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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
サークルオーナー: aoi32 | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 297 | 開設:2008.03.05 | ランキング:100(3927)| 訪問者:1367221/1904462
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秘  密
大学講師の深沢潤と人気女優の青山優。                                                実は結婚していることは秘密。                                                       そして、優には誰にも言えないもう一つの秘密が…
No 10 HIT数 7490
日付 2009/04/02 ハンドルネーム aoi32
タイトル 秘密 9 揺れる思い 前編
本文

   秘密 9  揺れる思い 前編



 




桐原恭子は考え込んでいた。

彼女は 今、目の前でCM撮影をしている青山優のマネージャーだ。

夏物の明るいクリーム色のスーツを着た恭子は 縁なし眼鏡の奥から切れ長の目を光らせる。

いかにもやり手のマネージャーという感じだ。


優のマネージメントを引き受けてから もう5年になろうとしていた。


横浜・山手のお屋敷に住んでいるお嬢さんの優。

彼女の亡くなった母親が、昔 名の知れた舞台女優だったことは後で知った。

その関係で 子供の頃から雑誌のモデルとなり、15歳の時 初めてTVドラマに出演した。


初めて優を見た時、大人びた瞳をした子だと思った。

そして、育ちの良さからくる おっとりしたやわらかな印象を受けた。


儚げで繊細そうで・・この少女が芸能界というある種、独特の世界でやっていけるのだろうかと思ったが

優はそんな心配を見事に払いのけてくれた。


彼女は思っていたよりもずっと芯が強かったし、何よりも女優という仕事が好きだった。


優の透明感溢れる感性が ある有名な監督の目に留まり

映画のヒロインに抜擢されたのが17歳の時だった。

それから、あっという間に人気が出て TVドラマやCMのオファーが殺到した。


そんな世間知らずのお嬢さん女優の優が 一度だけ恭子を驚かせたことがあった。

それは 3ヶ月前にそれまで通っていた女子大をやめて、K大学に編入したことだった。

一年前、優がK大への編入試験を受けると言い出した時、正直無理だと思った。

その大学はレベルが高い上に 優は勉強する時間も十分にあるとは言えない。

・・・が、優は見事に合格した。

 

大したもんだわ、優は・・・。 ・・・でも・・なぜ、K大へ・・?

 

 


「・・・恋する女はキレイさ~♪・・・ってね。

 優ちゃんが最近、綺麗になったのはそのせいかな~?」

突然、CMディレクターの辻が声をかけてきた。


「え? やめてくださいな、辻さんったら。優が恋愛なんてありえないわ。」

恭子は笑い飛ばす。


「そう?・・でもさ、今日の優ちゃん、最高だよ。いい画が取れそうだ。

 はら、瞳なんてキラキラしちゃってさ・・・あれはどう見ても・・。」


「違いますよ。優は忙しくてそんな暇ないですよ。」

恭子は首を振りながら、撮影用のカメラに笑顔を向けている優を見た。

 

赤いドレスを着てふわりとした黒髪をなびかせる優・・・。

秋に新発売する大手化粧品会社のシャンプーのCMだった。

萌えるような紅葉と赤のシルクドレス・・そして 艶やかな黒髪の優・・・

 


  ・・・今までと違う・・?

    いいえ、優にしては珍しく“大人の女”の雰囲気のシチュエーションなだけよ。


      あのルージュが赤すぎるだけ・・・。

 

 


「・・・恋するオンナはキレイさ~♪・・・・・」

 

つい、歌ってしまった恭子は慌てて口を押さえて周りを見てしまった。

 

 

 

 

   ―――――――

 

 

 


「・・・・・また、ここでいいの?」

恭子は怪訝な顔をして優を見た。


「うん。 お友達の家に寄って行くから・・・。」

優はそう言うと嬉しそうに微笑んで車を降りた。

撮影用のメイクを落とし、ほとんど素顔の優はほんのりと頬を染めている。


思わず、はっとした恭子はウインドーを下げて優を呼び止めた。

「お友達って、大学の?・・女の子?」

 

「そうよ。」


優はにっこり笑って手を振ると 軽やかに走って行った。

 

    ・・・・・・・・・・・

 


             ・・あやしい・・・・・。

 

恭子は車を街路樹の脇に停めると、急いで優の後を追った。

 

辺りは夕闇が近づいていた。

猛暑だった昼間のむせ返る様な熱風がまだアスファルトの上に残っている。

 

   ・・・確かにあやしい。


最近、優は仕事が終わった後、まっすぐ山手の自宅に戻らずこの辺りで降りることが多い。


大学も夏休みに入ったし、友達と遊んでるのかしら?


ピンクのノースリーブのカットソーにジーンズの優は 白い帽子をかぶり眼鏡をかけている。

日焼けのしていない白い腕はほっそりとしてて涼しげだった。


彼女はあるマンションのエントランスに向かって歩いていた。

 

    ・・・こうやって見ると 優も二十歳の可愛い普通の女の子よね。

 

やはり尾行なんてやめよう、優だって遊びたい年頃だもの・・。

外で遊べない優が友達の部屋でおしゃべりするぐらい良いじゃない・・


噂で聞くような 夜の街で遊び回っているアイドルに比べたら可愛いものだわ・・・と思った矢先だった。

 


マンションの駐車場に一台の白い車が滑り込んできた。

 

そして・・・・。

 


「え・・・?」

恭子は思わず自分の目を疑った。

 

