
「
今日は 変則の遅出だから少し早いけれど
テジュンもあんな調子だし私もそのままホテルに出勤するわ。 」
「
じゃ! レストランに電話入れておくよ。 」
「 急いで私もシャワーしてくるわね。
」
行きかけたジニョンが向きを変えずに バックで戻ってきた
。
ソファーに腰を下ろしミネラルウォーターを口に運んでいるドンヒョクにに
「
多分! こないと思うけれど? 絶対こないでよ。
時間がないのだから! 絶対よ 」
「 わかった!
」
ドンヒョクは昨日のことがまだ少しばかり後ろめたさが残っており、
まあ~ 今日のところは我慢のいい子でいようと
自分自身にいいきかせた
。
ジニョンを待っている間に予約の電話を入れ 身支度を
し始めた。
ジニョンも朝食は トーストとコーヒー
少しの野菜だったので ふたり分食べたがお腹が満たされていなかった。
ジニョンも素早く身支度をすませレストランへ
レストランに着くと すぐに席に案内さた。
ジニョンのすごい食欲は言うまでもないが
ドンヒョクは薬の効果はあったがやはりまだ食欲へとはつながらず
野菜サンドひと切れとフレッシュジュース 残りは勿論 奥様が
…
ジニョンを ソウルホテルに送りドンヒョクは出社した。
ドンヒョクは車中で苦笑していた。
また違った時間(とき)の流れの中で 想定外の出来事が
…
想定外の収まりに感動に近いなんともいえない
幸福感にしたりつつ また!笑みがこぼれるのだった。
スンジョンさんからもらった映画のチケットで 予期せぬ出来事が
…
一件落着。
ドンヒョク! 初めての二日酔いの経験を …
《 報告書
》
ジニョンも懲りずに レオさんに連絡を取り ドンヒョクの予定を把握し
ドンヒョクが 抜けられない仕事の時で
遅くなる事を確かめスンジョン先輩とあらためて映画館に足を運んだ。
スンジョン先輩との映画鑑賞の様子はまた何かの機会にお話を
…
ドンヒョクとジニョンとの間で 隠し事はしないと硬く約束されている。
しかし この事に関しては
いずれ耳に入れようと思っているジニョンだが
今のところ 水に油を注がないように
話さないでおこうと 心に決めたようだ。
今や ソウルホテルのホテリアーの女性達は 映画のとりこに
…
ソウルホテルで働く男性ホテリアー達は どうもこの頃
女性ホテリアー達の溜息の多さに疑問を …?
《 追伸 》
理事 シン ・ ドンヒョク として ホテルに一歩足を踏み入れると
すれ違う女性従業員のまなざしは なおも
……
《 完 》