【 ドンヒョク ピンチ? 夜勤のジニョン … 】 最終話
慌ただしく料理長が指示を出す。
「 まず ジェニが抜ける仕事の分担は大丈夫だな~ 」
と、 念を押しクーラーボックスを用意させた。
その中に 牛乳 ・ バナナ ・ 洗浄し切り揃えた
セロリー ・ りんご ・ 人参 と その他 数種類の野菜を入れ
早朝作られたサンドイッチを 理事やテジュンも摘むだろと
少し多い目に 体裁よくバスケットに …
そこは手馴れたもので ジェニに指示したコーヒーもポットに入れられた。
厨房の中の一人が 「 でも おかしいですね? 」
「 何がおかしんだ? 忙しいんだ! 早く言え! 」
と 料理長が
「 この間 知り合いに頼まれ献血をしましたが
お昼の休みに400cc 採取したんです。
ジュースをもらって帰ってすぐに仕事しましたよ。 」
「とにかく 理事が 直々にジェニに連絡をしてきたんだ。
何かあったんだろう? 」
ジェニが 「 すみません。 なんだかよく事情が? 」
「 気にするな! ジェニがあやまることはない。
ジニョンは娘みたいなものだ。 ジニョンにはみんなも … 」
そこまで言いかけ 料理長も要領の得ないまま
「 あとの事は頼んだぞ。 」
「 はい!」
厨房の食品搬出入口に ヨンジェの運転する車が
すでにエンジンがかけられて待機していた。
午前5時前という時間帯は まだ街は動いてはいない。
スムーズに病院につき ヨンジェは一旦車を救急受付の
少し手前の死角にとめた。
料理長の指示を待つヨンジェ と ジェニ
「 ヨンジェ 電気を使いたい。
この付近で差込を探して持ってきた電気コードをつなげ! 」
ジェニも一緒に探した。
すぐに見つかり 電気コードを差込み料理長のもとへ …
「 作業はこの車の中でする。 」
ヨンジェ と ジェニは とにかく料理長の指示に従った。
料理長は手際よく 持ってきた業務用のジューサーを電気コードにつなぐ。
容器に入れられた材料をジューサーにかけ みる見る間にジュースへと …
ジェニに 「 出来た。 急げ! ヨンジェ 一緒に … 」
「 はい! 」
「 ヨンジェは 荷物を置いたらすぐここに戻ってきてくれ。 」
「 はい ! 」
クーラーボックスに収められた作りたてのジュースをいれ
バスケットに入れられたサンドイッチとコーヒーのポットを持ち
救急患者受付で説明をし ドンヒョク達のいる場所へ
ヨンジェ と ジェニは案内された。
ジニョンのもとへ運ばれたジュースを ジニョンは美味しそうに飲み干した。
ジェニから 病院の外で行われた事を
ドンヒョクとテジュン そしてジニョンに話された。
この時は 採血した部屋から看護師の配慮で
「 しばらくこちらの部屋の方で … 」 と
早朝 診療体制に入っていない為
使われていない ゆったりとした面談室にうっていた。
ジニョンは サンドイッチに手が伸び 早朝にもかかわらず
すご~い食欲で数個のサンドイッチを口に運んだ。
ドンヒョクとテジュンは香りとともにコーヒーを味あい癒された。
「 じゃ! 安心したわ。 料理長とヨンジェを待たせると悪いから帰るわ。 」
ジニョンが
「 皆によろしくね。 こんなに元気だから心配しないでと言っておいてね 。」
ジェニの見送りをかね ドンヒョクとテジュンが外で待つ二人のもとへ …
テジュンが料理長とヨンジェに事の一部始終を話し
ドンヒョクは二人に 深々と頭を下げお礼の言葉を …
ドンヒョクとテジュンは3人の乗った車を見送り しばらくその場にとどまっていた。
テジュンがドンヒョクに目をやり ドンヒョクの異変に気がついた。
「 大丈夫か? 」
「 ああ~ テジュン!」
「 何だ!」
「 ジニョンが言ってた。 ジニョンがテジュンを迎えに来た時 … 」
「 僕をアメリカに迎えに来た時か? 」
ドンヒョクは軽くうなずき
「 ジニョンが一点の曇りもない笑顔で
ソウルホテルの事を … ソウルホテルには お金では買えない
素晴らしいものが一杯あると言った。 」
ドンヒョクはメガネをはずし涙を拭い
「 はあ~ すごい すばらしい …
僕は我を忘れジェニに助けを求めた。
恥ずかしいよ。 さりげなくこんな事を … いいのかな~。
この僕が …
この人達の温もりに触れて 包まれて 場違いのようにも …
僕が熱を出した時も今回にしても こんなに 人に優しく 暖かく
テジュンも含めてだがどうなっているんだ! 」
ドンヒョクはテジュンにきずかれないように涙をぬぐった。
テジュンはそんなドンヒョクをちらっと! 横目で …
「 そうだな~ みんなあついからな~ 」
テジュンは少しふざけて言った。
ドンヒョクは ますます弱弱しく
「こんな時に 流す涙が僕に …
涙というものは 辛い 悲しい 悔しい … 時にと!
