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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
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秘  密
大学講師の深沢潤と人気女優の青山優。                                                実は結婚していることは秘密。                                                       そして、優には誰にも言えないもう一つの秘密が…
No 11 HIT数 7532
日付 2009/04/02 ハンドルネーム aoi32
タイトル 秘密 9 揺れる思い 後編
本文



   秘密 9  揺れる思い 後編

 





午後10時。


基本的に根が真面目な潤は 優をそれほど遅くならないうちに家まで送ってくる。

車を降りると 潤は玄関の中まで優を送り届けて、由梨子や由紀子に挨拶をする。


そんな潤に 優の祖母と叔母は絶対的な信頼をおいているのだ。

 

いつも大歓迎で迎え入れて、必ず「お茶でもいかが?」と誘われるのだが その日は違っていた。

 

「あ、あら 潤先生。送っていただいてありがとうございました。・・・

 ・・・あの・・今夜はもう、お帰りになって。」

いつも強引過ぎるくらいに家に迎え入れる由紀子の様子がおかしい。

 

「え? どうしてーー?」

優は不服そうに頬を膨らませる。

 

「と、とにかく今夜は・・もう・・。そうでないと・・ああ・・。」

落ち着きの無い由紀子の瞳が中を泳いでいる。

 

 

「・・優! 帰ってきたの!!!」

突然、大声がしたかと思うと マネージャーの恭子がすごい勢いで駆けてきた。

 

「・・きょ、恭子さん??? まっ、待って!」


「きゃーーー!!! 潤先生、逃げるのよーーー!!」


「待ちなさい!! 逃がさないんだから!!!」


優と由紀子が潤をかばうように潤の前に立ったが、それを振り払うと恭子は潤の腕をがしっと掴んだ。

 

「え・・・?」

潤は驚いて恭子を見た。

 

「え・・・・・?」

恭子は潤の顔を見て立ちすくんだ。


「・・・あ・・ら・・・いい男・・・・・。」


敏腕マネージャーの胸が高鳴る。


   ・・・・・・・・・・


           ・・・・・・・・・・・

 


「・・だ、だめーーー! 潤先生はだめよっ!」


今度は優の声が響き渡った・・・。                          

 

 

   ―――――

 


「・・恭子さんが何と言っても潤先生とは別れないんだから!! 止めてもムダなんだから!」


いつもと違う優が必死な顔で恭子に向かって叫ぶ。

優の両手は潤の腕をぎゅっと掴んで離れようとしない。

 

「何言ってるの!優・・あなた・・まだ二十歳になったばかりなのよ。

 今が一番大事な時期なのに。これからっていう時に・・。

 清純なお嬢様女優ってイメージで世間は見てるのに

 そうよ・・・同じ大学生ならまだしも・・ずっと年上の大学の講師なんて・・。」


恭子はそう言うと潤をちらっと見る。

 

「・・潤先生のことを悪く言わないで! わたしが先に先生のことを好きになったの!

 先生を侮辱するなんて・・・恭子さんでも許さないんだから。

 それに・・どうして先生と付き合うことがだめなの? 女優は人を好きになったらいけないの?

 だったら・・わたし女優なんてやめる!・・・大学もやめる!

 だって・・潤先生に会うためにあの大学に入ったんだもの!

 わたしは・・潤先生がいれば他には何もいらないの!」


「優!」
「優!」

優の爆弾発言に恭子と由紀子が同時に叫んだ。


優は興奮して肩を震わせて泣きじゃくっている。

 

「・・優・・。」

それまでずっと黙っていた潤が優の肩に手を置いた。


「・・潤・・せんせ・・!!」 

優は思わず潤の胸に飛び込むと声をあげて泣き出した。


潤は優をなだめるように彼女の背中を何度も撫でた。


そして静かに言った。

 

「・・・少し外に出て・・・話そうか?」

 




 

   ――――――――




 

 

真夏の厳しい暑さの中でも咲く薔薇がある。

梅雨の雨で傷んでしまったり、高い気温のせいですぐに散ってしまうこともあるが

春と同じように美しく優雅に花を咲かせている。


夏の夜風に揺れて あたりには花の香りが漂ってくる。

 


「  ・・・少しは落ち着いた?」

 

潤はそう言うと優を見た。


彼の穏やかな眼差しに包まれて 優のざわついた気持ちがだんだん落ち着いてくる。


二人は中庭のテラスに椅子を並べて座っていた。                               


優は少しずつ話し始めた。

 


「・・二年前の冬・・文化会館でセミナーがあって・・女子大の教授に付いてって聴講したの。

 その時に潤先生が論文を発表してて・・ひと目見て好きになって・・信じられないと思うけど

 どうしても潤先生の講義を受けてみたいって思った。・・・・」

 

「・・・それでK大の編入試験を・・?」

 

「そうよ。・・女子大の方はやめて受験勉強に専念しようかと思ったけど・・
 
 恭子さんに止められて・・でも、結局・・一年間、大学にはほとんど行けなかった・・。」

 

「・・じゃあ、今年の春 桜の下で・・僕のところへ飛び込んできたのは偶然じゃなかった?

 僕だってわかったから・・そうしたのか?」

 

「・・違うわ! あれは・・ファンだっていう人達に追いかけられて・・

 必死で走っていたら・・潤先生を見つけて・・。あの時は本当に怖くて・・

 逃げて・・先生なら助けてくれるって思ったの・・それで・・。」

 

「・・・・・」

 

「・・・最初は見てるだけでよかったの。・・大学に行って先生の顔が見られればそれでいいって・・。

 でも・・そうしてるうちにもっと潤先生のことが好きになって・・こっちを向いてほしいって

 わたしの気持ちを知って欲しいと・・だんだんわがままになってきた・・。」


優はゆっくりと自分の気持ちを思い出しながら話してゆく。

 

初めて会った時から優はまっすぐに潤だけを見つめてきた。


潤にとって 最初はそれが息苦しくて目をそらしていた。


そして、いつの間にか その純粋な思いは潤の胸の中にすっと入ってきた・・・。

 


  ・・・でも・・・今は・・。

 

 

 


「・・優・・・。」


しばらく考え込んでいた潤が優の名前を呼んだ。

 


「・・はい・・。」


優は不安げな顔で潤を見た。

 

 

「・・少し・・会うのをやめようか・・?」

 

「え・・・?」

 

「・・・少し・・距離をおいて・・・おたがいに考えてみたほうがいいと思う。」

 

「・・・・・・・」

 

「優も僕も・・・・・きっと・・今は・・その時期なんだ・・。」

 

   ・・・・・・・・・・

 

        ・・・・・・・・・・・・・

 

 


潤の言葉を 優はどこか遠くの方で聞いていた。


彼の言っていることが少しも理解できなかった。

 

 

少し顔を歪めて話をする潤の横顔・・・それが 悲しいほどに崇高で美しい・・と

 

 

涙を流すことも忘れてしまった放心状態の中で 優はそんなことを思っていた・・・。

 





 



















                        背景・コラージュ nimorin








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