優はその車に気がつくと そこに向かって走り出したのだ。


そして 車から降りてきたその相手の胸に迷うこともなく飛び込んだ。


優を抱きとめたすらりとした長身の男は 優の背中を撫でながら何か言っている。


優は必死でしがみつくように彼の背中に手を回している。


彼女は彼に夢中なのだとすぐにわかった。

 

遠目で顔はよくわからないが その男は眼鏡をかけているようだった。

 


二人はそのまま寄り添ってマンションへ入って行った・・・手をつないで・・。

 

 


顔色を変えた恭子の頭の中に またあのメロディーがぐるぐると回った。

 

 

 

   ―――――

 

 

 

マンションの中まで後をつけるのは不可能だった。

エントランスはオートロックだし、同じエレベーターに乗ることはできない。

・・・どこの部屋かもわからない。


恭子は外からマンションを見上げた。

・・・二人が入っていった部屋の窓は これから明かりが灯るはずだ。

 

思ったとおり・・・目を凝らして見てると ひとつの部屋に明かりがついた。


   あそこね! 5階の左から・・・三つ目の部屋!


   でも・・どうしたらいいのかしら・・?・・乗り込む?

   いいえ。そんなことして騒ぎが大きくなったらどうするの。


   ・・・・・・・・ 

  
   まったく優ったら・・いつの間に・・同じ大学の学生かしら?

 

   まずいわ。 相手のマンションに行く仲なんて・・あの子のイメージぶち壊しじゃない!


   ああ、何でもっと早く気がつかなかったのかしら!

 

 

色々と考えあぐねた恭子は またその5階の部屋の窓を見上げた。

 


   ・・・・・・・・・・・

 

          ・・・・・・・・・・・

 

  えーーーーーーーー?????

 

 

・・・・・あの部屋の窓の明かりが消えたのだ・・・・・。

 

    部屋の明かりを消す・・・?・・それって・・。

 

 


  な、何てことーーー! ま、まだ部屋に入ったばかりじゃない???

 

   早すぎる! 速すぎる!・・・まさかっ・・そんな・・

 

    こっちは・・彼氏いない歴・・一年と・・3ヶ月よ! しかも、わたしはもうすぐ三十路!


       ・・・って関係ないけど・・・でもっ・・・でもーーー!!!


  

あまりの展開の速さに 敏腕マネージャーは両手の拳をグーで握りしめ、わなわなと震えた。         

 

 

 


   ―――――――

 

 

 

そんな怒涛の嵐の中にいる恭子のことなど知らない二人は 

明かりを落とした部屋で、一緒に古い映画のDVDを見ていた。

 


「・・潤先生・・くすぐったい・・。」


優はくすくす笑うと 潤の悪戯を止めさせようとして彼の長い指を手で包み込んだ。

そして、少し振り向いて顔を上げて微笑んだ。

 

優は後ろから潤に抱きしめられて座っていた。

ラグの上に座った潤の足の間に身体を入れた優は 潤の腕の中に閉じ込めらて身動きできない。


潤はそれをいいことに、優の髪に顔を埋めたり、指で彼女の頬や首筋を撫でている。


恥ずかしそうに頬を染めている優が可愛くてたまらない。


あどけない笑顔と表情豊かな瞳をまっすぐに自分に向けてくれる優が愛しくてたまらない。

 


「・・・いつもと違う香りがする。」

潤は優の艶やかな髪を少し手に取って そっと唇を当てる。

 

「今日ね、シャンプーのCMを撮ったの。・・髪を洗うシーンもあったのよ。」

優も潤の長い指にそっとキスをする。

 

「優の髪はふわふわしてて触り心地がいいね。」

耳元で潤の低い声で囁かれて 優は胸の鼓動が速くなる。

 

「わたしも・・潤先生の髪も・・手も・・長い指も好き・・。」

 

優の言葉に 彼女を抱きしめる潤の腕の力がぐっと強くなる。


逞しくて温かい胸に抱かれて 優は思わず目を閉じてしまう。

 


「・・・潤せんせ・・い。」


「うん?」


「・・・また・・DVDが見られない。」


「うん。」


「この体勢だと・・ドキドキして集中できないの。」


「じゃあ、見るのはまた今度にする?」


「う・・ん・・。」


「・・じゃあ・・こっちを向いて・・。」

 

潤はやわらかく微笑むと優の身体の向きを直した。


優の顔は戸惑いの表情を浮かべている。


彼女の華奢な身体を静かに引き寄せて どこへも行かないように胸の中に閉じ込める。

小さな優は潤の腕の中にすっぽりと包まれてしまう。


思わず優は目を閉じる。 長い睫毛が震えている。

 


  ・・・もう、潤先生と離れることなんてできない・・・


         潤先生の胸の温かさを知ってしまったから・・もう・・何があっても・・。

 

 

潤は 彼女の前髪を上げるとその白い額にキスを落とした。


「・・今日で・・3回めなのに・・まだ見終らない・・ね。」

優の声が震えている。


「・・・そうだね・・。」

潤はからかうように優を見つめる。

 

 


明かりを落とした部屋の中 液晶TV の画面には古い映画のシーンが流れている。


初老のプレイボーイを翻弄するのは 音楽学校に通いチェロを習う女学生。


見つめ合う二人・・・恋の駆け引きの台詞が字幕で流れている。

 

   ・・・“いったい何人の男がいるんだ?”  “・・・貴方と会う前? 後?”

 

 

ヘプバーン主演のその映画の 美しいワルツの曲が聞こえてくる中


二人は魅惑的なキスを繰り返していた・・・・・。                               

 

 

 

 

 

 

 














                               後編へ続く・・・                                           








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