そんな時ですら感情を殺し 一滴も流す涙などなかった。 」
テジュンも涙で潤んだ目を隠すかのように 天を仰ぎ一呼吸し
ドンヒョクの肩をポンポンと・・・ 声を詰まらせながら
「 ジニョンが待っている。 ジニョンの事だ。
一人でおいて置くと … 」
ドンヒョクはジニョンという言葉を耳にしたとたん!
我に返り 早足でその場を立ち去り部屋の向かった。
テジュンはドンヒョクの豹変に呆気にとられ
ドンヒョクの背中が離れていくのを眺めながら トボトボと部屋にむかった。
テジュンが部屋に入りドンヒョクと顔を見合わせ苦笑した。
ジェニを見送りにこの部屋を出る時も
差し入れのサンドイッチを口に頬張っていたのに
部屋のドアを開けるとまたジニョンの手には …
「 お帰り … 」
「 お帰りはないだろ~ 」
「 今 食べ始めたところよ。
遅いから …
ああ~ いない間にまた採血したのよ。 200 cc … 」
サンドイッチを口に頬ぼりながら手招きし
「 二人もよばれたら!」
ドンヒョクは 血の気が引いていくのがわかった。
「 ああ~ 何て事だ? それで大丈夫なの? 」
テジュンはサンドイッチを口一杯に頬張るジニョンをみて
「 なあ~ ドンヒョク! 心配するのはもうよそう。 」
ドンヒョクも ” はあ~ ” と 吐息をひとつ!
軽く縦に首を振り目を閉じまたひとつ …
テジュンが
「 さっき自分の分は食べただろ。 」
「 自分のものって何処に名前が書いてあるのよ! 」
そんな幼稚なやり取りを ドンヒョクは微笑みながら
紙コップにコーヒーを注ぎ分けジニョンとテジュンに手渡す。
しばらくして看護師が入ってきた。
「 お変わりありませんか? もう一度血圧を測らせていただき
異常なければお引取りただいて結構です。
今 保存血が運ばれてきました。 お陰さまで … 」
ドンヒョクとテジュンは 不安げに看護師に注目する。
「 大丈夫のようですねえ。 お陰さまで患者さんも手術再開されました。 」
「 再開って?」 と ジニョンが …
「 ハイ! 実は2度目の献血をお願いしました時は
手術を中断するぐらい最悪な状況で
ソさんに再度献血をお願いしましたが輸血を開始したとたん
血圧や心拍が戻り手術を開始しされました。
ソさんと患者さんは相性がいいみたいですね。 」
「 それで 患者さんのご家族は? 」 と ジニョンが聞く。
看護師は少し間をおき
「 まあ~ いいでしょ~ こんなにお世話になっているのですから
患者さんの奥様は 貧血を起されまして 患者さんのお部屋でおやすみです。
かなり興奮状態でしたので … 」
「 じゃ~ 他にはどなたも? 」
「 先ほど 数人お身内のかたが こられました。 お会いになられますか? 」
3人は顔見合わせテジュンが
「 はい。 私が … お荷物やお部屋の事もありますので
ご挨拶方々お見舞いに … 」
「 こちらです。 」
「 私も … 」
手早く荷物をまとめ 結局3人で5階ある手術室の前の廊下へ …
手術室の前には 患者であるソウルホテルのお客様の近親者が数人。
看護師から ジニョン テジュン ドンヒョクが紹介をされ
それぞれが挨拶やお礼を …
3人はその場をあとにした。
ドンヒョクとテジュンはジニョンをいたわりながら
ドンヒョクが運転する車に乗りソウルホテルに向かった。
「 はあ~ すっかり夜が明けたなあ。 ジニョン今日はこのまま帰れ! 」
「どうして。 まだ勤務時間よ。 」
「 ジニョン! テジュンの言うとおりに
今日のところはテジュンに甘えさせてもらおう。 」
「 着替えもしなくてはいけないし どちらにしてもホテルで一旦降りるわ。 」
言い出したら聞かないジニョンに ドンヒョクも一歩も譲らず テジュンが
「 業務命令だ。 慌ただしい朝の時間に 万が一 倒れられて
これ以上忙しくなるのは困る。 ホテルで降りるのは僕だけだ。
いいなあ。 ソ ・ ジニョン! 」
ドンヒョクは ミラーの中のテジュンを見ながら
「 ありがとう。 そうさせてもらうよ。」
ドンヒョクとジニョンはホテルにテジュンを送り 家路に車を走らせた。
《 追記 》
事故の患者は 内臓破裂 両足大腿部の骨折 の
無事手術を終え集中治療室に …
一命はとりとめた。
テジュンは 今回の出来事をホテリアーとしてあらためて
身を引締め 社長業務にもどった。
ジニョンは 全く今までと変わらず 献血の後遺症もなく
元気印の微笑みパワー全開で
夕方 ドンヒョクと共に厨房に顔を出した。
ドンヒョクは 仕事に関しては今まで以上に頭脳全開
レオや従業員を悩ませている。
ジニョンには 以前に勝る ビタミン愛 を 注ぐ日々を …
完